C103にて頒布したおまけものがたりです!
【本ストーリーは『キングビー編』シリーズのネタバレを含みます。】
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【おまけものがたり 男たちの語らい】
【本ストーリーは『キングビー編』シリーズのネタバレを含みます。】
革命聖杯戦争に参戦した巧一朗、ある夜の出来事。
麦造の家で床についた彼は、物思いに耽っていた。
革命聖杯戦争、ROAD,言峰クロノ、まだまだ分からないことだらけである。
共に戦うと決めたダストも、彼を信頼するまでにもう少し時間がかかるだろう。
博物館の仲間たちはどこへ消えたのか。
明日、また探索を進めるべきだ。そう決意する。
このオンボロ家屋には、いま巧一朗一人きりだ。
麦造は夜も深いというのに、どこかへと出かけてしまった。
ダストも、サーヴァントであるから睡眠は必要ない、と周囲の警戒にあたっている。
この手狭な空間で彼女と共に眠る訳にはいかないけれど、一人の夜は少しばかり寂しく思えた。
「一人じゃねぇさ。」
巧一朗の中に顕現する益荒男、源頼光が声をかけた。
そうだ、今の俺は一人じゃなかった、そう巧一朗は安心する。
彼は虚数海で頼光という英霊を継承した。雷上動が真価を発揮するまで、傍にいて戦ってくれる。
彼らは体と心を共有している。故に巧一朗は聖杯戦争においても拳を振るうことが出来るのだ。
「眠れないのか。」
「あぁ、少しばかり今の状況に興奮しているようだ。」
「確かに、戦争の参加者は美人ばかりさな。」
「違うぞ。そういう意味じゃない。戦いとか、願いとか、壮大な話にテンションが上がっている、ということだ。」
「なんだ、くだらない。」
「女の話の方が百倍くだらないだろう。」
巧一朗は呆れ、溜息をついた。
頼光は数多の女と恋に落ち、味わい、泣かせてきた男だ。彼からすれば、下世話な話の一つも出来ない巧一朗の方が心底面白みに欠けると言える。
そして頼光が心の内で『童貞が』と罵ったことも、巧一朗にはばっちりと伝わっていた。
「む、待て、俺も女の話くらいは出来るぞ。俺はセイバーと愛を誓った仲だ。」
「ほう?お前さんの婚約者か。」
「だが、彼女は戦いの最中で命を落とした。俺はその復讐のために生きている。」
「そ、そうか。つらいことを思い出させたか?」
「いや、そんなことは無い。ただ今は、新しい恋を探すというのは、少し難しい。引き摺っている、と言えばそうだ。」
「成程な。一度イイ女に巡り合ったら、死んでもそいつは頭から離れねぇ。この源頼光だってそうだったさ。」
『だが』と、頼光は言い張る。
過去の恋は忘れず、それでも前を向いて生きていくことこそ肝要だ。
人間はそうやって成長していく、と頼光は説いた。
巧一朗も少しばかり、出会った少女たちのことを考えてみる。
「例えば、我が娘、はどうだ?」
「黄金街道こと『坂田金時』だな?」
「あぁ、アレはギャルっぽく見えて、初心も初心だ。その癖、親の立場から見ても、あの発育はけしからんと見る。」
「まぁ確かに。」
巧一朗は黄金街道と一緒にいるシチュエーションを妄想してみる。
例えば、それは学校。
部活動の後片付けに負われる巧一朗と、一年先輩のマネージャー金時。
彼らは体育倉庫でボール類の整理整頓をしている内に、扉が施錠され、中に閉じ込められてしまう。
「巧一朗!ヤバい!閉じ込められた!」
「まじですか。」
季節は秋に差し掛かると言えど、倉庫内は暑く蒸しかえっている。
巧一朗と金時は何度か外へ出ることを試みるが、あえなく失敗。
先生や他の部員が来るまで、その場で待ち続けることになった。
二人はマットの上に座りながら、暫く談笑する。
だが一時間もすれば話題が尽き、自然と無言状態となった。
金時は掌でぱたぱたと仰ぎながら、溜息を漏らす。
そんな様子を、巧一朗は横からちらちらと窺っていた。
「どしたん、巧一朗。」
「い、いや……」
綺麗なブロンドヘア―からは女の子らしい良い香りがする。
先程の作業中は上下ともにジャージ姿だった彼女も、今は暑さゆえに脱ぎ捨て、半袖半パンの体操着スタイルだ。
故に目が吸い寄せられてしまう、圧倒的なまでの胸部。
そのサイズは、FでもGでも無い、もっと、もっと大きい。
汗が布生地に張り付いて、淡いピンク色の下着が露わとなっている。
そして目線を少し下へとずらすと、今度は柔肌の太腿が、彼の情欲を駆り立てた。
太い、何たる肉厚感、重層感。男ならば皆が腕を組み頷き合う、素晴らしいプロポーションだ。
人間より性に疎い少年も、鼻息を荒くさせざるを得ない。
だが悟られてはいけない。明日から部活動で笑い者にされる。
金時には恋人など、存在するのだろうか?
