パトリックの野望 外伝・設定倉庫   作:UMA大佐

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お待たせしました。
オリキャラのヘク・ドゥリンダが主人公の番外編の始まりです。


番外編13「プライベート・アスハ」前編

この物語は、どうしようもなく愚かな話だ。

たった1人の少女を救うために、6人の男達が命を賭けるというだけの話。ほら、どうしようもなくバカバカしくなる(ありきたりな英雄譚)だろう?

だが、笑い話では済まないことがあった。───その少女の如何によって、本当に世界の情勢が変わってしまう、ということだ。

そうして、彼らは砂漠に降り立った。

ある者は勇敢に少女を救い出す様を思い描きながら。

ある者はこの危険な旅が無事に終わることをひたすらに祈りながら。

ある者は使命を果たした時にもたらされる栄光を想像してほくそ笑みながら。

しかし、その中の誰1人として望みを叶えられることはなかったのである。

この無情な物語に名を付けるなら、こうするのが正解なのだろう。

プライベート・アスハ(君はお姫様のために命を賭けられるか?)』、と。

 

 

 

 

 

CE.71 3/16

エジプト・アラブ共和国 カイロ国際空港

 

「お客様、パスポートの提示をお願いいたします」

 

「あー、はいはいパスポートね。少しお待ちをっと」

 

カイロ国際空港はその日も盛況であった。

この空港はアフリカ大陸では2番目に利用者の多い空港であり、老若男女、雑多な人間が利用者として訪れる。

故に、その男達がその空港に降り立ったことにも違和感を抱く者はいなかった。

入国管理局の男は、ワイシャツに黒いズボンと目立たない格好の男からパスポートを受け取る。

 

「はい、確認いたします……大洋州(オセアニア)から? わざわざあんな遠いところからよく来たねぇ」

 

「ははは、これも仕事でね。上司に言われりゃ地球の裏側だろうと月だろうと行かなけりゃならんのですよ」

 

「それは大変ですね。……よし、問題は無さそうです。こんなご時世ですが、仕事が上手くいくといいですな」

 

「ん、ご苦労さん。そうなってくれるとおじさんも助かるねぇ」

 

「良い旅を。……次のお客様!」

 

入国管理局の男が自分から目を離すのを確認した男は、スーツケースの取っ手を掴んで空港の入り口に向かう。

先ほどの男は知るまい。そのスーツケースがとある企業(モルゲンレーテ)が極秘に開発した『金属探知機を誤認させる特殊な機構』が組み込まれた代物であるということを。

加えて、その中には拳銃やその弾薬等、危険物が積み込まれていることなど。

 

「……ほんと、助かるんだけどねぇ」

 

オーブから来た男は、名前欄に『ヘク・ドゥリンダ』と記されたパスポートを手で弄びつつ、共にこの地に降り立った5人の部下達を待った。

彼らの目的はただ1つ。───アフリカ共同体に意気揚々と乗り込んでいってしまった、1人のお転婆娘とその護衛をオーブに連れ戻すこと。

どうしてこうなってしまったのか。ヘクは3日前の出来事を回想し始めた。

 

 

 

 

 

3/11

オーブ連合首長国 ヤラファス島 アスハ邸

 

ヘクは深呼吸し、ある部屋のドアをノックしようとしていた。

その部屋の中にいる人物のことを思えば、緊張も仕方のないことである。その人物は実質的にオーブという国家のトップに立つ男であり、ヘクにとっては若い頃に多大に世話になった恩人でもあるのだから。

 

「……ヘク・オシ・サトミです」

 

「うむ、入ってくれ」

 

失礼します、と一声掛けてから入室する。

果たして部屋の中には、ウズミ・ナラ・アスハが、執務机に組んだ両手を着いてヘクのことを待っていた。

久しぶりに目にするその姿は、ヘクの記憶の中にあるモノよりも若干やつれて見えた。

 

「久しぶりだな、ヘク」

 

「はっ、ご無沙汰しております」

 

ウズミに向かって敬礼するヘク。ウズミはそれを手で制した。

 

「今は、よい。オーブ航空防衛軍第三機動部隊のヘク・オシ・サトミ一尉ではなく、ただのヘク・オシ・サトミに頼みがあって呼んだのだ」

 

「と、言いますと……あのバカ関連ですか?」

 

