つまり完全ギャグ回なので無理という人はブラウザバック推奨。
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『セフィロト』 ”第08機械化試験部隊”オフィス
「気分はエクスタシィィィィィィィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
その奇声はオフィス内に留まらず、オフィス周辺の区画全体に響き渡るほどの音量を伴っていた。
突如として基地の中に奇声が響き渡る、そのような『一見』異常事態に、しかし近くの兵士は「またか」と言わんばかりの呆れを伴った表情を表すばかりで、何が起きたのかを確かめようとする者は誰一人としていない。
それもそのはず、その声が響いてきたのは“第08機械化試験部隊”、もとい”マウス隊”のオフィスが存在する方向。
いざ戦いとなれば戦果をどんどん挙げていくトップガン部隊であるのは確かだが、それと同じくらいに『変人の巣窟』としての称号も確たるものとしてしまった部隊。そんな場所から何らかの奇声が聞こえてこないということの方が珍しく、基地に勤務する大半の兵士は聞き流す。
当たり前のこと、当たり前のルーチンワーク。そして今日も、当たり前の状況確認を行なう義務を持ってしまった男、ユージ・ムラマツは眉間を揉みながら、奇声を挙げた人物───アリア・トラストに問いかける。
「……アリア、今度は何を掘り出した」
「ナイト的には謙虚に興味津々だが今日のそれは超必なフィーリング。いったい何があったよ?」
常日頃から新しい機体・装備の開発のために設計や資料集めを行なっている彼女が奇声を挙げて喜ぶとなれば、よほど自信の持てるアイデアが生まれたか、あるいは資料を見つけた時に他ならない。
しかし、常日頃から彼女の同僚であり友として接している変態4人組は、そうだとしても異常に感情を噴出させるアリアの姿に、疑問を抱いたようだった。
「これをご覧になれば、間違い無く分かる人はこうなるはずだと信じたい今日このごろ!とにもかくにも、
そういって彼女が周りに集まってきた同僚達に見せたのは、どうにも何かの設計図のようだった。
細かいことはともかく、ぱっと見で判別出来たのは、この設計図に記されたものは3つのモジュールを合体させた多機能ツールであるということ。
そして、ユージには
それは、本来この時点で確認するはずがない道具だったからだ。
「溶接用トーチ、ビルドナイフ、ビルドカッターの3つを合体させた作業用モジュールか?しかし、それにしてはなんか、こう……」
「ああ、なんかがっつり戦闘用に見える、みたいな……」
(なんで、やねん……)
そこに映っているのは、紛れもなく。
(なんで『カレトヴルッフ』の設計図が映ってるんだよ!?)
『カレトヴルッフ』。『ASTRAY』シリーズにて登場した作業用モジュールであるこれは、『ある男』の手で生み出された。
複数の機能を1つに集中させた、MS版十徳ナイフと言い換えることも出来る代物(開発者も後々は10の機能を付与させるつもりでいる)だが、大きな問題……たぶん、問題があった。
このモジュール……普通に戦闘に転用可能なのである!
まあ名称が
それどころかコロイド操作能力が付与された結果、ビームサーベルと斬り合った場合相手方の粒子を拡散させることで一方的に打ち勝つことも可能と、もはや宇宙の真理に触れてしまった猫のような表情を浮かべることしか出来ない。
ダメ押しに、溶接用トーチはリミッターを解除すればビームライフルとして用いることも出来る。
不可解なのは、本来Destiny時代に生まれる筈だったこの装備の設計図が何故ここにあるかなのだが……。
「……アリア、これは、誰から送られてきたものかな?」
「おっ、隊長は察しがいいですねぇ!実はこれ……同志ロウが送ってくれたものなんですよ!」
や っ ぱ り か !
