夜、それは暗く寂しく恐ろしく
そんな夜が今夜だった。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
聞いたことのない母親の断末魔で目覚めた
何事かと思いながら布団から出るが、ここで悪寒が俺の背筋を襲う
慌てて部屋を出るも、そこにあったのは
横たわった父母の亡骸と
黒く光る謎の怪物だった。
一目散に逃げだしたかったが、蛇に狙われた蛙のように体は硬直し、そののぞき込むような眼から目を離せなかった
その怪物はこちらに気づくと、手のようなモノを俺の首に巻き付け
「グルルルル…」
と低く喉を鳴らし
俺の首をきつく締め付ける
薄くなっていく意識の中
一閃の光が目の前を覆った
俺の首から手のようなモノが解けていくと同時に、俺はその場に倒れ、怪物は消え去った。
「ちっ…間に合わなかったか…」
低い成人男性の声とこすれる金属音が頭の中に響く
声の主と思われる男性がこちらによって来る
「ぁ…」
安堵のあまり声が漏れた
「ん?…コイツはまだ意識があるな…B3班!コイツに治療を」
そう男が言うと、すぐさま俺の周りを同じ服装の人々が囲んだ
囲んだうちの一人が注射を出し、俺の首に打ち込む
そこから俺はどうなったのかわからない。
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それから一週間が経った、親が死に独り身になった俺はあの日の記憶を頼りにひたすらネットサーフィンをした
が、満足な結果は得られなかった
あの黒い怪物の正体は愚か、親の死さえ一切情報がなかった
だが…
「速報です。渋谷スクランブル交差点で謎の暴動が発生したと情報が入りました。近隣住民の方は近づかないようにしてください。最新の情報が入り次第お伝えします。」
この速報を聞いた俺はすぐさまSNSで情報を探した
そこで一つの動画が目に留まった
俺があの日見た黒い怪物が交差点のど真ん中で雄叫びを上げている
それを見た瞬間、俺はいてもたってもいられなくなった
・・
あの夜のことを知る為に
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渋谷は地獄だった
飛び交う機動隊員の大声、四肢が欠け苦しむ人の悲鳴、道路にへばり付いた臓物、鼻にこびり付く血の臭いそして小銃の射撃音
逃げ惑う人混みをかき分け交差点の中心へと向かう
中心に着くや否や伸びた黒い手が鼻先をかすめた
10mだろうか、それくらいに肥大化した怪物はかつてヒトの一部だったモノを振り回して
機動隊員、自衛隊員、更には車両を吹き飛ばし雄叫びを上げる
そんな怪物を見上げる俺は
「コイツは一体…」
と、漏らす
「コイツか?」
後ろから聞き覚えのある男性の声がする
男性は続けて
「コイツらは「ゲノム」ってんだ…よう、少年」
と笑顔で答える
「ゲノ…ム」
男性は頷き
「そう、ゲノムだ…そんで俺たちは…」
ニヤリと笑い
「SHILDER`sってんだ」
(は?この人余裕すぎでしょ…)
「し、しーるだーず?」
よくわからないことが起こりすぎて訳が分からなくなってきた
「さて…いっちょやるか!」
男性は気合いを入れて、その手に持つ大剣を軽々と振り回し
「見とけよ~少年っ」
と言い残して高く飛んだ
「どらあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
振り上げた大剣を、肥大化したゲノムの頭に振り下ろすと同時に閃光が視界を奪った
少し経つと視界が戻りゲノムの姿は消えていた
「うし、いっちょあがりぃ」
と、余裕の表情
つえぇ…このおっちゃん!つえぇっ!!!
