僕と魔女と夕焼けと!   作:空色夏色

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いつも前書きに本文を書き始めてしまう…。

それにしても前書き20000文字も書けるけど需要あるだろうか……?


それでは三話目です! アドバイス等あればよろしくお願いします!


3話 僕とパン屋と

「そんな……助けてくれるっていうのは、嘘だったの?」

 

「別に嘘をつくつもりはなかったんだけどねぇ。助ける気が殺す気に変わっただけさ」

 

 

 勘弁して欲しい。そんなのあんまりじゃないか。質問には答えた。嘘もついていない。ここから出たあとも協力は惜しまない! なのに……!!

 

 

「こ、ここで会ったことは誰にも言わない……!約束するよ!」

 

「信用できないねぇ」

 

「人を見た目で判断しちゃダメなんだよ!?」

 

「いや……見た目が信用できないとかってわけじゃないんだけどね……」

 

 

 まずい、一気に雲行きが怪しくなってきた。

 

 

「一度会ってみてよ! アンジュもゼックスも優しいからきっと力になってくれるから!」

 

「なってくれるかもしれないし、なってくれないかもしれない……だろ? それに、私が敵対しているのはルーナ教や騎士団そのものさ。二人が優しかろうが、私を手伝うということは組織や立場を裏切る行為と等しいのさ。坊やは二人が自分のせいで裏切ることになっても良いって言うのかい?」

 

 

 ぐ……! 嫌な質問をしてくる。

 二人が自分の仕事にどれだけ誇りを持っているのか、僕が一番知っている。そんなこと、させられる訳がない……!

 

 

「で、でも……! 僕が内緒にしておけば……!」

 

 

 自分で言っていて情けなくなってくる。さっき、この人は僕のことを信用できないと言ってたじゃないか。僕が考えなくちゃいけないのは、どうすれば信用を勝ち取れるか、もしくは、いかにこの人の殺す気をなくすかだ。

 しかし、いくら考えても妙案は何も思いつかない。

 

 

「仮に坊やが私のことを秘密にしてくれたとしてもだ。坊やは私とその二人が敵対してしまったら、どっちの味方をするんだい?」 

 

「………ッ! そ、それは…………!」

 

 

 だから、嫌な質問をしてこないでよ!

 

 

「極端な話、その二人が私と殺し合ったとして、坊やは私の邪魔をしないという約束はできるのかい?」

 

 

 全力投球で邪魔するに決まってる。アンジュとゼックスはもはや僕の家族なのだ。

 

 ……とはいえ、ここで「そんな約束できません」なんて答えようものなら、僕は炎に包まれるだろう。この魔力の高まりからして、この人の魔法をまともにくらえば死ぬ気がする。

 

 

 とりあえず、今は「邪魔はしない」とだけ言っておくのがベターだろう。 

 

 そもそも、殺しあうみたいな仮定がおかしいし、もし本当に殺し合いになったとしても、なるべくみんなが傷つかないように頑張ればよいのだ。それは「邪魔はしない」という約束を破ることになるかもしれないが、この人もさっき約束を破ったからお互い様だ。

 

 

 

 

 よし、方向性は決まった。あとはなるようになれ、だ。

 

 

 

 

 

 

「邪魔はしない…………………………………っていうのはできないかなぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 やっちゃった……。

 

 ここは嘘をついてでも、生き延びることが最優先なのは分かってるんだけど………。

 

 

 でもなぁ、なんだかなぁ。

 

 今まで嘘をついたことがないのが、僕の少ない取り柄の一つだからなぁ。それをふいにしてしまうのは…………うん、もったいない。

 なるべく嘘はつかないって兄さんと約束しちゃったし。

 

 

 

 それに、「邪魔はしない」と言っても、この人が僕を殺さない保証はなかったし?

 ……むしろ僕の正直さに胸打たれて見逃してくれはしないだろうか? 

 お? これはありえるんじゃないか!?

 

 

「あはっ、坊やは悲しいくらい正直だねぇ。せめてもの情けだ。ほっといても死ぬだろうけど、せめて安らかに眠らせてあげるよ」

 

 

 やっぱりダメかチクショウ!!

 

 鉄格子の隙間から手をかざしながら言うと同時に、その人の周りを渦巻くように炎が現れた。炎がまるで生きているかのように手に集まり、それは1m以上の炎の塊となる。

 

 

 これはまともに食らうと死ぬなぁ……。この距離でも超熱い。

 

 無詠唱、かつ、この魔力の濃度……この人本当に強い。

 

 

「何か言い残すことはあるかい?」

 

 

 これが本当のラストチャンスだろう。もはや状況は絶望的だけど、この状況を覆せる可能性は0じゃない……!

 考えろ……考えるんだ。この人が僕を助けたくなるような一言を考えろ! 今こそアンジュとの勉強の成果を見せる時だろう!!

 

 そう思いながら気合いをいれると、グギュウウ……という音が牢屋に鳴り響いた。僕のお腹から。

 

 

 

……。

 

…………。

 

………………。

 

 

 

 

…………………………お腹空いたなぁ。

 

 

 

 

 

「…………変わった遺言だねぇ」

 

「え!? ちょっと待っ!!」

 

「じゃあね」 

 

 

 しまったーーー!? 絶好のチャンスを逃してしまった!!

