スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダーthird 作:風人Ⅱ
―――そして、firstの世界から謎の緑色の光が放たれる少し前……
―ガキィイイイッ!!バキッ、ズシャアァッッ!!―
『ぜぇあッ!!ハッ!!』
『ぬぅっ!ヌァアッ?!』
firstの世界とは、また別の次元に存在する平行世界のとある市街地。其処では今、二人の異形が町中の広場で戦闘を繰り広げている姿があった。
片方は、特殊な時間を操る現象、"フリーズ"を起こし、人間を襲う機械生命体……機械仕掛けの神と呼ばれるデウス・マキナから取った『マデュース』と呼ばれる怪人であり、もう一人は仮面ライダードライブとアクセルトライアルを足し合わせて2で割ったようなF1カーをイメージさせる赤いボディと仮面を身に纏い、両肩には車のタイヤのようなパーツを肩当てのように装着し、タイヤのホイールモチーフの奇抜な剣を振りかざしてマデュースと戦う戦士……『仮面ライダーエンジン』がホイールモチーフの剣、ホイール剣を巧みに扱ってマデュースを斬り飛ばすと共に、エンジンの腰に巻かれたエンジンドライバーのバックル中央部のディスプレイに表情が浮かぶ。
ED『よし、今だ進!一気にフィニッシュだ!』
エンジン『OK!決めるぜ、ドライバーさん!』
エンジンドライバーにそう応えながらホイール剣を仕舞うと、エンジンはベルトのバックル右隣部のキーを回してエンジンドライバーのエンジンを掛け直し、右腕の赤いミニカー型のアイテム、"シフトカー"が装填されたブレスレット型デバイス、エンジンブレスのボタンを押して必殺技を発動する。
ED『HISAAAAAATU!FULL THROTTLE!SONIC!』
―ブォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッ!!!!―
『ぐっ……ッ?!な、何?!』
エンジンドライバーからの音声と共に、マデュースの背後から突如一台の車型の赤いマシン……エンジンの愛機であるエクセリオンが轟音のようなエンジン音を鳴り響かせて迫り、エンジンとマデュースの周囲を猛スピードで回転し二人を包囲してしまったのだ。それと同時に、エンジンは体勢を低く沈めてから足元に出現したハイウェイのエフェクトに飛び乗って加速し、宙へと舞い上がって飛び蹴りの態勢を取り、そして……
エンジン『セイリャアアアアアアアアッ!!!』
―ズドォオオオオオォッッ!!!―
『ぬっ、がぁああッ?!!』
ハイスピードで叩き込まれたライダーキックがマデュースに炸裂し、マデュースの身体がくの字に折り曲がる。しかしエンジンの攻撃はそれだけで終わらない。エンジンは自身とマデュースの周囲をフルスロットルの状態でグルグルと高速回転するエクセリオンの車体を蹴って身体を反転させ、再度マデュースにキックを打ち込み、それを何度も繰り返す。
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアアアアッッッ!!!!―
『ウグァアッ?!ガッ?!ゥオオオオッ?!』
その様は正にピーンボールのように加速しながら何度もマデュースに怒涛のライダーキックの連撃を浴びせていき、加速と共に威力を増していくエンジンのキックにマデュースのボディから火花が吹き出し始める。そして……
―ダァンッッ!!!―
エンジン『ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』
―ズドォオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッ!!!!―
『ギッ……?!ギャアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!?』
―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!―
遂に限界値にまで加速したエンジンの最後のキックがマデュースの身体に突き刺さり、マデュースは断末魔と共に内側から噴き出した炎に飲まれて爆発し、宙に浮き上がった三行の数字を模したマデュースのコアも跡形も残さず消滅したのであった。
エンジン『……ふう。どうにか無事に片付いたか』
ED『ナイスドライブ!今日も順当な戦果だったね、進』
エンジン『ま、流石に進化前のマデュースに遅れは取らねぇさ』
一息吐いてエンジンドライバーとそんな談話を交わしながら変身を解除し、エンジンは紺のストライプ入りのスーツと、赤いネクタイを締めた青年……エンジンの装着者であり、超常犯罪捜査課の特事課の刑事である"早斑 進"(ソウムラ シン)へと戻ると、そんな彼の下に整った黒い瞳の婦警姿の女性……進のバディである"朝霧 飛鳥"が駆け寄っていく。
飛鳥「やりましたね、シンさん。街や市民への被害も最小限に済んだようですし……お疲れ様です」