「そう、あのバカ者についてだ」

 

ヘクが肩の力を抜いて深く溜息を吐くと同時に、シンクロするようにウズミも溜息を吐いた。

ヘクは今からウズミが話す内容が、極めて厄介事であることを理解したために。そしてウズミは、今から厄介事をヘクに押しつけなければならないことを憂いたために。

ヘクはかつて、()()()()()から一時期アスハ家に世話になったことがあった。それはヘクがサトミという家に引き取られてその名を得るまでの数年の話だが、その中でヘクは1人の少女の世話をしていたことがある。

少女の名は、カガリ・ユラ・アスハ。ウズミ・ナラ・アスハの一人娘であり、ヘク自身もプライベートでは妹分として可愛がっているその少女が、現在2人の頭を悩ませている元凶であった。

 

「『ヘリオポリス』に行くって言い出したかと思えばZAFTの襲撃に遭い、連合軍の船の手助けもあって無事に帰国。……したかと思いきや空軍の一佐を護衛に何処かへ。今度は何をやらかしてるんです?」

 

「うむ、とりあえずこれを見て欲しい」

 

「これは?」

 

「極秘裏にキサカ(護衛)が送ってきてくれた写真だ」

 

ウズミから差し出されたその写真を見て、ヘクは目を疑うことになった。

その写真には屈強な男達に囲まれたカガリの後ろ姿、そして、ライトで照らされた複数のMSの姿が映っていた。

 

「ウズミ様……これはいったい、どういうことです?」

 

「それを説明するには、現在のアフリカ共同体について説明する必要がある」

 

「聞かせてください」

 

震える声で説明を要求するヘク。重々しい所作でウズミはうなずき、話し始めた。

 

「現在のアフリカ共同体は、親プラント国としての立場を表明している。だが、結局のところあの国は1つの統一した理念・方針があるわけでもない、弱小国家の寄り集まりに過ぎない」

 

紀元がC.Eに移行してなお発展途上国が多いアフリカ大陸、加えて大西洋連邦やユーラシア連邦、東アジア共和国といったかつての大国が合体した勢力が睨みを効かせている中で、それは力を持たない国々がその国体を維持するための措置だった。

しかしそれこそが、今になってアフリカ共同体を悩ませている。

 

「当然、ZAFTに対する姿勢だって統一しているわけではない。従う者もいれば、反抗する者もいる」

 

「で、カガリの奴は反抗する者達と行動を共にしている、と?」

 

「察しが良くて助かる」

 

ヘクは思わず顔を手で覆い、上を仰いだ。

なるほど、裏では連合と関係を築いてはいるものの中立国としての立場を強く表明しているオーブ首長国連邦、その政治を一手にになってきたアスハ家の一人娘が、片方の勢力に対するレジスタンスに混じっている。

───誰が聞いても、「ヤバい」以上の感想は出てこないだろう。

 

「ここからはお前も知らないかもしれんが、そういったレジスタンス達に対して『支援』を行なっている団体が存在する、とのことだ」

 

「きな臭くなってきましたね。……このMS、おそらく”テスター”タイプでしょうが、それもその『支援』だと?」

 

「そうらしい。……十中八九、連合軍の工作だ」

 

なるほど、とヘクは得心した。

つまり、敵の懐で暴れている連中がいるのだから都合良く利用してやろうということだ。

ヘクの聞いた話によれば“テスター”はあくまで戦時特別量産機、つまり主力ではなく場繋ぎのようなものであり、本命は別にあるらしい。

現在の休戦期間中に本命の数を揃えて、役目を終えた旧式のMSはレジスタンス達に渡して、精々暴れて攪乱にでもなればいい。そういう考えなのだろう。

ヘク個人としては、その戦略に文句を言うつもりは無かった。

たとえ旧式だろうとMSはMS、十分に脅威となる。旧式のMSも有効活用出来て万々歳だ。

問題は、他国のその目論見にまんまと乗っかる前首長の娘が居るということである。

 

「キサカが手綱を握ってくれるだろうと甘く見ていたが、流石にこれは限界だ。

ヘク、お前に頼みたいのはただ1つ。───連れ戻せ。それも連合・ZAFT両軍に悟られることなく、だ」

 

「……一応聞きますが、それは俺が『サトミ』だからですか? それともあいつ個人との関係から?」

 

「両方だ」

 

「……拒否権は?」

 

「勿論あるが、その場合は他の者に頼むこととなる」

 

ヘクは頭をガシガシと掻いた。

ただでさえあの頑固な少女が、ヘクではない面識の無い人物に「帰れ」と言われて大人しく話を聞くだろうか?

