ピピピピピピピピピピピピ…
鬱陶しい音を出す目覚まし時計を止める
どうやら眠っていたようだ
見慣れない部屋
「そっか…」
小さく独り言を言う
実感はないが、俺はSHILDER`sの隊員になったのだ
そのことを思い出すと今日のことも思い出した
今日から訓練、それもあのレオン師匠直々に
俺は目覚まし時計しかない寂しい机に目をやり、時刻を確認する
06:52
ヤバい
訓練開始の時刻は07:00
宿舎から訓練場は最短でも7分かかる
だが俺はつい昨日ここに来た
この施設自体脳内マップの空白地域が多いのにあと7分で着くには無理がある
というかこんな考えてるうちにあと5分
俺はすぐベッドから飛び出し、全力で訓練場へ向かう
いや待て、本当にこれが俺の本気か?
昨日訓練場で見、経験したことが頭の中に出てきた
そう、あの時俺は狼の力を借り、駆け出したい欲にウズウズしていた
使うしかない
俺は走りながら深呼吸をする
十分に息を吸ったら一気に力を籠める
きた、あの感覚が
体が軽く感じると、ここで一気に踏み込んだ
すると20m位跳躍することができた
次の足次の足と駆けていく、するとグイグイ速度が上がる
頭に生えた狼の耳に鋭い風の感覚
風を切り裂き、ただひたすらに訓練場へと突き進む
何とかたどり着いた、所要時間は3分
恐ろしい速度で走っていたことは分かるが、疲れが全くない
だが、力を解いた瞬間ものすごい疲労感に襲われた
水が欲しい、いや今すぐ寝転がりたい
駄目だ、足に力が…
膝から崩れる
が、誰かに肩をつかまれた
「オイオイ、大丈夫か?」
師匠の声だ
だが圧倒的な疲労感で答える気力すらなかった
頷くと同時に俺は寝てしまった
_________
目を覚ます、とても背中が痛い
体を起こすとベンチで寝ていたことが分かった
「起きたか、早くこっちにこい」
師匠が俺を見るなり一言
俺は黙ってついていく
訓練場はいくつかの個室で構成されている
ついていく途中訓練している人の姿を見ることができた
銃火器を使っている人、素手そのままの人、刃物、鈍器、ましてやSF作品に出てくるようなものを使っている人もいたが
全員何かの動物の耳、尻尾を生やし、持てる力を駆使していた
「ここだ」
個室に着いたようだが、さっき見た個室より少し広い
部屋に入り、少ししてから師匠が口を開いた
「まず、訓練場以外での能力開放は厳禁だ…伝えてなかった俺も悪いが、今後は気を付けるように」
お叱りの言葉だった
「はい、気を付けます…」
反省
「ん…じゃあ訓練を始めるぞ」
そう師匠は言うと
「まず、お前の適正武器を決める」
おお、だがこんなガチ陰キャのヒョロガリに何が扱えるのか
すると師匠は昨日触った石をどこからともなく出してきた
「これをもって、じっとしてろ」
言われるまま石を持ち、我慢強く待つ
石はただ光り続ける、だが次第に形状が変わってきた
石はどんどん伸び、最終的に直刀サーベルのような形になった
「それがお前の武器だ、壊れることは基本的にない」
俺は右手にあるサーベルを見つめる
「それで訓練を行うぞ…どうした?」
ただひたすらにサーベルを見つめる俺に師匠は聞いてきた
「いえ…頑張ります」
俺はただ一言
やってやる、この剣と狼の力で…
「おい…」
はっと我に戻る
「少し考え事をしてました」
「ならいいが、んじゃあ早速やってくぞ」
師匠はタブレットを取り出し、何やら操作している
すると目の前にゲノムが現れた
「はっ!?」
俺は驚き師匠に顔を向ける
「安心しろ、そいつはホログラムだ…過去に出てきたゲノムの攻撃、行動をを再現している、それをお前には倒してもらう」
なるほど、ホログラムにしてはリアルすぎるが、それも実戦闘のイメージをつかむためだると自己完結し、サーベルを構える
この直刀型のサーベルは刺突向き、斬撃には向かないが、側面にも刃がついている、どうやら両方使えるタイプのようだ
「能力は…使っても?」
一応の確認、予想通りの回答が来た
「使いたければ使えばいい」
「はい」
返事をし、深呼吸をする
なかなか落ち着かない、目をつむって落ち着かせようとするが
正面から風切り音がした
慌てて目を開けると
ゲノムが腕を自在に伸ばし振り回していた
ゴクリ
固唾を飲み込む、ここにきて恐怖心が出てきた
必然的に呼吸が荒くなる
コイツはあの夜の…親を殺したゲノムだっ
そう確信し、体の内側から怒りが噴出してくる
親の…仇…
「うあぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!」
俺は一直線でゲノムに突き進む
ピュウッピュウッっとサーベルを怒り任せに振る
雑に振った刃は当たるはずもなく宙を切る
するとゲノムは素早く腕を伸ばし、その腕は俺の腹に確かな質量をもって食い込む
「あがっぁ」
俺はその勢いのまま壁に背を打つ
「っはぁっはぁ…」
戦いは冷静でないと勝つことができないのは知っている
それを今思い出した
クラクラと立ち上がり、大きく息を吸う
冷静に…冷静に…
怒り任せの攻撃は多くの隙を生む、冷静であればあるほど相手に圧をかけ、圧倒することができる
勝つ…落ち着け…落ち着け…
深く長く深呼吸をし、吐くと同時に力を籠める
能力開放!、狼の力を借り、コイツに勝つっ!