進「おー?珍しいな、氷の乙女(アイス・メイデン)のお前がそんな労いの言葉を掛けてくれるなんて―ギリィイイッ!―イッ?!イダダダダダダダダッ?!」
飛鳥「……私だって、『たま』には労いの言葉くらい掛けたりはしますっ」
からかうようにあだ名を口にした進の頬を抓るように引っ張りながら、正に氷の乙女の名に名前負けしない氷のような冷ややかなジト目を向ける飛鳥。そして進も、漸く飛鳥が離した頬を摩りながら若干涙を浮かべつつ、飛鳥は拗ねるようにそんな進からそっぽを向いて何となしに彼方を見るが……
飛鳥「……?あの……シンさん?」
進「イッテぇ……何だよっ?まだ何か文句言い足りないのかっ?」
飛鳥「そうじゃなくて!アレって……!」
進「あ?」
普段クールな彼女には珍しく、動揺を滲ませた声を上げて慌てて彼方を指差す飛鳥に進も怪訝な表情を浮べ、彼女が指差す方に視線を向けると、其処には……
―ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォッッッッ…………!!!!!!―
其処には、我が目を疑うような異常な現象……地平線の向こうから、巨大な謎の緑色の光が街を飲み込みながら二人の下にまで迫り来る光景が広がっていたのだった。
進「な……何だありゃ……?」
飛鳥「こ、こっちに来ますっ!」
そんな異常な光景を前に進と飛鳥も驚愕を隠せず動揺し、目の前にまで迫った謎の光に飲み込まれる寸前に思わず身を伏せる二人だが……
―キュイィーーーンッ……ガチャッ!―
其処へ何処からか、一つのバイク型のミニカー……シグナルバイクが飛来し、飛鳥の右腰に携行しているシフトカー携帯用のホルダーに独りでに装填された直後、飛鳥はそのまま進共々緑色の光に飲み込まれるが……
飛鳥「―――っ…………?あ、れ……?何とも……ない……?」
進と共に光に飲み込まれた飛鳥だが、これと言って特に身体に異常らしい異常は感じられない。今のは一体?と、思わず飛鳥が周囲を見回すと、其処には……
―ザッ!!!ザッ!!!ザッ!!!ザッ!!!ザッ!!!―
『イーッ!!イーッ!!イーッ!!』
飛鳥「……え……な……なに、あれ……?」
呆然とそう呟く飛鳥の視界に映ったのは、つい先程まで其処にあった筈の彼女がよく知る見慣れた町並みではなく、全く別の光景へと変貌してしまっていたのだ。
立ち並ぶ建物の全てに見慣れない鷹のエンブレムが刻まれ、とある高層ビルの壁に埋め込まれた大型テレビには、『優秀な者が作る世界、ショッカーの描く素晴らしい未来!』と言う広告と共に全身黒タイツの謎の男達が右腕を掲げて並ぶ姿が映し出されている他、街の上空には無数の鷹のエンブレムが描かれた飛行船が眼下の街を監視するかのように浮遊しており、そして何より、一際目を引くのは道路を埋め尽くす程の数の全身黒いタイツの男達が軍事パレードのように整列して規律良く行進し、そんな男達に対して市民達が絶望に満ちた様子で頭を下げて平伏しているという異常な光景を前に、飛鳥も動揺を抑えきれず後退りしていく。
飛鳥「……な、何なの、これ……?どうして急に、こんな……?」
「―――飛鳥?何さっきから一人でブツブツ言ってんだ?」
飛鳥「ッ!し、シンさんっ!街がっ、私達の街が突然―――!」
何もかもが可笑しい。先程までの平穏な街からほんの一瞬でガラリと移り変わってしまった自分達の街を前に飛鳥も混乱が極まり、背後から聞こえた進の声に振り返るが……
進「――街?街がどうしたんだよ?何時もと違ったとこも無し、何処も可笑しくなんてないだろ?」
飛鳥「……え……し、シンさん……?その格好は……?」
飛鳥が振り返った先に見た進はこの光景に対して何の疑問も抱かず、更にその姿も先程までとは違って全く別の衣装に変化していたのだ。
何時も身に纏っている筈のスーツ姿から、白いシャツの上に鷹のエンブレムが左胸に施された黒い革ジャンを羽織り、軍人を連想させるダークグリーンの革のズボンという何時ものイメージとはかけ離れた進の格好に飛鳥も更に困惑してしまうが、よく見れば自分の姿も先程と違い、進と同じように鷹のエンブレムが特徴の黒い制服に変わっていた。
飛鳥「な、何なんですか、コレっ?!」
進「?何って、ショッカー警察の制服に決まってんだろ?本当に大丈夫か、お前?」
飛鳥「えっ……ショッカー、警察……?」
訝しげな顔で聞き慣れないワードを口にする進に思わずそう聞き返す飛鳥。だがその時、突然何処からか着信音のような物が響き渡り、それを耳にした進が何もない筈の宙に何か操作するかのように片手を動かすと、進の前にパネルのような映像が出現した。
進「こちら早斑です。どうしました、課長?」
『―――ショッカー警察本庁からの新たな通達だ。例の襲撃事件の犯人についての新たな手掛かりを見付けたらしい。詳細を説明する為、至急特事課に戻って来てくれ』
飛鳥(……?課長って……この声、久野課長じゃない……?)
