Fate/relation   作:パープルハット

57 / 88
災害のライダー、ついに動き出します。
感想、誤字等あれば連絡お待ちしております。


キングビー編11『エピソード:ノア』

それは、大昔の話さ。

むかしむかし、あるところに、それはそれは美しくも威厳ある二枚目の大英雄様がいらっしゃった。

絵本の導入にしては設定を盛り過ぎだって?仕方が無いだろう、事実なんだから。

彼はかつて世界を救ったんだ。神様の怒りによって、起こった大洪水を、建造した船一つで乗り越えた。

彼は家族と、そして多くの動物たちを新世界へと誘った。

もうお気づきかい?そう、彼の名は『ノア』。アダム同様、人類の父と言われてもいる。

ノアの方舟の逸話を知らないヒトはいないだろう。それこそ、絵本で語り継がれているくらいだ。

 

でも、こんな話を知っているかい?

ノアは寡黙な男だが、そんな彼が物語において初めて喋った言葉が『呪い』だったコト。

 

ノアには愚かな息子がいた。『ハム』だ。美味な料理のことじゃないぜ?

ハムは方舟の旅の途中にある『禁忌』を犯した。

それは、一緒に乗った嫁との間に、四人の子を成したのさ。

ノアの方舟には『定員』がある。ヒトも動物も、限られた人数を最大限乗せているが、内部で増えちまった。

まぁ生まれたばかりの赤子だ。ついでみたいなもので、その子らは無事にノアの家族と共に航海を終えた。

禁忌を犯したハムに対して、ノアはさぞ憤怒したろうな。だが彼らは家族だ。寛大な男は、愛する息子を許したのさ。

その場の情欲に流されるハムに、嫌悪感を抱きつつ、な?

だが時は経ち、事件は起こってしまった。

ある日、ぶどう酒に溺れ酔っ払い、裸のままに寝込んでいたノア。

ハムは自らの父の裸体に、性的興奮を覚えてしまった。

今の倫理観じゃアウトもアウトだが、そりゃ当時だって『禁忌』そのものさ。

ノアの他の息子達と異なり、ハムは、ノアを深く愛してしまった。男同士の禁断の恋…………って一方通行だけどな。

そしてハムは、あろうことか、実の父であるノアを犯したのさ。

あぁ、そうだ。それこそが始まりだったんだ。

ノアはその穢れに憤慨し、ハムでは無く、彼が最も愛していたその息子に、呪いをかけた。

 

「ハムの子、〇〇〇に呪いあれ」

 

何でハム自身じゃなくて、そいつにかけたんだって?

そりゃ、ハムにとって〇〇〇は、自らの命より大事な存在だったからさ。

はた迷惑な話だが、〇〇〇には、隷属の呪いが与えられた。

そう、それはオレだけじゃなく、オレの子孫にまで。

 

オレは、死した後も、オレの子を、孫を、民を、見届け続けた。

オレは彼らの土地そのものに取りつき、彼らをただ愛したんだ。

呪われた〇〇〇の民は、ただ生きているだけで、悪夢を見続ける。

 

そうだ。ヒトの平等を謳う愛の神は、〇〇〇の民を殺せと、イスラエル人に命じたのだ。

ヒトを温かく見守り、導く存在である筈の神が、オレ達を見捨てたのだ。

世界はこのとき矛盾した。

思えばノアは、神の言葉を聞き届けた男。

オレが『災害』そのものだと、理解していたのだろう。

だから、オレだけでなく、オレの家族を、オレの土地そのものを、凌辱したのだ。

 

そして途方も無く長い時を経て、オレは英霊として呼び出された。

オレはオレであり、オレの家族であり、オレの民であり、オレの土地でもあった。

今なお、人類はオレの土地を巡り、殺し合いをしているらしい。

そうだ。それこそがノアの呪いであり、同時に、〇〇〇の呪いなのだ。

 

なら、オレがサハラの地に呼び出された意味は、きっと。

悪しき神に、悪しき英雄に、虐げられ、歴史から消え去った全て。

オレがこの世のヒト全てを救うため、ここに立っているのだと気付いた。

 

「私は遠坂輪廻、貴方は───」

 

オレは目の前に立っている可憐な少女に声をかけられた。

彼女もまた、大いなる悪意に虐げられし者。

ならば、オレの『箱舟』で共に、旅立つ相方である。

 

「オレはライダーのクラスにて召喚された〇〇〇だ。ご存じない?」

 

オレは彼女に、マスターに、手を差し出した。

リンネは警戒心を露わにしているが、おずおずとオレの手を握ってくれた。

その温かみがオレの報酬だ。彼女の為に、命を懸けて戦うことが出来る。

 

───とまぁ、後に災害のライダーと呼ばれる、オレの回顧録に付き合って頂きどうも有難う。

多くは語れないが、今のくだらないストーリーで充分だろう?