「顔が赤いぞ?」
「っつ…………」
金時は四つん這いの姿勢で、巧一朗へと近付き、その白い指先を彼の頬に当てた。
自然と露出する谷間を、彼は凝視してしまう。
あぁ、悲しき男の性。おっぱいは全てを解決する。ビバ世界平和。
狼狽える巧一朗を可愛く思ったのか、金時は彼をゆっくりと押し倒した。
覆い被さることで、新たに見えてくることがある。
例えば、金時の腹部に施された薔薇の刺青。
巧一朗はそういうフェチを持っていない、筈、だが。
何故だろう、物凄くエッチに見える。
金時の艶めかしい白肌にそぐわない、黒の刻印が、何かいけないものを見ている感覚にさせた。
彼女は指を這わせ、巧一朗の唇にそっと当てた。
二人の男女がマットの上で肉体を絡ませる。
彼の青春最後の思い出、その一ページが始まろうとしている。
「巧一朗、ナニがしたいか、当ててやろうか?」
「ナニって……」
巧一朗はごくりと生唾を飲み込んだ。
火照る身体、混濁する意識、ひと夏の淡い恋。
巧一朗は彼女に思いの丈をぶつけるべく、声を絞り出そうとした。
「お、俺がしたいのは……」
「ずばり、『相撲』だな!!」
「ワッツ?」
目を輝かせた金時は、巧一朗を引っ張り上げると、そのままマットから突き出した。
坂田金時には、青少年の夢を背負うお姉さん役は難しい。
巧一朗はありとあらゆる技で、体育倉庫中に投げ飛ばされる。
「アタシの相撲街道まっしぐらだ!!!」
ということで。
巧一朗の妄想は、元気いっぱいの金時に打ち負かされた。
あの破天荒な黄金街道で恋愛シミュレーションは難易度が高い。
確かに豊満なバストではあるけども!あるけども!あれけども…………
彼は彼女とそういう関係になりたい訳では無かった。
親友ポジションというか、そういう関係がベター。
「お前さん、童貞の妄想を垂れ流し過ぎでは?」
「は!?」
精神を共有している頼光にも呆れられてしまう。
そもそも新しい恋を探す、という話で、何故か有り得ない方向に妄想を広げてしまった。
元気ハツラツな部活の先輩、漫画で学習したラブコメのキャラクター。
坂田金時が決して収まらない器だ。
しかも彼女の父親に生々しい情景を見られてしまった。
「というかな、高校生設定なら刺青は消しておけ。それとも、お前さんは刺青に興奮する性質なのか?」
「俺が悪かったから、もうやめてくれ…………」
巧一朗、深く反省。
気を取り直して、出会った他の女性で思考を巡らせてみる。
「例えば、ロンリーガールこと『細川ガラシャ』なんてどうだ?彼女もウチの娘に負けず劣らず発育が良い。」
「いや俺まだ喋ったこと無いけど!」
とりあえず妄想。
ほわんほわんほわん、と脳内で効果音。
巧一朗は懐かしさを感じる日本家屋の和室に座っている。
外から障子越しに差し込む陽の光が温かい。
青春と言えば夏、夏と言えば恋愛だ。
だが彼はガラシャを知らないので、設定は盛り込まれていない。
ガラシャという英雄のデータのみで妄想世界を構築する。
「巧一朗様」
彼を呼ぶ、可憐な少女の声。
振り返ると、和服美人が茶を用意してやって来る。
流石はハンドスペードの領主であり象徴。その美しさは尋常ならざるものがある。
黒髪は日本男児ならば好まない者はおるまい。
そしてついつい目線は彼女の胸部に吸い寄せられる。
確かに黄金街道よりはサイズダウンするが、彼女の身長百五十あまりからして、存在感は抜群である。
Eなのかい、Fなのかい、どっちなんだい!?