いや、ない。100%無い。

そして力尽くで連れ戻そうにも、貴重な資金源をレジスタンスが手放すとは思えない。衝突が起きるだろう。

結論、カガリを説得して自分から帰ってくるように決断させるのが一番穏便な解決法で、それをこなせるのはヘクだけ、ということだった。

 

「支援はしていただけるのですね?」

 

「勿論だ。お前の部下に付ける人間と武器弾薬、そして……」

 

ウズミは陰に隠していたスーツケースを机の上に置き、それを開封する。

中には、地球圏の共通通貨としてもっとも用いられているED(アースダラー)*1が束となって詰まっていた。

 

「10万、用意してある。必要に応じて使ってくれ」

 

「公費で?」

 

「まさか。バカ娘1人連れ戻すのに公費など使えんよ。1枚残らずポケットマネーだ」

 

そのバカ娘を連れ戻すために10万をポンと出せるのは流石だよ。

内心で再び溜息を吐きながら札束の詰まったケースを受け取るヘク。どうやら、やらなければいけないようだった。

 

「かしこまりました。不肖ヘク・オシ・サトミ、ご令嬢の救出任務に出立いたします!」

 

「頼む……」

 

実質的なオーブのトップとして、そして1人の少女の父として。

ヘクには、自分に頭を下げるその姿がどうしようもなくくたびれて見えた。昔、初めて出会った頃に見た毅然とした力強いものとは異なる、疲れ切った姿だった。

この姿を裏切ることを考えられない自分(ヘク)は、ひょっとしてとてつもなく損な性格をしているのではないだろうか。

急遽決定した『バカ娘連れ戻し大作戦』の段取りを頭の中で練りながら、ヘクはそう思うのだった。

 

「ま、とりあえず見つけたら引っぱたいてやりますか」

 

心配する親を知らずに奔放としているバカ娘(カガリ)に、どのような灸を据えるかも考えなければならなかった。

 

 

 

 

 

3/14

オーブ首長国連邦 ヤラファス島 サトミ邸

 

「分かっているだろうな、ヘクよ」

 

「勿論ですよ、養父上(ちちうえ)。既に段取りは組み立て済み、必要な道具の手配に部下との顔合わせも十全です」

 

男の言いたいことは分かっている。分かりすぎて耳に()()が出来てしまうほどだ、とヘクは笑った。

華やかさは控えめだが、見る者に安心感と一定の感心を感じさせる、一言で表すなら『詫び寂び』を体現した日本庭園。

それを構成する池の縁に、ヘクと彼の養父であるノブナリ・モノ・サトミは立っていた。

訳あって血の繋がっていない親子は、明日から息子が赴く任務について最後の話し合いに臨んでいたのだった。

 

「違う。カガリ様の件(翌日からの任務)についてではない」

 

「……ああ、()()()ですか」

 

池に放してある金魚に餌をやりながら、ヘクはノブナリが何を言いたいのかを察した。

とはいえ、そっちもそっちで既に何度も聞いたことではあるのだが。

 

「サトミ家は、『アスハ』をお守りするために生まれた」

 

オーブという国家は元々、『再構築戦争』の折に2つに分裂した日本国民の内1つの派閥が太平洋のソロモン諸島に移住することで出来上がった国家だった。

たとえ憲法9条、すなわち『戦争行為の否定』という信条を破ることになり、中国と盟を結んででも国体を守る事を選んだ派閥は後に東アジア共和国を構成する一部となった。

それに対して後にオーブを建国することになる派閥は、元々の国土を離れてまで選んだ『平和な国』としての有り様を維持するため、多大な労力を要求されることとなった。

ソロモン諸島の住民と元日本国民との軋轢、国家を運営するための資本源の確保、政治体制の確立etc。オーブがオーブとして現在の有り様を保てているのは、そういった先人達の努力の賜物と言えるだろう。