いや、むしろ彼以外にこの装備を生み出せる者など、居るはずも無い。
自分のように、世界の外側からこの装備についての知識を得た転生者のような存在がいれば別だが……。
「というか、同志?なんだかやけに仲が良くなっていないか?」
「実は私だけでなく、アキラにブロントさん、ウィルソンも仲良しです」
「ああ!ロウは軍隊としてのあり方に囚われてしまった俺達とは別の視点から向き合うことが出来る、良い奴だからな!」
「ふふ、野性味溢れるアイデアの数々はジャンク屋という立場故でしょうか」
「情熱をぶつけ合ってあつくスパーキン!した俺達は名刺交換して時々連絡を取るようになったオンリーシング。そしてなにより……」
『カッチョイイ物好きに、悪い奴はいない!』
「ちくしょう、やっぱりあの時こいつら連れていくんじゃなかった!」
変態に変態が合わさって化学反応が起きている。このままだと本当にゲッ○ーロボなりマジ○ガーなり作り始めてもおかしくはない。
緊急措置として精神を異次元に飛ばしたユージを尻目に、マヤは質問を続ける。
「誰が送ってきたかは分かったけど、なんでロウ・ギュールがこれを送ってきたのか分かる?」
「ああ、それはですね……」
アリアは設計図に添付されていたメールの内容を説明し始める。
それによると、今回の出来事は100%が『ロウの気まぐれ』によるものだということが分かった。
休戦協定が締結された後、ロウ達はジャンク屋として地球の周りを漂うデブリやジャンクの回収業をこなしたり、『クジラ石』という
しかし、やがて1つの問題にぶち当たったらしい。ずばり───資金不足である。
それもそのはず、宇宙においてジャンクという物は戦闘が発生しなければ発生しない。回収すれば回収するほど
勿論、それが良いことなのだということはロウも理解している。自分達の仕事が少ないということは、戦争の被害が少ないということなのだから。自分達の金のために戦いが起きて欲しいなどとは間違っても思うことはない。
とはいえ、金が無いという現実は変わらない。
そこで、ロウは思いついた。
『自分達で何か作って、それを売って当面の資金源にしよう』と。
ただジャンクを売るよりも、加工して即使用可能なものにした方が売れやすい。それに加えて、ロウはある考えを持っていた。
ジャンク屋は戦争があるからこそ成り立つ仕事であり、戦争が終わればやがては成り立たなくなっていく商売。
ジャンクの回収以外にも仕事はあるから、完全になくなるわけではない。一握りのジャンク屋は残るだろうが、そこに自分達が加われる保証も無い。
だからこそ、ジャンク屋業が盛んな内に次の働き口を見つけておく必要があった。
『カレトヴルッフ』を作ったのはその一巻であり、なんでも戦後、工業品生産の会社を立ち上げることも考えているらしい。
そのバイタリティは流石と言うべきだが、ここでロウは欲を出した。
「どうせなら、かっこいいものを作ってみてぇな!」
そして生まれたのが、非常に機能的でありながらかっこよく、そのためにバリバリ戦闘用に見える(というか使える)変態モジュールであった。
これにはユージも苦笑い。
ロウが数年フライングしてこれを設計したのは戦争が休戦状態に落ち着いたためであり、そこには連合がMSを早期に量産・投入したことが大いに関係している。
つまり、これもユージがC.Eに介入した結果である。
何がどうなるかわからんなぁ!
「で、ここからが本題なんですけど。設計完了して、さあ実機を作ってみるかと思ったところで、隊長の忠告が頭によぎったらしいんですよね」
「俺の?」
「はい。ジャンク屋に対して良い感情を持ってない人がいる中でこんなものを売り出したら、ヤバいことになるんじゃないかと」
───だけど、せっかく設計したのに日の目を見せてやれないというのもそれはそれで悔しい!
