一度本編から外れて、サイドストーリー的なエピソードをどうぞ!
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アフリカ大陸 タンザニア 首都ドドマ 連合軍臨時作戦司令部
「将軍、お時間です」
側近の声にジャブラ・ヌデレパ連合陸軍中将はうなずき、ゆっくりと立ち上がった。
(ついにこの時がやってきた。宇宙からやってきた時代錯誤の蛮族共から、故郷を取り戻す時が)
ジャブラは臨時的に司令部としたドドマ市役所の窓から、遙か北の方向を見た。
そこには雄大なキリマンジャロ山がそびえているのが見えたが、彼の心の目にはその先、故郷たるケニア共和国の首都、ナイロビが映っている。
でっち上げの方便で休戦を破った挙げ句に、『南アフリカ統一機構』の首都でもあるナイロビを侵攻・占領したZAFTに対する怒りを抱いているのはジャブラだけではない。
ドドマから遠く離れた最前線、ZAFTの第一次防衛線とにらみ合っている隊の兵士達も、今か今かとその時を待ちわびている。
「諸君、遂に屈辱を濯ぐ時だ。あの日、卑劣なる宇宙からの侵略者達によって我らはナイロビを奪われた。
おそらく、南アフリカの生まれならば例外なく憤ったことだろう。逃げられなかった仲間や市民のことを思い、不安で眠れぬ日もあっただろう。
───だがそれも、今日で終わりだ!準備を整え、訓練を積み、そして闘志昂ぶらせる諸君らに敗北などあり得ない!
これより、『ナイロビの夜明け作戦』を開始する!ナイロビからZAFT共を一匹残らずたたき出せ!一切の手心を加えず、蹂躙するのだ!」
ドドマより北東部 アルーシャ ZAFT臨時指揮所
<もう無理だ!こちらブレグスト小隊、損耗が激しいため離脱する!>
「こちらコマンダー、撤退は許可されていない」
<ふざけろ!これ以上どう凌げってんだ!?>
<こちらベルーガ小隊!更なる敵増援を確認!>
「グンター小隊、全機反応ロスト!」
阿鼻叫喚とは正にこのことか。その場所には悲鳴と怒号、そして遠方から響いてくる爆発音以外の音は存在していなかった。
このアルーシャはタンザニアの北東部、キリマンジャロ山の近郊に存在する都市だ。
歴史上いくつもの国際会議が開催されたことから『会議の地』と呼ばれたこの都市は、タンザニア最大の都市ダルエスサラームやケニアの都市モンバサへの鉄道で繋がっているなど輸送の中心地でもあり、その戦略的重要性は高い。
市内に存在するとあるホテルのパーティ会場にZAFTの臨時指揮所は設置されていた。
「くそ……奴らの進軍速度は並ではないな。流石に地元を知り尽くしているというべきか」
この場所における最高指揮官を務める男は、次々と挙げられてくる報告に苦渋の表情を浮かべた。
このアルーシャはグレートリフトバレーと呼ばれる大峡谷地帯の高原に存在しており、『南アフリカ統一機構』の主力とする戦車部隊にとっては戦い辛い場所だ。
敵軍もそれをよく理解しており、アルーシャに投入されている部隊は地形の影響を受けづらいMSや戦闘ヘリで構成されている。
それに加えてアルーシャは元々『南アフリカ統一機構』の領土なので、地理に関する情報アドバンテージも完全に連合軍側にあった。
(どうする……ここを取られれば、連合軍の勢いは更に増すだろう。だが今のまま戦ってもじり貧だ!)
