Fate/relation   作:パープルハット

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キングビー編1『エピソード:ビギニング』

【キングビー編①『エピソード:ビギニング』】

 

〈革命聖杯戦争もついに四日目を迎えたぞ!革命聖杯『ROAD』を手にするのは、一体どこのどいつなんだァ!?モニターを、デバイスを見ているお前らは、いま最も激熱なサーヴァントに投票してくれ!MCは今日もこの俺、リンベルが担当するぜ!〉

 

「おぉ、今日も投票タイムが来たな。お前、誰に入れるよ?」

「決まっているだろう、アーチャーの『ドン・フゴウ』だよ。この三日間で毎回一位を取っているじゃんか。」

「やっぱりフゴウだよなぁ。でも俺はライダー『黄金街道』に入れるぜ。グローブの鉄砲玉、姉御肌だからな。チビは誰にするんだ?」

「えと、僕は、その、バーサーカーの『ロンリーガール』……」

「馬鹿、ハンドスペードなんかに入れるんじゃねぇよ。周りの奴らに虐められるぞ。」

「え、えぇ、だって」

 

〈さて、お前ら投票は済んだかな?それじゃあ中間発表だぜ、カモン!得票率、アーチャー『ドン・フゴウ』が脅威の五十パーセント、ライダー『黄金街道』が三十パーセント、続いてキャスター『芸達者』が十パーセント、バーサーカー『ロンリーガール』が七パーセント、ランサー『リケジョ』が二パーセント、そして最後にセイバー『ダスト』が一パーセントだ!やはり革命軍『ダイヤモンドダスト』には厳しい結果になっちまいそうだぜ!またも『令呪』を手にするのは『ドン・フゴウ』なのか!?〉

 

「やっぱりフゴウだよな!これでまさかの四画目の令呪、獲得だ!」

「ロンリーガール……」

「まだ言ってるのかチビ、ハンドスペードの連中は無理だよ。でもまぁ、ゴミクズのダイヤモンドダストよりはマシだけどな!」

 

〈おっと、お前らにビッグニュースだ!モニターに噛り付け!グローブの特攻隊長、黄金街道が、ハンドスペード領地、竜宮に殴り込みだァ!エンスト寸前の馬鹿みたいな排気音が俺たちの鼓膜をぶち破っていくぜ!ゴールデンベアー号と名付けられたモンスターマシンが、城壁を削り取っていくぞ!〉

「馬鹿みたいって何だよリンベル!アタシをコケにしてるなら、お前の髪もゴールデンにカットしてやるぜ?」

〈おっとそいつは勘弁だ、不肖リンベル、このテクノカットが俺のアイデンティティなものでね!さて、黄金街道のベアー号、そのタイヤはまるでチェーンソーの如き切れ味だ、だが芸達者監修の、スーパー防衛要塞『竜宮』は、こんなものじゃ傷付かねぇ!どうするベアー号!どうする黄金街道!〉

「門がぶち破れねぇなら、壁を走って天守閣へ登るさ!」

 

Ms.黄金街道。

ライダーの霊基を以て召喚された、革命軍グローブの主戦力サーヴァント。

彼女が命名したゴールデンベアー号と呼ばれる大型バイクを乗りこなしながら、近接武器である巨大なアックスで戦う、女戦士。

開発都市第三区において彼女の真名を知らぬものなどいなかった。

彼女が自ら、名乗り上げるからである。

 

「勝負だ、細川ガラシャ!アタシは『坂田金時』!またの名を鉞担いだ『金太郎』!アタシの黄金街道、まっしぐらだぜ!」

 

〈黄金街道さぁ~ん?ここでは敵も味方も自分さえも、真名を明かすことはご法度ですよ~?〉

「知るかリンベル!日ノ本生まれの英霊はなぁ、互いの身分を名乗って初めて、対等な勝負が出来るんだよ!というかロンリーガールって何だよ!ガラシャで良いだろ別に!」

 

黄金街道は痛快に笑ってみせ、エンジンを吹かせた。轟音が辺りに響き渡るが、彼女の高揚感を示しているかのようである。

最も、城内に潜伏する者は彼女に侮蔑の眼差しを向けていたが。

ゴールデンベアー号は発進し、堅牢な城壁を器用に上っていく。さながら鯉の滝登り。圧巻の映像に視聴者も釘付けとなる。

が、天守閣の最上、瓦の屋根に佇んでいた仮面の男が指を鳴らすと、城壁から無数の棘が飛び出、黄金街道の行く手を阻んだ。

仕掛けられたトラップにいち早く気付いた彼女は、急ブレーキをかけ、事なきを得る。

だがそれこそがこの男の目論見だった。直角に上って来るバイクが急にストップした衝撃で、彼女はバランスを崩す。そしてその瞬間、男は屋上から逆さまに飛び降りた。

 

「な!?」

 

