スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダーthird 作:風人Ⅱ
―機動六課・食堂―
―――仮面ライダーfirst、本郷滝達が早瀬智大と共に、firstの時を盗みに現れた怪人……タイム・イシリットを倒した次の日。滝は日課である皆の朝食を食堂の厨房で作りながら、考え事をしていた。
滝(―――十文字が言っていた新しい改造人間……ショッカーは、暫くは動きを見せない……)
テキパキと手馴れた手付きで料理を作りながら滝の頭に蘇るのは、先の事件でタイム・イシリットを追っていた中で再会した、自分と同じショッカーの改造人間である仮面ライダーsecond……十文字隼人からの忠告の言葉だった。
隼人『―――ショッカーは今までとは比べ物にならん改造人間を作り始めた……それ故に暫くは活動はしない……』
真司『……え?』
滝『……話の意図は?』
隼人『まず一つは、俺以外の奴にヤラれるなって事だ』
滝『二つ目は?』
隼人『一月程はショッカーは何もしない……暫くは身体を休めろ』
真司『アナタはショッカーですよね?なんで……』
隼人『ショッカーとして戦うのがくだらなく感じてきてな……』
滝『……脱走か?』
隼人『その内するつもりだ……』
真司『でもショッカーは……!』
隼人『裏切り者を許さない……だろ?ショッカー相手に喧嘩も悪くない……』
滝『十文字らしいな……』
隼人『その内、全てを話す……それまで殺られるなよ?』
そう言い残し、ショッカーを脱走する意志を自分達に伝えて何処かへと去っていったのが、先日十文字と交わした会話の内容だった。
滝(まあ、十文字が来るまで待つしか無いか……今はアイツの情報待ちか……)
スバル「おはよー」
ティアナ「おはようごさいます」
はやて「おはようさん」
滝「お、皆起きてきたか。んじゃそろそろ……」
新たな改造人間の事が気にならないと言えば嘘になるが、向こうもショッカーが何処で見ているか分からない以上、きっと下手には動けない筈。
ならば十文字がどんな方法で接触して来てもすぐに受け取れるように常に気構えておかなければと、今は件の事は忘れて速る気持ちを抑えながら思考を切り替え、そう言えばアイツは飯とかどうしてるのだろうかなどと考えながら滝がフライパンから料理を移そうとした、その時……
隼人「朝飯か……くくっ、待ってたぜ……」
滝「…………」
『…………』
……………………………………。
何か、意外にも礼儀正しくナプキンなんか肩から掛けて、ナチュラルに六課メンバーの間の席に座って今か今かと滝の料理を呑気に待ちわびてやがった。
フェイト「―――って、な、なんで十文字がっ!?」
シグナム「貴様っ、また六課に侵入して来きたのかっ!!」
呆気に取られるのも一瞬。フェイト達は直ぐさま我に返って十文字から離れるように飛び退いていくが、当の本人である十文字はクツクツと不敵に肩で笑い、
隼人「そう気構えるな。俺は―バキィッ!!―ぶぼぶっ!?」
全員『!!?』
と、何かを語ろうとした十文字の台詞を遮るかのように無表情の滝がフライパンで十文字を殴った。調理中に付き加熱済みで。んで……
―ガシッ!ズールズール……―
顔を抑えて悶絶する十文字を六課の外へ引きずりーノ、
―バキィッ!! ドガァアッ!!グシャアッ! !ゴキャアッ!!―
殴りーノ
―ザックッ……ザック……―
埋めたーノだった。
滝「さ、朝ご飯ですよー」
スバル「ね……ねぇ滝兄……」
なのは「な、なんか、犯罪事をしてないっ?」
滝「いんや?そんな事ないぞ」
ミユ「おっはよー」
滝「お、起きたかミユ」
ミユ「玄関に赤い水溜まりが有ったけど、アレなーに?」
滝「ん、そんな事はいいから朝ご飯にしようぜ」
なんでもないデスよー、とあからさまにわざとらしい口調で片手を振りつつ知らん振りを通し、滝はキッチンに戻りながら内心愚痴をこぼす。
滝(ったく、十文字の奴、直接六課に来るなんてなに考えてんだか……昨日みたいに外で会うとか考えなかったのかよ……)
などと考えながら、料理を作り直していた最中……
隼人「うぅっ……本郷ぉおお……てめぇええ……よくもォォおおおッ……!」
まるでホラー映画に出てくるゾンビさながら、十文字が血まみれで這い蹲りながら食堂に入ってきた。
滝(ちぃ!頑張り屋さんめっ!!)
