3/2
プラント フェブラリウス市 総合病院
「だーから、もう大丈夫だって!」
「信じられるか、お前はダメでも大丈夫と言うだろうが」
「しつけぇな、今度の今度は大丈夫だって」
ここはプラント、その中でも医学・生物学の研究が行なわれているフェブラリウス市。その第一コロニーの中心に、プラントの総合病院は存在している。
全体的に病気に対する免疫力の高いコーディネイターが病院にかかることは非常に少なく、少し前までは常に空き部屋が目立っていたのだが、戦争が始まってからはほとんどの部屋が埋まっているのが当たり前になってしまっていた。
平時の利用者が少なかったこと、連合との戦争に備えて軍備の増強に勤しんだ結果、負傷した兵士が傷を癒やすための病院の数が不足したというのは、後の歴史家に強く批判されることとなる。
その廊下を、微妙に声を抑えながら口論するという地味に難しいことをしながら歩く年若い男女の姿があった。
少年の名はネイアム・ウィルコックス。赤毛をそよがせながらぶっきらぼうに歩く彼は、ZAFTに所属する兵士の証である緑色の制服を着ている。
そんなネイアムに追いすがるように歩く少女の名は、リーシャ・グリマ。長い金髪をたなびかせる彼女もまたZAFTの兵士であるが、彼女はネイアムと違い、赤い制服を着ている。ZAFTに所属する兵士を養成する軍事アカデミーで総合成績20位以内に入った者に与えられる、いわばエリートの証だ。
彼らはMSパイロットとして既に実戦経験もそれなりに豊富な人物なのだが、2人とも数ヶ月前にとある戦闘で骨折を初めとする複数種の怪我を同時に負っていたため、この病院で療養していた。
そして今日、ようやく完治して退院したのだが……。
「お前はいつもそうだ、楽観が過ぎる!急に『ZAFTに入ってプラントを守りたいんだ!』とか言い出したと思いきや、既に入隊志願書を提出済みだったり!敵に囲まれた味方を助けるために単機で突入したり!入院中暇だからとスレッドに参加……は良いとしても、軍の情報を何処の誰ともわからない人間に漏洩したり!私が誤魔化しのためにどれだけ奔走したと思ってる!」
「いや、掲示板のは誤魔化せてなかったと思うんだが……」
「言い訳するな!」
ご覧の有様である。
というのも、このネイアムという男、口が軽いのである。例えばリーシャの言ったように、自国の軍隊が敵に押し返されつつあることをどこぞの掲示板で暴露したこともある。
ZAFTの広報担当が必死に厭戦ムードを払うために努力しているだろうに、この男は考え無しに行動することが多いのだ。
その度に自分が奔走することになるのだが、この男には一向に改善の傾向が見られない。
「まったく、婚約者がこれでは先が思いやられる……」
「悪かったな、こんなんで」
「本当に悪いと思っているなら態度と行動で示せ」
「へいへい」
やはり反省の念が感じられない少年の態度を見て、ため息をつくリーシャ。昔から変わらないこの男の脳天気さには実に辟易とさせられる。
この男に熟考というものを期待するだけ無駄なのかもしれない。
「もういい。それより、新しい任務の概要は頭にたたき込んでいるんだろうな?」
「新しい……ああ、あれか。なんか試作機のテストパイロットやれっていう」
「それ以外に何がある」
「あれなら大体わかったから、たぶん大丈夫だぜ?実機を見てみないと分からんこともあるけど、まあ8割方大丈夫だろ」
「それならいい」
やはり楽観的なネイアムだが、リーシャは特に何も言わなかった。
試作機のテストという大役を担うにも関わらず楽観的な態度を崩さないネイアムに対し、リーシャが何も言わない理由。それは、この男がMSを動かすということでは間違いなく優秀だということが分かっているからであった。
ネイアム・ウィルコックス。その本領は『ロボットを動かす』という点で最大に発揮されるのだ。
「うし、じゃあ港まで行くか」
「ああ。忘れ物はないな?」
「……すまん、端末忘れてきた」
「この馬鹿者!さっさと取ってこい!」
それ以外がどうにも抜けているのが、リーシャは出会った時からずっと気になっているのだが。
マイウス市 バーダー開発局 格納庫
「で、これがその試作機ですか?」
