スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダーthird 作:風人Ⅱ
―ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーオオオオォンッッッッ!!!!―
エンジンがレースに復帰しようとするその一方、レースの方はエンジンとthirdが抜けてる間にも状況が動き、ソニックの妨害により足止めを食らったアギトとマグスが復帰して鎬を削る勝負を繰り広げていた。しかし、その背後からthirdの駆るトライサイクロンが猛スピードで迫り……
third『ジャマだっ、俺の前に立つなァッ!!』
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアッッッ!!!!チュドォオオオオオオオオオオオオオオオオォンッッッッ!!!!―
アギト『?!うっ、ああああッ!?』
マグス『ウワァアアアアッ!!』
「ああッ……!」
「アギトっ、マグスっ!」
トライサイクロン前部に搭載されたマシンガンユニットが火を噴いて二人に襲い掛かり、銃弾が直撃したマシンから火花が散り大爆発を巻き起こした。そして爆炎の中に呑み込まれるアギトとマグスを目の当たりにし、ショッカーユーゲントの少年達も思わず身を乗り出し悲鳴染みた声を荒らげた、その時……
『──タイヤフエールッ!!』
―……ブォオオオッ!!ドサァッ!―
アギト『ッ!……え……?』
マグス『こ、これは……?』
爆炎の中から勢いよく飛び出した二本のタイヤ……その上にはマシンの爆発に巻き込まれたかに思われたアギトとマグスの姿があったのだ。
そして二本のタイヤはコースの外にそのまま二人を下ろすと、爆炎の中からthirdを追い掛けて猛スピードで飛び出す一台のマシン……エンジンのエクセリオンの下へ宙を舞いながら戻っていく。
third『!懲りもせずまだ来るか、進……!』
エンジン『借りは返す……!ドライバーさんっ!!』
ED『OK!タァアアアアイプ、バーストォッ!!』
必ずthirdに勝つ。そんなエンジンの力強い決意に応えるかのようにエンジンドライバーが高らかに叫んだ瞬間、エクセリオンの車体がスライドして青いF1ボディへと変形されていき、更に何処からか飛来した戦闘機型のブーストユニットが車体に重なって全く新たなマシンへと生まれ変わった。
これこそエクセリオンの最速フォルム。
エクセリオンの隠し球にして、智大が完成させていた最速のマシン、"エクセリオン・バースト"だった。
third『マシンの形状が……変わった……?!』
エンジン『これが俺達のっ、最後の切り札だっ!!行くぜェえええええええッッッ!!!!』
―ブォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーオオオオォンッッッッ!!!!!―
未知の形状に変化したエクセリオンを目にしthirdが驚愕を隠せない中、エンジンは一気にアクセルを踏み込み、轟音のようなエンジン音を轟かせながらメーターが振り切れる程の速さで他のショッカーライダー達を次々とゴボウ抜きしていく。
そしてそのまま他のショッカーライダー達を引き付けない超スピードでゴールラインを超え、最終ラップ。
トップを独走していたトライサイクロンに徐々に追い付いていき、遂にその横に並んで並走するまでに辿り着いた。
「さ、thirdに並んだ……!」
「すげぇ……!」
「…………」
あの最強最速のショッカーライダーであるthirdに食い付き、遂に横に並んだエンジンの姿にショッカーユーゲントの少年達も驚きを禁じ得ず目を奪われ、中継を見守る少年も思わず両手に強く握り締めた血塗れのfirstのチラシに目を落としていく。
―大切なのは今だっ!!何を残す為に今っ、何をするかだっ!!―
「何を……するか……」
少年の脳裏を過ぎるのは先程thirdに言い放ったエンジンの言葉。父親を失ってから口を閉ざし、ショッカーという強大な悪に対し今まで何もする事が出来ず俯く事しか出来なかった自分に今何が出来るか。
父親がいつも聞かせてくれたfirstの勇姿を思い起こし、俯いていた顔を上げ、中継でトライサイクロンと一進一退の激闘を繰り広げるエクセリオンを見つめながら徐に口を開き、
