スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダーthird 作:風人Ⅱ
―SHOCKER TOWN・レース場―
―ブォオオォンッ、ブォオオォンッ……!!ブォオオオオオオォンッ……!!―
──翌日の朝、ショッカーが有する巨大レース場に轟音のようにエンジンをふかす音が響き渡る。
レース会場の観客席は満席。ショッカーの戦闘員達で埋め尽くされた客席は黒一色と化しており、そんな戦闘員達が歓声と共に見つめる先には、レースを前にそれぞれのマシンの調子を確かめるショッカーライダー達と、トライサイクロンに乗るthird、そしてエクセリオンに乗るエンジンの選手達の姿があり、更に観客席の最上部に当たるスタンド席には三つの十字架が立てられ、飛鳥と祐輔と零が張り付けにされながらもエンジンを見守る姿があった。
飛鳥「シン先輩……」
祐輔「進さん……頼んだよ……」
零「俺達の命運はアイツ次第、か……にしてもまた磔とか、ショッカーはどの世界でも考える事が同じみたいだな……―バキィッ!―ぐっ!」
『無駄口を叩くな!』
「…………」
十字架に張り付けにされる今の自分の姿から、以前オーズの世界でも似たような目に遭った事を思い出し憂鬱げに溜め息を漏らす零だが、そんな零を黙らせるように二人の見張り役であるショッカー怪人のフロッグが零を殴り付け、その様子をフロッグと同様に見張り役を任されたショッカーユーゲントの少年隊員達も無言で見つめるが、その顔は何処か浮かなく複雑げに見える。
そんな中、サーキット場の様子が中継で世界中に流されるテレビの映像から、世界中の人々に向けてジェノバからの演説が響き渡る。
ジェノバ『諸君。これより、我がショッカーのエースであるthirdを始めとしたショッカーライダー達と、反逆者エンジンによる頂上レース……ライダーGPの開催を此処に宣言する。史上最強最速の称号を手にするのは誰か、私も愉しみでならない。我々ショッカーに未だ反抗する者達も、このレースを観て改めて認識するといい。ショッカーの偉大さを、そして、我々に反逆する事の無謀さを!エンジンの徹底的な敗北を持って証明するとしよう!フフ、ハハハハハハハッ!!』
「……お父さん……」
ジェノバの演説と共に、エンジンやthirdを始めとした出場選手のライダー達とマシンが次々と紹介されていく。その様子を大衆の人々が不安げに見守る中、その中には以前祐輔が目撃した父親をショッカーの監視隊員に殺害された少年の姿もあり、少年は血に濡れたfirstのチラシを固く握り締めながら固唾を呑んで中継が映る大画面を見上げていた。
そして、レース場では自身に充てがられたグリッドでエクセリオンと共に待機するエンジンは一世一代の勝負を前に深く深呼吸をし、別のグリッドで待機するthirdが搭乗するトライサイクロンを見据えていく。
エンジン(……あの時の俺は、自分自身に疑問を抱いて俺なりの走りが出来なかった……けど、今は──)
ED『──緊張しなくとも大丈夫さ、進。今の君と私とエクセリオンならば、thirdにも決して遅れを取りはしない』
エンジン『……そうだな。頼りにしてるぜ、ドライバーさん?』
ED『ああ、任せておきたまえ!』
そう言ってバックルのディスプレイに笑みを浮かべ、頼もしく応えるエンジンドライバーにエンジンも緊張が和らぎ仮面越しに微笑み、ハンドルを力強く握り締めながらピットロード出口のスタートシグナルに目を向けると、シグナルは既にカウントダウンに入り始めており、thirdや他のショッカーライダー達もそれぞれ気合いを露わに身構え、そして……
―プッ……プッ……プッ……ポォーーーーオォンッ!!―
エンジン『行くぜぇええええっ!!』
third『フッ……!』
『『『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおおおぉぉっっっ!!!!!!』』』
―ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォンッッッ!!!!!!―