さて、お気に入りの帽子が飛ばされないように注意しつつ、第三区へ向かうとしますかね。

 

【キングビー編⑪『エピソード:ノア』】

 

それはまさしく『悪夢』であった。

第六区にいる災害のバーサーカー『后羿』の存在により、深い夜の中にあっても、空の輝きは失われない。

だからこそ、人々は三区の空を支配する恐ろしき少女を視認できる。

彼女が翼を広げて半時間が経過した。

黄金街道の大具足を葬り去った後、再び第三区全体へ向けて、銃弾の雨を降らせた。

サンコレアマル外にいて、家屋などに隠れなかった人間たちは皆、その脳天を撃ち抜かれ、絶命した。

会場内はというと、闘技場そのものは焼き尽くされ、客席の一部分に人々は固まり、怯えるしか無かった。

ショーンの仕掛けた収縮固有結界『CUBE』は天空の支配者『ファフロツキーズ』により亡き者とされたが、人々は脱出する気力を失っている。新たなる災害を前に、過ぎ去るのを震えて待ち続ける。滑稽だが、彼らに出来る唯一の生存戦略だ。

一方、巧一朗は黄金街道を背負い、サンコレアマルとは別の、安全地帯を探し求めていた。

クロノがあの闘技場を離れた途端に、ツキは容赦なく殺戮を始めるかもしれない。

第三区民が蟻で、ツキは象。ただ一度権能を振るえば、皆が簡単に死に絶える。

 

「こういちろ……すまねぇ……アタシの黄金街道……斜め右だぜ…………」

「守ってくれてありがとう。血みどろだが、急所は外れている。治療を施せば間に合う筈だ。」

「くそ……なさけねぇ…………畜生………ちくしょぉお…………!」

「喋るな。後は俺に任せろ。何とかする。」

 

巧一朗はそう強がってみる。

だがこの現状を一番に理解しているのが彼であった。

天空に浮かぶ神の如きファフロツキーズ。桃源郷の終末装置こそが彼女である。

既に半壊した革命軍では足元にも及ばない。

もし、可能性があるとすれば、それは────

 

「雷上動か?巧一朗」

「頼光…………」

「無理だな。二つの矢をまだ有していたならまだしも、お前さんは水破をもう失っている。」

「では、諦めるか?大英雄」

「そうは言っちゃいねぇよ。だからこそ、お前さんに問いたい。死ぬ覚悟はあるか、と。」

「…………アレは、文字通りの災害だ。でも、俺の復讐相手ではない。それに、俺たちはテロリストだ。決して守護者では無い。」

 

巧一朗の唇は僅かに震えている。

頼光は彼の内部にいて、彼の本音が漏れ出るのを待ち続けた。

 

「俺は、この世に偶発的に誕生した、価値の無い虫風情だ。そんな俺は、招霊転化を通して、本物では無いにせよ、多くの英霊を見てきた。歴史データから再現された偽りであったとしても、彼らの心そのものは本物だったんだ。そして────」

 

有り得ないことだ。

彼の生き様を根本から否定するようなことだ。

だが、心のままに、それを口にした。

 

「災害のキャスター『ダイダロス』との戦いの末に、俺はアイツに『憧れ』てしまった。第四区を守る為に、命を投げうってまで救済を果たしたあの男に。恨む筈の災害に、羨望の眼差しを向けているんだ。虫風情も、あんな風に生きてみたいって───」

「なら、答えは出ているな。」

「あぁ。俺は、桃源郷のテロリスト。でも、美頼や、鉄心、皆を守りたい。これは俺の我儘だ。頼光、貴方の力を借りて、俺はファフロツキーズを倒す。」

「そう来なければな。無論、お前さんを死なせる気は毛頭ねぇ。お互い、生きて、この修羅場を潜り抜けようや!」

「あぁ!」

 

巧一朗は頼光との交信を終える。

覚悟を決めたは良いものの、果たして空を支配する神を如何にして失墜させるか。

イカロスのように翼があれば飛んでいけるが、圧倒的質量による鉄の雨に撃ち抜かれるのが定め。

いま地上から兵破を放ったところで、彼女に届くだろうか。

 

「巧一朗!」

 

彼は背後から自らを呼ぶ声に振り向いた。

瓦礫の山を抜け、彼のサーヴァントが姿を現した。その白いドレスは黒く汚れ切っている。

 

「キャスター、無事で何よりだ。」

「こちらの台詞さ。状況を確認したい。」

「あぁ。まずは黄金街道を匿える場所が最優先だ。一緒に行こう。」

 

巧一朗にとってキャスターは余りにも頼もしい存在に思えた。

世界を揺るがす大犯罪者、モリアーティ教授が味方となれば、新たな戦略が立てられるかもしれない。

だが、事態は想像よりも深刻であった。

彼らが、簡易的な駐在地点を発見した後、情報交換が行われた。

まず現状残された戦力である。

第四区博物館は、巧一朗とキャスター、そして桜館長が存命である。桜館長は一人、ある特定の場所へと向かったようだ。キャスターによると、桜は戦闘に参加できる状態ではないらしい。

