そして長くすると言ったのにこの量である・・
「えー。以上を持ちまして入学式を終了します。」
やっとか。校長の話は案の定つまらない上に長い。
だが、担当の教員は見た感じよさげだ。逆じゃなくて本当に良かった。
「よーし、2組、行くぞ。さっさと配るもの配って早く帰ろうや。な?」
担任はさっきは文に怒っていたが、どうやら面倒くさい訳ではない様子で、むしろ快活だ。
これは女子から人気が出そうだ。・・ぶっちゃけ、イケメンで体格はガッチリとしているし。
・・いや、俺は何を考えてるんだ?
「んじゃぁ、これで最後な。うちの学校はバイトは許可制だ。いいな?これに書いて申請すること。申請なしでのバイトが発覚したら、俺もちゃんと措置を取らないといけなくなる。」
『「はーい。」』
「よし、あと霧雨、ちょっと来い。」
「あっ、はい。」
おいおい、まさかいきなりバイトの話か?
廊下に出ると、担任ー名前は佐藤翔と言うらしいーが、仁王立ちしている。
「霧雨、お前の事情は分かってるが、一応紙を出してくれ。」
「あぁ、もちろんです。」
「働く時間は考えろよ?それと、バイトが変わったら必ず伝えること。時々見に行くからな。」
「その時は先輩に作ってもらいますね。僕はまだ下手なんで。」
「まぁ、考えておこう。戻っていいぞ。」
その後、簡単な自己紹介をすることになった。案の定、陽キャっぽい奴らはふざけたし、陰キャっぽい奴はぼそぼそと話したせいで何言ってるのかよく分からない。
・・にしても、文は何を考えてあんな自己紹介をしているのだろうか。
『どうも~、世界一の新聞記者、清く正しい射命丸文でーす。中国のころから学校新聞を書いてて、高校でも書くつもりでーす。その時は皆さんのことを書くかもしれないんでよろしく~。ちなみにアシスタント募集中だけど給料は0円になりまーす。以上でーす。』
クラスには大受けだが、よく初日からあんなことがやれるなぁ・・
ー放課後。
「健介君、一緒に帰ろ!」
妖夢が声をかけたが、俺は今日用事がある。・・そして、その場に妖夢がいると困る。
「いや、今日は・・その・・」
「そっか、バイトだっけ?でもこんな時間から行くの?」
「いや、違うけど・・」
「?私のこと、嫌い?」
「違う違う、そうじゃねーよ。だから・・」
あぁ、もう完全にパニックになってしまった。どうする・・
「ちょっと佐藤先生の所に行くんでしょ?バイトのことで。」
助かった!咲夜ナイス!ありがとう!
「そ、そうなんだ。長引きそうだし、先に帰っててよ。」
「いいよ、私待ってるから。」
「妖夢、健介君がいいって言ってるんだから、いいんじゃない?」
「うーん、そうなんだけど。」
「とにかく、俺は先生の所行かないといけないから!行ってくる!」
俺は逃げるように教室を出た。・・そして、向かう先は、勿論文が待っている所ー屋上だ。
鞄を持って階段を駆け上がるのは、さすがに疲れる。が、今はそれどころではない。
「文?」
そう言うと、屋上に立つ黒髪の少女が振り向いた。
「健介さん、待ってましたよ。」
「ごめん。ちょっとごたごたで。」
「いいですよ。・・それで、あの。結果は?」
「えーっとね・・」
俺はとっくに答えを決めていたが、一応悩んだふりをしてから答えることにした。
「文。お前が俺のことを好きになったのは、『あの時』なんだよな?」
「そうですよ。」
「それでさ。俺、色々考えたんだ。お前とどう付き合っていくか。」
「はい。」
「・・やっぱり、俺は受けれない。嫌ってるわけじゃないんだ。でも、文と付き合うのは・・違う気がした。」
「・・そうですよね。」
文の声が、僅かに震えた。
「文のことは確かに好きだ。でも、それは愛じゃなくて・・」
「分かってます、分かってました。私じゃダメなんだろうなって。」
「ごめん。」
「いいんです。これで吹っ切れました。・・もう、健介さんのことで悩まなくていいんだって。」
「どういう・・?」
「だから、これで最後にしますね。・・我儘ですみません。」
すると、俺の頬に、文の口が触れた。同時に、俺の背中に、文の両手が触れた。
俺は、思わず抱き返した。
たった数秒のことなのに、とても長く感じた。
「これからも、よろしくお願いします。」
「うん。」
文は俺から離れると、ニッコリと笑って屋上を出た。
読んで下さってありがとうございました。
とりあえず、今後も不定期になりそうです。少なくとも今年度の2月くらいまではこれが続くと思いますがどうかよろしくお願いします。