そして少年少女は手を伸ばす   作:chee

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第5話

葉の協力を無事取り付けた俺は、夏蓮と二人のゲーセンデートをセッティングすることに成功した。

 

そして今日俺は……告白する。

 

その覚悟を決めて、俺はこのデートに来た。

 

「楽郎、おはよ」

 

「おはよう。夏蓮」

 

デートと意識してしまえば、なおさら緊張する。もう手足ブルブルだ。まぁ、夏蓮はそんなこと全く意識していないようだが。

 

「ほら、早くいこ」

 

「お…おう」

 

俺の手を引いて先導する夏蓮がどこかいつもより上機嫌なのはきっと気のせいではないだろう。そして俺も夏蓮に手を引かれるこの状況には否応なしにテンションが上がる。

 

一世一代の大勝負。男の意地が試される大舞台。

 

でも、その前に。

 

この最高のデートを少しでも楽しもうじゃないか。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

まぁデートなんて意気込んでは来たものの、俺と夏蓮のすることなんて当然一択(ネフホロ)しかないわけで。結果は9勝17敗。前回よりはマシだが、やっぱりこのコンディションの夏蓮に勝ち切るのは難しいか。普通に悔しい。

 

まだまだこれから!!……と思っていたところで、すでに傾いた夕日が店の窓から射すのを感じ、もうそろそろ帰ろうかという流れになった。

 

ゲーセンから駅前まで戻る少しの道のり。その道中、()()()()()()()俺と夏蓮の手を眺めていると、あっという間に駅までついてしまった。

 

 

「……戻ってきたな」

 

「うん」

 

「楽しかったか?今日」

 

「もちろん」

 

「そりゃ良かった」

 

「楽郎、前回より自滅も減ったし1試合1試合のレベル上がってた。このまま精進するように」

 

「へいへい」

 

 

駅前に佇み、未だに手を繋いだまま今日の激闘を振り返る俺達。隣の夏蓮の声はどこか満足げで、今日遊べて良かったと心から思える。

 

「……ところで、一つ聞いていいか?」

 

「何?」

 

「何で俺達、手をつないでるんだ?」

 

「……??」

 

…まぁ、俺としてはすごいラッキーなわけだけれども。夏蓮がどう捉えているのかは気になる。

 

思い返せば、前回のオフ会でチンピラから退散するとき、今日のデートで出会ってからゲーセンへと向かうとき。俺たち、実は結構手をつないでいたんだな。

 

……今は無性にこの手を離したくない。

 

 

「……わかんない」

 

「わかんないのか?」

 

「うん」

 

 

夏蓮が不思議そうな目で握られた手を、自分でも握っている手を見つめる。そして、キュッ、とその握る手に力が込められた。

 

 

「……でも、離したくないから。だと思う」

 

 

「……へ?」

 

 

……ん?離したくない?夏蓮も?この手を?

 

 

「楽郎は弟分の葉とは違うから。私が手を引かなくても私についてきてくれたりはしない。だから、楽郎がどこかに行っちゃわないように、こうしてる」

 

夏蓮の手に力が更にこもる。でもそれは決して痛いものではなくて。

 

その俺を繋ぎ止めようとする手からはいろいろな感情が伝わってくる。

 

逃さない。

 

側にいてくれ。

 

 

……俺は、絶対にこの手を離したくない。やっぱりそう思う。

 

 

「俺がどこに行っちゃうと思ってたんだ?」

 

「どこか遠いとこ。多分楽郎は、私達の知らない世界(ゲーム)をたくさん見てきてるから。私の世界(ネフホロ)は大好きだけど、どうしても()()()、楽郎の生きる広い世界の一部でしかないのはわかってる。でも、楽郎にはもっとネフホロ(私の側)にいてほしいから」

 

 

確かに、俺は雑食ゲーマー。一つの世界(ネフホロ)に留まる事はない。だからって、夏蓮の側にいるのにどこか別の世界(ゲーム)に行っちゃうなんてするわけないだろ。

 

なのに夏蓮はそんな事を心配していて、俺を自分の側においておこうと必死になってる。俺もっと遊んでいていから。

 

一見無表情なようでどこか余裕のない隣の少女の顔を見る。

 

俺がいなくなればきっとこの子は悲しんでくれる。俺とゲームをしているときの彼女の楽しそうな表情を知ってしまったから。めったに表情変えない彼女の笑顔を見てしまったから。