そしてそれらの作業の矢面に立って行動した諸島の族長達や、建国の中で功績を残した者達、そして()()()使()()を持った者達に与えられたものこそが氏族階級なのである。

サトミという家門が成立した理由は『5大氏族の1つたるアスハ家の護衛』。武門を一手に担うことを生業とするサハク家、しかしそこに属さないアスハ家の独自戦力。

今回の任務がヘクに与えられたのは、必然だったのかもしれない。

 

「オーブが強豪国達からも注視されるだけの国となることが出来たのは、かつてのアスハ家当主が宇宙開発を主導し、成功させたからだ。そしてその栄光を守り続けているウズミ様をお守り出来ることを、私は誇りに思っている」

 

「……初めて会った時も言いましたけど、あんま自分にそういう堅苦しい物を期待されても、応えられませんよ?」

 

「私の目を節穴と呼ぶか、ヘクよ?」

 

ジロリ、とノブナリはヘクを睨んだ。

齢60となる男のものだとは想像出来ないほどに、その視線の切れ味は鈍っていない。

 

「お前の本質は、あの時より変わっていない。必死さを賢明に隠して私と相対したかつてのお前、飄々と見せかけておきながらその裏に研ぎ澄ました刃を隠し持つお前。どちらもお前(ヘク)だ」

 

「いやいやいや、昔ほどやれませんよ。ほら、ご覧の通り自分も歳取って、もう少しで30のおじさんですよ?」

 

「ふん、お前がそう見せたいならそうすれば良い。1つだけを忘れなければな」

 

「そりゃもう、そればっかりは忘れられませんよ」

 

ヘクにとって家柄の良さなどは自分の持つ武器の1つでしかない。当然、無理をして守りたいと思える物でもない。

それでも、ヘクは自分がサトミ家の養子として迎えられ、後継者の座に就いたのは幸運なことだと思っていた。

 

「『サトミたる者、守り、そして生き延びるべし』。……必ず戻ってくるのだ、この国に」

 

護衛という立場である以上、時には要人のために命を賭けなければならない事態にも遭遇しうる。

しかし、たとえ銃弾の嵐に飛び込まなければならなくなったとしても守り切り、自分自身も必ず生きて帰ってくる。それが出来てこそ真の防人である。

ヘクはこの言葉が好きだった。「死んでも守り切れ」などと言われるよりはずっと仕事にやる気になれた。

 

「───必ず戻って参ります。俺はヘク・オシ・サトミですから」

 

 

 

 

 

3/14

オーブ連合首長国 アカツキ島 秘密発着場

 

「傾注っ!」

 

『はっ!』

 

時が少々過ぎ、場所も変わる。

ヘクはオーブ諸島を構成する島の内1つ、アカツキ島にやってきていた。

この島もまた、アスハ家が保有する島の1つであり、()()()()()ただの無人島としての価値しか持っていない。

しかし実際にはこの秘密発着場を始めとする様々な施設が用意されており、その気になれば戦艦をここで整備・修理することすらも可能としている。

元々はオーブに大きな危機、例えば諸外国からの侵攻であったり、国内の不穏分子によるクーデターであったりが発生した時に逃げ込み、態勢を整えるための施設なのだが、今回のヘク達のように()()()()()()()()()()()()()()をする必要に迫られた者達にとっては色々と便利なのだった。

21時を過ぎた深夜、この場所からアスハ家のプライベートジェットに乗ってオーストラリア大陸を支配する大洋州連合に密入国し、現地の空港を経由してアフリカ大陸へ向かうのだ。

オーブから直接乗り込んだ場合は足が付く(身元がバレる)可能性がある。かといって他の国際空港を持つ勢力はどこも連合勢力圏下にあり、ZAFT支配地域である北アフリカに向かう便などあるわけがない。

そのためにオセアニアを経由するのだ。勿論、国籍は偽造済みである。

 

「我々はこれより、オセアニア大陸のダーウィン国際空港を始めとする複数の空港を経由する空路を通ってアフリカ大陸に向かうことになる。目的は……()()()()()の保護だ」

 

「くくっ、もうぶっちゃけ皆知ってますから言ってもいいと思いますけどね?助けにいくのはアスハのお転婆ご令嬢だって」

 