黄金街道が空を仰ぐと、目前に男の五体がある。

すぐさま金色輝く巨大アックスで応戦しようとするが、平衡感覚を失った彼女は一秒遅れてしまった。

男は右手拳で黄金街道の頬を殴りつける。全体重を乗せた一撃に、彼女は受け身すら取れず、そのまま地に落ちていった。

 

〈キターーーー!竜宮から現れたのは、革命軍ハンドスペードの絡繰術師!キャスター『芸達者』だぁぁぁあああああ!って、キャスターなのに物理攻撃かよ!?筋力数値はどうなっているんだぁああ!?〉

「くっ、キャスター『果心居士』!?」

「黄金街道、貴殿はこと戦いにおいて素直過ぎる。敵陣に乗り込むには、ちと用意が足らん。」

 

芸達者と黄金街道は、共に地面に落ちる。

彼は彼女の首を掴みながら、その頭蓋を大地に叩きつけた。

仮面から表情を窺うことは叶わないが、芸達者は暗殺者のように冷徹であったことだろう。

彼は城主の為ならば、どれだけ血を流しても構わないと思っていた。

 

〈ここで芸達者の得票率が十五パーセントまで上昇!逆に黄金街道は二十五パーセントにダウンだ!令呪を得られるのは只一人、だが、ハンドスペード陣営、まさかの巻き返しとなるか!?〉

 

Mr.芸達者。

キャスターの霊基を以て召喚された、革命軍ハンドスペードの絡繰術師。

彼の真名は『果心居士』。室町時代にかの織田信長や豊臣秀吉、明智光秀らに幻術を披露したとされる、世紀の奇術師である。その実態は未だ謎に包まれているが、此度のオアシスにける召喚に際して、彼の主である細川ガラシャに付き従い、様々な果心礼装を創造し続けている。キャスターのクラスでありながら、肉体言語で語り合うこともやぶさかでは無い、ある種、戦闘狂のような一面も見せる男だ。

 

「芸達者さんよぉ、ガラシャに会わせてはくれねぇか?」

「有り得ぬな。貴殿の相手はこの爺で事足りる。」

「抜かせ」

 

黄金街道は脳への衝撃で一時眩暈に似た症状に覆われたが、地に背をつけている間に回復し、芸達者の胸部をロングブーツで蹴り飛ばした。

そして立ち上がると、雷を宿した鉞を全力で大地に振り下ろす。その瞬間、雨雲もない晴れ渡った空から、芸達者を射抜く雷撃が降り注いだ。雷神武装は文字通り雷様からの恩恵である。故に、その威力は絶大。宝具では無い、通常攻撃すら必殺級であった。

芸達者は以前の小競り合いで、黄金街道の攻撃パターンを予測済みであった。天空からの一撃と、正面からの稲妻砲弾、どちらも厄介な代物であるが、その方向さえ知り得ていれば、避けることは可能。幸い雷撃は追尾弾で無い、ならばその目標座標から瞬時に飛び去ればいい。

 

「ん?」

 

芸達者はここで違和感を抱いた。空から降り注ぐ雷の軌道が少しばかり左右に散ったのである。一本の線のように落ちてくる以前までの攻撃とは異なる。威力を抑え、拡散するよう働きかけたのか。

芸達者の位置から、どの方角に逃げようとも、直撃は免れない。英霊の核を焼き尽くすまででは無いが、腕の一本や二本なら容易く消し炭にするだろう。芸達者に出来ることは、避けることでは無く、防ぐことだ。彼はすぐさまハンドスペード領地に点々と埋め込んでいた果心礼装を起動する。泥より出でたるは果心居士特製のオートマタ。彼と知識や知恵を共有する何百の機体の一個体だ。

これは言わば避雷針、芸達者の元に降り注ぐ雷ならば、同一個体を用意し、的にすれば良いだけのこと。

黄金街道の稲妻に焼き切られる果心オートマタ。その傍らから飛び出した芸達者は、黄金街道のレンジに突入する。

 

「なっ!?」

 

驚く黄金街道の顎部位に張り手を食らわせる芸達者。思わず舌を噛んだ彼女の口元から血が飛び散った。

そしてすぐさま彼女の胸部に拳を突き立てる。そして絡繰仕掛けの右腕のランプに光が灯り、果心礼装が起動した。

これは彼の創りし加藤段蔵の両腕に仕込んだ技術に同じ。腕を丸ごと右回転させ、生じたエアカッターで、対象を吸い寄せ、肉体をねじ切り、粉砕する。ヒトの二倍の体格を持つ、牛を食らう妖術『呑牛(どんぎゅう)』である。

黄金街道の豊満な胸部に、大量の切り傷が出来上がる。そこから傷口が無理矢理こじ開けられ、果ては内臓ごと解体されるのだ。

無論、歴史に名を残す平安武将、坂田金時が、この程度で死にゆく筈も無い。

彼女は悪い笑みを浮かべながら、芸達者の回転する右腕をその手で掴んで見せた。

 

