ー少年は喫茶店に入った。
「そういえばメアド聞いてなかったな・・仕方ない、後で聞いとこう。」
「ご注文は?」
「あー・・コーヒー1杯。ミルク入れて下さい。」
「かしこまりました。他に何かございますか?」
「いえ、大丈夫です。」
「はい、かしこまりました。しばらくお待ちください。」
「どうも。あと、あとで一人来ると思うので、よろしくお願いします。」
「はい。分かりました。」
コーヒーが出された頃、ドアベルが鳴る音がした。
「いらっしゃいませ~。」
「えっと、男の子来てませんか?私と同い年の。」
「そうですね・・一人来ていらっしゃいます。あの方です。」
「あっ、あの人です。ありがとうございます。」
「ごゆっくりどうぞ。」
聞きなれた声と、店員が会話する声が聞こえる。
「お待たせ。」
「やぁ。何飲む?」
「ううん、いい。」
「何か飲まないと失礼だよ。1杯だけ飲んだら?」
「うーん・・ならカフェオレ。」
「おっけー。すいません、カフェオレ下さい。」
「かしこまりました。」
「ごめんね、待ったよね?」
「そんなに。さっき来た所だから。」
「そっか。」
「メアド教えてくれる?聞くの忘れてたから。」
「いいよ。・・はい、これ。」
「ありがとう。こっちからメール送るわ。それ俺のだから。」
「うん。」
「お待たせしました。カフェオレになります。」
「ありがとうございます。」
「ごゆっくり。」
「バイトはどうだった?」
「本当は13時からなんだけど、店長に呼び出されて12時からになった。あ、悪い話じゃないよ。」
「大変だね。」
「そうでもないよ。サボりが二人いるけど。」
「二人も?」
「ちょくちょく抜け出してタバコ吸ってる先輩が二人。だからいつも働いてるのは俺と、もう一人の先輩。」
「その先輩は良い人なの?」
「あぁ。真面目だし、パスタを作るのは店で一番上手い。」
「健介君は何作ってるの?」
「サラダとかスープとか。たまにピザ。」
「パスタは作らないの?」
「店長や田中さんがいるから。やらないことはないんだけど、まだ二人には及ばないよ。」
「そうなんだ。」
「うん。あ、無理に飲まなくていいよ。」
俺は飲み終えたのを見て、妖夢は残りを一気に飲もうとしていた。
「でも、待たせちゃうし。」
「いいよそれくらい。先に会計してくる。」
「うん。分かった。」
「すいません、先に会計いいですか。あのテーブルです。」
「はい、コーヒーとカフェオレなので980円です。」
「1000円で。」
「どうもありがとうございます。スタンプカードはお持ちでしょうか。」
「あぁ、これですか?」
「ありがとうございます。5個たまりましたので、次回は1杯無料です。」
「どうも。」
「ごめんね、お待たせ。」
「じゃあ行こうか。」
「待ってよ、カフェオレの分払ってない。」
「いいから。ほら、行くよ。」
「ダメだって。あの、カフェオレいくらでしたか。」
「530円ですが。」
「530円ですね。えっと、500円玉と・・」
「?もうお支払いは済んでおりますが。」
「えっ?」
「・・ほら、行くよ。」
俺は顔が赤くなるのを感じつつ、妖夢の手を引いて店を出る。
「ありがとうございました。またどうぞ。」
「払ってくれたなら先に言ってよ。」
「・・恥ずかしいじゃん。」
「そっか。ごめんね。」
「早く行こう。あそこだろ?」
「うん。まず服を見ていい?4階なんだけど。」
「いいよ。・・って、おい。」
「どうかした?」
妖夢は俺に体を寄せ、手を握ってきた。
「人が見てるだろ。俺らはただの友達なんだから・・」
「いいでしょ?」
「良くない。」
また顔が赤くなるのを感じた。しかし、妖夢はやめようとしない。
振りほどこうとも思ったが、逆に妖夢を傷つけるかもしれない。結局、そのまま4階まで来てしまった。
「何買うの?」
「上の服。一着だけだけどね。」
「ここで買わなくても、近くのスーパーにあるけど。」
「ううん、ちょっといい服が買いたくて。」
「買うのは妖夢だからいいけど・・気になってるのはある?」
「あれかな。あの黒いの。」
「あれ?あれは男物だろ。こっちだ。」
「違うよ、私の服じゃなくて。お父さんに買うの。」
「お父さんに?」
「うん。だからついてきてもらってるの。健介君なら分かるかなって。」
「俺はお父さんじゃないんだが。そもそも妖夢が引っ越してから会ってないし。」
「でも男の子でしょ。普段着てるものをイメージしてくれればいいから。」
「でも年の差がありすぎるだろ。・・さっきのはちょっと大きいんじゃないかな。それに、こっちのズボンを合わせた方がいいよ。セットみたいだから。」
「そうすると高いね。ならこっちは?」
「これは派手すぎない?もっとこっちのやつとか・・」
妖夢は服選びが苦手なのか、それとも俺が拘りすぎているのか、中々決まらない。結局、好みの服を聞かれ、俺が選んだものを買うことになった。
「これ意味ないと思う。」
「いいの。買って来るから外で待ってて。」
「分かった。」
ー少女は服を持ち、レジへ向かう。
偶然にもピッタリ2000文字になってました。今までで一番長いですね。
次回はまた来週末です(もうこの言葉も信用なくなってるけれど)