ヴィータ「また来たのかよ……」
エリオ「す、凄いボロボロっ……」
キャロ「滝さん、さっき何をしたんでしょうっ……」
隼人「俺はだなァあっ……!ショッカーのっ―――!」
と、奇特と言うべきか懲りもせずと言うべきなのか、十文字がめげずに此処へ来た事情を説明しようとするも、
滝「まあ、話はコッチでしようや……」
―ガシッ!ズールッ、ズールッ……―
ティアナ「ちょ、滝さん……まさかっ……」
そんな十文字の片足を掴み、外へ引きずるように連れ出す滝。そんな彼の背中を見送りながら、一同が嫌な予感を覚える中……
―バキィイッ!! ゴキャアァッ!!グシャアァッ!! バゴォオッ!!ズールッズールッ……バッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッ!!!!―
滝「さ、朝ご飯の続きですよー」
……どうやって聴いても犯罪臭しかしない音がしばし外から聞こえた後、頬に返り血らしきものを残して滝が手を払いながら帰ってきたのだった。
なのは(なんか、海の方に大きなモノを投げ捨てる音がしたような気がっ……)
フェイト(何しに来たんだろ、十文字ってっ……)
気にはなるものの、先の音を聞いた後では実際に口に出しては聞けず、結局その後も何も滝に聞けないまま少し気まずい雰囲気の中で朝食を済ませていくはやて達。そしてその後、朝食を済ませた滝は一通り洗い物を片付けた後、十文字を投げ捨てた海へと向かったのだった。
◆◆◆
―海岸―
機動六課を出て、十文字の用件を確かめるべく彼を投げ捨てた海へ向かう滝。その隣には、滝と同様十文字の件が気になり同行を申し出たカツラの姿もあった。
カツラ「滝、いくらなんでも問答無用で海に投げ捨てるのはやり過ぎじゃないか?」
滝「食堂にはスバルやギンガ、ミユ、チンク達が居たからな……まだアイツ等には聞かせたくねぇんだ」
カツラ「……成る程。お前らしい理由だな」
そんな談笑をしながら歩いている内に海辺へと到着し、二人は早速十文字の姿を探して辺りを見渡していく。
滝「さて、確かこの辺りに投げた筈なんだが……」
カツラ「…………。おい、滝……まさか、アレじゃないかっ?」
滝「うん?」
何処となく声が震えてるように聞こえるカツラが指差したのは海の方であり、その指差す先を視線で追っていくと、其処には……
―ギーヨッギーヨッギーヨッギーヨッ……!―
隼人「」
……一瞬、水死体と見間違えそうになるほど肌の色が青白く変色した十文字がプカプカと海を漂い、その上には、何も知らぬカモメの大群が十文字の背中に止まって羽を休める光景があったのだった。
滝「……あー……あれからずっと漂っていたらしいな……しかもちょっと目ぇ離した隙にカモメの休憩所になってやがるし……」
カツラ「見事に体温を感じさせない色になってるが……アレ、本当に生きてるんだろうなっ」
滝「仕方ないな……」
自分と同じ改造人間があの程度でくたばる筈もないと思うが、このまま目覚めずカモメの餌にされても困るので起こしてやるかと、滝は溜め息混じりに近くの石を拾う。
カツラ「お、おい……!お前まさか?!」
滝「おいコラー!!何時まで寝てんだ!!起きろォー!!」
―ビュオォオオオンッッッ!!!!―
滝が拾った石で何をしようとしてるかいち早く悟ってカツラが止めに入ろうとするよりも早く、滝は十文字目掛けて思い切り石を投擲した。
――さて、突然だが此処で一つ確認である。
知ってる人間なら誰もが知ってる事だが、この本郷滝の身体は改造人間であり、その力は変身せずとも素手で岩をも砕く事が出来る程の馬力を誇る。
其処で一つ問題なのだが……
Q.改造人間が加減も無しの腕力で投擲した石を、水死体同然で海に浮いてる人間に投げたらどうなる?