そして革命軍、戦闘に参加できるような者は、みな空からの強襲を受けた。

ハンドスペード、グローブ共に、芸術肌の英雄を残し壊滅状態。聖杯戦争参加者の生き残りは、ダストこと『枡花女』と、隣で倒れている黄金街道『坂田金時』のみ。革命軍三組織がそれぞれ有する兵器は、もはや巧一朗という存在を残し、砕け散っている。

他地区からの救援は来ない。キャスターの調べにより、博物館と遠坂、マキリ、アインツベルンは第六区にて災害のバーサーカーと交戦中である。そして第五区の教団は、助けに来る筈も無いが、彼らは彼らで反乱分子の台頭に手を煩わせているようだ。

既にツキによって『王手』がかけられている状態。もしクロノが桃源郷全ての抹殺を目論むならば、巧一朗たちは既に『詰み』の状態であろう。

そうなれば、頼れるのは災害のサーヴァントくらいのものであるが、テロ組織に交流がある筈も無く。そもそも彼らの力を借りては、テロリストとして本末転倒も良いところである。

 

「私は宝具により、ただ一度だけ、過去に扱った武器を練り混ぜた、隕石を射出出来るだろう。でも、三流英霊のそれじゃ、傷一つ付けられないだろうね。やはり最後の希望は君のようだ、巧一朗。」

「だが水破はもう無い。天下五剣で斬ろうにも、天空に駆け上がる手段が…………そうだ、メディアの観測艇はどうなった?」

「まずリンベルの乗る本艦は、君も見たろ、撃墜されたよ。幸いリンベルたちは無事で、今はサンコレアマルの区民を勇気付ける為、奔走しているようだ。肝心の予備艦だが、クロノにより破壊されたか、どこかに持ち去られた。全て彼の計算済みだよ。」

「くそ、それがあれば戦えたんだけどな。」

「ツキはどうやら人類を虐殺するゲームを楽しんでいるようだ。ただ殺すだけなら、とっくに壊滅させている。今は、何かを待っているように思うよ。」

「何か、とは?」

「恐らく災害だ。革命軍を救う災害が立ち向かうことで、彼らはこれまでとは真逆に、災害への信仰を始めるだろう。だが、その希望すらもねじ伏せて、恐怖のままに命を刈り取る。そういうシナリオが見えてならない。兎に角、ファフロツキーズが動いていない今がチャンスかもしれない。」

「でも、どうすれば……桜館長の、メアリー・セレストの力で何とかできないものだろうか。」

「地上に降りてくれれば、ね。翼を折れば落下するとも思えないが。四画の令呪で、何をするつもりなのだろうか。」

「四画の令呪?」

「あぁ、革命聖杯戦争にてグローブの棟梁、フゴウが手に入れた配当令呪だ。契約により、全て桜に譲渡されているらしい。魔力増強や地点移動、簡易的なモノにしか利用できない筈だけど……」

「桜館長に譲渡…………四画…………」

 

巧一朗が知り得た情報。

今回配当令呪として使用されているのは、マキリ社製のものの改造。

同じ革命軍か自らにしか付与できない縛りがあるが、もしマキリのものであるならば、エラルと親交のある桜館長はその縛りを解除できるかもしれない。

だが、魔術師の有するそれとは異なり、マキリは効果が限られている。キャスターの言う性能以上のことは成し得ないだろう。

そして桜館長はいま、ある地点へと向かっている。

そういえば、彼が会った時、彼女は酷く疲れていた。この第三区で暗躍している桜が、何かをしようとしている……?

 

「そうか、そういうことか……」

「巧一朗?」

「鈍いな、キャスター。いつものお前なら気付きそうなものだが。桜館長は────」

 

彼はキャスターに桜館長の計略を伝える。

だが、キャスターはどこか納得のいかない表情であった。

 

「いや、そんなことは私だって気付いていたさ。もし桜が、言うなれば『奇跡』を成し得たとして、それでどうなる?残念ながらファフロツキーズには何の特効薬にもなりはしない。」

「え、でも、ファフロツキーズは空に顕現するその時、ROADを飲み込んだのだろう?」

「馬鹿か、巧一朗。馬鹿だったな。つまり、ROADは革命聖杯戦争と何ら関係なく、独立した魔力供給が可能で……それで……あれ?」

 

キャスターは頭を抱えた。

おかしい、不具合が発生している。

彼女は第三区にいる間、謎の不調に悩まされている。

モリアーティ教授は、かのホームズと対等に渡り合った天才数学者。ならば、解答が導き出せない筈は無い。

だが、彼女が真相に辿り着くその瞬間、脳にセーフティーがかかる。

何らかの外部攻撃、言わば呪いや毒の影響を受けているのだろうか。

 