指揮官が歯がみをしている間にも、戦いは進行する。
「南西のムマ小隊から入電、『“ヘルハウンド”2機に防衛線を突破された』とのことです!」
「なんだと!?」
更なる凶報が指揮所にもたらされた。
”ヘルハウンド”は連合軍が開発した高速輸送VTOL機だ。
従来の輸送機以上の速度を誇るだけでなく、3機のMSを格納して移動可能であるなど、規模を問わず地球各地の戦線で重宝されている。
連合軍はこの”ヘルハウンド”で戦力を高速展開させているのだが、ZAFT側は有効な手を打てずにいた。
「対空陣地は何をやっていたんだ!?」
「それが……遠方からの砲撃を受けており、稼働率が軒並み低下していると」
「なぜ……くそ、やはり情報か!」
ここでも、情報アドバンテージが活かされていた。
ZAFTがアルーシャを占拠したのは4月に差し掛かろうという時だった。そして今は5月。
僅か1月で、十分な対空陣地が作れるワケがない。
対空陣地の大半は即席、マトモなモノはというと連合軍が使っていたものを流用しているのだ。
つまり、連合軍はマトモな対空陣地が何処にあるのかを正確に知っているため、安全に攻撃出来るということだった。
「くっ、やむを得ないか……アルーシャは放棄、後退する!」
指揮官の指示を聞いて通信士達が速やかに情報を伝達していくが、その指示は僅かに遅かった。
アルーシャの放棄が決定してから30分。
各線戦を突破してきた”ヘルハウンド”、それらから投下されたMS隊がZAFTの防衛戦を突破し、ついにアルーシャ市街にまで到達したのである。
結果、このアルーシャで指揮をしていた者を始めとして多くのZAFT兵が戦死、あるいは捕虜となる戦果を連合軍は挙げた。
この快進撃はアルーシャだけのものではなく、後々の歴史家達はこれらの戦いを指して、「十分な戦力を適切に運用した結果の、現代戦の手本のようだ」と称したという。
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ケニア 南東エリア 山岳地帯
「こちらエコー1、敵影無し。進撃を継続する。……ついてねぇ」
パヴェル・ヴァシリエヴィチ・サラーナは揺れる乗機の中で愚痴を零した。
今までも何度も運が悪いとぼやいてきたが、命が掛かっている分、今の状況は
<何か言ったか、エコー1?>
「いや、大したことじゃないさ。早くZAFTのクソ共が出てきてくれないかってところだ」
<たしかにな。見渡す限り山、山、山。退屈にも程がある>
パヴェルは嘘を吐いた。
たしかに代わり映えしない風景には飽き飽きしているが、敵になど出くわしたくは無い。
そもそも彼が不満に思っているのは、自身の乗機として宛がわれたMSについてである。
”レッド・ヘロス”と呼ばれるこの機体は、ユーラシア連合が開発した制式量産MS”ヘロス”の改修機だ。
”ヘロス”を基本カラーの灰色から赤に塗り替えたくらいで特段差異は無い機体だが、パヴェルの乗る機体は特別な改修が施されていた。
(なんで全身を武器弾薬塗れにしてんだよ!そのくせして機動性の悪化は特に対策してねーし……)
彼の”レッド・ヘロス”は、危うささえ感じるほどの武装が積まれていた。
肩、腰、脚部と積める所には積むと言わんばかりにミサイルポッド、グレネードラックが外付けされており、被弾などしようものなら誘爆待った無しという有様である。
極めつけに、左腕に固定された大型ガトリングガンが機体が機動性というものにトドメを刺しに来ていた。
この装備のせいで重心が左に偏り、MSらしい機動戦などは望むべくもない。
火力だけはある棺桶、それがこの”レッド・ヘロス03カスタム”である。
(『ロシア』の3文字その物が嫌いになりそうだ)
パヴェルはロシア生まれのユーラシア連合軍人だ。しかし、生まれた地域に対して良い印象というものは持っていない。
それどころか、『ロシア』というだけで数々のデメリットを負って生きてきたために嫌悪感さえある。
生まれてからこれまでの不幸は元を辿れば全てロシア、と思ったことさえあるくらいだ。
この世界におけるロシアは、西暦2022年に勃発した『
仮にも世界最大規模の国家であるロシアと、世界最大の穀倉地帯を持つウクライナの激突は世界中に大きな波紋を生んだ。
それに加えて、ロシアは『字露戦争』で最悪の学習をした上で『再構築戦争』、つまり第3次大戦に望んだ。
彼らは『再構築戦争』当初から欧州に大規模攻勢を仕掛けた。