「何!?」

「いてぇのは熊とのバトルで慣れっこさ。」

 

黄金街道の指先はあらぬ方向に捻じ曲がる。だが、切り裂かれる前に、芸達者を掴んだまま、柔道の技よろしく投げ飛ばした。

腕の礼装を固定するために、回転中は足腰で踏ん張り立つ必要がある。だが黄金街道はそれをいち早く理解し、脛を蹴り、バランスを崩させた。芸達者の軽い体重は易々と宙を舞い、砂の地面に転がり落ちる。

黄金街道は折れた指を、無理矢理逆方向へ捻じ曲げ、正常に戻した。痛みは伴っているが、戦う分には全くと言っていい程支障がない。

額と胸と手先から赤い液体を放出しつつ、それすらも戦いの誉であるかのように振舞う。戦場において彼女はバーサーカークラスのようだ。

 

「やりますな、黄金街道殿」

「アタシの黄金街道は道半ばだからな、手の内の半分も見せていない爺さんに負けるわけにはいかねぇよ。」

 

芸達者は跳躍し、城壁の上に飛び乗った。並のジャンプ力では無いが、これも両足に仕込んだ果心礼装の賜物であろう。

彼と彼女は互いに見つめ合いながら、次なる一手を考えていた。

ロンリーガールこと細川ガラシャに相対するには、この巧みな幻術師をどうにかして攻略せねばならない。

黄金街道が思考を巡らせている中、天守の破風の間から、一人の大和撫子が顔を覗かせる。

彼女こそ、この竜宮の城主にして、芸達者の上司、ハンドスペードの長だ。

モニターに釘付けになっている者たちが、彼女の素顔に目を輝かせ、胸をときめかせる。

 

「ち……チビ、ロンリーガールも、良いものだな。」

「う、うん。凄く綺麗な人だから……」

 

彼女の姿を知る区民は少ない。

決してメディア露出しない、かつ、外を出歩かない、幻の聖女。

その凛とした佇まいと、愛くるしい顔立ちは、世の男たちのハートを鷲づかみにする。

 

〈ば……っ……バーサーカーこと『ロンリーガール』が俺たちの前に姿を現したぞ!MCリンベルも初顔合わせに胸の高鳴りが抑えきれないぜ!得票率もぐんぐん上昇!あり得ねぇ!お前ら欲望に忠実過ぎるだろう!〉

「やっとお目見えかよ、細川ガラシャ!」

 

黄金街道は満面の笑みを浮かべる。強敵と出会った時のような、それでいて、救うべき姫君の前に立ったかのような。

心の円舞曲、きらきらと輝く眼がロンリーガールへと向けられた。

 

「芸達者」

「はい、我が主よ。」

「何をやっているのです。即刻グローブの連中を排除なさい。」

「……っ」

 

芸達者を見下す、血も涙もない冷めた眼差し。

この一言に、第三区の視聴者たちの熱狂は静まり返る。

氷の女王と呼ぶべき姿がそこにはあった。

 

「細川ガラシャ、アタシはお前に話したいことがある。ウチの王サマはお前と敵対するつもりなんて無いんだ!それどころか……」

 

黄金街道は鉞を地に捨て、両手を広げ無害のアピールをする。

だがそれは無駄な行動だ。ガラシャは芸達者と同じく、黄金街道を見下し、その声に決して答えない。唾を吐きかけるような態度だ。

そして芸達者は、得物を自ら手放した黄金街道へ向けて、果心特製魔弾を込めたガトリングを放射した。

霊核には届かなくとも、黄金街道をハチの巣に出来る。油断した彼女へ送る、鉛玉の雨。戦場の冷酷さを身に染みて理解させる。

ガラシャは黄金街道の力尽きる瞬間を眺めるべく、窓の外を一人眺めていた。緑色に染色された毛先を指で弄びながら、鼻歌を歌う。

芸達者の砲撃は、黄金街道へと直撃した。砂埃立ち込める中、血塗られた死に体の彼女が膝を付いている姿を期待する。

が、風を切り裂き現れたのは、鉛の玉を諸共しない、無傷の彼女であった。芸達者の隙をついた暗殺行動は失敗に終わったのである。

彼はこのときばかりは驚愕した。油断する黄金街道には、咄嗟に身を護る判断が出来なかった筈。

芸達者は急ぎ、考えを巡らせた。そして一つの可能性に辿り着く。黄金街道の肉体から鑑みて、何らかの外部による魔力増強術式が付与されたのだと。

そしてそれはこの革命聖杯戦争ならではの事象。もし『あの男』の仕業ならば、非常に厄介なこととなる。

芸達者の推理は正しい。黄金街道は自らを守る術を持たなかった。彼女を救ったのは、彼女の仲間だ。

 

『令呪を以て命ずる。黄金街道に鋼が如き肉体を与えよ。』

 