「キャスター?」

「すまない、巧一朗。君の考えは正しい。だが、もう少し、その先に答えはある。私はどうやらその先に進む権利を有さないようだ。君自身が、君の仲間と共に、全てを解き明かす他ない。」

「どういうことだよ、キャスター。」

 

彼女は二人を放置し、立ち上がる。

巧一朗は背中を見せる彼女の手を握り、引き止めた。

 

「おい、キャスター!説明しろ!」

「私も今の状態を理解できるならば、そうしたい。全く、それこそ私がキャスターならば、分かりやすいだろうな。何せ私は破綻者、コラプスエゴの霊基だか…………ら…………」

「キャスター?」

「あ、あぁ、そうか、『そういうこと』か。なるほど、そうか、はは、はははは、ははははははは!」

 

キャスターは突如、笑い始める。

ようやく理解した。桜の作戦に、何故彼女が辿り着けなかったか。

天才である彼女が、何故、クロノに出し抜かれているのか。

 

「あぁ、そこに、いるじゃないか。」

 

巧一朗の仕事に付いて回っては、人間の醜さを観察する、気ままに第二の生を謳歌する存在が。

醜悪な正義の味方が、最大の裏切者が、そこにいるではないか。

ならば、彼女に出来ることはただ一つ、巧一朗に全てを託し、この開発都市第三区を後にする。

物語に『探偵』は二人も必要ないのだから。

 

「巧一朗、いつものように、一つだけヒントを出そう。これより大切なのは『時間』だ。君が戦う敵は、君が想像するより遥かに強大で、そして、狂っている。この第三区にて発生した全ての事柄に疑念を抱き、正しい解答を導き出せ。何せ敵は、物語の主役を味方に付けたのだから。」

「どういうことだ……?」

「暫くのお別れだ。すまないね。力を貸せなくて。健闘を祈っている。」

 

キャスターは巧一朗の手を振り解き、歩き去る。

彼は突然のことにパニックとなりつつも、追いかけることはしなかった。

彼の隣で倒れる黄金街道を独りにする訳にはいかないから。

そして、キャスターが最後に浮かべていた表情は、いつものような嘲る顔でも、ほくそ笑む顔でもなく、酷く寂しげなものだったから。

まるで、もう二度と出会えないかのような、そんな。

 

「キャスター……一体、何に気付いたんだ、どういうことなんだよ?」

 

巧一朗は頭に疑問符を浮かべながら、黄金街道を見つめ続ける。

桜館長がこれより成そうとしていること。そしてキャスターの残していった言葉。

彼には一分先の未来さえ想像できない。

 

「それでも、俺は託されちまったんだな。なら、頑張るしか無いか。」

 

巧一朗は崩壊していない古民家の中から、空を覗き込む。

いまなお輝き続ける絶望に、最大限の敵意を込めて。

彼は血が滲むほどに、唇を噛み締めたのであった。

 

 

サンコレアマル内にて、ダストはリンベルたちメディアと共に、傷病者の救護と、区民たちの心のケアに努めていた。

ダストが確認している限り、既にクロノは闘技場を後にしたようだ。

クロノを人質に、という考えは、実らない。そもそも、ダストでは人間相手に返り討ちに遭いそうなものである。

革命聖杯戦争参加者は、民にとって言えば、インフルエンサーであり、統率者でもある。それが不在ともなれば、荒れ狂い、嘆き悲しむのも無理のないことだ。

彼らにとっての最後の希望こそ、ダイヤモンドダストのリーダー、ダストである。皮肉にも、この土壇場において彼女の声は初めて区民に届いたのだ。

リンベルに多くを任せ、彼女はツキのファンたちのケアに努める。中には自暴自棄となり、外へと飛び出し、ツキの『雨』に撃ち抜かれた者もいた。血塗られた遺体が新たなパニックを生み、阿鼻叫喚の地獄絵図を生み出している。

ダストは練習を重ねたダンスを披露し、何とか場を取り押さえた。ただ彼らに希望を与える為に、美しい舞を披露する。

芸術肌のサーヴァント達も同様、絵や音楽で必死に区民たちを鼓舞した。嵐が去るのをただ待ち、生き延びる。

ダストには、これしか出来ない。彼女は、戦闘において、ただ無力だ。

 

「巧一朗様……どうか、どうか、ご無事で……」

 

ただ祈りを捧げる。祈る筈の神は、空に浮かんでいるように思えるけれど。

そして区民たちもまた、誰かに救いを求めた。

世界を『救済』する存在を、彼らは待ち続けている。

 

「Ms.ダスト、そっちはどうかい?」

「リンベルさん、吾の方は、比較的落ち着いてまいりました。」

「空にドローンを飛ばしているが、やべえアサシンは、指先一つ動かさず、浮かんでいる。今なら外にいる仲間と合流できるかもしれない。」

「巧一朗様と合流……」

「既にその手の甲に最後の令呪が宿っている筈だ。傍に居た方が、兵器も力を出せるってもんだろう。ここは任せて、行ってきな。」

「っ……はい!」

 