シグナルのランプが緑に点灯した瞬間、エンジンとthird、ショッカーライダー達は一斉にマシンのアクセルを力強く踏み込み勢いよく走り出したのであった。
他のライダーを抑え、最初に先頭を駆けるのはthirdのトライサイクロン。
そんなthirdの後を追うように他のライダー達もマシンを全速力で走らせる中、その後ろからエンジンが駆るエクセリオンが他のショッカーライダー達を次々とごぼう抜きしていき、thirdのトライサイクロンと並んで僅かな拮抗の末に先頭へと躍り出ていく。
ED『thirdを抜いたぞ!』
エンジン『よしっ、このまま一気に──!』
third『……甘いな。お前はこのレースの趣旨を理解していない!』
thirdのトライサイクロンを抜いてこのまま一気にトップを独走しようとアクセルを更に加速しようとしたエンジンだが、そうはさせまいとthirdがハンドル脇のスイッチを操作した瞬間、トライサイクロンの一部の装甲が展開して無数のミサイルが露出し……
―バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!!!―
ED『……!進ッ!』
エンジン『ッ?!なっ、うわぁあああああああああああッ!!』
―ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドォオオオオンッッッ!!!―
撃ち出された無数のミサイルがエクセリオンの上空から立て続けに降り注ぎ、反射的にハンドルを操作した事で直撃こそ免れたものの爆風でバランスを崩し、車体が勢いよく横滑りしてコースから外れてしまったのであった。
飛鳥「シンさんっ!」
零「おいっ、今のは反則じゃないのかっ?!」
ジェノバ『おや?ショッカーが主催するレースが、まさか真っ当なモノだとでも思っていたのかい?これは最強最速を決めるライダーGP、生半可なレースで私が満足する筈がないだろう?』
祐輔「っ……貴方って人は何処までも……!」
最初に説明するべきルールを今になって公言し、愉快げに嗤うジェノバ。その悪辣さに祐輔達も思わず険しげに眉を顰め、コーナーアウトしてしまったエンジンも仮面の下で顔を歪めながらもハンドルを再び手に取っていく。
エンジン『ようするに何でもアリって事かよっ……そっちがその気ならこっちもマジだッ!』
―ギュイィィィィィィィィィィィィィィィィイッッ!!!―
third『そうだ、その戦いを勝ち抜いてこそ、最強最速のライダーだ!』
ぱちぱちッと火花が散る視界を振り払うように頭を振り、アクセルを一気に踏み込んで猛スピードでコースへと戻るエンジンと、復帰したエクセリオンをバックミラーで確認し笑みを深めるthird。
コースを外れてる間に最後尾まで順位が落ちてしまったエクセリオンだが、その遅れを取り返す為に全速力で前方を走るショッカーライダー達を追い掛ける中、後方から迫るエクセリオンに気付いた守が変身するマグスがすかさずバックルに右手にはめた指輪を翳していく。
『Megaton!Please!』
―ドゴォオオオオオンッッッ!!!―
エンジン『?!何だありゃっ?!』
ED『巨大な腕……!誠と同系統の魔法か?!』
鳴り響く電子音と共に、マグスは左脇に出現した魔法陣に片手を突っ込んで巨大化した左腕を振るい、後方から迫るエクセリオンを妨害してきたのだ。それを見てエンジンもすぐさま巨大化したマグスの左腕を避けるようにハンドルを切って回避し続けていき、技が通じないと感じ取ったマグスは新たな指輪を取り替えた右手をバックルへと翳していく。
『Chain!Please!』
―ジャラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!ガシィイッッ!!―
エンジン『クッ!今度は拘束かよっ!ドライバーさんっ!』
ED『OK!タイヤフェエエエルッ!!』
―ギュイィィィィィィィィィィィィィィィィイッッ!!!―
エクセリオンの周囲に無数に現れた魔法陣から今度は鎖が飛び出してエクセリオンを雁字搦めに拘束してしまうが、それも想定していたかのようにエンジンドライバーは咄嗟にエクセリオンのタイヤからエンジンがタイプチェンジに用いる無数のホイールを射出し、宙を飛び回るホイールで鎖を引き裂いて鎖の拘束から脱出後、そのままマグスを抜いていく。