その声に、黄金街道含め、全視聴者が沸き上がった。彼らのヒーローが、ようやくこの場に現れたのである。

 

〈革命聖杯戦争、ついに一画目の配給令呪の使用が認められたぞ!当然、令呪を使用したのはこの男!第三区の人気ナンバーワンサーヴァント!我らの父にして、偉大なる黄金王!『ドン・フゴウ』の登場だぁぁぁあああああああ!〉

「ったく、遅いぜ王サマ!」

「あれは…………黄金王『マンサ・ムーサ』ですわね。」

 

熱狂するオーディエンス、彼らが番組を視聴する理由とは、この男にあると言っても過言では無い。

革命軍グローブの当主であり、王。アーチャーのクラスを以て召喚された男『ドン・フゴウ』。その真名は、世界一の大富豪と名高き、マリ帝国の覇王『マンサ・ムーサ』。メッカ巡礼の際、エジプトにて黄金をばら撒き、その価値を暴落させた逸話が有名である。財の限りを尽くし、マリ帝国に新時代を齎した黄金王だ。

 

「サーヴァントの腕に令呪が宿る、というのも、可笑しな話だ。だが臣民たちが求めるならば、それに応えるのも王のパフォーマンスである!」

「アタシの身体を守ったのは令呪による魔力ブースト、そして王サマの黄金だった訳だな。流石だぜ!」

 

黄金街道は鉞を担ぎ上げると、竜宮城の頂上を見据えた。目指すはロンリーガールが隠れ潜む最奥の間、改めて彼女の愛馬、ゴールデンベアー号に跨り、轟音を響かせる。

そして黄金街道を止めるべく構えた芸達者の前には、ドン・フゴウが立ち塞がった。

いつかの戦いの再来。今度ばかりは、隠す手札も無い。最初から全力の勝負である。

 

〈空前絶後!ここに四騎のサーヴァントが集う!今日という日が聖杯戦争のクライマックスなのか!お前ら、見逃すんじゃねぇぞ!最高視聴率獲得だぜ!ヒャッハアァーーー!〉

 

聖杯戦争を生中継するドキュメンタリー兼エンタメ番組司会者も、興奮のあまり語彙力を失っている。

革命聖杯戦争、三大革命軍組織が鎬を削る、デスゲームエンターテインメント。

アサシンの役を担うアイドルを除き、各組織二騎ずつ選出された計六騎のサーヴァントが殺し合う。

勝利を収めたサーヴァントが革命聖杯『ROAD』に祈りを捧げることで、只一人、災害と呼ばれるサーヴァントを殺害する願いを受領する。ハンドスペードは災害のアサシンを、グローブは災害のアーチャーを殺すべく、戦いに打って出た。

主な特殊ルールは二つ。

第一のルール。一日経過ごとに区民による参戦者の人気投票が行われ、一位に輝いた者に特製令呪が付与される。これはマキリ製を研究して作られた配当令呪で、自らか、同じ革命軍の仲間にのみ命令を下すことが出来る。なお、下せる命令は少なく、通常は魔力増強のみが有効手段である。

第二のルール。革命組織ごとに、その組織の持つ最大武装、切り札となる『兵器』を戦争に持ち込むことが出来る。ハンドスペードにとってそれは不落の城塞『竜宮』であり、グローブもまた披露していない大型兵器を隠し持っている。

以上を除けば、後はただの殺し合い。勝利した革命軍組織が第三区の覇権を取り、残った組織はその軍門に下る。

組織の代表サーヴァントが集い、己と、己の家族たちの為に、剣を振るう。

まだ戦いは四日目に突入したばかりだが、ここでついにハンドスペードとグローブの直接対決が実現した。

戦力、そしてこれまでの配当令呪を全て手に入れたドン・フゴウがいる革命軍グローブが優勝候補であるが、過激派と謳われたハンドスペードも、芸達者のお陰でまだまだ余裕を見せている。視聴者たちは、この二大組織の戦いに注目し、胸を躍らせた。

 

そしてその陰で、二人の参戦者が『その時』を待ち続けていた。

 

「私が陽動し、彼らの注意を引き付ける。その隙に、貴方はドン・フゴウの首を獲る。良いわね、『枡花女(しょうかじょ)』。」

「吾には、そんな」

「無理、とは言わせないわよ。ダイヤモンドダストにはワイルドカードとなる兵器は存在しない。残念ながら仲間もいない。私たちが生きる為には、戦わなければいけないの。分かるでしょう?」

「…………っ」

「グローブさえ落とせば、私達にも勝機はある。さぁ、行くわよ!」

 

「ま…………待って、待ってください!『ペルディクス』!」

 

竜宮、そしてハンドスペードの領空に、突如彼女は出現する。

金髪のスレンダーな少女が、オリハルコンの翼をはためかせ、二メートルはある巨大コンパスを構えていた。

その姿を見たものは、彼女を天使と思うだろう。現に、視聴者たちは彼女の姿に言葉を失い、見惚れていた。

彼女はコンパスを黄金街道と芸達者のいる中間地点に放り投げると、そのまま大地に円を描き、術式を発動させた。

 