ダストはリンベルに見送られながら、サンコレアマルを飛び出していく。

各地に飛ばし、低空飛行を続けるドローンにて、巧一朗の場所はメディアにより発見済み。黄金街道も生存していることが確認された。

ダストは巧一朗に会いたかった。彼女には、自らの命と引き換えに叶える、願いという名の宝具が残されている。

この窮地、もし世界を救うならば、それは巧一朗を除いて他にない。

 

「巧一朗様……っ」

 

僅か一週間、一緒にいれた時間など、そう多くも無い筈だ。

それでも、彼を求めるこの心は、何なのだろう。

恋愛感情、では無い。家族の愛でも当然ない。

ならば、これは一体何だ。どう名付ければいいのだろう。

ダストにはまだそれが分からない。だが、分からなくともいいと、そう思った。

彼女はどこまでいっても、彼のサーヴァントにはなれないのだから。

 

 

一方その頃、朽ちた産業大橋『シェイクハンズ』に辿り着いた、三人の少年たち。

フゴウの秘密を知って、なお、彼を信じたいと願う若者たちだ。

彼らは真実を知るであろう、親代わりの麦蔵を探し求めた。

彼の家に籠っていると考えていたが、そこには誰もいない。

周囲を捜索するうち、最年少の『チビ』はシェイクハンズの上で、麦蔵を発見する。

この緊急事態にあって、この老人は有り得ざることに、橋の修繕を行っていた。

孤独に、黙々と、ひび割れた部分を復元していく。

 

「麦造爺ちゃん!何してるの!」

 

チビの驚く声に、『マッチ』と『モグラ』も反応を示した。

麦蔵もまた、少年たちの到着に驚愕している。グローブ領域内でフゴウが匿っていると思っていた為だ。

 

「おいガキ共、お前ら何でこんなところに!?」

「それはこっちの台詞!危ないから避難しないと!」

「どこにいたってアブねぇことには変わりない。おい、フゴウはどうした?」

「それが……」

 

三人は事情を説明した。そして、英霊の力を宿した少女の姿の怪物と戦ったことも。

だが、あの瞬間、サンコレアマルを離れていた彼らは、フゴウの結末を知らない。

麦蔵は三人の話に相槌を打ちながら、神の如く宙に鎮座するツキを眺めた。

フゴウが生きている確率は、極めて低いと思った。

もし生き延びていたなら、あの神に立ち向かっていただろうから。

第三区そのものを揺るがせた戦犯でありつつ、誰よりもこの区の繁栄と、民の幸せを願っていた男だ。

麦蔵は三人をそっと抱き締める。このくだらない戦いに巻き込まれた小さな命、親のいない彼らには、頼る者がいないのだ。

 

「爺ちゃん……」

「フゴウは、お前らの目から見て、悪い奴か?」

「ううん、違う!フゴウは俺たちの味方なんだ!これからも、ずっと!」

「そうだな。そうに決まっている。」

 

麦造はせめて、少年たちに自身の廃屋へ籠るよう促した。

このシェイクハンズがツキに標的にされればそこまで。だが、多少の時間稼ぎは叶うかもしれない。

だが、少年たちはそれを拒む。

彼らもまた、麦蔵のように工具を手に取った。

そして散り散りになり、シェイクハンズの補修を開始する。

麦蔵とフゴウに育てられた子たちには、確かに彼らの信念が、強さが継承されていた。

どんな絶望的な状態にあっても、いま自分が出来ることを精一杯やる。

シェイクハンズは決して、悪夢そのものでは無いと。第三区の希望の象徴であった筈と、そう祈った。

 

「お前ら、馬鹿野郎共め。」

「俺たちは、麦造爺ちゃんと一緒だ!戦えないけど、この橋だけはゼッタイに守る!」

「ったく、教育を誤ったな。やれやれだ。」

 

麦蔵もまた、工具を握り締めた。

彼に出来ることはただ一つ、『待つ』ことだ。

必ず奇跡が起こる。そのときに、己が築き上げた全てを用いて、バトンを繋ぐために。

彼はどこからともなく、黒光りする箱を取り出した。

『玉手箱』、それは浦島太郎の物語の終着点。彼の絶望であり、そして蓬莱へと旅立つ新たな物語の一ページ。

一度は開かれ、彼の肉体から生気を奪い去った代物。だが、いま彼が持つ玉手箱は固く閉じられている。

これを再び開くそのとき、麦蔵の物語はエピローグへと誘われるだろう。

 

「さて、ガキ共、しっかり手を動かせ。夢と希望の詰まったこの橋を守る為にな!」

 

麦蔵もまた、その場で屈み、か細い手で作業を始めた。

呑気にも思えるが、彼らにとっての戦いそのものなのだ。

 

 

だが、そのとき、ファフロツキーズは無情にも動き出す。

 

 