 

 巨大な火の玉がうねりを持って僕の方へと放たれた。

 

 

 

 これはやばいッ!!

 

 ここまで魔力の濃い魔法なんて、正直見たことがない。まるでマグマを煮詰めたかのような魔法が僕を襲う。

 

 

 これは───── 死ぬなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───── その瞬間

 

 

 

 ────── 世界の時が凝縮され

 

 

 

 

 

 

 ───────記憶が、呼び起こされた

 

 

 

 

 

 

 

『…………………………』

 

『えと、その…………………どんまい?』

 

『うおおおおおおおおおんんんん!』

 

『わあ! 泣かないでよカイル!』

 

 

 これは…………? 僕と…………カイル?

 

 

『うるせえ! お前に惚れていた女に振られた俺の気持ちがわかるか! 何が悪いんだ!? 顔か? 顔なのか!?』

 

『アンジュは兄さんが大好きだからねえ』

 

『知ってんだよそんなことは! それでも本気でぶつかればちょっとくらいなびいてくれるかもって淡い希望を持ってしまったんだよ!!』

 

『………兄さんはイケメンだからねぇ』

 

『やっぱ顔かよおおおおおおおおッ!!!』

 

 

 あ、思い出した。これはカイルがアンジュに振られたときのやつだ。あまりにも悲壮感に駆られていたから、思わず声をかけてしまったんだった。

 

 

『チクショウ……世の中不公平だ…。俺は明日から誰のためにパンをこねればいいんだ………!』

 

『ほ、ほら! 他にもカイルにふさわしい人がきっといるよ!』

 

『アンジュさん以上の天使がいるわけないだろうがああああああッ!! 銀色の髪は天の川のように美しく! 優しさは母なる海のように溢れ! その笑顔を向けられるだけで、まるで月の光に包まれているかのような清らかな気持ちになれる! まさに聖母という言葉はアンジュさんのためにある!!!』

 

『そ、そこまで言う? 確かに優しくて綺麗だけどさ……怒るとけっこう怖いんだよ?』

 

『そして何より胸がでかい!!』

 

『うわぁ…………………』

 

 

 …………これは、まさか走馬灯?

 

 

 いやいや、なんでこのシーンが走馬灯として流れるのだ。どうでもいいんだが。

 

 どうせなら逆転の一手のヒントになるような……そんな走馬灯はなかったんだろうか。それともこれからヒントになるようなものが隠れているのだろうか??

 

 

『テオ……ありがとよ。泣いたら少しスッキリしたぜ』

 

『うん……。カイルも元気だしてね?』

 

『ああ、アンジュさんに相応しい男になるためにも俺はパンをこね続けるぜ!』

 

『あ、まだ諦めてなかったんだ……アンジュは兄さん一筋だから諦めた方が良いと思うよ??』

 

『うし! こうなったらアンジュさんが惚れるくらいの旨いパンを焼いてやる! テオも修行頑張れよ! じゃあな!』

 

『話聞いてよ!? また振られても知らないからね!?』

 

 

 

 

 ─────カイルは夕日に向かって走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 ─────── そして

 

 

 

 

 

 ────────── 世界は再び動き出す

 

 

 

 

 

 

 

 これで終わりかいッ!!!

 

 そんな起死回生の一手が都合よくあるとは思わないけどさ! せめて何かヒントをくれても良いじゃないか! くそう! もう目の前に炎が来てるし、どうしろって言うんだ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───── 死 ─────

 

 

 

「…んでたまるかあああああああッ!!!」

 

 

 こんなしょーもない走馬灯見て死ぬとか絶対に嫌だ!! どうせなら兄さんとの思い出が良かったよ!! こうなったらヤケだコノヤロウッ!!

 

 両手を前に出し、魔力を展開する。

 

 全力全開! 死ぬ気で魔力を絞り出せ!!!

 

 

「うああああああッ!!!」

 

 

 瞬間、魔力と炎がせめぎ合う。

 

 

「……………ッ!!!」

 

 ぐッ……!? あまりの熱量に身体が焼かれる! 魔力でガードしてもこの威力……予想以上に魔力の密度が半端ない。このままだと数秒もてば良い方だ。

 

 

「こりゃ驚いた……私の魔法を魔力で防いでいるのかい? ただ……もってあと数秒だろうがね」

 

 

 言われなくてもわかってるよ! 

 もうすぐ、僕は限界を迎えるだろう。鼻からは血が流れ、膝がガクガクと震えているのが自分でもわかる。

 

 

 

 

 だから、どうしたッ!!!

 

 

 

 カイルだって振られても諦めなかったじゃないか! 可能性が0だったとしても真正面からぶつかったじゃないか!

 たかがこんな炎くらいで諦めていたら、僕に兄さんの弟を名乗る資格なんかないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 集中────相手の魔力を掌握しろ!!!

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおッ!!!」

 

 

 

 

 炎が──────霧散する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ば、かなッ………! 私の魔法をかき消したッ!?」

 

 

 ぷはあ! 死ぬかと思ったあ!!