「まずい、アイツは!」

「ダイヤモンドダスト、まさか貴殿らもここに!」

 

〈ま……まさかの展開、誰がこうなると予想したァ?!空に浮かんでいるのはダイヤモンドダストの伏兵、ランサー『リケジョ』だぁああ!鋭い針と筆が、大地を抉りながらミステリーサークルを形成するぞ!〉

 

『リケジョ』という呼び名が与えられたのは、ランサークラスで顕現した『ペルディクス』である。

かの災害のキャスターこと『ダイダロス』を超えるギリシアの発明家。そして彼によってアクロポリスから突き落とされ、殺された。彼女はダイダロスの手によって、歴史から存在を抹消された筈であるが、いま第三区にて、ダイダロスの翼を有して召喚されたのだった。

 

「てめぇ、一体何を!?」

「黄金街道殿、死にたくなければ全力で身を守れ。儂らはいま、宝具を受けようとしている!」

「何!?」

 

ペルディクスはにやりと笑みを浮かべた。

コンパスの描く円内部が光り輝き、空へと伸びる一本の柱となる。

そして捕われた二騎のサーヴァントは、重力に逆らい、空の彼方へと押し上げられた。

 

「宝具起動!『其れ聖域と呼ぶ勿れ(オルギ・アクロポリス)』!」

 

彼らの浮かび上がる頭上に待ち構えていたペルディクスは、その拳で二騎のサーヴァントを叩き落す。

その瞬間、鉛のように重くなった二人の肉体は地面に向けて墜落する。

彼らはいま、サーヴァントの対人宝具をその身で受けた。故に、受け身を取ることも叶わず、大地に転がったその時点で、霊核は粉々に砕け散る。これはペルディクスの復讐劇の一部始終の再現、アクロポリスから落ちた者は、その因果により確実な消滅が与えられる。

つまり、彼らが生き残る為には、落下中にサークルの中から抜け出、その理から脱却せねばならない。

 

「くそ!やべぇ!」

「っ……」

 

芸達者は両手の指をクロスさせ、果心礼装を起動させる。

宝具に対抗するには、宝具を使用する外ない。

ペルディクスの両翼から着想を得、彼は新たな折り紙を折る。

 

『絡繰幻法・葭原雀(よしはらすずめ)』

 

それは折り鶴の亜種、巨大なオオヨシキリと四羽のコヨシキリから成る、十枚の翼である。

光の柱の熱量に親鳥の翼が焼かれようとも、生じた小さな穴を通り抜けて、雛鳥が外の世界へ飛び立つ。

芸達者はライダークラスであるかのように絡繰の獣を巧みに操り、ペルディクスの呪縛から解放される。

彼はそのまま大地に落下するが、当然無傷である。宝具の範囲外であれば、その墜落による代償は起動しない。

 

「な……狡いぞ!果心居士!」

 

黄金街道は歯を食いしばり、怒りを露わにする。

だが感情に振り回されている時間は無い。あとものの数秒で、彼女は墜落死してしまう。

ゴールデンベアー号はこの柱の外に置き去りにされている。彼女の手元に呼び寄せることは不可。

そして彼女には空を飛ぶような宝具は存在しない。

 

「クソ!どうする!?」

 

黄金街道は力任せに柱を破る策へ打って出る。

だが落下中であり、下へ向かうベクトル運動外の行動には、中々力が振り絞れない。

空へ浮かぶリケジョへとアックスを投げつける、その考えも却下。彼女にクリーンヒットしようとも、宝具が解除されるとは限らない。

 

「黄金街道よ、我が再び令呪を使う!」

「王サマ!?」

「お前は、地面に向かって宝具を解き放て!」

「な、なに!?」

「いいからやれ!」

 

ドン・フゴウの腕に宿る令呪が再び使用される。

黄金街道の身体は熱く燃え滾り、彼女を魔力の渦が満たした。

そして黄金街道は鉞を大地に力いっぱい振り投げた。

巨大稲妻の一閃、破壊力満点の対軍宝具が、あろうことか何もない地面に向かって放たれた。

 

「吹き飛べ、必殺!『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』!」

 

アクセルを吹かせたときとは比べ物にならない怪音が周囲一帯に轟いた。

ハンドスペード領地はその瞬間、大爆発により抉り取られる。

ドン・フゴウが腕を組み、見つめる中、力尽きた黄金街道が地面に落下した。

彼女の宝具により出来上がった巨大クレーターの中心に転げ落ちる。

 

「いって……ぇぇ、あれ、ん?アタシ、死んでない??」

「フン、やりおるな、グローブの王よ。」

「え、あれ、どういうことだ?」

 