目の前に屹立する二機のMSを見上げながら、ネイアムはこの機体の開発を担当したバーダー開発局の長、アードルフに尋ねる。
「ああ、そうだ。”シグ-”をベースに開発された機体で、青い方が“シグ-・カストール”。赤い方が”シグ-・ポリデュクス”だ。それぞれ、射撃戦と格闘戦に特化させた機体となっている」
ぱっと見でどちらも通常の”シグ-”から大きく形状が変化しているようには見えないが、細やかな変化点が随所に見受けられる。
特にわかりやすいのが、背中のウイングスラスターと両腰の形状である。
ウイングスラスターは通常の機体のものよりも一回りスリムになっており、これは連合から奪取した”イージス”から得られた技術で作られた新機種であるらしく、小型化と高性能化を両立させたものであるらしい。
そして両腰、こちらはスラスター自体を取り外してウェポンラックとしたらしく、何かを接合するための機構が搭載されているのがわかる。
「装甲もPS装甲とまではいかないが、改良された新材質のものを用いているから、原型機と比べれば防御力は向上している」
「聞いてます、”ゲイツ”にも採用されるという装甲ですね?」
リーシャの言葉にうなずき、アードルフは説明を続ける。
「まあこちらは気休めのようなものだ。この機体の強みは飛躍的に向上した機動性、そして攻撃力だ」
「たしか、ビーム兵器を実用化させるのに成功したんでしたっけ?それが、あそこに架かってる剣とライフル」
「そうだ。試製指向性熱エネルギー砲、ビーム兵器の技術検証のために開発された”シグー・ディープアームズ”に搭載されたものの改良型であるロングビームライフルと、同じくレーザー重斬刀。これらは連合が開発・実用化に成功したというPS装甲を破壊出来る、現在のZAFTでは貴重な装備だ。これらの武装の攻撃力と、新型スラスターを採用したことによっておよそ15%向上した機動力。新型スラスターの設計はハインライン設計局のものだが、実際にこの機体を組み上げた私の私見だと、”イージス”のような連合の『G』兵器にも対抗出来る性能だと胸を張らせて貰うよ」
「信頼性は?」
「それもバッチリだ。”シグ-”は元々次期主力MSとして設計された機体、改良したスラスターも設計局が同じだからか相性が良くてね。99%問題は発生しないと断言しよう」
「残り1%が怖いですね」
ネイアムから飛び出た軽口にリーシャは睨みを飛ばすが、アードルフは軽く笑い飛ばす。
「はっはっは、まったく、豪胆なのか慎重なのか分からんな!だが、テストパイロットとしてはそれくらいがちょうど良い案配なのかもしれん」
「買いかぶり過ぎです、こいつはそこまで複雑な精神性を持っていません」
「ひっでぇ言い草」
リーシャの辛辣な寸評に顔を顰めるネイアム。そんな彼らに、アードルフはこう続ける。
「いやいや、そうでもないぞ?あの激戦から生きて帰ってきたということは、相応の実力があるということだ」
「……それこそ、買いかぶりです。我々は何度も敗北を喫して、オメオメと逃げ帰ってきた負け犬ですから」
沈んだ口調で話すリーシャ。それを見たネイアムは、ますます顔を顰める。
「お前、まだあの時のこと……。ありゃ仕方ねえことだっただろうが」
「仕方なくなどあるものか!私がきちんと指示出来ていれば……」
「失礼、
当人にしかわからない話を始めてしまった二人に、きっかけとなってしまったアードルフは責任を感じて仲裁しようと試みる。
しかし、現状を把握するために発したその言葉を聞き、リーシャは俯いてしまった。
「……申し訳ありませんが、本日は失礼させていただきます。実験の開始は明朝の
「う、うむ……」
「了解しました」
そう言うと、リーシャは格納庫から立ち去ってしまった。ネイアムは頭をガシガシと掻くと、それを追っていってしまう。
後に残されたのは、失言を発した愚かなちょび髭局長と、それを白い目で見つめる局員達であった。
「うう、む。若者は難しいな」
「局長」
「なんだねハルミ君」
「そんなんだから『アンポンタン』だの『ちょび髭』だのバカにされるんですよ」
「……畜生め」
3/3
プラント 近隣宙域 ”レヴィナス”
「……」
「……」