A.殺傷力100%の凶器と化し、相手は沈む。
―ドッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアアアァァンッッッッ!!!!!!―
滝「…………あ」
カツラ「あ」
……石は見事に直撃。しかしその破壊力はまるで軍事ミサイルさながらであり、石の直撃をまともに喰らった十文字は巨大な水柱の中に姿を消し、水しぶきが晴れると、其処には海に浮いていたハズの十文字の姿は何処にも見当たらず、海面に泡のようなモノがブクブクと泡立っている光景しか見当たらなかったのだった。
カツラ「お、おい……滝……」
―ブクブクブクブクブクッ……トプンッ……―
滝「……沈んだ」
カツラ「沈んだな……」
滝「…………」
カツラ「…………」
重い沈黙。いよいよ持って犯罪っぽい事態になってしまい、気まずい空気が二人の間に流れる中、十文字の上に止まっていたカモメ達が『ギャアッ!ギャアッ!』と鳴き声を上げて何処かへと羽ばたいていく光景を無言のまま暫し眺めた後……
滝「――よし、帰るか」
カツラ「そうだな。俺は何も見ていないからな?」
やっちまったもんしょーがねー的なノリで開き直って軽く流し、苦笑いを浮かべながら帰ろうとする二人。が……
隼人「テメエェエエエエエエエらァああああああああああああああああッッッッ!!!!!!」
―ザバアアアアアアアアアアアアァァァァッ!!!!―
滝「ぅ、ぅおおおおおおっ?!十文字っ?!」
そんな二人が歩く先に回り込むように、突如海面から死んだかに思われた十文字がカモメの羽根やらワカメやらを体中に張り付けて飛び出し、二人の目の前に立ち塞がったのだった。
滝「オ、オォ、ヨカッタ、ブジダッタカっ?」
カツラ「ソウダナっ、シンパイシタンダゾっ?」
隼人「とてつもなく心の籠もってない言葉だな、おいっ……!!」
そんな見え見えのフリなんざ入らんわっ、と十文字は苛立ちを露わに身体に巻き付いたワカメやら羽根やらを引っぺがして地面に叩き付けていき、気を取り直すように一度咳払いした。
隼人「全く……とにかくだ。俺が来た用件は……解ってるな……?」
滝「……ああ」
十文字の身に纏う雰囲気が切り替わる。それだけで、今此処に立つのは戦場で幾度となく渡り合った好敵手としての十文字隼人に変貌し、その気配を肌で感じ取った滝の顔付きも"戦士"としてのソレへと変わり、向かい合う。
隼人「ショッカーを抜けたが……お前との決着は着けたいんでなァ!!」
滝「いいぜ……決着を着けたら、イロイロと話して貰うぞ!!」
―バッ!―
互いにジャケットを翻し、腰のベルトを露出させ変身の構えを取る。十文字は両腕を水平に右に伸ばし、滝は右腕を左に伸ばして左拳を腰に当てる。
カツラ「はぁ……存分にやり合え、バカども……」
そんな二人の意志を汲み取り、カツラも溜め息混じりをそう呟きながら二人の戦いの邪魔にならぬよう滝と十文字から離れていくと、滝は左右の腕を入れ替え、十文字は両腕を右から左に移し拳を握り締め……
滝「ライダァアアアアッ……」
隼人「変っ身ッ!!」
―ギュイィイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!!!―
二人のバックルの風車が紫電を散らして勢いよく回転し、それと同時に、滝と十文字の身体にダークトーンの緑のライダースーツが身に纏われる。そして、十文字はマスク上半分がメタリックグリーン、鼻にあたる部分から後頭部に掛けて白く塗り分けられたマスクとクラシャーを。滝は今までの戦いの歴史を物語るように無数の傷痕が刻まれた、ダークグリーンのマスクとクラシャーを取り出して顔に装着し、変身を完了した二人の複眼に光が灯った。
first『そろそろ……』
second『あァ……決着を着けるかァああッ!!!』
待ちわびたこの時が遂に来たと、歓喜を露わに雄叫びを上げて右拳を握り、爪先で地を蹴り上げながら飛び出す十文字……second。
それに対し、瞬時に左足を後ろに下げるように足幅を広げて迎撃態勢を取り、拳を振りかざしながら飛び掛かって来るsecondに目掛け左拳を飛ばす滝……first。
互いの胴に全力で打ち込まれるクロスカウンター。吹き飛ぶ二つの身体。
しかし、身体から砂埃を落としながら身を起こす二人の仮面の下の口元には、ニヤリと不敵な笑みが浮かび上がる。「そう来なくては」、と。
二人の仮面ライダーは互いに再び構える。
互いに認めたライバルとの決着を着ける為に……。
◆◆◆
―???―
―――同時刻、firstの世界の某所。
firstとsecondの決闘が火蓋を切って落とされたその頃、一筋の光すら差さない、何処までも闇だけが広がる空間。
まるで、其処だけ世界から切り離されたのかのような不気味な静寂に包まれ、人の気配を一切感じ取る事が出来ない。そんな闇の中……
―ブォオオンッ……ブォオオオオンッ……!!―
闇の空間の中心……其処には何故か、一台の白い車型のマシンがマフラーから白い煙を噴き出し、まるで産声を上げるようにエンジン音を辺りに響き渡らせていたのだ。
そして、其処へ……
―カツッ……コツッ……ジャラッ……―
『…………』
暗闇の中で足音を響かせ、闇の向こう側から、不意に姿を現した一人の仮面の戦士……。
全体のシルエットは暗闇に覆われているせいでその姿は良くは見えないが、唯一、何故か手足に嵌められた囚人のような手枷と足枷から垂れ下がる、引き千切ったような鎖が闇の中で揺れる様だけは僅かに見えた。
そして、仮面の戦士は何処か物憂げに闇に覆われた空を僅かに見上げた後、手足の鎖の音を響かせながらゆっくりと白い車型のマシンに乗り込み……
―ブォオオォンッ……ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォォンッッッッ!!!!!!―
エンジンを蒸かし、何処かに向かう様に猛スピードで走り去っていく白いマシン。
―――そして、仮面の戦士を乗せた白いマシンが去った後、まるで何か不吉な予兆を知らせるかのように、闇に覆われた空からヒラリと、無数の"黒い羽根"が降り注ぎ始めたのであった―――。