黄金街道は自らが助かったことに疑問を抱く。

既に芸達者は、ドン・フゴウの目論見に気付いていた。

ペルディクスの宝具は、過去の再演。彼女の転落死した場所は後に『聖域』と呼ばれるようになる。

つまり、彼女の宝具により落下死する地点は、起動前に彼女自身が定義しなければならない。

コンパスで描く円の内部でこそ、伝説は再現される。なら、墜落死する大地を、彼女の死した『聖域』でなくすればよい。

黄金街道の宝具により、彼女のアクロポリスは完膚なきまでに破壊された。そこに残ったのは只のクレーターのみ。

つまり概念上の『死』は与えられず、黄金街道は九死に一生を得たのである。

ドン・フゴウは即座にペルディクスの宝具の理を暴き出し、適切に令呪というカードを切った。彼の王であり、かつ将校としての力が遺憾なく発揮されたのである。

 

そして今、ドン・フゴウは自らの首元に振り下ろされた刀を手で掴み取った。

 

「っ!?」

「漁夫の利は頂けぬぞ、『ダスト』。」

 

ペルディクスの作戦。

彼女は発明家であり、世紀の天才である。

故に、ドン・フゴウが黄金街道を救う為に令呪を切ることは『想定済み』だった。

そして令呪を使い、隙が生まれたその時、隠れ潜んでいたダイヤモンドダストのもう一人が、その首を落とす手筈だった。

だがフゴウもまた、戦闘におけるプロフェッショナル。気配遮断を持たぬサーヴァントの襲撃など、お見通しである。

ペルディクスが巨大な翼を広げ、彼らの前に姿を現すのは、どう考えても陽動作戦。宝具が失敗することを織り込んでの動きで無ければ説明が付かない。

フゴウは血で塗れた手で刀を握り潰し、無作法な暗殺者へと振り返った。

 

「ダイヤモンドダスト首領、『Ms.ダスト』。出来損ないの二流と呼ばれた貴様にしては、良く出来た作戦だった。」

「吾は…………」

「だがグローブは貴様らを決して許さない。民が、そう言っている。革命軍が分かたれたのも、ダイヤモンドダストの責任だ。」

 

〈ランサー『リケジョ』に続き、セイバー『ダスト』も登場だ!って、お前ら一斉に低評価を押すのを辞めろ!コメントでの暴言も禁止!あぁもう!アンチ多すぎだろ!今日の番組は大荒れだぜ!〉

 

「ダストだ!おい、ダストが現れたぞ!」

「どの面下げて来やがった!テロリスト!」

「ダイヤモンドダスト、絶対に許さねぇ!」

「消えろ!出来損ないの塵芥!」

「ダイヤモンドダストじゃねぇ、お前はただのゴミクズだ!塵芥(ダスト)だろうが!」

「死ね!さっさと消滅しろ!塵芥(ダスト)!」

 

罵詈雑言が飛び交う異様な空間。

第三区民誰もが、コメントで、ネットワークサービスで、彼女の登場に嫌悪を示す。

彼女は誰一人からも望まれない存在。

『Ms.ダスト』、彼女の真名は『枡花女』。

伝説の弓『雷上動』を触媒に召喚された、弓を扱えぬもの。

嫌われ者のテロリスト集団ダイヤモンドダストに、ただ一人残された者である。

リケジョは真の意味で仲間では無い。ダイヤモンドダストは、今なお彼女独りだ。

 

このオアシスで最も望まれなかった召喚。

伝説の弓の名手『養由基』であれば、災害を殺し得たかもしれない。

雷上動が失われた今、彼女は第三区の負の感情を一手に押し付けられる存在となった。

 

「暗殺任務失敗、これは私の命まで危ないわね。」

 

翼を広げ飛ぶリケジョは、ダストの失敗を悟り、その場を後にし、飛び去った。

同じダイヤモンドダストの名を背負いながら、彼女らは互いに助け合う関係では無い。

もしどちらかが敗北すれば、その時点でダイヤモンドダストに勝機は無い。もしダストがヘマをすれば、リケジョはダストとした契約を打ち切るつもりである。

こうして、ダストは敵陣の中に一人取り残された。

 

「あ……」

「見捨てられたか、仲間に。我が察するに、願いを共有する友という訳でも無さそうだが。」

「…………っ」

 

ダストは戦場で俯いた。

敵を目の前にそのような行為は失態、それどころか、神聖な決闘への愚弄でもある。

フゴウはどこでまでも甘い考えで生きているであろうダストに、鉄拳制裁する。

彼の編み出した黄金の槍が、彼女の脇腹を真っ直ぐに貫いた。

 

「くはっッッッ」

 

ダストはその場で吐血し、倒れ込む。

彼女の唯一の武装である刀を折られてしまっては、成す術がない。

フゴウが自ら手を下すまでも無い。この聖杯戦争において彼女は既に『終わっている』。

ダイヤモンドダストが殺すべき災害のキャスターは、既に消滅しているのだから。

彼女は只の、『ROAD』に養分を与えるだけの存在。オーディエンスもそれを望んでいる。

 