ウクライナを相手に『大失敗』*1をしたロシアだが、流石にEUを相手に油断など許されるわけもなく、概ね成功に終わったと言える結果に落ち着いた。
勿論、欧州諸国も必死に戦った。アメリカと対立しながらというハンデを背負っていても、流石にロシア1国を相手にやられっぱなしとなるわけがない。徐々にロシアの攻勢を押し返しつつあった。
だが、そのタイミングでロシアはやってはならないことをしてしまう。
それは、『核兵器使用の示唆』。
『字露戦争』においてロシアは、『核兵器使用の示唆』をすれば各国は動きを鈍らせてしまうことを学習してしまったのだ。
つまりロシアは、「散々に殴りつけた相手を攻めきれず、いざ相手が逆襲しようとしたタイミングで周辺一帯を巻き込む自爆装置を見せつけた」のである。
再構築戦争終結から60年が経った今でもロシアという国が忌避される原因だ。
そうして、通常戦力で圧倒的に劣るロシアはあたかも自分達が大きな存在であるかのように見せかけ、ユーラシア連合の盟主国となった。
ヨーロッパ諸国が何か文句を言おうとすればすぐに核をちらつかせることが常套手段となったロシアは、しかし現状、最大の危機に瀕している。
原因はNジャマーだ。
核兵器が軒並み使用不能となった今、ロシアの横暴を通す手段など何処にもない。
現状こそZAFTの侵攻や原子力発電所停止への対処に追われているが、ロシア以外の国々は戦後ロシアを滅ぼすための準備を水面下で開始していた。
その1つが”ヘロス”だ。
”ヘロス”の開発はユーラシア連合が行なったものだが、実はこの開発計画にロシアはほとんど関与していない。
開発を主導したEU派閥のチームが成果の一部を隠蔽し、「計画の進行は芳しくない」と見せかけることで、「MSは自力で作っても大したものにはならない」と思い込ませたのだ。
実際には、基本性能だけならば”ダガー”と比較出来る”ヘロス”が作られていたというのに。
そうして”ヘロス”が公式に発表された後、ロシアは自分達が一杯食わされていたことに気付いた。
後から「何故隠匿したのか」と問い詰めても、「隠匿したわけではなく、偶然にも急速に技術が成長して性能の良い物が出来ただけ」と白を切られてしまうだけで徒労に終わった。
加えて、機体自体は普通にロシアにも供与されたことからそれ以上の追求は出来なくなってしまい、後にはMS技術で大きくEU派閥に水を空けられたロシアという構図だけが残った。
このままいけば、ロシアはEU派閥に滅ぼされる。助けを求めても応えてくれる国はもう無い。
そのことに気付いたロシアは、とにかく手当たり次第にMS技術の発展を祈って行動し始めた。
この”レッド・ヘロス03カスタム”もその1つであり、ロシアの迷走ぶりを現す象徴として後世で語られることになるのだが、それはまた別の話である。
(ロシア生まれなばっかりにこんなもんに乗せられて……)
パヴェルには尊敬する人物がいる。実の祖父だ。
数年前に寿命で亡くなったが、パヴェルの敬意が絶えることは無い。
彼は『字露戦争』、そして『再構築戦争』の当時を生きたものであり、戦争の影響を実際に目で見てきた男だった。
戦争でどれだけ勝とうとも、裕福になるのは一部の上流階級だけで、大勢のロシア人は困窮するだけ。
それを知っていたからこそ努力してパヴェルの父が大学に行ける程度の金を用意し、その甲斐もあって孫のパヴェルも大学に進める環境が出来た。
そして、好奇心の強い性格だったパヴェルが国外の大学への進学を希望した時、祖父はそれを全力で応援してくれた。
まるでパヴェルが死地に赴くかのように。
パヴェルが思うに、その後に彼が経験することになる苦境が見えていたのだろう。
『なんだよ……ロシア人か』
『……自分はこれで失礼します』
『しっ……ロシアに関わるな』
パヴェルが入学した大学で、彼は孤独だった。
ロシア国内では彼の国が外国からどう思われているか、あるいはそう思われるまでに何をしたかを教えていなかったために最初は周囲の冷たい視線に困惑したパヴェルだが、適当な図書館で調べれば全てが明らかとなった。
彼は、祖父がどうして学歴を自分や父に持たせたがったかを理解した。
当時の祖父や曾祖父母に学があれば、子や孫に苦しい生活や思いをさせずに済んだだろうと後悔していたのだ。
幸いにしてパヴェルはその後の大学生活で偏見を持たない友人を持てたが、母国に対する悪印象が拭われる機会は、今に至るまで得られていない。
(それもこれも、ウラだかプーだかいう阿呆が大統領になっちまったから、昔の奴らがしちまったからだ)