”ローラシア”MSフリゲート”レヴィナス”、その艦内の一角、自販機などが設置された休憩スペースでネイアムとリーシャは居心地の悪い空間を作り出していた。そこを通りすがろうとした兵士は、皆そそくさとどこかに去ってしまう。
結局この二人、昨日格納庫から去った後も口論を続け、仲直りせずにこの艦まへ乗り込んでしまったのだった。
「なあ、いい加減機嫌治してだな」
「……」
ツーンとそっぽを向くリーシャに、「お手上げ」と言いたげに手を挙げ、自分の搭乗する機体の資料を開くネイアム。
”シグ-・ポリデュクス”。”シグ-・カストール”と二機一組で運用することが原則であり、”カストール”の狙撃による支援を受けて本機が敵陣に切り込むのが基本戦術らしい。
実際に乗ったことはまだ無いが、射撃が下手クソな自分にはピッタリな機体だと思う。武装はレーザー重斬刀の他には新型マシンピストルとシールド、それに右腕に搭載されている『試作武装』のみだが、これくらいシンプルな方が現場の兵士からの受けはいい。
相方の”カストール”の方も、ロングビームライフルの他にはマシンピストルと、左腕部に取り付けられたナイフ以外の兵装は無い。徹底的に支援射撃に専念するための装備構成だ。
問題は、連携を前提としたこれらの機体の試験に、現在絶賛ギスギスタイム中の自分達が挑むということで……。
(まあ、なんとかなるだろ)
ネイアムは資料を閉じた。
ネイアムとリーシャの付き合いはおよそ7年ほどだが、それだけ接していれば相手の人柄などバカでも把握出来る。
彼女は個人的感情と仕事を分けて行動することが出来る人間だ。たとえその任務が喧嘩中の婚約者と共に行なうものだったとしても。
───どれだけ、自身が嫌悪する内容だったとしても。
彼女はそれをやり遂げられる、立派な人間なのだ。自分のようなアホとは違って。
思えば、昔から彼女には大分面倒を掛けた。その度に彼女に叱られ、謝罪し、それがいつもの日常になって。
知らず知らずの内にストレスをため込ませてしまっていたのかもしれない。そして昨日の一件で爆発したというわけだ。
大抵の場合2時間もすれば平然と接してくるものだったのだが……。
(今度、どっか連れてってやるかな……)
内容のほとんどを暗記・理解した資料や試験のことを頭の片隅に追いやり、ネイアムは婚約者の機嫌取りのための作戦を練り始める。
軍人にあるまじき脳天気さだが、さすがにネイアム・ウィルコックスといえど、常にここまで脳天気というわけではない。
それもそうだろう。任務の内容は試作MSの試験、”レヴィナス”には
何一つ、危険な要素など無い。マシントラブルの類いには気を配るが、強いて言うならそれくらいだ。
心配することなど無い。なんと言っても、今は。
”レヴィナス” 艦橋
「
「それではこれより、『ディオスクレス』の稼働テストを始めます。MSを出撃させてください」
試験責任者であるハルミから指示が発され、その通りに周囲は行動していく。
今回の実験は簡単に説明すると、まずは機体の機動に問題が無いかをチェックする動作テストの後に、三機の”ジン”を相手に模擬戦、という流れで進行する。
2対3で数的には試作機チームが不利だが、こちらは”ジン”の上位腫である”シグ-”に、新型のスラスターや武装が積んだカスタム機。むしろたった1機の不利くらいは跳ね返して貰わなければ困る。
ハルミがそう考えていると、ちょうど試作MSの2機がこの”レヴィナス”から発進していくところだった。
まずは赤いカラーに白いラインが特徴的な”シグ-・カストール”が発進していき、パイロットの性格を表すかのように伸び伸びと飛んでいく。
続いて青いカラーに黒いラインの”シグ-・ポリデュクス”が飛んでいくが、こちらは対照的に、教本に書いてあるような、言うなれば「型に嵌まった」飛び方をしている。
もっとも、その動きにぎこちなさは見られない。彼らは既に何度も実戦を経験し、生還してきたベテランなのだ。教本に従うか、自分の直感に従うか。自分にとってベストな戦い方を模索した結果が、あの対照的な飛び方なのだろう。
「流石、というべきなのかな」
「どういたしました、ディラン艦長」
”レヴィナス”の艦長席に座るディランは、第一世代コーディネイターの中でも特に最初期に誕生した男性であり、つい先日に孫も生まれたという老体のZAFT兵だ。
