有咲 Side
<花咲川女子学園 2-A>
香澄は未だ落ち込んでいた。人狼と二回も遭遇したから無理もないけど、隣で香澄を見ている私も事実香澄が人狼と二回目で遭遇したその日に人狼と遇っちまったから。もちろん、私だけじゃなくポピパのみんなが人狼と遇っちまった。人狼と遭遇してから、私はもちろんみんなも不安と恐怖を感じてしまった。また遭遇するのではないかという不安感と人狼への恐怖を。
とにかく朝会を前にしたその時――
「香澄ちゃん?」
香澄を呼ぶ声がして振り返ると
有咲 「あれ?白鷺先輩と彩先輩?ここにはどうしたんですか?」
白鷺先輩と彩先輩が教室へ来ていた。
有咲 「(いったいどうして……)」
千聖 「あ、有咲ちゃん。香澄ちゃんはいるの?」
有咲 「(香澄に?)香澄ですか?来てはいますけど」
私は白鷺先輩の問いかけに香澄の方を振り向いて再び話す。
有咲 「今は香澄上手く話ができないかもしれませんね」
彩 「どうして?」
有咲 「実は香澄土曜日からショックなんで…」
彩 「ショック?」
有咲 「はい、それで今は香澄あんまり大丈夫じゃ…」
白鷺先輩は彩先輩と顔を見合わせると
千聖 「分かったわ、じゃあ話せる状態になったら、いつでも話しかけてね」
有咲 「あ、はい。ありがとうございます」
教室へ戻る白鷺先輩と彩先輩、その二人がなんで香澄を探しているのか?今はまだわからないまま香澄の方へ行った。
有咲 「なあ、香澄」
香澄 「…何?」
有咲 「さっき、白鷺先輩と彩先輩が香澄のこと、探してたぞ」
香澄 「彩先輩達が?どうして?」
有咲 「さぁ、何か香澄に聞きたいことがあったのかも知れねーしな。私が何か話したら話せる状態になったら話しかけてって言われたから。」
香澄 「…………」
香澄は私の話を聞いたら黙ったままだった。
有咲 「それにしても……(白鷺先輩たちも何かあったのかな?…)」
二人がなんで香澄に話を聞きに来たのか?その理由はお昼に白鷺先輩に話しかければ分かるかも知れない。そう考えてるうちに一時間目が始まった。
沙綾 Side
一時間目が終わった後、休み時間に有咲が私たちの教室へ訪れた。
沙綾 「あれ、有咲、ここにはどうしたの?」
りみ 「有咲ちゃん?」
有咲 「ああ、お前たちお昼に白鷺先輩に会いに行かねぇか?」
沙綾 「千聖先輩に?何かあった?」
有咲 「それがちょっと気になって。白鷺先輩たち、なんかあるみたいでな」
りみ 「千聖先輩に聞けば分かるんじゃないかな。おたえちゃんにも話すの?」
有咲 「おたえにも白鷺先輩たちのこと話すかと思ってさ…なんか白鷺先輩たちの顔、土曜日の夜の私たちみたいで…」
沙綾 「土曜日の私たちみたい、か……ねぇ、有咲」
有咲 「なんだ?」
沙綾 「私たちも付き合って良い?」
有咲 「沙綾も?どうして?」
沙綾 「ちょっと気になって……」
有咲 「まぁ、良いよ。後で白鷺先輩に話すね。」
沙綾 「うん。それと有咲、香澄は…」
有咲 「分かった。こっちで落ち着かせるからな」
りみ 「有咲ちゃん、お願いね」
有咲は頷いた後、教室へ帰った。
沙綾 「(今は香澄が落ち着くのを待つしかない)」
そしてもうひとつ気になる事。千聖先輩に何があったのか?それも気になってきた。
千聖 Side
二時間目が終わった後、有咲ちゃんが教室へ訪れた。
有咲 「あの、白鷺先輩。ちょっと話が…」
千聖 「あら、有咲ちゃん、話って?」
有咲 「あの、お昼時間にポピパのみんなで白鷺さんに話を聞きたくて…」
千聖 「ポピパのみんなで?」
有咲 「それで、白鷺先輩は構わないんですか?ポピパのみんなで来ても…」
ポピパの皆で?もしかして、香澄ちゃん以外のメンバーたちも何かあったのかしら?…有咲ちゃんの話が聞きたい。