一方、他のライダー達を引き離してトップを独走するthirdはそのままゴールラインを超えて二週目へと入るが、その後方からジェノスが変身するストライクが駆るストライクギャリーが追走し、その巨体を存分に駆使して上位のライダー達を跳ね除けながら次々と追い抜いていき、遂にトライサイクロンを抜いて恭司が変身する迅武のマシンと並ぶが……
third『……鬱陶しい……例えショッカーのライダーであろうと、俺の勝利を阻むのなら容赦はせんっ……!!』
―ガギィンッ!ギュイィィィィィィィィィィイッッ!!!―
迅武『?!―ズガァアアアアンッ!!―う、うわぁああああああッ!!?』
ストライク『うあぁあああああああああぁッ!!!』
トライサイクロンの両タイヤ側面から槍が飛び出し、炎熱化しながら勢いよく回転し出したのだ。そしてトライサイクロンの両脇を走るストライクギャリーと迅武のマシンのタイヤを粉砕し、二機のマシンはそのまま勢いよく転倒し爆散してしまう。
祐輔「ジェ、ジェノス君っ!恭司君っ!」
「お、同じショッカーライダーまで……?!」
「仲間じゃないのか?!」
零「アイツ、何処までも容赦なしか……!」
自分が勝利する為なら同じショッカーライダーまでも容赦なく蹴落とすthirdにショッカーユーゲントの少年達も動揺を隠せず、零も爆風の中から飛び出して疾走するトライサイクロンを鋭く睨み付ける。
そして、未だ後続のエンジンもコース上に転がる無残な姿に変わり果てたマシンの残骸を横目に険しげに顔を歪めながらも、それを振り払うようにゴールラインを走り抜けて二週目へと突入していくが、その時……
『CLOCK UP!』
エンジン『?!なっ……?』
不意に何処からか鳴り響いた電子音と共に、全速力で走るエクセリオンの周囲の景色が突然スローモーションのようにゆっくりと遅く流れ始めたのだ。いきなりの事態にエンジンも驚愕し思わず周囲を忙しなく見回す中、エクセリオンの前方を走るマシンに乗る戦士……ルドガーが変身したカブト系統のライダーであるモスラが自身のマシンから空高く跳び上がり、その手に握り締める光を纏った槍を掲げてエクセリオンを狙い定める姿があった。
ED『マズイ……!回避だ進ッ!アレはまともに喰らえばひとたまりもないぞッ!』
エンジン『言われなくても分かってるッ!けどっ……!』
モスラが掲げる輝く槍から嫌な予感を感じ取ったエンジンドライバーが必死な声で回避を促すが、クロックアップを使われた影響でエクセリオンが思う様に走れず回避行動に移る事が出来ない。
焦るあまり忙しなくハンドルを切りエンジンがまごつく中、モスラは光り輝く槍を限界まで引き絞り……
モスラ『マター・デストラクトォオオオオッッッ!!!』
―バシュウゥウウウウウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!―
ED『進ッ!!!』
エンジン『クッ!!』
黄金の軌跡を描き、モスラの手から放たれた槍が真っ直ぐエクセリオンを捉えて豪速で迫り来る。最早直撃を免れられないと悟ったエンジンはこうなれば一か八かだと覚悟を決め、このまま特攻し構わず突き進もうとした、その時……
―ブォオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!―
『TIME QUICK!』
ウィザード『ハッ!』
クロノス「てりゃああああッ!!」
―ガギィイイイイイイイイイイイイイイイインッッッ!!!!―
モスラ『何?!』
エンジン『?!』
輝く槍がエクセリオンに直撃する寸前、突如その間に割り込むかのようにコース外から一台のマシンが超スピードで飛び出し、槍を弾き返したのである。
いきなり乱入してきたマシンに技を妨害されモスラは驚愕し、エンジンも息を呑む中、モスラの槍を防いだマシン、マシンウィンガーに搭乗する二人組……零の手回しにより逃がされたと聞かされていた筈の誠が変身したウィザードと、その後部座席に乗るアリサが変身したクロノスはバイクから降りモスラの前に立ち塞がった。
エンジン『誠、アリサっ?!お前らどうして……!』