突如、空を眩い白で満たし、舞を始める彼女。

麦蔵と子ども達、巧一朗、黄金街道、ダスト、誰もが空に注目した。

ツキは優雅に踊り、人々を魅了する。サンコレアマルの人間たちは、恐怖の感情と共に、ある種の高揚感を得た。

神は、その僅かな信仰心を以て、彼らの希望を断絶する。

ファフロツキーズの周囲、半径三メートルに発生した光輪、その中から、隙間なく聖剣の切先が垣間見えた。

黄金街道の大具足を叩き割った時と同じ。ある地点、ある目標に対して、その銃口は向けられる。

狙われたのは、巧一朗と黄金街道が隠れ潜む駐在所。巧一朗の存在を確認したファフロツキーズは、虫けらを嘲笑う。

 

「まずい……ぞ、巧一朗…………」

「あぁ、ひりつく程に分かる殺意の波動だ。兵破を持つ俺を、あの女は狙い澄ましている。」

 

巧一朗は黄金街道を守る為に外へ出、走り出した。

もし彼がいる場所そのものに雨が降らされるならば、黄金街道だけでも守れるかもしれない。

 

「おい!巧一朗!」

「雷上動で迎撃する、任せておけ。」

 

巧一朗が頼光の力を借りて全力ダッシュした結果、駐在地点からはある程度距離を置くことが出来た。

そして空の上に生えた無数の聖剣は、巧一朗にターゲットを絞り込んでいる。

 

「頼光、あれが何か、分かるか?」

「エクスカリバーって知っている?」

「聞かなきゃよかったよ。兵破一本で迎撃できる可能性と、天下五剣でこの命を守れる確率は?」

「0だ。絶対に死ぬ。全体への範囲攻撃ならまだしも、ターゲットを絞られちゃ、な。お前さんに出来るのは、周りを巻き込まないことだ。」

「諦めるのが早いな。まぁでも、どうしようもないか。」

 

空に浮かぶ、千を超える聖剣。

その一つ一つが必殺宝具。一本すら対処に困る絶技のバーゲンセールだ。

人類など、彼女に容易く刈り取られるだろう。挑むという選択そのものが愚かであったかもしれない。

 

「絶望ってのは、こういうのを言うんだろうな!」

 

巧一朗は雷上動を手にし、兵破を引き絞る。

彼はそれでも、抗う。頼光の心と同調し、彼はいま己の持つ最大限の力を行使できる。

そしてこの矢が放たれた時、彼と頼光を繋ぐ糸は断ち切られる。

後のことを気にしていられる余裕は無い。ここで打てる可能性を全て試さなければ、一秒後には死んでいる。

 

「楽しかった、頼光、さん。」

「ああ。お前さんはそれなりに良い奴だったよ。」

 

そしてファフロツキーズの宝具『怪雨(フォールダウン)』が起動した。

 

巧一朗目がけて、無数の聖剣が落ちてくる。

巧一朗は全力で兵破を引き絞り、ファフロツキーズの心臓を狙った。

たとえ彼が死のうと、ツキに致命傷を負わせれば、勝ち。

桜館長が何とかしてくれると、信じてみる。

 

『これより放つは、妖を屠る一閃なり。大聖文殊菩薩よ御覧じろ────』

 

そのとき、だった。

巧一朗の力む右手に、そっと、女性の柔らかな手が重ねられた。

それは支援では無く、中止を促す手。

ゆっくりと、彼の手から力を失わせる。

 

「え」

 

巧一朗は隣に現れた、美しい女に魅入られた。

彼はこの桃源郷にて、この女と相対したことはない。

でも、知っている。知らない筈は無い。

彼が成す復讐の中で、唯一、彼が目を逸らし続けたもの。

彼を悩ませる、ただ一人の存在。

このオアシスで、彼と彼女は『再会』する。

 

「あ」

 

巧一朗は思わず、雷上動を地に落とした。

そして、目を焼き尽くす程の光を前にして、それでも、女に見惚れている。

 

「優しい人」

 

女は呟き、巧一朗に微笑んだ。

その笑顔は、彼を狂わせる。

中身のない、空っぽの器。されど、彼が恋した彼女は、こうしてここにいる。

彼が恨むべき『災害』の名を冠して。

 

「グズルーン…………」

 

開発都市第三区を救う為、駆けつけた災害。

ランサーのクラスにて顕現する彼女の名は『焔毒のブリュンヒルデ』。

彼女は天に向けて、手に有する槍を投擲した。

 

『されど災禍は愛故に(インフェルノ・ロマンシア)』

 

空に佇むファフロツキーズに向けて発射された宝具は、落ちてくる聖剣その全てを燃やし尽くす!