集団心理学のプロフェッショナルとして活動していた彼は、当時生まれていなかった孫が自由に生きていける社会を作り上げたいと考え、ただの政治結社だったころからZAFTに所属していたという経緯を持つ。
そんな彼だが、今は陰鬱とした雰囲気を漂わせながら、モニターに映る2機のMSを見つめている。
「ハルミ君、彼らは今何歳だったかな?」
「17歳だと聞いています」
「17歳、そう17歳だ。本来ならハイスクール、今だとカレッジに入る学生もいるんだったか?そんな青春真っ只中の少年少女が、ああやってMSの操縦に長けていく。───人殺しの道具の、だ。正義のため自由のためと言って、若者を戦争に駆り立てていると考えるとね」
「……それを言われると、私も歯がゆい気持ちになります。もし
ふん、と鼻をならすディラン。
別にハルミや技術者が嫌いだとかそういうことではないのだが、その考えはいささか現実を見れていないのではないかと思う。
「遅かれ早かれ、だよ。能力があるから、才能があるからと我らプラントの成人年齢は15歳と定められた。───それだけ人手が足りないということの証明だろうに。わずか15ほどしか生きていない子供達を『大人』としなければならん。そこでこの戦争だよ」
「ディラン艦長、あまりそのような……」
「このようなことを開戦前にのたまっていたから、今はこのようなところで艦長をやっている。今更だ」
ためいきを付くディラン。それに対し、ハルミは返す言葉を思いつけない。
彼は確かにZAFT黎明期からのメンバーだったが、開戦どころかそれ以前の独立表明にも反対する意見を持っていた。
「まだプラントは地球無しでは運営出来ない」「どうにかして交渉で譲歩を引き出すべきだ」「今は忍耐の時だ」と。
だがそれはZAFTの代表とも言える二人、パトリックとシーゲル、それに同調した者達の急進的な意見に押しつぶされた。同じ意見を持っていた一部の仲間もろともに自分は窓際まで追いやられ、いざ戦端が開いてからもプラント本土周辺の警備任務に明け暮れた。
「”ヤキンドゥーエ”、”新星”、”世界樹”、”グリマルディ”……若者達が命を散らす中、この私はぬくぬくと後方で仕事をしていたわけだ。こんな状況になるならせめて、上辺だけでも彼らに取り入って前線への配属を願うのだった」
「……あなたが艦長をやって、警備しているから。私達は安心して仕事に励めています。けして無駄な仕事などではないと思います」
「どうだかな、たとえば、これから行なわれる試験とかがそうだ。概要しか聞いていない身で何を言う、と思うだろうが……
ディランの言葉を聞き、ハルミはこれ以上に無い、というほどに顔を顰める。
無理も無い。現在彼女が試験の責任者をしているあの2機、あれらの機体は現在ZAFT参謀本部が実装を検討している『ある制度』の試行のために開発された機体でもあるのだが、これが荒唐無稽というに他ない代物であったのだ。
この計画の試験を命令された時のアードルフの顔は、怒りと疑問が多分に入り乱れたものだったとか。
後々『これは陰謀だ、他局が我らを妬んでこのようなものを押しつけてきたのだ!バーカ!』という叫びを挙げていたらしいが、正直それが真実だとしても、”インフェストゥスⅡ”と”ザウート・ヘッジホッグ”の採用が決まったことを他局メンバーに自慢してうっとうしがられていた訳だから仕方ないと思う。
「『ディオスクレス・プログラム』か……彼らにセントエルモの火になれとでもいうのかね?宗教の廃れたこの時代に神頼みとはな」
「少なくとも、ZAFTが嵐の真っ只中を漂う船であることは認識しています」
「駆動システムは良好、スラスターにも異常は見られず、か。……なあ、リーシャ?俺が悪かった、謝るからそろそろ」
<……ふんっ>
まだお姫様の機嫌は直ってはくれないようだ。本日何度目かのため息をつくが、現状が変化しないのは既に実証済みだ。
現在彼らはそれぞれの愛機のスラスターを吹かし、宇宙空間を飛び回っていた。
機体の調子は良好、むしろ旧式機となった”シグ-”の性能をここまで引き上げた技術者の皆々様には頭が上がらないものだ。『G』兵器に張り合えるという言に不足は無い……と信じたい。