「が……ん、ばれ…………がんばってっ…………仮面ライダァーッ!!」
「「「?!」」」
「……あ?」
声を震わせ、中継に映るエンジンのエクセリオンに向けて大声で声援を送る少年。その声と内容に他の民衆達も驚愕を露わに思わず少年の方へと振り向きどよめきが広がる中、民衆の動きを見張るショッカーの監視隊員の一人が険しい顔付きで振り返り、恐怖で退く民衆達を尻目に未だエンジンに声援を送り続ける少年の下へと近付いていく。
「がんばれぇええッ!!がんばってライダァーッ!!がんばれぇええええッ!!」
「ハハッ、ショッカーを前にして敵の応援とは度胸があるじゃないかぁ……だから嫌いなんだよ、頭の悪いガキは……!」
迫るショッカーの隊員を前にしても、一歩も退かず応援し続ける少年に対しショッカー隊員も歪な笑みを浮かべるが、それも一瞬。
直後に苛立ちを顕にした表情でデバイスに手を掛け、一切の情け容赦なく少年に父親と同様の処罰を与えようとした、その時……
「う……ウワァアアアアアアアアアッ!!」
―ガバァッ!―
「?!なんっ、なんだお前っ?!―ガシィッ!―がっ?!」
「お、おい貴様等ッ!何をやってっ「ああああああああッ!!」ウァアアッ?!」
ショッカー隊員が少年を手に掛けようとした寸前、少年の近くに立つ一人の青年がいきなりデバイスを持つ隊員へと突っ込んで腰にタックルするようにしがみつき、隊員が困惑するその隙にまた別の男達が飛び掛かり隊員を地面に取り押さえたのだ。
その光景を目にし他の隊員達が駆け付けようとするも、男達の行動に触発された民衆達がそれを阻むように体当たりや、数人掛りでの羽交い締めで次々と隊員達を無力化させていく。
「お、お前らっ……!ショッカーを相手にこんな事をしてタダで済むとっ……?!」
「そんな脅しなんて効くもんかっ!!もうお前達には従わないっ!!」
「俺達の手で残すんだっ……!!改造人間なんかになる未来じゃないっ、あの子達が笑って生きていける未来をっ!!」
「だから頼むっ!勝ってくれ仮面ライダーッ!!」
「仮面ライダァアアアアッ!!」
「がんばれっ!!がんばれぇええええええっ!!」
鳰「お、おお……!すずか!」
すずか「うん、良い流れじゃない……!行きなさいシンっ!!負けたら承知しないわよぉおおおおーーーーっ!!」
彼等もエンジンのあの言葉に影響を受けたのか、他の各地でもあれほど恐れていたショッカーの隊員達を相手に果敢に挑んで次々と取り押さえ、民衆の大半がエンジンに向けて大音量の声援を送る光景を前にすずかと鳰も歓喜を露わにし、彼らに負けじと変装の衣装をとっぱらいエンジンに向けて声を大に声援を送っていく。
そして、そんな彼等の声援を受けるエクセリオンも最速フォルムに恥じぬ走りで横に並ぶトライサイクロンを徐々に追い抜き前へと出ていく中、此処で初めて危機感を覚えたthirdはギアを素早くトップに切り替えながらアクセルを一気に踏み込むと、トライサイクロンの後部ブースターから勢いよく火が噴かれてマシン全体に緑色の光を纏い、更に速度を加速し引き離され掛けたエクセリオンとの距離を一気に縮めていく。
飛鳥「ま、また速くなったっ……?!」
ED『バーストと同等か!やはり最速のライダーの名は伊達ではないかっ……!』
エンジン『だったら俺達はっ、更にその先へ往くだけだッ!!』
―ガチャンッガチャンッガチャンッ!!―
ED『SO·SO·SO·SONIC!』
―ブウォオオオオンッッ!!ブォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーオオオオォォォォォンッッッッ!!!!―
最速フォルムであるバーストに並ぶトライサイクロンに負けじと、エンジンは右腕のブレスのレバーを素早く倒し、エンジンドライバーを通してエクセリオンのスピードを極限まで高めていき、赤い光を全体に纏ったエクセリオンでトライサイクロンに挑む。
既にメーターはとっくに振り切れて激しく回転し、マシンに纏う光を炎のように放出しながらお互いのマシンを押し退けてでも先へ往こうと激しく体当たりし、並走する二台のマシン。
そして、コーナーリングを抜けた先に二人を待つのは一直線のストレートコース。
その先に見えるのは、この混沌と化した激闘のレースの勝敗を決するゴールラインだ。
『勝負は最後のストレートだ……!』
祐輔「進さんっ……!!」
飛鳥(シン先輩……!)