彼女の炎は魔力そのものを焼き、消滅させる。対サーヴァント殲滅機構。他の災害すら脅かす、最恐の決戦兵器だ。

ファフロツキーズの放つ全てが空中で霧散し、そして遂には、彼女の胴体をその長槍で傷つける。

そしてそれだけに留まらない。僅かな傷に火が灯り、ファフロツキーズのエーテルを侵食する。

まさに焔毒。これには世界を既に獲得していたかのような表情を見せていたツキも、焦りを覚えた。

彼女が取り込んだROADが、魔力の過剰供給により、何とか被害を食い止める。

だが、もし次に宝具が直撃すれば、たとえファフロツキーズと言えど、死に至る可能性はあった。

 

「す…………げえ……」

 

巧一朗は思わず言葉を失った。

彼が戦う相手の実力を思い知らされたのだ。ツキ以上に、絶望に染まらざるを得ない。

だが、災害のランサーは優し気な笑みを崩さず、しまいには巧一朗をその胸で抱き留めた。

彼はただ困惑している。

 

「もしかして……本当に……グズルーンなのか……?」

「…………」

 

彼女は答えない。

故に、彼の恋した彼女がそこにいるのか、判別がつかない。

 

「君が、『あの』グズルーンであるかは分からなけど、でも、俺は……」

「熱い(さむい)」

 

焔毒のブリュンヒルデは、巧一朗の頬にそっと口づけをした。

愛する男への求愛行動にも思えるが、そのとき、彼は確信した。

何故かは分からない。でも、理解できる。

彼の愛した女は、そこにはいないのだ。

彼女は、もう死んだのだ、と。

 

「ごめん……ありがとう、助けてくれて。」

 

巧一朗は彼女を拒絶し、距離を取った。

焔毒のブリュンヒルデは、どこか物寂しい顔である。

彼はこれでいい、と自らに言い聞かせた。

どうして彼女が『空っぽ』なのか。それは嫌という程に理解している。

 

「優しい人、貴方は…………私を殺してくれる?」

「っ…………」

 

愛を欲し、愛を殺す災害。彼女はこれまでも、これからも、己が炎を掻き消してくれる存在を探している。

もしそれを為し得る者がいるならば、きっとあの地に赴いた『優しいヒト』だけだろう。

 

「すみません、また、きっとどこかで会いましょうね。」

 

ファフロツキーズに傷を負わせた槍をその手に取り戻した彼女は、踵を返した。

痛みに喘ぎ、無差別砲撃を開始したツキに目標を定め、ゆっくりと歩き出す。

彼女は地に立ちながら、その力の届く範囲で、ファフロツキーズの雨を燃やし尽くした。

彼女がもし、第三区を守護してくれるならば、ツキの宝具から区民を守ることが叶うだろう。

巧一朗は最後に、災害へと願いをぶつけた。

 

「サンコレアマルの人たちを、守って欲しい!頼む!」

 

巧一朗の叫びに振り向いた彼女は、また小さく微笑んだ。

学習を重ねるファフロツキーズに、同じ手は通じない。そして焔毒のブリュンヒルデの宝具は再度放つ為に時間を有する。

このことから彼女は、優しい人の願いを叶える決断をした。

彼女の手の届く範囲にいる全ての区民を守る。ツキの放つ雨を霧散させることが、彼女の仕事となったのだ。

 

そしてそんな巧一朗の叫びに、反応を示す影が現れた。

誰かも分らぬ人間を守って欲しいと祈る巧一朗の男気に、興味を抱いた男だ。

彼は災害のランサーと共に、第三区に赴いた。かつて抑止力が誕生し、第三区を恐怖の奥底へ沈めた『シェイクハンズの悪夢』、そこではアーチャーとキャスター、二人の災害が彼女の相手を努めた。今回も同様、ランサーと共に開発都市第三区を救済すべく立ち上がる。

 

「そうか、アンタが巧一朗。ダイダロスから話は聞いているよ。」

「…………!?お前は!?」

「驚きすぎだ。空にあんな者が現れたら、そりゃ駆けつけるだろう。ダイダロスを倒したテロリストなんだってな。今回ばかりは共闘といこうぜ。」

 

帽子を傾け、愉快に笑う男。

彼こそ、第一区の守護者、災害のライダー。悪夢を屁とも思わない快闊な船乗りが、この第三区に駆け付けたのだ。

 

「災害……それも最強の……!」

「最強?そいつは噂だぜ。オレは災害の中じゃ弱過ぎてな。タイマンしても、秒殺されるのがオチだ。何なら、巧一朗、オレはお前にだって勝てないさ。試してみるか?」

 

軽い口調だが、彼の放つ圧は常軌を逸している。

触れれば即死と言わんばかり。巧一朗はかつてないほどの恐怖を、ライダーに抱いていた。

 

「何者なんだ…………」

「オレか?オレは別に名乗っても良いんだが、生憎ダイダロスに怒られてなぁ。ま、でもアイツもういないしな、別に良いか。」

 

災害のライダーは咳払いをし、改まる。彼は敵に塩を送ることをどうとも思っていないらしい。

そして巧一朗は息を飲んだ。後に、彼の名をここで知ったことを、後悔した。

 

 