ウィザード『どうしてって、決まってるじゃないですか……!進さんを助けに来たんですよ!』
クロノス「大体の事情はあのディケイドから聞いてるわ!アンタは先に行って!その代わり、アタシらの分まで響志朗の顔を引っぱたいて来てもらうわよ!まぁ後で直接ぶん殴るんだけど!」
エンジン『っ……!悪ぃ……!助かるっ!』
この場を引き受けると言ってくれる二人に感謝し、エンジンはアクセルを踏み込んで引き離されるトライサイクロンを追い掛けて走り出していく。それを見てモスラも慌てて後を追おうとするも、それを遮るようにウィザードとクロノスが立ちはだかる。
ウィザード『悪いな、こっから先は通行止めだ!』
モスラ『ッ……!お前らっ……!』
クロノス「そう嫌そうな顔しなくても、後ろから来る奴らも含めて相手してやるわ。……っていうかさっきから気になってだけど、アイツの槍から妙な気を感じるのよね……親近感?みたいなの」
CB『だろうな。アレは異世界でクロノスと同じ名を冠する精霊と深く関わりある力……何れにせよ油断ならないのに変わりはない。全力でいけよ?』
クロノス「わーってるわよっ。ともかく、あの二人が決着付けるまで相手してもらうわ!」
『TIME QUICK!』
モスラ『チッ……!クロックアップッ!』
『CLOCK UP!』
―フッ……ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアアッッ!!!!―
モスラをこの場で足止めする為、電子音声を鳴り響かせながら超高速で動き出しすクロノスと、再びクロックアップを用いてクロノスに引けを取らない速さで衝突していくモスラ。
一方のウィザードも周囲を駆け巡る二つの残像を目で追いながらバックルに指輪を翳し、魔法を行使してモスラの足を止めようとクロノスの援護を行っていく。
そして二人のおかげで先に進めたエンジンがエクセリオンを加速させ、遥か前方の上位ショッカーライダー達を追い掛ける中、後方から追い掛けてくるエクセリオンの存在に気付いた上位組のショッカーライダー達はそれぞれ武器を手に取り、エクセリオンを一斉に攻撃しようと身構え掛けた、その時……
『SIGNAL BIKE!』
『SIGNAL KOUKAN!TOMA-RU!』
―バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!!―
アギト『……?!な、何だっ……?!』
オーズ『バ、バイクが止まったっ?!』
不意に何処からか電子音声が響き渡り、直後に無数の銃弾が何処からともなく飛来してショッカーライダー達のマシンに着弾した瞬間、ショッカーライダー達のマシンが突然停止し一切動かなくなってしまったのだ。
急に動かなくなった自分のマシンの不調にショッカーライダー達も停止したその場で困惑を露わにし、そんな彼等を抜き去ったエンジンも訝しげな様子を浮かべる中、サイドミラーに一台の見慣れた黒いマシンに乗ったライダー……フェイトが変身するソニックの接近に気付いて驚愕を浮かべた。
エンジン『フェイトっ?!』
ソニック『助太刀に来たわ進!此処は私が引き受けるから、貴方は先へ──!』
―ババババババババババァッ!!―
ウィザードとクロノスに続き現れたソニックを見て戸惑うエンジンだが、其処へ止められたマシンから降り実力行使に出たショッカーライダー達による一斉射撃が二人の背後から襲い掛かり、二人は咄嗟に左右に散開し銃弾を避けると、ソニックがマシンを方向転換させながらスロットルシューターによる乱射でショッカーライダー達を迎え撃ち、エンジンに呼び掛ける。
ソニック『響志朗との決着は貴方に任せるわ!このレース、負けたら承知しないわよ!』
エンジン『っ……すまねぇ!頼んだ!』
ショッカーライダー達を引き受けるソニックの後押しを受け、エンジンはエクセリオンのスピードを更に加速させて障害のなくなったコースを走り抜けていく。
そうして、遂にトライサイクロンの背後を捉え徐々に距離を詰めていき、迫り来るエクセリオンに気付いたthirdも仮面の下で不敵な笑みを浮かべる。
third『来たか、エンジン……』