なにせその『G』とやらが戦場に出てくる前に、自分達は病院にたたき込まれたのだから。
どれだけ強いのかは知らないが、あの時遭遇した『あれらの機体』が自分達に与えた衝撃に比べれば大したこともないはずだ。
斧を振り上げながら迫ってくる、赤の機体。
いきなり基地まで突っ込んできて、嵐のように暴れ回っていった白い機体。
そして自分達が入院する直接の原因となった、ネズミのようなマークを付けた機体。
その時のことを思い出して身震いしていると、リーシャが話しかけてくる。
<……ネイアム>
「なんだよ」
<私は、ちゃんと飛べているか?>
「はぁ?」
モニターの中の”シグ-・カストール”はアカデミーの手本にしたいと思うほどに綺麗な軌跡を描いており、何も問題など無いように見える。
「お前何言ってんだ、全然問題無いだろうが。入院のブランクでも心配してんのか?」
<そうではない、そうでは……いや、そうなのかもしれないな>
「歯切れが悪いな、なんだよ?」
<不安なんだ。これで良いのか?大丈夫か?何か見落としはないか?思考が止まらない。こんなの、初めてなのよ>
それを聞いてネイアムは舌打ちをする。
要するにこれはあれだ、PTSDとかいう奴だ。心理的外傷、トラウマともいうあれ。
リーシャは現在、地球での様々な敗走の経験が頭にこびりついてしまっているのだ。あの赤い機体に部下を斬殺されたことに端を発する一連の不幸は、責任感の強い彼女の心に深い傷を刻み込んでいってくれたらしい。
(まったく、そういうところは昔から変わらねえな)
いったん機動を中止して、”ポリデュクス”の方に近づいていく。通信は繋がっているが、こういうのは近づいて行なった方が効果的なのだ。
「大丈夫だ、落ち着け。お前は何もミスなんかしてねえ。いつも通り、綺麗な操縦だよ」
<……でも>
「それでも不安だってんなら俺を、俺の飛び方を見てろ。自慢じゃねえが俺の飛び方は、アカデミーの教官お墨付きの『危なっかしい飛び方』だからな!それに比べりゃお前の方が何万倍もマシだ」
<……ふふっ、それだと今度は別のことで思考が埋められてしまうな>
「だろ?不安にしかしてくれない考え事するくらいなら、そんなもん捨てちまえ。俺はいつもそうしてる」
<だろうな、お前が何か深いことを考えているところなど想像出来ない>
「いつもってこたぁ無いだろ?」
なんとなく、モニターの向こうに映る彼女の表情が明るくなったように見える。自信は無かったが、どうやら我流の励ましには効果があったようだ。
この際だ、昨日から計画していた『仲直り大作戦』の第一段階、『良いレストランで食事』の誘いも出してしまおう。
「なあリーシャ、この実験が終わったら……」
<───待て。これは……>
急に押し黙ってしまったリーシャの様子を見て、首を傾げるネイアム。
<あれは……”ローラシア”級か?だがこの時間はこの宙域を航行している警備部隊などいたか……?>
「あー、そりゃあれだろ。この機体の実験が急だったもんだから、情報が───」
そこまで言ったところで、ネイアムはピリッとした何かを感じた。
この感覚は忘れようもない。あの時───”月下の狂犬”と出くわした時にも感じた、あの感覚。
周りをよーく見回してみると、自分達がいつの間にかプラントから少しばかり離れた宙域まで来ていたことに気付く。
”レヴィナス”の姿はきちんと確認出来るが、プラントは遠目にわずかに見える程度。
それはつまり、自分達に何かあってもプラントからの助けが来るのが遅れるということ。
「おいリーシャ、いったん”レヴィナス”まで」
<なっ、Nジャマ-濃度急上昇!?これではまるで戦闘状態じゃないか!>
どうやら、一手遅かったようだ。
既に謎の”ローラシア”級のハッチは開かれ、MSが出撃しようとしているようだ。
<こちら”レヴィナス”所属の”シグ-・カストール”。貴艦の所属と航行目的を───>
「バカか、今更そんなの聞くわけないだろ!」
右腰に懸架していたマシンピストルを手に取り、中の弾倉を模擬戦用のペイント弾から実弾へと切り替える”ポリデュクス”。
試験だから実弾なんか要らないだろとか考えていた数分前の自分を殴りたい!
