◇クライマックス(レナード視点)◇
俺は荒涼とした世界の中で逃げていた
いつから逃げ続けているのかはわからない
わかるのは俺を追いかけている化け物に捕まったらおしまいだということだ
今も後ろから迫りくる化け物の姿は白騎士よりも巨大で両手に逆トゲの籠手を身に着けている
そして何よりも顔が二つありそれぞれ虎の顔と馬の顔をしていた
なんの冗談かと言いたい
今まで出てきた巨人の化け物と言えばギガースがすぐに出てくるがギガースの中で、いや…今まで出会った化け物の中で顔が二つもある化け物なんていなかった
そんな化け物が俺を、白騎士を追いかけて来る
いくら逃げても引き離せないしどうやってもあの化け物に勝てる気がしない
特に逆向きのトゲでいっぱいの腕が怖い
誰か、誰か助けてくれー
俺の心からの叫びに応えたのか遥か上空から流星のように化け物に突撃していった存在があった
それは龍騎士だった
シーザーが龍閃で化け物を蹴散らそうとして突っ込んでいるんだ
だが龍騎士は化け物の大振りな一撃で簡単に吹き飛ばされた
冗談だろ、なんで龍騎士が突撃技かましてるのに簡単に吹き飛ばされるんだ
勝てねえ、あんなの絶対勝てねえ
俺はますます必死になって逃げだした
気味悪い程ぴったりと着いてきやがる、いや憑いてきてるのか?
誰か…誰か他に俺を助けてくれる奴はいないのか
今度も俺の叫びに応えるようにファングが横合いから現れて両手剣を振りかぶって叩き込む
化け物はファングの攻撃を籠手の逆向きのトゲで受け止めるが剣がすぐに引き戻されるために俺の時のように折られることはなかった
ファングは右から左から何度も素早く剣を振り下ろしては引き戻してるが化け物はそれらの攻撃をどれも簡単に受け止めている
攻撃は通用してないが時間稼ぎにはなってる
このまま時間を稼げればなんとかなるかも
そんなことを考えたのがいけないのかそれともレティシアがこのままではらちが開かないと考えたのかファングがバックジャンプで化け物から距離をとると手に持っていた両手剣が消えてその代わりに弓が現れた
ファングは弓を構えて矢をつがえると化け物を狙ってまず一射を放った
化け物は籠手で射線を遮ると「カン」と軽い音を立てて簡単に止めた
ファングは慌てずに矢を三本つがえて続けざまに三射放った
だが三連射の矢も化け物の両手にある籠手で簡単に止められた
どうもあの化け物は飛び道具に簡単に対処できるほど実力が高いようだ
ファングはそれでもまだまだとでも言いたいのか更に六本の矢をつがえて三本ずつ素早く二回放った
だが連続で放たれた六本の矢でさえ化け物には一発も当たることはなかった
弓も通用しなかったからなのかファングは両足の機能を使って空中を蹴ってどんどんと上空へと上っていく
これってもしかして坑道で巨大蜘蛛に止めを刺したやつじゃ…
そこまで思い至って先ほど龍騎士が吹っ飛ばされたことを思い出す
おいおい…、このパターンって
そう思い返してる間にもファングは遥か上空から跳び蹴りで隕石のように、流星のように化け物目がけて落下してくる
だめだ、それは返り討ちにあうフラグだ、今すぐやめろー!
俺の声が届くはずもなくファングも化け物が大振りに振りかぶった拳がジャストミートして遥か彼方の空へと飛ばされた
だめだ、だめだだめだだめだ
こんな化け物勝てるわけがねえ
シーザーもレティシアも簡単にやられちまったじゃねえか
どうすればどうすればいい、このままじゃやられる
二つ首の化け物は一歩一歩俺を威圧するように、俺の恐怖を楽しむようにゆっくりと俺に近づいてくる
俺は虎と馬の顔を持つ化け物が怖くてたまらない
怖くて怖くて…戦意を完全に失くした俺はいつの間にか尻餅を着いて白騎士から生身に戻っていた
ただ逃げたくて逃げたくて尻餅をついて腰が抜けたままずりずりと少しずつ後ずさっていた
それでも化け物がゆっくりと一歩進むだけで距離は縮まり逃げることも出来なくなった
化け物が拳を振り上げる
ああ…、もう終わりなのか
俺は観念して目を閉じた
ガシィン
このまま拳を振り下ろされて終わりかと思った
けど痛みを感じなかったからどうなったんだろうと目を開けたら二本の剣を交差させて化け物の拳を受け止めている巨人がいた
(???)