 ぶっつけ本番だったけど、上手くいって本当に良かった……。こんな殺意の高い魔法でやるの初めてだったから恐怖と不安しかなかったのだ。もう二度とやらない。

 

 

 

「これは……いや、まさかそんなはずは……」

 

 

 何かいろいろ考え込んでいるところ悪いけど………………隙ありだ。

 

 サキ直伝の歩法─瞬影身─を見せてやる。

 

 その人のもとへと影のように滑り込み、鉄格子の隙間から覗いていた手を掴みこちらに引き寄せる。

 

 

「しまっ……!!」

 

 

 油断していたのだろう。ガシャンという音とともに僕たちの距離はほとんどゼロになる。夕焼けのような瞳に僕の顔が写っていた。

 

 

 

 

「…………くくく、あーはっはっは! やるじゃないか坊や! 完全に油断していたよ。私の魔法をかき消した技といい、今の踏み込みといい……坊や何者だい?」

 

「………テオだよ。世界最強の兄さんの弟で、ただの冒険者だよ」

 

「私はホムラ。世界最強の魔法使いさ。それで? 私を捕まえてどうするんだい? まさか、これで勝ったつもりじゃないだろうねぇ?」

 

 

 そんなわけないだろう。そもそも勝つ気もない。手錠はされてるし、身体は焦げてるし、体力も魔力ももう空っぽだ。

 

 

「聞きたいことが…………あるんだ」

 

「………ここまで来たご褒美だ。言ってごらん」

 

 

 この人──ホムラが本当にゼックスやアンジュの敵ならば、それは僕らの敵だ。だから、命を捨ててでも、少しでもダメージを与えるのが正しいのかもしれない。

 

 でも……僕を殺そうとしたときの、少しだけだったけど、悲しそうな表情が頭から離れない。殺されかけといてなんだけど、僕にはこの人がそこまで悪い人とは思えなかった。

 

 

「……なんで、ルーナ教や騎士団と対立してるの?」

 

「……火のソフィアを狙う私を向こうが一方的に目の敵にしてるのさ。もともとは私が封印していたものなんだが、いつの間にか封印が解かれててね……人間には困ったもんだよ」

 

 

 まるで自分が人間じゃないかのような言い方だ。

 

 

「火のソフィア……って一体なんなのさ」

 

「ただの力の塊さ……。人間に扱えるものじゃないし、扱えてはいけないものさ。大きな力を手にしたら、普通の人間は狂うものさね」

 

 

 嘘は……言っていない気がする。そもそも、この状況で嘘をつく必要性があまりない。

 もちろん本当のことを言ってない可能性もあるけど、ひとまず信じよう。これで心置きなく次の一手が打てる。

 

 

 

 

 さて、ここからが正念場だ。

 

 

 

 

「…………僕には、超強くてカッコいい兄さんがいるんだ。ちょっと過保護なところがあって、話は最後まで聞いてくれないけど、自慢の兄さんなの。三日に一回、兄さんとの稽古があるんだけどね、僕はいつも兄さんに良いところを見せるんだっていう気持ちで臨んでるんだ。…………でも、我慢するよ」

 

「はぁ?」

 

 

 ホムラは怪訝そうな顔でこちらを見ている。

 

 

「アンジュはとても優しくて、料理も上手なんだ。週に一回作ってくれるアップルパイがとても美味しくてさ、みんなが毎週楽しみにしているんだ。………これも、我慢する」

 

「……何言ってんだい?」

 

 

 視界がボヤけてきた。血を流しすぎたのかもしれない。自分が立てているのかどうかも不安になってくる。

 

 

「ゼックスはいつもはおちゃらけてるけど、いざというときはとても頼りになって、僕に色々教えてくれるんだ。一番笑ったのはレオンと一緒にいるときかもしれない。一緒にハナマチにも行きたかったけど……我慢する」

 

「いや、だから何を…………って、んんん??」

 

 

 声も掠れてきた。限界が近い。

 

 

「サキはあんまり笑わないんだけど、たまに見せてくれる笑顔が可愛いんだ。昔はけっこう世間知らずなところもあったんだけど、今では何でも知っててさ。今度、美味しいオムライスのお店に連れて行ってくれる約束してたんだけど……これも我慢するよ」

 

「…………ちょっと待ちな。さっき聞き逃せない言葉が聞こえたんだが」

 

 

 お願いだから静かに聞いて欲しい。いつ意識を失ってもおかしくないくらい限界なんだ。

 

 

「ホムラの探し物を見つけるのに全力で協力するよ。そして、その探し物をホムラが見つけるまで、ルーナ教や騎士団の人と関わらないと約束する。そして……みんなと会うのも我慢する」

 

 

 

 なんてことはない。

 

 結局、僕に出来るのはお願いだ。

 

 

 

 

「荷物持ちだって料理だってなんだってする。だから…………」

 

 

「だから………僕を助けてください」

 

 

 

 

 そう言い終えた瞬間、僕は床に崩れ落ちた。 

 




やっと牢屋から出れる!
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