憧れた、いや惚れた
「な、なぁ!」
俺は男性に声をかけた
「お、俺を弟子にしてくださいっ!!!」
頭を思いっきり下げる
しかし男性は
「わりぃな少年、俺はそn」
「いいじゃない!弟子!」
横やりをさすように女性の声が後ろからした
「おいおいレッサーお前どこ行ってたんだよ」
どうやら男性の知り合いのようだ
「アンタが早すぎるんでしょう?それで、弟子志願者君がこんな頭下げてお願いしてるんだから、やってみたら?」
「やらねぇよ!」
「やりなさいよ~」
「いやだから…」
女性の押しで口ごもる男性
そこに俺はぶち込むように
「弟子にしてください!」
と刺す
男性は女性の方を見たり俺を見たりと戸惑っていたが、腹をくくったのか
「わーったよ!やってやんよ!」
と力強く返してきた
「帰るぞ…」
男性はこちらを見る
「はいっ」
俺ははっきりと返事をし、後ろをついていった
少しついていくと「SHILDER`sと書かれたヘリコプターが一機
それに乗り込むが、ここで俺の頭の中では
やべぇことに首を突っ込んじまったと後悔
ヘリコプターに乗り込むと直ぐに上昇し
あっという間に渋谷を離れていった
_________
「俺はレオンだ、そんでコイツがレッサー」
「よろしくねぇ~」
と、唐突な自己紹介を始めた男性改めレオン師匠
それと優しく微笑む女性改めレッサーさん
その流れに乗るべく俺も自己紹介をし、気づくとSHILDER`sの本部に着いた
そこからは早かった
500mlのペットボトルサイズの石を持たされたり
15枚位の契約書にサインしたり
講習のビデオを見たりした
「あぁ…」
ペースが速すぎて疲れ机に伏せているとレオン師匠が
「大丈夫だ、石の反応も良かったしな」
と訳の分からないことを言ったので
「そういえばさっきの石って何なんですか?」
聞いてみることにした
レオン師匠は簡単に
「素質があるか無いかを測るための石だ」
意味が分からないが、どうやら素質があると石が光るらしい
「その素質って…どんなものですか?」
続けて聞いてみると、これも簡単に
「動物の力だな、俺だとライオン、レッサーはまんまレッサーパンダだな」
いやわからん、動物の力?
「動物の力を使って…いや、借りてゲノムを倒す、それが俺たちだ」
レオン師匠は続けて
「試してみるか?」
ニヤリと聞いてきた
気になった俺は一つ
「はい、やってみます」
ついて来いとレオン師匠が手を出す
付いていくと訓練場と書かれたところに着いた
「まずは集中、全身の力を抜いたら一気にっ!」
師匠の体が黄色く輝き、そこにはライオンの耳、その象徴的な鬣のような髪型、そして尻尾と、なんとも勇ましい師匠の姿があった
「す、すげぇ…」
見惚れていると
「お前もやってみろ、まずは集中だ、いいな」
「はい…」
俺は深く深呼吸をし、興奮を抑え、一気に力を入れる
すると体の奥からゾワゾワと湧き上がってくる感覚とフサフサの毛の感触
「おぉ…」
自分の足にこすれる毛の感触が気持ちいい、だがそれよりも大きく、底から湧いてくる力と今すぐ走り出したい感覚が襲う
「うん、お前狼か」
師匠が一言
「おっと…」
だが直ぐに力は消えてしまった
師匠は落ち込む俺の頭に手を置き
「最初のうちはこんなもんだ、自信を持て」
なれない手つきでクシャクシャにされた髪の毛を直しながら言う
「師匠、俺…」
「どうした」
師匠は横目で
「俺頑張ります…この力でゲノムをっ」
死んだ父母の笑い顔が頭の中を埋め尽くし、俺は涙をこぼす
「まずは…明日からの訓練だ」
師匠はまた俺の髪の毛をクシャクシャにした
ひとしきり泣いた後、宿舎で自室を確認したり食事をしたりした
師匠と別れ自室に戻った俺は、あの夜のことを思い出す
「大丈夫…俺はここから強くなる…」
そんな決意を胸に俺は寝ることにした