「悲しいな、ダスト」

 

フゴウは彼女の境遇を哀れんだ。

ダストも、望んで今の地位に就いたのではない。ダイヤモンドダストが革命軍として暴れていたのは、彼女が召喚される前だ。

そして真にヘイトを向けられるべき人々は、既に命を落としてしまった。

グローブ、ハンドスペード、どちらの区民も、呪われた召喚を憎む他無かった。

どうして彼女は、テロリストの呼ぶ声に応えてしまったのだろうか。

 

「っ」

 

ダストはその右手で腹を抑えて止血しつつ、逃走した。

フゴウがその影を追うことは無い。これは王である彼の恩情である。

だが彼とは異なり、黄金街道はここでダストを仕留めるべく、走り出した。

リンベルも実況するのを思わず忘れてしまう一幕である。彼は自らの顔を叩いて喝を入れると、再びフゴウと芸達者の対戦を熱く語り始めた。区民の関心も、フゴウへと向けられていく。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

ダストは血を多量に零しながら、無人工業地帯まで逃げおおせた。

これから己の腕で手当をすれば、消滅まですることは無いだろう。

外まで伸びたガスパイプにもたれ掛かりながら、彼女は落ち着きを取り戻した。

 

先程まで晴れ渡っていた空が、茜色に染まり出す。

太陽が落ちていく。見え無くなれば、そこからは暗い夜。隠れるには丁度いい。

 

「吾は、どうして」

 

自問自答。

枡花女というサーヴァントの、存在意義。

並のサーヴァントよりスキルも、宝具も威力不足。特別な力も無く、ただそこにいるだけのサーヴァント。

主となる人物も、友達と呼べる存在も、恋焦がれる男性も、いない。

独りぼっち、嫌われ者の塵芥。

 

「吾はどうして、生きているのかな?」

 

答えは出ない。

大義も無く、誇りも無く、希望も無く。

英雄ですらないような彼女に、世界は何を期待するのか。

 

「見つけたぞ、ダスト!」

「!?」

 

工業地帯に、人影が一人。

彼女を追って走って来た、黄金街道がそこにいた。

彼女は鉞を肩で担ぎながら、倒れ込んだダストの元へ近付いていく。

もはやここまで。ダストは覚悟を決めた。

 

「てめぇ、聖杯にかける願いはあったのか?」

 

黄金街道は問いかける。

『ROAD』が成せるのは、災害を殺すことだけ。

でももし、それが真に願望器ならば、そう彼女はダストに問うた。

 

「会いたい人が、います。ダイダロスを殺した人。正確には、彼を救った人。」

「災害を、救った?」

「第四区に落ちる筈の太陽から人々を救う為に、ダイダロスは全てを投げうちました。通常の彼ならば、きっとそんなことはしない。ダイダロスと、神としてじゃなく、一人のヒトとして向き合った方がいるのです。吾はその方に、会いたいのです。」

「そうか。テロリストの遺言にしては、心に響くぜ。」

 

黄金街道は鉞を振り上げた。

ダストは静かに目を瞑る。その瞬間、走馬灯のようにオアシスでの記憶が溢れ出した。

でもそこには幸せな経験など一つもない。

出会った人々に嫌われ、詰られ、罵倒される日々。

誰かに必要とされたことなど一度も無い。

彼女を形作るのは、ヒトの悪意そのものだったのだ。

最後の最後で、彼女が思い出した言葉は、一つ。

それは彼女がオアシスにてずっと投げかけられ続けた言の葉。

 

『お前なんか、生まれてこなければ良かったのに』

 

———あぁ、本当にそうだ。

 

「吾なんて、生まれてこなければ、良かった」

 

枡花女は、ダストと呼ばれた女は、自嘲気味に笑ってみせた。

自らの生を諦めた、その瞬間。

聞き捨てならないとばかりに、『誰か』がその場に現れた。

この『誰か』もまた、自らの生を否定された者。

そして後に恋を知り、その生を肯定された者だ。

 

「『招霊継承』、隣人への部分接続。エクストラクラス『継承者(サクセサー)』へ転身。」

 

それは一人の青年であった。

彼の魔術師としての証、右手に残された令呪の一つが消滅する。

現れたのは只の人間、なれども、サーヴァントとしての性質も併せ持つ。

彼の身体に、英霊の座から消滅した筈の男が宿り、膨大な魔力でその身を満たした。

 

「お前…………あれ、アタシ、何だ、コレ?」

 