エンジン『リベンジマッチだ……!いくぜthirdッ!』
此処からが本当の勝負。遂に訪れた一騎打ちを前に闘志を燃え滾らせるエンジンは素早くギアを切り替えながらトライサイクロンの後を追走し、僅かな好機を逃さずトライサイクロンを追い抜いて前へと躍り出ていく。
だが、thirdはそれを読んでたかのようにエクセリオンの脇を素早く抜けて再び前に出ていくが、エンジンも負けじとコーナーを利用してトライサイクロンを追い抜いていく。
飛鳥「シンさん……!」
すずか「いけっ……!其処よ進ッ!」
鳰「負けるなっス!シンせんぱぁーーーーいっ!!」
正に一進一退。その様子を飛鳥達だけでなく、中継で食い入るように観戦する市民達や逃亡中のすずかと鳰も固唾を呑んで二人のレースを見守る中、長い拮抗の末にとうとうエクセリオンがトライサイクロンを追い抜き、そのまま加速してトライサイクロンを引き離そうと徐々に距離を開いていくが……
third『──マダだっ……俺は勝ツっ!どンな手を使っテでもォッ!!』
―バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!!―
エンジン『ッ!うっ、くっ……づぁああああああああああああああッッッ!!!?』
―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアアァァァンッッ!!!!!―
飛鳥「ああっ……?!」
祐輔「進さぁんッ!!」
仮面越しに狂気染みた眼を血走らせ、再びトライサイクロンから立て続けに乱射したthirdのミサイル攻撃がエクセリオンへと襲い掛かった。
頭上から飛来する無数のミサイルの数に今度は直撃を避けられず爆発に見舞わられ、エクセリオンは横滑りに吹っ飛ばされながらコースの壁へと勢いよく激突しまっただけでなく、激突の衝撃によりエンジンが外へと投げ出されてゴロゴロと地面を転がり力無く倒れ込んでしまったのだ。
そして、地に叩き付けられた身体を激痛を堪え必死に起こそうとするエンジンの前に、トライサイクロンを停めたthirdが悠々と勝ち誇るようにエンジンに呼び掛ける。
third『どうだ、これで理解したか?この世界の正義であるショッカーに仇なすお前では、俺には勝てない……!正しさはこちらにあるのだ!道を間違えた貴様が、俺達に敵う筈がないのだからな!』
この世界を統べるショッカーとジェノバこそが正義であり、それに歯向かうエンジンや他の仮面ライダー達は排他されるべき悪でしかない。
その事実を、地に伏せる今のボロボロのエンジンの姿と共に突き付けるように高らかに告げるthirdの言葉に、中継でエンジンの勝利を内心望んで見守っていた市民達も暗い影を落として俯いてしまい、やはりショッカーに勝てる筈がないのだと誰もが諦め掛けていた、その時……
エンジン『──祐輔から聞いたよ……お前がそうやって勝ちに拘るのは、firstとsecondを殺した事を後悔してるからなんだろ……?』
third『…………』
土を握り締め、ふらつきながらも身を起こして立ち上がるエンジンが語ったソレは、響志朗が旅の中で誠を制止する為に放った言葉。
それに対しthirdは一瞬口を閉ざし黙ってしまうが、すぐに顔を逸らして馬鹿馬鹿しげに否定する。
third『それは連中を欺く為の嘘だ。無効化の神である祐輔や嘗ての断罪の神からの疑いを払拭するには、真実に嘘を交えて自ら告白するのが一番だと──『いいや、本音だ!』……!』
淡々とした声音で、あの時の言葉に騙す以外の意味などないと吐き捨てようとしたthirdの言葉を遮るかのようにエンジンが突然声を張り上げ、thirdが僅かな驚きと共にエンジンに顔を向けると、エンジンは一歩踏み出しthirdを見据えたまま言葉を続けていく。
エンジン『ショッカーが保有するデータベースを調べて、知ったんだ……お前が、他の奴らのように脳改造を受けていないって事を!』
third『ッ!』
thirdは……黒井響志朗は脳改造を受けてはいない。それはつまり、彼は滝達のように元の人間の心のままである事を意味していた。その事実を突き付けられthirdが息を拒んで動揺を露わにする中、エンジンは目を伏せて自身の推理を口にしていく。