エンジン『うぅううおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおおおおぉッッッッ!!!!!』
third『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおおおぉッッッッッ!!!!!』
―ガギギギギギギギギギギギギィイイイイッッッ!!!!ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオオオォンッッッッ!!!!!!―
最後は小細工抜きの純粋なスピード勝負。
白熱と化した勝負の決着を前にフロッグも思わず食い入り、祐輔と飛鳥、零や少年達を含めた全ての人々がエンジンの勝利を強く祈る中、激しく火花を散らしながら衝突し合っていたエクセリオンとトライサイクロンは赤と緑の線を描きながら限界を超えた速さでゴールラインに目掛け突き進み、そして……
third『勝つのはっ──俺だァああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあああァッッッッ!!!!!』
最後の力を振り絞って全力で駆け抜け、トライサイクロンがゴール直前で僅な差で前に出る。
エンジン『届けぇええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえええぇぇッッッッッ!!!!!!』
だが、その背後からエクセリオンが一瞬トライサイクロンを抜き返した。
そして……ほんの僅かな僅差。
───エクセリオンの先端がトライサイクロンよりも前にゴールラインを超え、それと同時に、エンジンの勝利と長いレースの終わりを告げるサイレンが会場全体に鳴り響いたのであった。
「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!」」」
『ば、馬鹿なぁあっ?!』
「やった……やったぁああああああああああッ!!」
「仮面ライダーが……勝った……!」
鳰「すずかぁーッ!!やったっスっ、先輩がやったっスよぉーッ!!」
すずか「えぇ……!えぇっ!」
エンジンとエクセリオンの勝利を目の当たりにし、中継を見守っていた民衆の間で湧き上がる大歓声。
thirdの敗北にフロッグや他のショッカー隊員達が信じられないものを見たように呆然となる中、エンジンを応援していた少年はfirstのチラシを手に嬉しさのあまり跳び上がり、すずかと鳰も他の民衆と同様に抱き合って喜び合い、ショッカーユーゲントの少年達も本来敵である筈のエンジンの勝利に自然と笑顔を浮かべていた。
そして、飛鳥と祐輔もエンジンの勝利に安堵と喜びで胸を撫で下ろす中、零は飛鳥の顔を見つめて口を開く。
零「大した奴だな、アンタのとこのライダーは……」
飛鳥「……はい。シンさんが走る時は、まっすぐ、正しい道を突き進むんですっ……!」
それが私の信じる仮面ライダーですからと、胸を張って力強く言い切る飛鳥。その言葉に零も「……そうか」と何かを感じ取ったように微笑を浮かべながら瞳を伏せ、祐輔もそんな二人のやり取りを見て思わず微笑むが、其処でハッとなりレース場の方へと振り返る。
祐輔「響志朗さん……」
third『………………』
各地でエンジンの勝利に人々が沸き立つ中、彼に敗北したthirdはトライサイクロンの運転席に座ったまま動かずにいた。
狂的なまでに勝利に固執して戦い続け、初めて味わう敗北に何を想っているのか。
仮面に顔を覆われてるせいで感情の起伏は読み取れないが、やがて、thirdは徐にドアを開けて外に出ると静かに仮面を脱ぎ捨て、遠い空をジッと見つめ立ち尽くす中、そんな彼の下に変身を解除した進が歩み寄っていく。