金時の特攻服も大概セクシーだが、ガラシャも負けてはいない。
和服に西洋のデザインが落とし込まれたその服は、彼女のメリハリのあるボディを模り、美しく映えている。
妄想という最も強固な固有結界内部で、若い男女が二人きり。
生唾を飲む巧一朗に、細川ガラシャはただ呆れた。
「あの、あんまり見ないでくれます?わたくし既婚者なのですけれど。」
「え?────あ、うん、はい。」
「たとえ妄想と言えど、他人の妻に手を出す男はロクでも無いと思いますが?」
「……ハイ、ソウデスネ」
「消えてください、目障りです。」
「スミマセン」
妄想内で、ガラシャの注いできた激熱の茶をぶっかけられる。
当然、脳内シミュレーターにて温度は感じないが、心はすっかり火傷気味。
毅然としたガラシャに、巧一朗は完敗する。
妄想はあえなく打ち切られた。おっぱいも消え去った。
間桐巧一朗先生の次回作にご期待ください。
「駄目だ、頼光!ガラシャは人妻だ!妄想できない!」
「なんでェ?」
「めちゃくちゃ不思議そうにするじゃんこの人。」
頼光と巧一朗では時代も倫理観も異なる。
細川ガラシャという極上を前に、巧一朗は唇を噛み諦めた。
忠興死すべし!忠興死すべし!
彼の心の叫びは数秒間に渡り続いた。
「では次はリケジョこと『ペルディクス』だな。」
「いやあれも人妻だろ。子どもまでいるし。」
「あれ、そうだっけ?」
細川ガラシャの悲劇は繰り返さない。
茶をぶっかけられるだけなら良い。彼女の場合、オルギアクロポリられそうだ。
あと巧一朗の個人的な理由で彼女は除外した。
招霊転化で呼び出し、ダイダロスとの戦いで力を貸してくれた存在だ。妄想と言えど、バトルスーツを引ん剝くのは主義に反する。
研究者であるにも関わらず筋肉質な身体は好みであるが、仕方なし。
「じゃあお前さんのパートナー、ダストこと『枡花女』だな。」
「おおう。」
「なんだその反応。」
「あえて触れないようにしていたからな。やはりここで来るか。」
それもその筈。
妄想のおかずにしてしまった日には、気まずくて顔を合わせられないだろう。
信頼を得ようとしている最中、それはどうなのだ。
無垢な瞳に耐えられる筈も無い。
巧一朗の脳内の天使は止めろと告げていた。
「でもお前さん、青い髪のショートヘアの女は大好きだろう?金髪ロングより僅かに上だ。」
「ぎくり」
それもその筈。
焔毒のブリュンヒルデは、群青の髪のショートヘアである。
セイバーの白髪もまた好みだが、同じくらい青い髪の女性に魅力を感じている。
ダストは身体つきからしても、巧一朗のタイプそのものだ。
謙虚な性格も相まって、彼の恋愛対象としては申し分ない。
────本当に、ダストは災害のランサーに似ている。
普段着用しているチャイナ服でさえエロティシズムの塊なのだ。
もし美頼のようにコスプレ七変化をしたならば、どれだけ魅力が溢れるのだろうか?
