人は誰しも陰我を持っている。
それを見つけ魔獣ホラーは魔界よりこの世界に現れるのだ。
その事実を知っているのは人類のごく一部であり、普通の人間は何も知らず平和な日常を過ごしている。
そうその気でいるのだ。
人間の陰我をゲートに直接出てくることもあるのだが他にも門に成り得るものがある。
それは陰我に塗れた物。
例えば彫像や絵画、他にもライターや街路灯などにも陰我は溜まる。
物をゲートとして出てくるホラーも多い。
今回は路地裏に捨てられた人形がゲートとなっていたようだ。
「こいつはホラー・ギョグレン。人型の物体をゲートにして現れる。まだ襲われた人間は居ないようだな。」
駆け付けた三人のうち最初に口を開いたのはゲルバだった。
目の前には捨てられたフランス人形から醜悪な人型の怪物が牙をむき出しにして佇んでいた。
迅は剣を桜華は筆を握る。
ギョグレンが彼らを見て口を開く。
「魔戒騎士に法師か、貴様らから喰らってやろう!」
「喰われる前に狩る!」
剣を抜き構えるとすぐに怪物は彼に向かい牙を突き立てようと突進してきた。
ぶつかり合うその瞬間、ギョグレンに光の弾が当たり吹き飛ばされる。
弾道を辿ると桜華が陣を描き術を放っていた。
「二人で戦ってるんだ、手早く片付けよう、迅!」
「助かる!」
二人の息は合っていた。
初めての共闘でこれはお互い騎士と法師として信頼を置いた証拠なのかもしれない。
「人間風情が生意気な!」
ギョグレンが怒りを露わにし咆哮する。
先ほどまでの人型を捨て四つん這いになりまるで獣の姿へと変貌する。
「犬の人形ってところだな。軽くいなしてやろうぜ、迅。」
「ゲルバも口が上手いな。素早くケリをつける!」
魔戒剣狼紅を頭上に掲げ円を描くように空を斬る。
そこをゲートにして狼紅の鎧が召喚され迅の身体に装着されここに魔戒騎士狼紅が正式に継承された。
赤銅色の騎士、狼紅。
漆黒の魔戒剣に六芒星の紋章が赤銅で飾られている。
久方ぶりに現世へ召喚された鎧は黄金騎士にも負けない輝きを放っているような気さえした。
「貴様の陰我、俺たちが断ち切る!」
今度はこちらの番だと言わんばかりに狼紅がギョグレンに突撃した。
構えた剣を振り下ろし獣を切り裂く。
しかし牙によって受け止められる。
そこに桜華が術によって光の弾を飛ばす。
獣の脇腹に当たりまたも吹き飛ぶ。
剣を放し自由になった迅はその瞬間を見逃さず獣の頭上に振り下ろした。
術によって吹き飛ばされた獣は反撃する術もなく兜を割られる形で血を吹き出しながら絶命し塵になり闇になって消えていった。
鎧が外れ魔界に還っていく。
剣が戻り鞘へ納める。
桜華も筆を腰に下げ戦闘が終わった。
「ゲートにももう陰我は溜まってないみたいだ。俺たちの家になる場所へ向かおうぜ。」
「そうだな、一日にいろいろあって疲れた。眠りたいところだ。」
「魔戒騎士のくせに随分とひ弱だな。私としてはあと二、三体のホラーを狩るぐらいの余力はあるぞ。」
三人の会話が平和を表しているといっても過言ではない。
こうして狼紅邸へと向かうのであった。