進「……どうだ?案外悪くない感じするだろ、負けてみるってのもさ……」
響志朗「……進……」
仮面を脇に抱え、響志朗が振り返る。そんな彼に対し、進は初めて響志朗と出会った時の事を思い返しながらポツポツと言葉を続けていく。
進「俺は、お前に負けたから成長する事が出来た……課長の意志を継いで、仮面ライダーとして戦う決意を固める事が出来た……だから、その借りを返したかったんだ」
響志朗「……成る程……その為のレースでもあった訳か」
得心を得たと、進の言葉に思わず微笑してしまう響志朗だが、その笑みもすぐに複雑なものに変わり、進に背を向けてトライサイクロンへと歩み寄ると、ドアに触れながら重々しく口を開いていく。
響志朗「俺は……初めからこうだった訳じゃないんだ……。何処にでもいる普通の人間で、人並みの夢を持っていた……だが初めてショッカーに改造された時、気付いて目覚めた時には既に手術台の上で、その時一度だけ奴らに反抗した事があったんだ……しかし奴らの力は強大で、俺一人の力では到底敵わない相手だった……その時俺は奴らに恐怖し、屈服してしまった……」
進「……そうだったのか……」
響志朗「ああ……そして、そのすぐ後だった……俺が……firstとsecondを手に掛けたのは……」
そう語る声からは、響志朗自身の深い後悔の念が伝わってくる。
仮面の左眼に刻まれた痛々しい傷痕をなぞり、響志朗は瞳を伏せて改めて自身の本心を語り続ける。
響志朗「自分が間違ってる事は分かってた……なのに俺は、ショッカーへの恐怖に抗えず、あまつさえ、人々の希望であったあの二人の命を奪った……お前の言う通り、後悔し切れない後悔を覚えた……それでも誰かにその本心を口にする事など出来なかった……そんな資格は俺にはないと、俺自身が分かっていたからな……」
進「……響志朗……」
永く押し殺し続けてきた本心を告白する響志朗に、複雑げに眉を寄せて俯く進。
そして響志朗は力無く両腕を下ろし、嘗て自分の前に立ちはだかったある男の姿を脳裏に浮かべていく。
響志朗「本郷滝……最期までショッカーに抗い、傷付きながらも戦い続けた彼の姿が眩しく、俺が選べなかった道を生きるその姿に憧れた……。あんな風に生きられたならと、焦がれもした……だがそう思った時には、全てが遅かった……」
目を閉じると、瞼の裏にいつも決まってあの光景が鮮明に浮かび上がる。
本郷滝の最後の切り札……ZERO driveを相手に相打ち同然の結果で勝利を収めた時の記憶。
死闘のあまり機械の四肢が限界を超えて悲鳴を上げ、血で視界が赤く染った左眼に走る激痛に耐えながら荒い呼吸を繰り返し、見下ろす先に映ったのは両腕が力無く投げ出された血塗れのスーツと、半壊した仮面の隙間から覗く光の消えた彼の瞳。
……あの時の、背筋に走った冷たい感覚は今でも忘れられない。
勝利を得たのは自分の筈なのに、感じたのは途方もない喪失感と、取り返しのつかない過ちを犯したという罪の意識だけだった。
響志朗「……一度手を汚した者は、一生ショッカーの飼い犬として生きるしかない……ショッカーに屈し、罪を犯した俺に出来るのはせめて、勝ち続けて最強を証明し続ける事しか思い付かなかった……俺が敗北すれば、二人の死が本当に無意味になってしまうと……そんな気がして、ならなかったから……」
ショッカーの側に付いた自分に贖罪の道を選ぶ資格もなく、手を汚した以上はその道を生きるしかない。
自身の心の弱さから背負ってしまった罪業と罪悪から自分で自分を追い詰め、滝と十文字の死の幻影に囚われ続けた。
それが最強最速のライダーと謳われた男の本当の姿。正義に焦がれながらも自らソレを遠ざけ、踏み外した道を進み続けた愚かな男の末路。
実に滑稽だろう……?と、そう言って顔を片手で覆い自嘲気味に笑う響志朗に対し、進は自分の掌を見下ろすと、固く拳を握り締めながら言葉を紡いでいく。