「してみるか、妄想ワールド。」
頼光の一言により、解禁。
僅かに巧一朗の脳内悪魔が天使に競り勝った瞬間である。
ダイブする先は、第四区にある高級ホテルの一室。
彼がその扉を開けると、ダストがベッドに腰かけて待っていた。
「巧一朗様、いかがでしょう?」
イッツアセクシーランジェリー!
ダストは黒をベースとしたランジェリー姿でベッドに横たわっていた。
巧一朗氏、狂喜乱舞。
黒、黒、黒、黒というのがまた罪深い。グッドポイント。
胸は黄金街道やガラシャに劣る、慎ましやかなものではあるが、むしろそれがイイとさえ思える。
そしてダストといえば、黄金街道にも引けを取らない、むちむちの太腿。
その両足で顔を挟み込まれれば、忽ち首ごと持っていかれそうな圧迫感である。
チャイナ服の際もその片鱗を見せていたが、生足が見事全て披露されたことにより確信へと変わる。
太っている訳では無い。絶妙なライン、ギリギリのエロス。
健全な男児を性の道へと引き摺り込む美しさである。
巧一朗はまるで料理番組の審査員のように、舐め回すよう視線を滑らせ、吟味を続けた。
ダストの頬は次第に紅潮し、広げていた足をゆっくりと閉じてしまう。
「あぁ」
「いくら恋人といえど、恥ずかしいです、巧一朗様。」
「コイビト!そうか!コイビトなのか!」
「え、ええ、そういう設定ですし。」
ダストが、恋人。
オアシス全男子が歓喜する設定。
彼女は控えめに行っても絶世の美女だ。その切なそうな表情は、守ってあげたい女の子ランキング堂々の一位である。(巧一朗式統計により)
だが、一度衣服を取り去れば、そのワガママボディを以て、捕食者へと変貌する。
食虫植物は甘い香りで誘い込み、飛来した愚かな虫を喰らうと聞くが、まさにその通り。
巧一朗という虫は、いとも容易くダストという魅惑に蕩かされる。
虚行虫はひとたび生殖本能に目覚めると、暴走機関へと変貌する。
サンキュー臓硯、くたばれ臓硯。
巧一朗は彼女の隣へと腰を下ろし、その美しい顔をまじまじと見つめた。
次第に近付いていく二人。
唇を合わせるところから物語は始まる。
さぁさぁお立合い。これより始まるは、革命聖杯戦争きっての大勝負。
ダストは彼の首に両手を回した。
ついに繋がる二人の気持ち。誰も、彼らの一夜の営みを阻むことは出来ないのだ。
というのは夢物語。
巧一朗は直前で我に返り、彼女から距離を取る。
そしてこの幸せ空間を壊すべく、雷上動を握り締めた。
「何をする、巧一朗!?」
「確かに、ダストは俺にはもったいないくらい最高の女の子だ、だが!」
「だが?」
「「「やっぱり初めては好きな子とシたい!」」」
「ど、童貞!!!!!!」
巧一朗は夢の中で水破と兵破を放ち、脱出。
そして暗い部屋の中で目を覚ます。
いつの間にか眠りこけていたようだ。
彼は頭をガシガシと掻き毟り、邪念を取り払う。
「良い夢だったのに、勿体ないことをしたな。」
「頼光か。あぁ、最後の方は本当に良い夢だった。ダストには申し訳ないが。」
「だが、お前さんが体操服と黒ランジェリーフェチだとは思わなかったぞ。」
「いや……」
巧一朗は素晴らしい夢の提供者たちに感謝を捧げつつ、ひと時ばかりの『相棒』に、己のフェチズムを明かした。
「俺は、ナース服フェチだ。」
彼はとても晴れやかな顔で、そう言い放つ。
頼光は「そうか」と言い残し、満足げに頷いた。
明日も聖杯戦争は、命のやり取りは続く。
おやすみ巧一朗、英気を養うのは戦士の務めだ。
良い夢を。
一方その頃ダストは何故か分からず繰り返し寒気を覚えていたのだった。
【おまけものがたり 男たちの語らい おわり】