そう思ったロウは、最近出来た軍属の友人にこれを見せて、何かしらの意見を求めて設計図を送ったとのことだ。
そこに「すごいもん設計出来たやで」と友人に自慢したい気持ちは無いか?という疑いについては……想像に任せるしかない。
問題はそこではない。
「これ、作ってみましょうよ!幸い、予算はなんとかなる範囲だと思いますしおすし?」
こう言い出すバカが現れることが、容易に想像出来ることである。
「……トラスト少尉、本気か?」
「いや、だってこれすごいんですよ。色々な機能が無理なく、かつスマートにまとまっている上に、ジャンクから製造可能!つまり安価!技術者として、惹かれるものがありますねぇ!」
「いや、しかし部外者が設計したものだし……」
「同志ロウには許可を取ります!彼ならきっと分かってくれます!」
「勝手に武器を作るのはなぁ」
「武器ならともかく、これは作業用モジュールですから!」
「どこからどう見ても剣だろうが!」
「チェーンソーだって元は森林伐採の道具です!」
「そもそもチェーンソーを武器扱いするな!あれは最初から最後まで農林業の道具だ!」
「……?」
「心底何言ってるか分からないって顔すんなゾンビ映画の見過ぎだ馬鹿者ぉ!」
あーもー滅茶苦茶だよ。
ユージが頭を抱えていると、技術班のまとめ役であるマヤがその場を収めようとする。
「はいはい、両方とも落ち着いて。アリア、テンションが上がってるのは分かるけど、そう簡単に決められるものじゃないわ」
「むむっ。ではマヤさんは作ってみたくないんですか?」
「そういう問題じゃ……」
「作ってみたくないですか?」
「いや、その……」
しどろもどろになるマヤ。
彼女とて1人の技術者。興味が湧かないとは言えない。
その様子を見て、変態4人組は離れた場所で円陣を組んでコソコソと話し出す。
「自分でも作ってみたいクセに、取り繕っちゃって……」
「しょうがありませんよ、彼女も所詮同じ穴の狢ではありますが、出る杭打たれてこの部隊まで飛ばされてきた口ですから」
「残念だなー、落胆しちゃうなー(チラッチラッ)」
「貴方たちねぇ……」
呆れながらもマヤは冷静に事態の沈静化を図るが、その程度で盛り上がった変態が止まる訳もない。
「たしかに、作ってみたい気持ちがあるのは事実よ。だけど、そこはあくまで個人的感情に留めておくべきだわ。そもそも開発するかどうかは“マウス隊”じゃなくて……」
「ちっ、
瞬間、部屋の中が静まりかえる。そうなった原因は、表情の死んだマヤからたしかに発されている冷たい『何か』にあるということは、アキラ・サオトメ以外の誰もが理解していた。
ここに至るまでの人生を男所帯で過ごしてきたアキラは、無意識の内に
さっと円陣を解いてアキラと距離を取る他3人。
「おっ、おい?」
「今のはナイト的には無い寄りの無い。ワンコンどころかワンパンで十分」
「私ならともかく、マヤさんに言うのは流石に蛮勇だと言わざるを得ませんね……」
「アキラ、来世でも再び友となれることを願っています……」
「待て、おい、何かが変だ!ちょっと待───」
「アキラ」
「……はいっ」
「付いてきなさい」
「えっと、その、少し時間を」
「付いてきなさい」
「はい……」
スタスタと部屋の外に出て行くマヤと、とぼとぼとそれに付いていくアキラ。
3人の変態はせめて友の最後を看取ろうと、後を付けていった。
5人が居なくなり、再び静まりかえる室内。
『グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!(CV:神谷明)』
『誰の!何処が!!身体的コンプレックスだごらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『ま、まさかあれは!』
『知っているのですか、ブロント!』
『さんをつけろよデコスケ野RO!うむ、あれは間違い無く
『ああ!アキラがバスケボールのように天井と床を行ったり来たりです!?』
『しかもあれは、幻の拳を使う者の中でも更に限られた達人しか使えないという
『そうか、無重力下でならば人体は何処かしらに衝突すれば跳ね返る!跳ね返ってきたところに拳をたたき込めば、再び人体はバウンドし……正に無限ループ!』
『そのような方法でかの秘技を再現するとは……このナイトをして驚愕を隠せない!』
『ていうか、なんでブロントさんはそんな流派を知ってるんですかねぇ?』
『しかも説明する時は別に言葉も変になってないです』
『そんな、ことより、助けて、くれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェぇェ!!!』