エンジン『お前は人間の心を失ってなんていなかった……だから祐輔達に自分から罪を告白したのも、本当は心の何処かで望んでいたからなんじゃないのか?誰かに、自分の間違いを糾して欲しいと……』
third『ッ……!俺が間違ってるだとっ?ふざけるなッ!俺は何も間違えてなどいないッ!正義は俺にあったッ!だからfirst達は敗れたんだッ!俺が正しかったからっ、奴等が間違っていたからッ!最初からそう決まりきっていたからこの結果になったッ!そうだろうッ?!』
firstとsecondが自分に敗れたのもこの歪んだ世界が生まれたのも、総ては最初から自分が正しかったから。
正しいから勝利し、間違っているから敗北する。
勝てば正義、負ければ悪。
だから二人は敗れた、それが真理なのだと、トライサイクロンから降りて人が変わったようにエンジンに詰め寄るthirdに対し、エンジンは何処か哀れむような眼差しを向けて徐に口を開く。
エンジン『前にもお前はそう言ってたよな……けど、お前が言うように最初から正しい奴が勝つと決まってるなら、お前が其処まで勝利に貪欲になる必要なんてない筈だ……それでも勝つ事に拘り続けて来たのは、お前が……何より理由を欲してたからじゃないのか?正しかった筈のfirstとsecondが、ショッカーという悪に与したお前に敗れてしまった……その理由を……』
third『……ッ!』
そもそも、彼が勝利に拘る考えにはずっと違和感を拭えなかった。
thirdが言うように、最初から正否で勝ち負けが決まるのであれば、わざわざ勝者と敗者を正義と悪に別ける必要などない。
何処か矛盾を感じさせるその思想も、その始まりとなったきっかけが、firstとsecondを殺害した後悔の念を断ち切りたいが為に抱いたものだとすれば……
エンジン『本当は、初めから分かってたんだろ……?firstとsecondの正しさも、ショッカーが間違ってるって事も……だから二人がショッカーの手先である自分を打ち倒し、間違いを正してくれるかもしれないと……彼等の正義が勝つ事を、本当はお前自身が誰よりも望んでた……でもお前は、firstとsecondに勝った……"勝利してしまった"……』
third『……やめろ……』
エンジン『だから勝利を求め続けた……!二人の敗北を、人々の希望だった仮面ライダーを手に掛けてしまった罪を、「自分が間違っていなかったから」だと他の要因で理由付けしようとした……!自分の勝利には意味があったのだと言い聞かせ、受け入れようとした!そうでもしなければお前自身が一番、二人の死に納得出来なかったから!』
third『やめろっ……』
エンジン『他のライダー達と戦う旅をした時にも、お前の中で迷いがあった筈だ……firstとsecondを殺したお前には、もう最強のライダーという称号以外に何も残されていないから、勝ち続けるしかない……でも同時に思ったんだ。他のライダー達と戦い続けていれば、二人と縁深い誰かが自分を倒してくれるかもしれない……十字架でもある最強のライダーの称号を、誰かが終わらせてくれるかもしれないと……!だから祐輔達や、一度は負かした筈の俺の事も助けたんだろっ?!自分の間違いを糾してくれるかもしれない、そう望みを掛けて──!』
third『やめろと言っているんだァアアアアアアアアアッッ!!!』
―バキィイイイイイイイッッ!!!―
エンジン『ぐぁあッ?!』
何処かthirdに訴え掛けるように歩み寄ろうとしたエンジンだが、そんなエンジンの言葉を振り払うようにthirdの拳が放たれてエンジンを殴り倒し、thirdは倒れるエンジンを見下ろしながら拳を震わせ怒号を上げていく。
third『俺が迷うっ?間違いを糾して欲しかったっ?肥大妄想も甚だしいっ……!!俺は俺の為だけに勝利を求め続けただけだっ!!俺の存在はこの歪んだ歴史の中にしかないっ!!俺が生きられる世界は此処にしかないっ!!だからお前達を欺き、蹴落としたっ!!そんな俺に迷いなど生まれる筈がないんだぁっ!!』
エンジン『ッ……いや、俺には分かる……俺にも、迷って走れなかった時があったから……』
third『っ……!』
