そして少年少女は手を伸ばす   作:chee

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第4話

葉に呼び出された俺は例の駅前で葉と合流し、近くのジャンクフード店に入った。

 

……夏蓮とまた会えるかもしれない。

 

そう意気込んでちょっと浮かれたり緊張したりもしたが、現れたのは葉ひとりで、少し安心したような、かなり残念だったような。

 

…ハハッ。こんな思考になってる時点で大分俺って夏蓮の事が好きなようだ。我ながら照れくさいぜ。

 

「……それで、話ってなんだ?」

 

対面に座る葉に問いかける。

 

葉が一人で俺を訪ねてくる用事。夏蓮と別行動することすらめったにない葉の、わざわざ電車に乗ってくるような距離を訪ねてきた用事。

 

葉はいつもよりも真面目な面持ちで俺の目を見る。

 

「うーん…そうだなぁ…どこから話したものかな…まぁいいか」

 

んん?何か事情の入り組んだ話なのか?ちょっとしっかり聞く準備をしておかな………

 

 

 

「…………正直、夏蓮の事どう思ってる?」

 

 

「ーッ!?!?」

 

 

 

は?

 

…待ってどういう事!?

 

いや、落ち着け。葉はそういう(恋愛的な)意味だなんて一言も言ってない、ちょっとタイムリーだったから俺が連想させてしまっているだけで………

 

 

「可愛いと思う?」

 

「…ぬ”ぅ”ん”!!」

 

「えっ何その反応」

 

 

……いやいや、いやいやいや。

 

…そりゃ可愛いと思うが?正直めちゃくちゃ可愛いと思ってるが?初恋自覚したての俺には他の誰よりも可愛いく見えているのだが?

 

 

だが、葉はこんなことを聞いて一体何がしたいんだ?

 

 

……全っ然わからねぇ。

 

 

「…で、夏蓮がどうかしたのか?」

 

「そう、夏蓮のことで相談があって」

 

「…どんな?」

 

「聞いてくれる?」

 

「おう」

 

 

夏蓮に関する相談。この時点で俺には断る選択肢なんてない。当然受けるつもりだ。

 

俺は覚悟を決める。

 

そして葉が語り始める。

 

 

「夏蓮ってさ、お世辞にも人付き合いがうまいなんて言えなくて、いっしょに遊ぶような友達も全然いなかったんだ。そもそも本人が気にしてなかったからさ、今の彼女を見れば一目瞭然だけど、好きな事(ネフホロ)さえできてればいいみたいなスタンスだし」

 

それは付き合いの短い俺でもなんとなく伝わってる。雑食ゲーマーの俺からすれば、一つの趣味にそこまで没頭できるその真っ直ぐな性格もまた魅力だ。

 

「だから、初めてだったんだよ。夏蓮がここまで心を開いて、一緒に居れる人っていうのは。だからさ、楽郎には今後夏蓮が何やらかすかわからないけど、絶対に見限らないであげてほしいっていうか…」

 

 

夏蓮とずっと一緒に居る。それは願ってもないことだ。むしろこちらから頼ませてもらう所だ。だが、

 

 

 

「楽郎ほど気の合う()()なんて後にも先にも現れないだろうし」

 

 

 

友達。

 

 

「………」

 

「楽郎?」

 

 

わかってる。わかってはいるんだ。

 

でも、それは決定的に俺の心の内(恋心)とはすれ違っていて。

 

それを納得はしてしまえても、受け入れてしまえても、どこか引っかかり続ける。

 

 

「…なぁ、夏蓮は俺の事どう思ってるんだ?」

 

 

俺の口からするっとでた疑問。俺自身何でこんな事を口走ったのかはわからない。でも、もしこの答えが……

 

 

「ん?変人だとは思ってるだろうけど……まぁ、夏蓮が必死に繋がりを守ろうとするくらい、もう楽郎は夏蓮の中で大きな存在になってはいるはずだよ」

 

 

………よし。

 

夏蓮が俺を好ましく思ってくれているのであれば。

 

俺との繋がりを大切に思ってくれているのであれば。

 

 

……もう、俺の気持ちは止まらない。

 

 

「……葉」

 

「なに?」

 

 

 

 

「………俺、夏蓮に告白しようと思う」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「………俺、夏蓮に告白しようと思う」

 

 

 

 

………えっ。

 

 

楽郎の唐突に放った言葉は、僕にはすぐに理解できなかった。

 

楽郎が……夏蓮に………告白!?!?

 

 

「えぇと……楽郎は、夏蓮の事が……もしかして……」

 

「あぁ……ッ……好きだ」

 

 

顔を少し赤くしながらそう答える楽郎。

 

あぁ…これ本気だ。

 

なんとなく、伝わってしまった。

 

 

……いつかこんな日が来るかもとは思っていた。

 

 

あまり人と関わらない夏蓮。でも見た目はなまじいいからある程度惹かれる人たちっていうのはいる。でも、だいたいそういう人たちは夏蓮の本性に触れて幻滅していく。

 

それでも、もし、幻滅なんてせずにそれでも構わないと言ってくれる人が現れたなら。その人を、夏蓮が受け入れたのなら。

 

少なくとも楽郎に対して夏蓮は既に心を開いている。

 

 

楽郎なら、もしや………

 

 

「……止めないのか?」

 

「えっ…あぁ、もちろん」

 

 

楽郎に意外そうな顔をされる。楽郎は僕と夏蓮が付き合ってるとでも思ってたのかな。

 

よく勘違いされるけど、僕と夏蓮の間に恋愛感情なんてない。正直、夏蓮はあまりに存在が近すぎて、今更色目を使う気にもなれない。夏蓮が大事なことに変わりはないし、僕は、もうそれでいいと思っている。

 

 

「もちろん、止めない。………でも、約束してほしい。告白の結果がうまくいってもいかなくても、夏蓮の側を離れないであげてほしい」

 

「あぁ、任せろ」

 

 

楽郎の決意に満ちた瞳をみれば、彼がどれだけの覚悟でこの発言をしたのかが分かる。

 

楽郎なら、きっと、ずっと夏蓮を大事にしてくれる。

 

だから、僕は任せてみようと思う。彼に。最愛のパートナーを。

 

 

「…もし上手く行ったとして、途中で夏蓮を見捨てるなんて許さないからね?」

 

「……当たり前だろッ!!」

 

「いい?楽郎。僕()必ず夏蓮を幸せにできる。その確信がある。だからこそ、僕じゃ連れていけないような特大の幸せに夏蓮を誘わないといけないよ。ハードルかなり高いけど、大丈夫?」

 

 

ちょっと言い方が意地悪だったかな?

 

でも、多少の意地の悪さにも耐えられないようじゃ夏蓮の相手は勤まらないよ?

 

 

でも、楽郎は。

 

 

「……ハッ。こっちは高いハードルなんて慣れっこなんだよ()()()()に対する諦めの悪さだけには自信があるぜ」

 

 

……うん。大丈夫そうだ。

 

 

こんな楽郎なら、こんな楽郎だからこそ、きっと夏蓮を……

 

 

 

 

「楽郎。………頑張れ」

 

「…おう」

 

 

 

こうして男は覚悟を決めた。

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