「オレの名は『カナン』。伝説の船乗りノアの孫カナンであり、オレたち家族の総称であり、そして『約束の地(カナン)』だ。」

 

 

「カナン……………………」

「酷い沈黙だな。オレはノアのかけた呪いであり、神によって滅ぼされた家族(カナン)の呪いであり、土地(カナン)に土着した、二千年の亡骸たちの呪いでもある。」

「呪い…………だと…………」

「あぁ、今のオレにとっては、どうでもいいことだけどな。」

 

彼の名は『カナン』。

ノアに、そして、全能の神に呪われ、そしてイスラエルに与えられるべく存在した『約束の地』そのもの。

現代におけるまで争いの絶えないその地にて、命を落とした全ての人間の怨念が重なった存在である。

彼はテスタクバルが開いたサハラの目から、膨大なアトランティスのマナを以てして現界した。

本来であれば、彼が召喚されることは有り得ない。だが、輪廻という存在が、それを可能にした。

 

 

遠坂輪廻は、『輪廻』という己が起源に覚醒した、曼荼羅の外へと到達するパンバである。

 

 

何故、桃源郷は、この世界の理から離れ、再び千年の歴史を歩んだのか。

そして、彼らは一体何をしようとしているのか。

巧一朗には知る由も無い。

 

「カナン…………それが、お前の名前……」

「あぁ。」

「そんな大層な名前を背負って、いま、第三区をどうするつもりなんだ?」

「当然、守るさ。見てな。」

 

カナンはポケットに両手を収めつつ、ツキの方を睨んだ。

異形とも思える姿で、舞い踊る姫君。彼は彼女を見つめ、にやりと笑う。

 

「なぁ、巧一朗。あんな神々しい姿で、あんな凄い絶技を披露する女が、ただの人間、ただの英雄である筈が無いよな?そもそも、飛ぶことはあっても、あんな風に空に浮かんでいられるのは、神様の特権じゃないか?」

「あ、あぁ、そうだな。」

「そうだ。アレは『神』だ。オレはそう定義する。そして第三区民(かぞく)もそう思うだろう。定義としては充分だ。」

 

カナンは両手を空へと掲げた。掌いっぱいに星の光を集めるように、指先を広げる。

天女の舞は再び、光の輪を出現させる。あの中から集中豪雨が発生するのは、先程で確認済みだ。

彼は神の命で滅ぼされたカナンの想い、カナンの総意。故に、人民の祈りが神の否定であるからして、その絶技は花開く。

人と人を繋ぎ、時代と時代を繋ぐ、人間は己の足で立ち上がり、繁栄する。

そこに神の介入する余地などあってはならない。

 

愛ある神の矛盾、重箱の隅をつつくような真相究明により、信仰は失墜する。

この桃源郷こそ失楽園。但し、追放されるのは神そのものだ。

 

『我が宝物とは即ち約束された故郷(ハ・アレズ・シエル・カナン)』

 

災害のライダー『カナン』の災具が起動した。

神を縛る呪い。ファフロツキーズという概念に神性を与え、そして神であるが故に、その存在を否定する。

たとえ聖杯を飲み込んでいようとも、たとえそれが抑止力であろうとも、厭わない。

呪いの侵食、ヒトの心に巣食う負の流動物、二千年蓄積されたその全てが、終末装置の四肢に鎖を施した。

ファフロツキーズは大幅な弱体を受け、身動きが取れなくなる。

世界を恐怖に陥れる現象そのものに形を与え、役割を与え、そして結末を用意する。

カナンの力の一端を知った巧一朗は戦慄した。

 

「オレは、これからファフロツキーズへの神縛りを保持しなければならない。後はアンタらに任せるぞ。」

「俺たち……?」

「あぁ。災害のランサーも、オレも、好む人類を守りはする。でも、脅威と戦うのはアンタらだってことさ。オレたちは人類を庇護する神様ではなく、あくまで災害だ。そこまで過保護にはならないってことだよ。そもそもアンタはオレの敵だろ?」

「そうだな。人間が、道を切り開く……」

「ダイダロスはそれが出来た。でも、きっとアーチャーは無理だろうな。アイツは良くも悪くも、人間に近付きすぎている。」

「カナンは、お前は、文字通り災害なのか?」

「その方が、アンタにとっては都合が良さそうだ。」

 

巧一朗は災害のライダーに背を向けた。

今は、彼の言葉を信じよう。この男は、嘘を付いていないと思った。

グズルーンが雨を掻き消し、カナンがその権能を抑制する。

ここまでやって、初めて、巧一朗と革命軍は、スタートラインに立てるのだ。

 

「行こう、頼光。ファフロツキーズを倒すぞ。」

「ふ、任された。」

 

巧一朗が、ダストが、桜館長が、走り出す。

大切な誰かを救う為、桃源郷を滅ぼす邪悪を倒す為に。

 

 

【キングビー編⑪『エピソード:ノア』 おわり】

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。