進「俺も、さ……一度は道を間違えた事があった……でも、そんな俺を引き戻して、正しい道を歩ませてくれた仲間達がいた……そして教えてくれたんだ……人は間違えても、やり直す事が出来る。仲間がいれば、自分が間違えても、ソイツ等が手を伸ばして道を正してくれるんだって」
響志朗「……俺には、そんな仲間など──」
進「なぁに言ってんだ?ちゃんといるじゃねえか、此処にさ」
響志朗「……ッ!」
そう言って自分の顔を指す進の言葉に、驚きで目を剥いて思わず振り向く響志朗。そんな響志朗に向けて、進もはにかみ明るい口調で告げる。
進「さっきも言ったろ?今の俺があるのは、お前の存在もあったからだ……だから今度は、俺が手ぇ貸すぜ。お前がやり直せるようにさ」
響志朗「……手を差し伸べる、と言うのか……罪人の俺に……お前は……?」
進「おいおい、これでも俺はお巡りさんだぜ?道に迷ってんなら当然手を貸すし……罪を償いたいって気持ちがあるなら、協力を惜しまない……だから来いよ、響志朗。今度はレースじゃない、二人で肩並べて走ろうじゃねえか!」
響志朗「……っ……!」
何処までもまっすぐに、そう言いながら許されないハズの罪人である自分に笑って手を差し伸べる進を見て、思わず息を拒む響志朗。
その姿に一瞬、いつか憧れた彼の姿が重なり、同時にふと、彼が最期の瞬間まで自分に憎しみなどの悪感情を抱いている素振りを見せなかった事を思い出した。
……そうだ。そもそも何故彼はあの時、敵である筈の自分に仮面ライダーの名が何たるかなど説いたのか。
敗北して様々な重圧から脱却された事で、今まで罪の意識の象徴として根付いていたその言葉の意図に今漸く疑問を抱き、左眼の傷痕に触れ、目の前の進と彼を重ねた響志朗の脳裏にある一つの可能性が過ぎった。
響志朗(まさ、か……見抜いていた、とでも……?俺の、心を……彼はっ……?)
いいや、飛躍し過ぎだ。有り得ない。そんな都合の良い解釈がある筈もなし、許される訳もない。
…………だが、もし仮にそうであるなら…………もし許されるのであれば…………。
彼に憧れ、しかしそんな資格はないと自ら突き放したその生き方を、もう一度選べるのであれば───
響志朗「……進……俺は───」
『───フフ……ハハハッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!』
進&響志朗「「?!」」
響志朗が進に答えを口にし掛けたその時、突然何処からか不気味な笑い声が響き渡った。それに驚き二人が笑い声が響く方へと振り向くと、其処には今までのレースを街の中心から高みの見物をしていた巨大マシーン……ジェノバの姿があった。
進「ジェノバ・スカリエッティ?!」
ジェノバ『フッフフフッ……まずは優勝おめでとう、進君。君は本当に素晴らしい逸材だったよ。そのおかげで……私の目的を漸く達成する事が出来るのだからっ!!』
―シュバァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!―
響志朗「?!―ガシィッ!―うぐっ?!ぐっ、うぁああああああああああああああああああああああッ!!!?」
進「ッ?!響志朗ォおおおおおおおおッ!!!!」
狂喜を露わにジェノバがそう叫んだ瞬間、巨大マシーンから無数の触手が伸びて響志朗を捕らえ、そのままマシーン内部に響志朗を取り込んでしまったのだ。
そして、響志朗を取り込んだと同時に巨大マシーンから膨大なエネルギーが放出され、無数のスパークを放ち、凄まじいエネルギーの影響が空に影響を及ぼし暗転させていく。
―バチチチチチチィイッッッ!!!!バチィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイイイィィッッッッ!!!!ー