「……どうするんです、これ?」
「あはは(白目)」
「また隊長殿が白目を剥いておられるぞ!?」
話はここで終わらない。
翌日、なんだかんだマヤも「一考の余地があるのは認める」と賛同したため、ユージは上司であるハルバートンの元に『カレトヴルッフ』の開発計画を持ち込んでいた。
流石に民間人の提案したものなんて受け入れられないだろう……そういったユージの目論見は、見事に裏切られることになった。
なんとハルバートンは計画書を見てすぐに開発計画を認可してしまったのである。
「い、いいのですか少将!?民間人の設計したものですよ!?」
もっと言ってやってください、大佐。
ユージは内心でホフマンを応援するが、ハルバートンはホフマンの言葉を切って捨てる。
「良いではないか、何を躊躇う必要がある?多機能かつ安価、それでいて”マウス隊”技術者の太鼓判付きの装備だ。量産するかどうかはともかく、試作してみる価値はあるだろう」
「し、しかし……」
「武器として扱えると言っても、そもそも我が軍ではMS用の装備が不足するということは極めて少ない。ならばきちんと工具として用いればいいだけの話だ」
ユージは事ここに至り、ハルバートンの現場主義を完全に失念していた。
『原作』でも他国企業とのMS開発という、国際問題になってもおかしくないことをやる男が、民間人の設計したものであるとかどう見ても武器にしか見えないとかを問題視するわけがないのだ。
使える物は使う。それだけなのだから。
「とにかく、予算は下ろしておく。”第08機械化試験部隊”はロウ・ギュール氏と交渉、認可された場合は直ちに『カレトヴルッフ』を開発してその試用結果を報告するように」
「……了解、しました」
このことを伝えられた技術班は早々にロウとの交渉を開始する。
最初は軍で戦闘に使用されるのではないかと危惧していたロウだったが、大西洋連邦を筆頭とする地球連合軍では『カレトヴルッフ』を戦闘に引っ張り出すことは無いこと、また、連合軍にはロウを権利主として『カレトヴルッフ』を生産、そのライセンス料をロウに支払う準備が出来ていることを伝えられた結果。
<ら、ライセンス料?それって、どんくらいもらえるんだ?>
「そうですね……概算ですが、おおよそこの程度は支払うことになると思います」
<乗った!>($▽$)
お前、そういうところやぞ。
ユージの内心でのぼやきと裏腹に、事態は進行していく。
”マウス隊”で即行で作られた『カレトヴルッフ』1号はその機能を問題無く発揮、『見た目は仰々しいが便利』との評価を確たるものとする。
加えて連合軍上層部が大量生産されたMSの戦後の用途に悩んでいたことも、『カレトヴルッフ』には追い風となった。
平和になれば金食い虫となるMSも、『カレトヴルッフ』があれば重機に早変わりする。リミッターを解除すればすぐに武器として転用出来る点も評価されたことは、言わぬが花というやつだろう。
意外にも拡張性のある道具だったことも決め手となり、連合軍では『カレトヴルッフ』の量産を決定。
気まぐれから設計図を公開したロウはこれで1ジャンク屋としては非常に多い臨時収入と定期的に入ってくる特許料を確保、様々な業界から注目を浴びる有名人となった。
ロウはウハウハ、変態共もウハウハ、偉い人達もウハウハ。
『カレトヴルッフ』は多くの人を笑顔にするに至ったのだった。
「どうして、こうなった……」
「まあ、”マウス隊”らしいと言えばらしいではないですか」
「ジョン……」
「この部隊が発足してから、少なくとも退屈することは無くなりました。きっと、隊の皆がこの隊に来たことを誇りに思っているはずです。そして、それを為したのは貴方なんです。もっと誇らしげにしていいと思いますよ」
「……いや感動的にまとめようとしてるけど、どう足掻いてもこれコメディだからな?」
「さて、私も仕事に戻らなければ」
「ジョン?おいジョン!?ぶん投げたままどこかにいくんじゃない、聞いてるのか!」
この始末☆
彼らは、この時間が続くものだと。
皆で生き残って、笑顔で終戦を迎えるものだという未来予想図を。
───何の根拠もなく、信じていた。
『禍戦』の始まる、ほんの一週間ほど前。
彼らの穏やかな時間の一節。
時は、戻らない。
マヤの制裁の元ネタが分からないという人は、「AC北斗の拳」で検索してみてください。
私の腹筋は崩壊しました。
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