<エコー1、前方に何か見える。あれは……”ストライクダガー”?>
エコー2からの報告を受け、内心で母国を呪うことを中断して前方を見やるパヴェル。
たしかに、脚部を大きく破損した”ストライクダガー”の残骸が転がっているのが見える。
「おそらく、先行した部隊のものだな。スキャンした限り、敵機の姿は無いが……」
<所属は南アフリカか、ついてない奴らだ>
<どうしますかエコー1。敵部隊が潜伏している可能性がありますが>
「周辺を警戒しつつ進軍を継続する。現状、それくらいしか出来ん。エコー2は右、エコー3は左だ」
<<了解>>
現状、この3機のMSで編成されている小隊でもっとも階級が高いのは少尉のパヴェルだ。
少尉といっても戦争初期の大敗で失われた士官の穴を補うための即席士官でしかないが、責任は正規の軍人と等しくパヴェルにのしかかる。
戦争を生き延びられたらどうにか家族を連れて別の国に逃げよう。そう決意したパヴェルは、あることに気がつく。
僅かだが、前方の地面に違和感を感じたのだ。
「全隊停止。……これは」
機体でスキャンした結果、何かしらの偽装が行なわれていることが分かった。
試しにパヴェルがガトリングガンでその場所を撃ち抜いてみると、小規模の爆発が起こる。
地雷だ。
おそらく先行した部隊はこの地雷が見抜けずに引っかかってしまったのだろう。
「やはりな……」
<ひゅう、よく分かったな?>
「若干の違和感があってな。”ストライクダガー”の残骸が無ければ気付かなかった。それより……」
<……!エコー1、周辺に複数の反応を感知しました。おそらく待ち伏せです>
エコー3の言うとおり、レーダーには敵MSらしき反応が複数映っていた。
おそらく本来は地雷で態勢を崩した敵に襲いかかろうとしていたのだろうが、看破されたからには実力で排除、といったところか。
「上等だ、返り討ちにしてやる!エコー2、3は近づいてこようとする奴らの迎撃に努めろ。火力だけなら俺の機体だけで十分だ……蹴散らすぞ!」
<<了解!>>
言いながら、パヴェルは笑った。
ロシアに生まれて不足したことが無い物が、1つだけある。───逆境だ。
そうとも、今この場における戦闘もその一部でしかない。
ならば、いつも通り乗り越えるまで!
「ロシアより愛を込めて、ってな!とりあえず死んどけ!」
アルーシャ 連合軍仮設拠点
「侵攻率は今の所は予定通り……いや、むしろ想定以上に上手くいっているな」
「無理も無い話です。何もかもが連合軍側に有利なのですから」
奪還されたばかりのアルーシャ、比較的無事だった建物の中に設置された仮設拠点司令部にて、連合軍兵士達は唸っていた。
喜ばしいことではあるのだが、ここまでの快進撃が続くと逆に勘ぐってしまうのが軍人だ。
「偵察機からの報告も想定の範囲内に収まるものばかり……」
「懸念事項だった山岳部からの侵攻も順調に進んでいます。まぁ、被害は相応のものですが……」
作戦の最終目標となるナイロビは、険しい山岳地帯に囲まれた高所に位置している。Nジャマーの影響で長距離誘導兵器が使えなくなったこの世界では、正に天然の要塞と言って良いだろう。
ナイロビに繋がる道も尽く破壊、あるいはZAFTの部隊によって防衛されている。
そこで作戦司令部は、山岳地帯を踏破することが可能なMS隊による山岳地帯からの同時多方向進撃を決定した。
平地部での戦闘はほとんど”ノイエ・ラーテ”を中心とした機甲部隊の活躍によって趨勢が決まっており、憂い無くMSを投入出来たという事情もある。
「そうだな……『イレギュラー』を考慮すれば、十二分な戦果と言えよう」
指揮官の男が言う『イレギュラー』とは、作戦開始直前になって上層部から下されたある命令についてである。
それは、『”レッド・ヘロス”の改修機の作戦投入』。
『ナイロビの夜明け』作戦には南アフリカだけでなく、関わりの深い『ユーラシア連合』の兵士も一部参加しており、彼らもその一部だった。
上層部、もといロシア派閥の無茶はそう珍しいことではないが、作戦直前になってから口出しをしてくるのは止めて欲しいというのが彼らの本音である。
単純に使えるMSが増えるだけならば問題はない、むしろ喜ばしいことだったが、その機体群が問題だった。
「鎌を持ったステルス機、全身にミサイル弾薬を積んだ歩く火薬庫、ショーテルを装備した重装甲機、挙げ句の果てに腕が伸びる近接戦特化機……ロシアは何を考えているんだ」
そう、「使え」と言われたMSが尽く首を傾げる代物だったのだ。