<な、何をしているネイアム!>
「まだわかんねえのかリーシャ!こいつらは、敵だ!」
<敵!?だって休戦協定は>
「俺が知るかよ!わかってんのは、あいつらがやる気だってことだ!」
<そんな!?>
軽くパニック状態になっているリーシャを尻目に、敵艦のハッチを注視するネイアム。
そこから、3機のMSが射出されるのが見える。ついでに、その敵の特徴的な頭部の形状も。
頭部に輝くツインアイ、それは
<”テスター”!?>
「だから言ったろ!俺達ZAFTに、あの機体を使う奴なんていねえ!」
そう言うや否や、突如現れた”テスター”の小隊に向かっていくネイアム。
「俺がせっかく練り上げた計画をジャマしてくれたお前らはつまり、俺にぶっ飛ばされても仕方ねえってことだ!───覚悟は出来てんだろうなぁ!?」
ネイアムは”ポリデュクス”にマシンピストルを構えさせ、トリガーを引く。
それが、休戦状態で発生したイレギュラーな戦闘、その開幕を告げる一射となった。
へい皆、モンエナ呑んでる?(カフェイン中毒)
ということで、倉庫にまとめて最初の番外編はネイアムとリーシャ、二人のカップルのお話となりました!
大分前から考えてた話なのに、実際に書くのに大分気を張ったぞ……。
オリジナル機体の紹介は次回行なうとして、簡単にオリキャラの紹介をば。
ネイアム・ウィルコックス(Bランク)
指揮 3 魅力 10
射撃 4 格闘 12
耐久 10 反応 12
SEED 2
得意分野 ・格闘 ・反応
○シグ-・ポリデュクスのテストパイロットを務める少年。
ロボット操縦の技術に秀で、学生時代にはロボットの操縦能力を競う大会で賞を取ったほどの腕前。
唐突に婚約者のリーシャにZAFTへ入隊することを告げ、彼女の入隊するきっかけとなった。
MSの操縦技術は確かに人並みにあるのだが、射撃の腕前が上達せず、また本人のズボラな性格もあって総合成績は平凡。
ただしMSの操縦技術は前述した通り優秀なので、周りからは「何故当てられない?」と疑問を抱かれている。
外見モデルは、『シュバルツェスマーケン』のテオドール。
リーシャ・グリマ(ランクB)
指揮 10 魅力 12
射撃 14 格闘 10
耐久 6 反応 13
SEED 1
得意分野 ・魅力 ・射撃
○シグ-・カストールのテストパイロットを務める少女。
生真面目な性格で、規律・規範を守ることを尊ぶ。しかし頭が固いところがあり、融通が利かないことが多々ある。委員長タイプ。
唐突にネイアムからZAFT入隊を知らされ、「このアホが軍隊などに入ったらやばい」と不安になり自身も入隊を決める。能力と人格の両方を評価され、赤服を授けられる程の成績をたたき出す。
無事にネイアムを部下にする、首輪を付けておくことに成功して安堵し、後は無事に戦争を切り抜けるだけだと一安心していたところでマウス隊地上組に連続エンカウントするという空前絶後の不幸に見舞われる。
ネイアムも無事だったとはいえ、部下を目の前で失ったことや数々の敗北がトラウマとなっている。
外見モデルは同じくシュバルツェスマーケンのアイリスディーナ。
他にも色々と設定はありますが、中編と後編で明かす予定。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。