 

 

だから俺は、夏蓮の事が。

 

 

 

「なぁ、夏蓮」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

「好きだ」

 

 

 

 

 

「………えっ」

 

 

「俺も、夏蓮と遊ぶ時間が大好きだ。夏蓮と遊ぶ世界(ゲーム)が大好きだ。俺と遊んで楽しそうに笑う夏蓮の表情が大好きだ。もっと夏蓮と遊んでいたい。もっと夏蓮と一緒いたい。…………この手を離したくない」

 

 

「ちょ、ちょっと」

 

 

「夏蓮、大好きだ。俺と付き合ってほしい」

 

 

言った。言ってしまった。でも後悔はない。

 

なんだか気恥ずかしくて隣の夏蓮のことを見ることができない。だけど、見ることはできなくても、いまだに握られたその手から温もりが伝わってくる。

 

 

 

「……つきあって、何するの?」

 

「遊ぼう。いっぱいいっぱい遊ぼう。ネフホロもたくさんしよう。そして、ネフホロじゃない外の世界にも俺がいっぱい連れて行ってやる。そして、二人でいろんなものを見て、いろんなところで遊びまわって、最後はもう一回、ネフホロに帰ってくるんだ」

 

「それ、楽しい?」

 

「保証する。楽しい」

 

「普通の恋人たちがするようなことせずに、ずっとネフホロしてるかもしれない。私と付き合っても」

 

「でも、楽しいだろ?夏蓮もさっきまであんなに楽しそうにしていたじゃないか。楽しかったんだろ?」

 

「……うん」

 

 

二人でそんな毎日を思い描く。今日みたいな色気の欠片もないデートでも心底楽しめてしまう俺達だ。そんな毎日が楽しめないわけがない。そんな日々に対する期待に、高揚感に、自然と花蓮の手を握る俺の手に力が入る。夏蓮も強く握り返してくる。

 

 

 

「……楽郎が、ずっと一緒に、遊んでくれるなら」

 

 

「ってことは……!!」

 

 

「私には恋愛感情とかまだよくわからないけど、それで、もっと遊べるなら」

 

 

 

 

「私は……べつに、かまわない」

 

 

「……ッ!!!」

 

 

 

 

バッ…!!と今まで逸らしていた視線を思わず夏蓮に向ける。

 

今、かまわないって言ったか……?

 

俺が視線を戻したときに逆に視線を逸らした花蓮の顔。その顔が少し赤みがかっていたのは、夕陽のせいにするには少し赤すぎて。そんな今まで見たこともないような態度に、俺の告白の結果を再度突き付けられる。

 

 

「本当にいいのかッ!?」

 

「……ぅん」

 

「…夏蓮!!」

 

 

思わず、握った右手を引き寄せて夏蓮に正面から向き直った。

 

さっきから互いに逸していた視線が久しぶりにぶつかって、ちょっと顔が熱くなる。

 

夕陽に照らされて夏蓮の顔がより一層赤みがかってかわいい。朱に染まった頬も、口も、はねっ毛も、全部がどこまでもかわいく見える。

 

そして、見開かれたその目は、どこか戸惑っているようだけど、その奥がしっかり俺の目を捉えていた。

 

 

あぁ……よかった。勇気を出してよかった。気持ちを伝えることができて本当に良かった。

 

 

「じゃあ、これからよろしくな。夏蓮。いまからやっぱなしってのはナシだからな」

 

 

「……うん。楽郎こそ、私とネフホロに骨を埋める覚悟しておいてね」

 

 

こうして、俺と夏蓮のつながりはまた一つ強くなって。今は帰宅のために離すことになるこの手も、また繋ぐことができるんだとおもうとやっぱり胸も高鳴って。

 

 

それでもやっぱりまだ手を離したくないから、二人で手に力を込めて、もう一度笑った。




ここまで読んでいただきありがとうございました!!!

半年ほど前から騒ぎ立てていた私ですが、あーでもないこーでもないを繰り返して結局今のバージョンを書き始めたのは1~2週間前。もっとしっかりしなさいという話ですよね猛省。

では、このルストの誕生日という最高の日を最高の形で盛り上げていきましょう!!!

改めて、ルスト!!誕生日おめでとう!!!!!!!!!!!
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