_________
俺の頭には新たに生えた狼の耳、伸びた髪の毛は狼の体毛の如く、そしてフサフサの尻尾
今まで以上に狼の力を感じる
「おぉ…」
俺の姿を見た師匠は声を漏らす
すうぅぅぅぅ…
ゆっくり呼吸をし、ゲノムを睨みつける
「グァアァァァァァァァッ」
ホログラムのゲノムは雄叫びを上げ、それに答えるように
「はぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
と気合を入れる
一気に踏み込むと俺は跳躍し、ゲノムとの距離を一気に詰める
宙に居る俺はその勢いのままゲノムに刃を根本まで打ち込む
素早く引き抜き、再び打ち込む
相手に攻撃のタイミングを失わせ、ずっと俺のターンにするため刺突、斬撃とランダムに繰り出す
「でやあぁぁぁぁっ」
刃はゲノムの頭部を横に切り裂き、そのままゲノムは倒れた
「ふうっ…ふう…」
切り裂いた姿勢のまま俺は力を抜く
「最初にしては見事だ、お疲れ様だ」
師匠は労いの言葉をかけ
「すまなかったな…」
と一言
「いいんです…はぁ…はぁ…もう、いいんです…仇は…取れましたから」
さっきのゲノムは偽物だが、そんな気でいっぱいだった
「そうだな…どうする、続けるか?」
と師匠の誘い
「はい、やります、もっと…強くなりますっ」
疲労を気力で吹っ飛ばして、眼でさらに伝える
師匠は頷いてタブレットを操作する
_________
2体、3体と俺は倒していく
訓練用とはいえこのホログラムは当たると温度を感じ、打撃を食らえばそこに猛烈な痛みが走る
20体ほど倒したろうか、もう腕は上がらず、体は休息を求めるが
俺の頭はもっと強くと求める
頭と体が真逆の欲求を欲し、24体目でついに俺は倒れてしまった
もう体が動こうとしない
師匠は俺に近づき、体を起こす
「今日はもうやめろ、部屋に戻って休め」
と言い、何やら本を渡してきた
「対ゲノム戦の資料だ、部屋に置いとけ」
俺はゆっくり受け取り
そのまま壁に寄り掛かると師匠が肩を貸してくれた
師匠は俺を引っ張り上げ、宿舎の自室へと俺を運ぶ
「すみません…」
俺は感謝の意を疲労感に染まった声で伝える
「お前は強い、大丈夫だ…おれも頑張らねぇとって、お前を見て思ったよ、ウルフ」
「ウル…フ?」
「そう、お前はウルフだ、いやか?」
師匠はニヤリと言う
それにつられ俺も微笑む
「コードネームって…やつですか、ははっ…いやな気分はしませんよ、むしろ…有難いです」
「そうかい、ならよかった」
師匠は自室に着くと俺を布団に腰掛けさせる
「もう休め、明日も頑張ろうな」
そう言うと師匠は部屋を出て行った
俺は服を着替え、寝ることにした
ものすごい疲労、直ぐに寝れた
_________
夜中、変な時間に寝てしまったために起きてしまった
部屋を出、自由スペースへ向かう
リーチインで軽食を買い、自室に戻る
机、椅子、ベッド、目覚まし時計しかない寂しい部屋で食事をとる
食事中、戦闘資料を見たり考え事をしながら過ごした
シャワーも浴びたい…がこの時間帯は閉まっているだろう
コンコンコンッ
急いだノックだ、師匠だろうか
どうしたのかと扉を開ける
「来てもらえる?」
扉の向こうに立っていたのはレッサーさんだった
「え?どうしたんですか?」
と質問を質問で返してしまった
「いいから来てっ」
レッサーさんは俺の手首をつかみそのまま走り出した
「ちょ、ちょっと」
オドオドとする俺だが、何となくその表情から察することができた
「B1」と書かれた扉を抜け、直ぐの部屋に入ると
そこにはズタボロの師匠がいた
「おい…連れてくんなって…」
師匠は布団をかぶる
「ど、どうしたんですか!?」
と聞くと、レッサーさんが
「君が寝てた時出動があったのよ」
と
「ぇ…じゃあ、この傷は」
俺は師匠のうずくまっている布団を見る
「不覚だ…油断しちまった」
師匠がぼそっと言う
「そこでお願いなんだけどね?」
とレッサーさんが俺を見る
「代打でうちの隊に来てくれない?レオンの弟子ならみんな納得すると思うし」
そう、SHILDER`sには複数の部隊が存在する
レオン師匠、レッサーさんが属するB1隊、その戦闘サポートのB2、B各隊の治療をするB3
それぞれ6名、計18人の隊があと四つ存在する
とさっき読んだ戦闘情報に書いてあった
「え、B1にですか!?」
驚きで声が裏返ってしまった
それ以前に俺みたいな素人が入っていいものなのかとも思った
「SHILDER`sって…致命的な人員不足なのよ…」
レッサーさんは不安そうに言う
イスラエルかな?
「非政府組織…ですからね…国連の組織でしたっけ?」
これもさっきの本で読んだ
「ね?B1にはいってくれる…?」
断れない、なので一つ聞いてみた
「本当に、俺でいいんですか?絶対足引っ張ると思うんですけど…」
返事はすぐだった
「君の訓練の様子は見てた…だからお願いしてるの」
覗き見ぃ…
これで了承していいのだろうか、不安が脳裏をよぎる
師匠が口を開いた
「やってみればいい、さらに強くなれるチャンスだ」
「でも、師匠…」
確かに、実戦経験も大事、成長の要になるのは間違いない
ここは覚悟を決めよう、ここで俺が断ったとして他の人の悩むことは同じだろう
「わかりました、やります」
言ってしまった、もう後戻りはできない
だがそれでいい
それで…いいんだよな