鎌を持った”レッド・ヘロス02カスタム”はジャミング装置を搭載し、敵部隊の後方に忍び寄って切り込む機体。だが肝心のジャミング装置があまり奮ったものではなく、撃破報告が既に全機分届いている。
火力特化の”レッド・ヘロス03カスタム”は被弾=誘爆が成立する重装備の機体。上手く使えば火力は高いので強力だが、如何せん遠くから見ても分かる重装備具合なので狙撃などで一方的に撃たれ、他のMSに被害が及んだなどという報告まであった。
腕が伸びる”レッド・ヘロス05カスタム”は、そもそも近接戦自体がエースにしかこなせないものであるために被害報告多数。伸縮ギミックが積まれた右腕の竜のようなパーツが敵機を実際に捉えた例は更に稀だ。
一番マシなのが重装甲かつ通信能力が高い”レッド・ヘロス04カスタム”だが、何故かバックパックに二振りのショーテルが常備されているところがなんとも言えない。
「全く……ロシアがトンチンカンなことをするのは今更だが、それでもあんな機体を大真面目に出してくるとはな」
「なんでも、噂だと内部じゃなくて外部から手に入れた技術なり設計図なりを使って製造したらしいですよ」
「なんだと?」
副官の言葉に頭を傾げる指揮官。
それが真実なら、流石にロシア派閥が大真面目に考えて作ったわけではないということだが、また別の問題が噴出してくる。
「それじゃ、いったい何処の誰があんな機体を設計したっていうんだ?」
「さぁ……しかし」
一拍おいて副官は自身の推測を口にする。
「───大きな実績を伴った部隊から流出したものだとも言われていますね」
某日
宇宙要塞『セフィロト』 ”第08機械化試験部隊”オフィス
「……アグネス」
「ん、どうかしたかな隊長?」
「先日のナイロビ奪還作戦、あったろ?」
「ああ、南アフリカ主導のあれか。それが何か?」
「───作戦に投入されたMSの中に、見覚えのある機体が投入されていたんだよ。ウチのバカ共が設計したはいいが、微妙な出来ってことでゴミ箱行きになってた機体にひっじょぉぉぉぉぉぉぉに、似ているんだが」
「……」
「何か、言いたいことはあるか?」
「……まぁ、
捕まった女スパイが自分を保釈するのに十分な程度の金額にはなったよ」
その日、『セフィロト』に致死量にギリギリ届かない程度の電撃を流された女の叫びが響き渡ったが、職員や兵士達は「ああ、またか」とスルーを決め込んだという。
「ようするに、ロシアの奴らはゲテモノを掴まされたということか?」
「噂が本当なら、そういうことになりますね。まぁ彼らなど所詮その程度のものです。たとえゲテモノだと分かっていても手を出さなければならないほど追い込まれているということですよ。全く、酒を飲むくらいしか能の無い奴らが武器を持っただけで調子にのるからこんなことになるんです。戦後が楽しみですね、モスクワを石器時代の蛮族共に相応しい有様にしてやれると思うと今にも絶頂しそうです」
「……」
この部屋の中には彼らしかいないが、余りにも苛烈な物言いに閉口する指揮官の男。
これは単なる偏見というより、実感としてロシアに酷い目に遭わされた人間のそれだ。
僅かに嫌な予感を覚えた指揮官の男は、副官に尋ねる。
「そういえば、君の出身は……」
「ウクライナですが、何か?」
「……そうか」
男は、二度と副官の前でロシアの話はしないことを決めた。
ここで前半の一区切りとさせていただきます。
遅筆な作者ですみません……。
ちなみにロシアの投入したトンチキMSの開発経緯ですが、
①ユージ、連日の徹夜で発言が怪しくなってくる。
↓
②変態技術者達と徹夜テンションで話している間にポロッと「こんなMS作れない?」と宣う。
↓
③変態技術者「出来らぁ!」
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④設計したはいいが、当然ながら原典のものからは性能が低下する上に他に優先することがあるので設計段階でゴミ箱行き。
↓
⑤アグネス「何かに使えるかな」
↓
⑥アグネス「ロシア君、こんなの欲しくないかな?」
みたいな感じです。
で、本文中で記述した通り、なんとかMS関連の技術を発展させたいロシアは飛びついちゃったというわけですね。
その他気になったことなどありましたら、ネタバレにならない範囲でなら応えていくつもりですので、よろしくお願いします。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。