そう言ってヘクをからかうのはワイド・ラビ・ナダガ。今回の任務でヘクの指揮下に入ることになった、下級士族の兵だ。

ワイドは出世に対して貪欲かつ自信家な男で、任務の危険度を理解しているのかしていないのか定かではない、という印象をヘクは持っていた。

 

「その通りですサトミ一尉!素晴らしいことではありませんか、地球を侵略しているZAFT、その懐に飛び込み、姫を救出する!オーブの騎士たる私に相応しい、栄光ある任務です!」

 

ワイドに同調して、ファンフェルト・リア・リンゼイも高らかに声を挙げる。

プライドが高く、更に騎士を自称する男だ。彼もまた、ヘクの部下としてアフリカに向かうことになっていた。

ヘクは溜息を吐いた。

 

(『これが限界』ってことですか、ウズミ様……)

 

今の時期は何やらZAFTが()()()()()を見せているらしく、今回のような高い秘匿性を求められる任務に駆り出せる特殊部隊員は存在しなかった。

そのためウズミは、やむなく『万が一バレても対処可能な人材』、この場合はアスハに懇意な下級士族の中から都合の良い人材を選び、ヘクの部下としたらしかった。

それにしたって他には無かったのか、とヘクは言葉にしたくてしょうがなかった。

 

「はぁ……じゃあ訂正だ。目的はカガリ・ユラ・アスハの救出。ちなみに危険度はぶっちぎりのSSS。今からでも辞退をしたいって奴はいるか?まっ、その場合は情報漏洩防止のために戦争が終わるまで何処かに軟禁コース行きだがな」

 

「問題はありません。我々はこれよりオーブを離れ、目的を達しにいく。任務の内容は外部に漏らしてはならない。シンプルなことです」

 

ヘクの言葉に返答したのはホースキン・ジラ・サカト。

彼も今回の任務を達成した時に得られるであろう出世の栄光を求めて任務に参加した者だが、先の2人に比べれば大分自制が効く方だった。

その冷静さはそれなりに頼りに出来るだろう、というのがヘクの第一印象である。

 

「……」

 

「大丈夫か、サース」

 

「う、うん。僕は大丈夫だよ、ガルド」

 

今回の任務に乗り気な者もいれば、そうではない者もいる。

チーム最年少のサース・セム・イーリアと、最年長のガルド・デル・ホクハの2人がそうだ。

2人の場合は本人ではなく、家族によって送り出されている。特にサースの実家であるイーリア家は没落しかけであり、御家存続の為になんとしても今回の任務で栄誉を手に入れる必要があった。

本人の気弱さもあって任務を辞退出来ず此処に来たのだが、常に不安げな様子を見せられるこちらの身になって欲しいとヘクは思っていた。ヘク的にはワイドとファンフェルトに次ぐ不安要素である。

対するガルドはこの5人の中でもっとも長く軍に在籍しており、年長者としての落ち着きも併せ持っている。チームを分ける必要に迫られた時には、ガルドをサブリーダーとすることになるだろう。

自発的行動力に多少の難があるが、それは十分フォロー可能だ。ヘクはひとまずそのように判断した。

とにもかくにも、この5人を率いていかなければならない。ヘクは再び溜息を吐くが、これ以上ウダウダと時間を消費するわけにもいかなかった。

 

「じゃあ全員問題無しってことで……。最後に、1つだけ言わせてくれ。───全員、生きて帰るぞ。閻魔様に『家出娘を連れ戻そうとして死んだ』なんて、そんな間抜けな死因を報告したくはないだろ?」

 

『了解』

 

「よし、では2130(フタヒトサンマル)、行動開始!」

 

ヘクの言葉を皮切りに、男達は飛行機に乗り込んでいった。

その足並みは、お世辞にも揃っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、物語の幕は開いた。

本来の歴史と異なるこの世界で、男達はどのような道程を辿るのか。

その結果を知る者は、今は誰もいなかった。

*1
この作品内ではドル札と同レートとして扱う。1ドルで約110円




「プライベート・アスハ」は前中後の3編でお送りいたします。
それと、オーブの建国やら氏族制度やらについては公式設定と自分の見解をミックスしたもので整合性と呼べる物ではありません。ご了承ください。

ちなみに、ヘクの部下になった5人は『原作』にも登場している人物です。
どの媒体のどこで登場したか、分かるかな?

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。

p.s 活動報告更新しました。(2021年11/5)
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