黄金街道は青年の姿を見て慌てふためく。

彼女は青年の肉体に宿る存在を知っていた。

ダイダロスがイカロスを覚えていたように、坂田金時という少女もまた、自らに縁深き存在を記憶の奥底に留めていた。

たとえ災害がその英霊の生き様を『無かったこと』にしようとも、過去がどれ程書き換えられようとも。

金時は、彼の名を思い出せた。

そしてそれは、この枡花女も同じ。

夢というフィクションの世界に介入できる彼女だからこそ、失わないものがあった。

枡花女が死に間際になって、やっと雷上動を託すに足る人物を見つけたときの記憶。

二人の少女は腕を下ろし、目を丸くしながら呟いた。

青年の肉体に同化した英霊の名を、同時に発したのである。

 

『源頼光(みなもとのらいこう)』

 

「ああ。久しぶりだな、馬鹿娘。そして枡花女ちゃん。今こそ、源氏進軍のときが来たってもんだ。」

 

頼光は青年、間桐巧一朗の身体を借り、二人との再会を喜んだ。

隣人と呼ばれる虚構記憶媒体概念から抽出された、サーヴァント、ならぬ『ダイモニオン』。

巧一朗はダイダロス戦同様に、令呪を消費することで、隣人に部分接続することが叶ったのである。

無頼漢の大男、源頼光は引っ込み、巧一朗へと意識は明け渡される。

そして彼は塵芥を冠した少女に手を伸ばした。

 

「生まれてこなければ良かったなんて、悲しいことを言わないでくれ。」

「……あなたは」

「俺は間桐巧一朗。しがないテロリストさ。」

 

ダストは彼の手を取った。

MCリンベルが、フゴウが、ハンドスペード陣営が、第三区民が知り得ぬ新たな出会い、新たな物語が今ここに、始まろうとしていた。

 

 

開発都市第三区、革命軍グローブ領地内。

大型スタジアム『サンコレアマル』にて。

 

舞台に立った桃色の髪の少女がアイドル衣装とマイクを身に着け、パフォーマンスを繰り出している。

彼女の歌とダンスに熱狂するのは、延べ二百人あまりの区民たち。

ここには過激派も穏健派も無い。皆が手を取り、肩を組み、想いを共有する。

 

「じゃ、ラス曲イっちゃうよ!最後は私のデビュー曲!『恋は雨のように』だよ!」

「おおおおおおお!ツキちゃんサイコ――――!」

 

観客は一斉にペンライトを青色に変える。

このペンライトは特殊な構造で出来ており、ライブが終了すると同時に折り畳み式の傘となり、一斉に空へ向かって打ち上げる。

革命聖杯戦争のアサシンを担う『魔女っ娘アイドルツキちゃん』独自の盛り上げ方であり、それがルールでもあった。

七色の光が会場を満たす中、舞台袖の関係者入口の前に一人の女が現れた。

誰もがライブ限定シャツを着用する中で、彼女は普段通りの白衣姿である。

 

彼女の名は『間桐桜』。またの名を『メアリー・セレスト』。第四区博物館の館長を勤めているサーヴァントだ。

逸れてしまった巧一朗とキャスターを探しつつ、革命聖杯戦争の調査に乗り出していた。

もし、この戦争の立役者が副館長である『言峰クロノ』であるならば、最悪の事態を想定して動かねばならない。

そう、彼女はクロノの相棒、ツキと名乗る抑止力の正体を知っていた。

災害を滅ぼす、それだけで済めばいい、だがそうはならないという確信がある。

 

「いえーい!皆、最後は一緒に傘を打ち上げてね!いくよ!」

 

ライブは終わりを迎えようとしている。

ツキのシンボルが『傘』であることに桜は苦笑しつつ、扉のドアノブに手をかけた。

その瞬間、彼女に悪寒が走る。

クロノやツキ、革命軍とは全く異なる殺気を感じ取る。

後ろから桜の心臓を貫こうとする明確な殺意。

彼女は恐る恐るドアから手を離し、背後を振り向いた。

そこには、誰もいなかった。

 

「何、今のは」

 

桜は周囲を見渡すが、ライブを終え、汗を拭い談笑する人々しか映らない。

気のせいかと息を漏らすが、彼女を射抜くような視線は、同じフロアからのものでは無かった。

二階アリーナ席、何処か力の抜けた桜を熱心に見守る影がある。

黒髪をヘアゴムで纏め、眼鏡をかけたボーイッシュな服装の女。片腕がどこかへ消えてしまった彼女が、桜の様子を窺っている。

 

「会場内、纏めて始末してもよろしいでしょうか。」

〈信華ちゃん、駄目よ。わたくしとシュランツァちゃんの仕事が終わるまでは動かないで。殺戮の夜は三日後よ。〉

「畏まりました、ショーン様。三日後『間桐桜』の暗殺任務を決行します。」

 

革命軍、第四区博物館、アヘル教団、三大勢力が第三区へ集う。

舞台上から雨傘をさしたツキが、桜と信華の存在を確認し、ほくそ笑んだ。

 

殺戮の夜まで、あと三日——————

 

 

 

   【キングビー編①『エピソード:ビギニング』 終わり】

 

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