牙狼外伝~赤金の魔戒騎士~   作:神山人海

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相棒

継承の儀が終わり東の管轄へ向かうことを言い渡された迅は法師・桜華と魔導輪・ゲルバと共に元老院を後にした。

無言で目的地に向かう三人の中でその静寂を破ったのは魔導輪だった。

 

「おいおい辛気臭えなあ!私語禁止の指令が出てるわけでもないのになんでそんな静かなんだよ、二人とも!」

 

静寂に耐えられないゲルバは大きな声を出し二人に喋るように促す。

 

魔戒騎士は黒いコートを身に纏い内側に着る魔法衣も黒い。髪は黒いツーブロック、黒い瞳を持つ二重の丸目、眉間に皺を寄せている。そして極めつけは黒鞘に収まり柄も黒く、足元は黒いブーツを履いている。知らぬ者が見たら闇斬師(やみぎりし)と見まごう見た目だろう。

彼の名前は梵迅(そよぎじん)、今回の継承の儀により赤銅騎士・狼紅(しゃくどうきし・ろあ)となった男だ。

 

「何故喋らなくちゃいけないんだ?」

 

素朴な疑問のように聞く。

 

「あのなあ、これから相棒に仲間になるんだぜ?相手のことを知って友好を深めれば役に立つって!桜華も何かいってくれよお?」

 

ゲルバは桜華に話を振った。

黒く長い髪を銀の魔戒文字の入った布でポニーテールになっている。瞳は紅く切れ長の目、服装は全身黒のタイトスカートのような魔法衣で右側に太腿まで見えるスリットが入っている。足元は黒と赤のブーティー。町中で見れば男が言い寄ってくるほど端整な顔立ちをしている。

 

「なぜ?私は情が移る方が危険だと判断するわ。危機に陥った時、どちらかが生き残れる状態でどちらとも死ぬことになるかもしれない。なら情が無い方が良い、私はそう考えるわ。」

 

冷淡な態度で言い放った。

ゲルバがため息をついた。

 

「あのなあ、背中を任せる事になる相棒が情を持たないでどうするんだよ。それにどちらかが生き残れる状態になることを考えるな!それは自分たちが弱いって言ってるようなもんだぜ?それに会話が出来ないような奴は他の騎士とも連携が取れなくなる。」

 

図星を突かれ二人は俯く。

 

「今までの狼紅も相棒や仲間と友好を深めて色々なホラーに立ち向かっていったんだ。このままだと二人とも死ぬことになるぜ?個人が優秀なら協力したほうが効率も上がるし生存率も上がる。当たり前の事だろう?」

 

ゲルバの説得は至極真っ当なもので二人の我が儘はその言葉の前では子供同然だった。

迅が頭を掻き、桜華は頬を指で掻いた。

 

「なあ」

 

「ねえ」

 

二人の言葉が重なり目と目が合う。

ばつが悪そうに二人とも目を背ける。

 

「あんたから話していいわよ。」

 

「お前から話せばいい。」

 

馬が合うのかそれとも逆なのか二人は譲り合う。

しばらくの静寂が流れ、先に口を開いたのは迅だった。

 

「自己紹介ぐらいはしておこう、ゲルバの言う通りだからな。寝首を掻かれたらたまったものではないしな。」

 

照れ隠しもあるのだろう、迅はぶっきらぼうに言った。

桜華も一呼吸置いて口を開く。

 

「そうだ、背中を預けるわけだしあんたが闇に堕ちないとも限らないからな。お互いに理解を深めて闇に気付きやすくするべきだろうね。」

 

彼女も先ほどまでの発言があるため彼と目を合わせずに言う。

ゲルバは満足げな顔で喋った。

 

「そうそう、さっきまでの事を考えたら恥ずかしいからな素直には言えないんだろうがな。支え合うまでは言わないがせめて背中は任せ合えるようにはなってもらわないとな。」

 

それを聞き迅と桜華はため息交じりに目を合わせた。

 

「我らが魔導輪が一番厄介なホラーだな。」

 

「そのようだ。もっと寡黙な奴のが楽だったと私も思う。」

 

二人は微笑んだ。

どうやらゲルバの思惑は成功だったらしい。

初対面でプライドの高い二人はどちらが主導権を取るかせめぎ合っていたのだろうが蓋を開けてみればお互い守りし者なのだ。

人類を守るという思想自体は持っているのだが先日のギャノン復活の原因が魔戒騎士と魔戒法師の対立だったことも要因の一つとなっていたのだろう。

最終的に守りし者として騎士と法師が協力しギャノンは討伐できた。

遺恨は残っているところがあるものの二人はその事実を知っていて直接関わった二人なのだ。

分かり合えないはずはない。

 

「で、どっちから自己紹介をするんだ?」

 

ゲルバに問われ目を合わせた二人。

まずは迅から口を開いた。

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