それをお前も知ってる筈だと言外に言われ、最初にレース勝負をしたあの日……ショッカーに疑念を抱いて戦えずにいたエンジンの事を思い返し息を呑むthird。
そして、あの時の自分から立ち直る事が出来たエンジンはそのきっかけを与えてくれた飛鳥やウィザードを交互に見つめた後、再びthirdに目を向けて真摯に語る。
エンジン『俺は……あの時の俺から変わる事が出来た……お前に負けてあんなに悔しい思いをしたってのに、今は負けたっていいとさえ思ってる……』
third『負けてもいいっ……?ふざけろっ!!負けた奴は歴史の闇に葬られて消えていくだけだっ!!今まで積み上げてきた物も一切残らずっ、全てっ!!』
エンジン『そんな事はないっ!!現に俺はカツラ課長が遺した意志を、こうして今も胸に宿してショッカーと戦ってるっ……仮面ライダーになる事が出来たっ!!負けても誰かに何かを残す事が出来るんだっ!!勝とうが負けようが、大切なのは今だっ!!何を残す為に今っ、何をするかだっ!!』
「……何を残す為に……今、何をするか……」
力強くthirdにそう言い放ったエンジンの言葉が、中継の前で諦めのあまり項垂れていた人々の胸を打ち、一人、また一人と顔を上げて画面に映るエンジンの姿を捉えていく。
その中に混じる一人の少年も、エンジンの言葉を胸に父親の遺した血塗れのfirstの絵が載ったチラシを見つめ、ショッカーユーゲントの子供達もいずれ改造人間となる運命の自身の掌を震える瞳で見下ろす中、彼らと同様に手首に枷を嵌めた己の右手を見つめていたthirdは震える手で拳を握り……
third『そんな、ものっ……そんなものは負け犬の吐く言葉だァああッッ!!!』
―ドゴォオオオオッッ!!!―
エンジン『ぐっ……!!』
ガシャアンッ!!と、悲痛な雄叫びと共に放たれたthirdの拳が再びエンジンの顔を捉えて殴り飛ばし、エンジンはそのままエクセリオンのドアに勢いよく背中から叩き付けられてしまう。そしてそんなエンジンを見据え、thirdはエンジンを殴り飛ばした拳を胸に掲げながら叫ぶ。
third『俺は俺が積み上げてきた物を無為になどさせないっ……!!その為に俺は勝つっ!勝って勝って勝ち続けてみせるっ!!』
俺が信じるのはそれだけだと言い捨て、thirdは再びトライサイクロンに乗り込みマシンを走らせ、レースを再開させていく。
レース勝負自体はソニック達の乱入も加わり乱戦と化しているが、それでも彼女達の妨害から脱しレースに復帰したショッカーライダー達の姿もチラホラ見受けられ、thirdの前にも何人かのライダー達の後ろ姿が見える。
だが当の本人のthirdは未だそれに眼中は無い。それ所か先程のエンジンの言葉が何度もリピートして頭から離れず、何かに苦しむかのように左目の傷痕を掻き毟っていた。
third『そウだっ……俺は勝つッ……!!勝利だけガっ、俺に許されタ唯一の存在意義ナんだっ……!!』
―お前も仮面ライダーを名乗るなら、覚えておけ……―
third『負けレば全てが無意味にナルっ……!!勝ち続けテっ、オレの存在ヲ誇示し続ケるっ……!!ソウでなくてはっ──!!!』
―俺達の……名は……―
third『──何の為に俺は……あの男をっ……!』
その苦悶に応える声はない。ただマシンが風を切る音だけが耳に届き、誰も自分が欲する答えを与えてはくれないのだ。
だから負けられない。今まで積み上げてきた物を無為にはさせない為に、自分が信じる道を突き進むだけだと、最早狂気すらも逸脱した執念からハンドルを握り締め、トライサイクロンを更に加速させてゆくthird。
その走り去る後ろ姿を残されたエンジンも何処か物悲しげに見つめる中、エンジンドライバーが神妙な口調で語り掛ける。
ED『進、やはり彼を言葉だけで止めるのは不可能なようだ……』
エンジン『あぁ、分かってる……アイツは前の俺と同じだ……先の見えない暗闇の中を走り続けてる……だから今度は、俺がこの手で……アイツを闇から掬い上げてみせるっ!』
それがあの時、自分に道を示してくれた響志朗に借りを返せる方法だとエンジンは決意を固め、再びエクセリオンへと乗り込みエンジンに火を灯していくのであった。