クロノス「ッ!!な、何よこれッ?!」
ウィザード『そ、空がっ……?!』
零「これはっ……!」
祐輔「響志朗さんを、取り込んだっ……?!貴方は一体何をっ?!」
ジェノバ『フフフフッ、私はずっとこの時を待ってたのさ……thirdが君達に感化され、正しい心を持った仮面ライダーとなる事を。それこそが、このマシーンの真の力を……firstとsecondの電子頭脳をフルに稼働させる鍵となるのだからねぇ!』
進「っ……!響志朗が……firstとsecondの電子頭脳を……?」
響志朗が正しい心を持つ仮面ライダーとなる事が、firstとsecondの電子頭脳を起動させる鍵。
暗闇に包まれる空に声高らかにそう告げるジェノバのその言葉からヒントを得た進は、そのワードを手掛かりに未だ明かされていなかった謎を一つ一つ紐解いていき、点と点が線で繋がる感覚を掴みジェノバを睨み付けた。
進「そういう事か……繋がったぜ……!お前が響志朗に脳改造を施さなかったのも、アイツを他のライダーと戦わせる旅をさせたのも、このレースも全て、アイツを仮面ライダーに仕立てる為に仕組んだ茶番だったんだな……!firstとsecondの電子頭脳を動かす鍵とやらにする為にっ!」
飛鳥「っ?か、鍵っ……?」
ジェノバ『ご明察、誰よりも先に私の意図を読み取るとは流石だねぇ。そう、私がthirdを野放しにしていたのは全てこの瞬間の為……マシーンの真の力を手に入れ、私自身を完全復活させる計画の為だったのさ』
ソニック『……完全、復活……?』
どういう事だと、進以外の全員が困惑を露わにジェノバを見据える中、ジェノバは未だ膨大なエネルギーを放出する巨大マシーンを指して愉快げに口を開く。
ジェノバ『君達に以前語った通り、ショッカーはrebornの力で復活する事が出来た……しかし、私は以前の通り復活するだけでは満足などしない。生前の私以上の力を手に入れ、より完璧な肉体を得て、今度こそ世界征服を成就させる……!その為にはこのマシーンの力と、firstとsecondの魂が宿る電子頭脳から彼等のエネルギーを抽出する必要があったのだが、彼らは死後ですらも私に頑なに従いたくないようでねぇ……こちらからどれほどアプローチを試みても、彼らの電子頭脳は起動しなかった……どうやら意識は封じられていても、私のような悪党の匂いを嗅ぎとって拒むだけの力は残されてたようだ』
やれやれだよと、顔は見えないが肩を竦めてる様子が目に浮かぶ声を漏らし、ジェノバは更に説明を続ける。
ジェノバ『だから私は、彼ら好みのアプローチに試みを変える事にした。彼らと縁のある正しい心を持つライダー達を媒介とする装置を付け足し、私達を彼らの敵ではない事を誤認させ、彼等の頑な心の殻をこじ開けようとしたって訳さ。……だが、捕らえたライダー達はライダー達で私に反抗して思うようにいかなくてね。拘束して彼らを媒介としても、肝心の意志の方で反逆されては電子頭脳も頑なに閉じたままだ。試しに洗脳してショッカーライダーにしても、結果は変わらず……でね』
祐輔「そ、それじゃ……今までライダー達を捕らえてたのは、滝さん達の電子頭脳を起動させる触媒にする為にっ……?!」
零「それが上手くいかなかったから、ショッカーライダーにして手駒に使ってた訳かっ……」
今まで自分達が戦って苦しめられてきたショッカーライダー達も、元々はジェノバの目的の副産物で生まれたものに過ぎなかった。
その事実に驚愕する一同を他所に、ジェノバは飄々とした口調で話を続けていく。