千聖 「…ええ、構わないわ。もし話したいことがあれば、聞くわね。」
有咲 「はい、ありがとうございます。あ、それと…」
千聖 「?また何かあるの?」
有咲 「香澄も…その、連れて来ますね。落ち着かせてですね…」
千聖 「ええ、待ってるわね。中庭で会いましょう」
有咲 「はい。じゃあ……」
有咲ちゃんはあいさつをして教室へ戻った。
千聖 「もしかして…ポピパにも何か…」
それから三時間目が終わった後、私は彩ちゃんにポピパのみんなとお昼時間に落ち合う予定と中庭でポピパのみんなに話を聞く予定を伝えた。彩ちゃんは頷いて教室へ戻った。
[chapter:有咲 Side]
お昼時間に白鷺先輩と会う予定を取った。私はこの事を他の三人に伝えて、それから香澄をなんとか落ち着かせることにした。どうも厳しいかも知れないけど今はなんとかやるしかないだろう…
彩 Side
昼間のランチタイム、千聖ちゃんが教室へやって来た。
千聖 「彩ちゃん」
彩 「千聖ちゃん」
千聖 「中庭へ行こう」
彩 「うん、分かった。ポピパのみんなの話を聞くんでしょう?」
ポピパのみんなは一体どんな話を聞かせてくれるのか?まずは千聖ちゃんと一緒に中庭へ向かうことにした。
花咲川女子学園 中庭
中庭にはポピパのみんなが待っていた。
有咲 「――――待ってました」
彩 「有咲ちゃん…」
沙綾 「その…私たち、千聖先輩たちがどうして今日有咲のところへ来たのか気になりまして…」
千聖 「そう。実は…」
千聖ちゃんはイヴちゃんが最近香澄ちゃんが落ち込んでいるのを心配していることから話した
沙綾 「そうですか、イヴが香澄を…」
彩 「それで、香澄ちゃん何かあったか気になって…」
香澄 「…………」
千聖 「香澄ちゃん、話しづらいのなら今話さなくても大丈夫よ。あえて今日じゃなくても――」
香澄 「あ、あの」
千聖 「?」
香澄 「は、話します!」
彩 「か、香澄ちゃん…」
りみ 「香澄ちゃん、大丈夫?」
香澄 「私は大丈夫よ。いつまでも落ち込んでるのはいけないから」
千聖 「香澄ちゃん…」
香澄 「実は…私、人狼と…」
千聖 「え?」
彩 「人狼?」
驚いた。香澄ちゃんがまさか人狼と…
沙綾 「実は香澄だけじゃありません」
千聖 「香澄ちゃんだけじゃないって、どういうこと?」
たえ 「実は私たちも…」
ポピパのみんなはじっくり人狼と遭遇したことを話した。香澄ちゃんが最近元気が無かったのは人狼と二日連続で遭遇したから。そして香澄ちゃんを除いた他の四人は香澄ちゃんが二回目に人狼と遭遇した時、初めて人狼と遭遇したという。
千聖 「そうだったのね。怖かったわね」
香澄 「はい…怖かったんですよ…」
涙ぐむ香澄ちゃんを見て千聖ちゃんは話した。
千聖 「香澄ちゃん、話してくれてありがとう。不安だったわね…」
有咲 「あの…ちょっと気になったんですけど…」
彩 「どうしたの?」
有咲 「その…先輩たちももしかして…」
有咲ちゃんの質問に私たちはこっくりと頷いた。見たこと自体は事実だから……
千聖 「実は私たちも人狼を見たわ。」
彩 「その後、人狼からずっと逃げてて、結局千聖ちゃんや私も疲れてて……」
沙綾 「そうですか……」
みんな暫く口をつぐんでいた。
たえ 「この先、どうなるのかな」
沙綾 「人狼を見る生徒が増えるんじゃないかな…」
またの沈黙……みんな口をつぐんだまま……
この先、みんなが人狼と遭遇するのは必然かも知れない。そんな私たちの頭にはもうひとつの疑問がよぎった。一体誰が人狼なのか……モヤモヤする気持ちやこれからについての思案と共にお昼時間が終わっていく。
人狼姉妹の物語 「第一章: 遭遇」 九話 遭遇した者たちの話 (一) 終わり
続く…