「情けないぞ、情けないぞ、それでもかつて俺を倒した男なのか」
拳を止めたその巨人の名前は
(レナード)
「フレイド…」
思わず呆然となってその巨人の名前を呟く
それはもう倒したはずの男だった
それはもうこの世界にはいないはずの男だった
さっきから色々とおかしいとは思っていたけどこれではっきりとした
俺は夢を見ているのだと
(フレイド)
「貴様はそんな程度だったのか?」
そんな程度か、確かに今の化け物に怯えてガタガタ震えてる俺は情けないよな
そんな程度かと言われても反論出来ない
(フレイド)
「俺はそんな腑抜けに負けたなどとは思いたくないな」
腑抜けか…
言い返せないな
フレイドは双剣で化け物を押し戻して反撃に移る
ガンガンと途切れないように両手の剣で連続攻撃を仕掛けるが籠手で受け流される
だが化け物もフレイドの攻撃に慣れてきたのかだんだんと余裕をもって受け流すようになってきて、そして
化け物がとうとうフレイドの攻撃を見切って右の剣を籠手の逆向きのトゲに食い込ませて止めた隙に手刀で剣を折った
それでもフレイドは左の剣で攻撃を続けたが籠手のトゲに挟み込まれて剣を叩き折られた
これじゃもう戦えないじゃないか、こんな状況でフレイドはどうするんだろ
えっ…、何か深く深呼吸して拳を構えたけど
何か覚悟した感じでどっしりと構えてますけど、どうする気なんだ
剣を折られたフレイドがとった行動を理解出来なくて困惑しているとフレイドが離しかけてきた
(フレイド)
「レナードよ、俺は戦うことしか知らない男だ」
(フレイド)
「戦いには勝ちか負けしかない」
(フレイド)
「だからこそ俺にとって負けとは全てを否定されることなのだ、とくに魔界ではな」
(フレイド)
「だからこそ負けることは許されん、どれほど無謀であろうと負けるわけにはいかんのだ、それが俺の誇りだ」
(フレイド)
「貴様は貴様の誇りを思い出せ、そんな情けない男ではないはすだ」
誇りを語るフレイドは何か格好良く見える
誇り…フレイドの誇り、それじゃ俺は…
その時新たな声が聞こえた
(???)
「貴方は何のために戦うのですか」
声のした方を振り向けばそこにいたのはシズナ様だった
(レナード)
「シズナ様」
(シズナ?)
「貴方は何のために白騎士の力をその手に掴んだのですか」
(レナード)
「俺が掴んだのはシズナ様を…ユウリを…レティラを守るための力、そうだったんだ、俺は守るために白騎士の力を求めたんだ」
自分の戦う理由を思い起こしていると何かが降りかかってきた
何だこれは?
拭い取って確認してみればそれは青紫色の液体だった
はっとしてフレイドのいる方を見上げてみるとフレイドは素手で、その拳で化け物に殴り掛かっていた
もちろんそんなものが通用するはずもなく軽く受け止めた籠手の逆トゲが拳に刺さり傷つけていく
さっき降りかかったのはフレイドの拳から溢れた血に違いない
(レナード)
「無茶苦茶だ、拳が使い物にならなくなるぞ」
(シズナ?)
「わかりませんか、彼にはそれでも戦わなくてはならない理由があることを、貫かなくてはならないものがあるということを」
貫かなくてはならないものって…、こんな時に貫くものって誇りか?
あいつの誇りは…、負けることは許されんとか負けるわけにはいかないとか言ってたな
負けたらそこで終わりだからと
終わりたくないから立つのか、生きたいから負けたくないのか、負けたくないから、生きるために貫きたいから立ち上がるのがフレイドの誇りなのか
なら俺は…、俺の誇りは…
シズナ様…、ユウリ…、レティラ…
そうか、簡単なことだったんだ
白騎士を掴んだ理由、それそのものが俺の戦う理由で、俺の誇りだったんだ
自分の中の理由と誇りを確りと自覚出来たからか自分の中の何かが変わった気がする
正直言えば今も化け物は怖い、震え上がるほどに怖いことに違いはない
だけど怖いから逃げるという気持ちだけでなく怖いからこそ恐怖を乗り越えてみんなを守りたいという気持ちがある
その想いが逃げ出したい自分の恐怖を上回っている
確りと化け物を見据えることが出来る
(シズナ?)
「なくしたもの見つけることが出来たようですね」
(シズナ?)
「捨てたものは見つからないけど失くしたものなら不思議と見つけることが出来るものです、もう大丈夫ですね」
(レナード)
「はいシズナ様、俺は今戦っている
(シズナ?)
「貴方に渡したいものがあります、今の貴方ならきっと使いこなせるから」
えっ、俺なら使いこなせるものって、いったい何を渡す気なんだろう
(作者)
「一回飛ばしたから毎度お馴染みとは言えないけど後書きコーナーだよ」
(レティシア)
「何で前回は飛ばしたのかの?」
(レティラ)
「書くことがなかったんだって」
(レティシア)
「確かに前回は話が進んだだけだったから後書きで書くようなことはなかったの」
(作者)
「そんで今回書くこととしてレナードを恐怖のどん底に陥れている化け物について書こうかと」
(レティシア)
「とは言え虎頭に馬頭に逆トゲの篭手となればばればれだの」
(作者)
「だよね、グランサーを折られて盛大に負けたことでジェネラルギガースのソーンはトラウマとして心に刻み込まれたわけだねー」
(レティシア)
「だから虎と馬の頭がついたトラウマギガースなんて言う洒落た化け物になって出てきたわけよな」
(作者)
「まーね、それではまた次回お会いしましょう」