ジェノバ『だが、そうなる事は予め予想は付いていた……だからthirdという保険を用意し、使った。私に逆らう事を予想し、敢えて実行させる事で組み伏せて恐怖で支配し、望まぬ殺人で罪悪感を植え付け、君達に近付けるように仕向ける……そうすれば君達に感化されたthirdがいずれ正義に目覚め、first達のように仮面ライダーとなる。それで電子頭脳を動かすに足る鍵となる事は目に見えていた……後の事は容易いものさ。芽生えたばかりの感情を組み伏せるなど簡単だ。なにより彼が滝君に情景の念を抱いていた事は嬉しい誤算だった。おかげで予想以上に弱り切った彼の心を手折るなど、他のライダー達よりも苦労せずに済むからねぇ……クククッ、ハハハッ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
クロノス「っ、アンタって奴はっ……!」
ウィザード『その為にっ……そんな事の為に響志朗さんの気持ちを利用したのかっ?!あの人から人間としての幸せを奪ってまで、そんな事の為だけにっ……?!』
進「許さんぞ、ジェノバっ……テメェだけは、俺達の手でスクラップにしてやるっ……!!お前の野望は此処で絶対に叩き潰すっ!!」
自分の目的の為に響志朗から人としての人生を奪っただけでなく、彼の苦悩や葛藤、あまつさえ罪を償ってやり直したいという願いすら利用していたジェノバの残忍さにこれ以上にない怒りに震え、ジェノバの魂が宿る巨大マシーンを睨み付けてそう宣告する進だが、対するジェノバはそんな進の憤りも何処吹く風だと言わんばかりにほくそ笑み、
ジェノバ『それはそれは楽しみだ。では早速お手並み拝見といこうかい?此処にいる、全てのショッカーライダーを相手に何処までやれるかをねぇ!』
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアッッッ!!!!!―
ソニック『ッ!?進ッ!!』
―ガバァッ!―
進「うぉおおっ?!」
ジェノバが高らかにそう叫ぶと共に、進に目掛け何処からかともなく無数の銃弾が飛来し襲い掛かった。
しかし寸前で銃弾に気付いたソニックが素早く進を抱えてその場から飛び退いた事で回避し、一同が今の攻撃が放たれてきた方に振り返ると、其処にはレースに参加したショッカーライダー達だけでなく、他のライダー達もあちこちから続々と集まり迫り来る光景が広がっていたのである。
零「まだあんな数のショッカーライダーを残してやがったのかっ……!」
祐輔「くっ、動けないっ……!!みんな逃げてっ!!四人だけでその数は無茶だっ!!」
クロノス「逃げろつったってっ、とっくに囲まれてんのにどうやって逃げろってのよコレっ?!」
ソニック『まぁ、先ず無理でしょうね……こうなったら戦いながら突破口を見付けて、ジェノバ本体を仕留める算段を探るしかないわ……!』
ウィザード『それはそれでキツイですね……!進さん、やれますか?!』
進「っ……ああ、やるぞ皆っ……!firstとsecond、響志朗に変わって、俺達で奴らとの決着を付けるっ!変身ッ!」
―ガチャンッ!―
ED『ENGINE!TYAAAAPE!SONIC!』
敵との間にどれほどの戦力差があろうとも、引く気はない。
此処で必ずジェノバの野望を打ち砕く決意を固め再変身し、エンジンとなった進はソニック、ウィザード、クロノスと共にそれぞれ武器を構えて迫り来るショッカーライダーの大群へと挑み掛かり、得物同士による激突で火花を撒き散らしながら戦闘を開始していくが、その一方で……
―バチッバチッバチッバチッバチッバチッバチィイイイッ…………!!!!―
ジェノバ『あと少し……あと少しだ……フフフッ……』
そんな大乱闘を尻目に、巨大マシーンは未だ膨大なエネルギーが蓄積され続けて周囲の空間に異常気象を巻き起こしている。
その様子をジェノバも不気味な微笑みを漏らしながら眺めつつ、眼下で繰り広げられるライダー同士の戦いをまるで神になったかのように見下ろし不敵な笑みを浮かべていたのであった……。