進が『課長』と口にした相手の声は、自分が知る特事課の課長である久野のものではなく、全く聞き覚えのない男の声。進はその謎の男と幾つか言葉を交わした後、通信を切り、飛鳥の方へと振り返った。
進「今の聞いたよな、飛鳥。本庁直々の通達だ。急ごうぜ」
飛鳥「ま、待って下さいシンさん!今、通信で言ってた襲撃事件の犯人って……?」
進「……?何って、"仮面ライダー"に決まってるだろ?俺たち特事課の主な任務は、ライダーの逮捕じゃないか?」
飛鳥「……なっ……」
マデュースの撃退ではなく、仮面ライダーの逮捕が自分たち特事課の任務。何の迷いもなくそう言い切った進の言葉に飛鳥も耳を疑い呆然としてしまうが、進はそんな飛鳥の反応に訝しげに首を傾げながらエクセリオンへと向かって歩き出し、飛鳥もそれを見て我に返り慌てて進の後を追って走り出すが、その背後で……
―……カシャッ!―
零「…………」
そんな二人の後ろ姿を、密かに首から下ろしたカメラで撮る一人の青年……黒月零が佇む姿があり、進と飛鳥の写真を何枚か取り終えた後、零は二人に気付かれぬように静かにその場を後にしたのであった……。
◆◆◆
―ショッカー警視庁地下・特事課―
―――とある世界を基点に、突如数多の平行世界が融合してしまった異常現象……通称、『ブレイク・ザ・ワールド』によって生まれてしまったのが、今私達が存在するこの世界の正体らしい……。
原因は未だ明らかになってはいないらしいが、どうやら私達が最初に見たあの緑色の光は他の世界と世界を引き寄せ、光の発生源となった世界を中心に時間軸も時代もごちゃまぜに合わさり、今のショッカーに支配された"平穏な世界"が誕生した……。
そして、仮面ライダーとはそんな平穏な世界を脅かし、人間の自由と平和を破壊する人類の敵……"悪魔"と称されている。
この世界では、とある世界で時空管理局と呼ばれていた組織をショッカーが支配した事でショッカー警察と名を改め、私たち特事課はそんな仮面ライダーを逮捕する為に設立された、警視庁の特殊セクション――という事になってるらしい……。
飛鳥(―――これが、この世界の顛末……?こんなのって……一体何がどうしてっ?)
進「飛鳥?何やってんだ、さっさと入るぞ」
飛鳥「……!は、はい……!今行きます……」
警視庁地下の特事課の部署に進と共に向かう最中、携帯のネットから今の世界に関する情報を調べ、その自分が知る世界とは全く違う現状に呆然と立ち尽くしてしまう飛鳥だが、進に声を掛けられて慌てて彼の後を追い掛け、特事課の扉を何度かノックした進と共に中へと入っていく。其処には……
―ゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポッ……!!―
すずか「――ふんふんふ~ん……あら?今日は随分遅かったじゃない進、飛鳥」
鳰「フフフッ、なんスかー?またいつもの痴話喧嘩でも長引いたんスか?」
飛鳥「っ!す、すずかさん、鳰さん……!」
向かい合せの2つの事務机が6つ並ぶ、特事課の部署。その内の二つの席に腰を降ろすのは、飛鳥が元の世界でも良く知るメンバーである仮面ライダーエンジンのメカニック担当である月村すずか、外部協力者である篠宮鳰なのだが、二人の姿も進や自分と同じように変わってしまっていた。
すずかは如何にも悪の科学者らしい風貌の白衣姿に、爪に不気味な色のネイルが塗られた手で毒々しい液体が入られた研究用バイアルを振りながら妖しげな笑みを浮べ、鳰は飛鳥が知るボブヘアーの髪型に攻撃的なアレンジが施され、服装も黒を基調としたダークな物になっているが、格好だけでなく、二人の雰囲気も目に見えて違っている。
そして、何よりこの特事課で一番違うのは……
カツラ「―――全員集まったな……。さて、ではそろそろ会議を始めるぞ。内容は勿論、各地でショッカーを襲撃しているライダーの残党についてだ」
『桜崎誠、ショッカー襲撃事件』とその詳細について書かれたホワイトボードの前に後ろ腰に手を組んで立つ、飛鳥も知らない長髪の男……嘗て、first/本郷滝と共にショッカーと戦い、今やショッカー警視庁特事課の課長となったカツラ・ヨウランが振り返り、ライダーの残党逮捕の為の会議を始めていくのであった。
◆◆◆
―市街地―
『キミも、ショッカーの一員になり、共に新世界を築こう。キミも、ショッカーの一員になり―――』
――一方その頃、先程までショッカーの戦闘員達によるパレードが開かれていた市街地。其処には、上空に浮遊する無数の飛行船からショッカーへの勧誘広告の音声が流れる中、軍服姿のショッカーの監視隊員達が市民の言動に目を光らせながら徘徊する姿があちこちにあり、市民達はそんな監視隊員達の目から逃げるように早足で走り去り、中には監視隊員の姿を見付けた途端に来た道を引き返すなど、街の何処を見ても、市民がショッカーに対してどれほど畏怖的な感情を抱いているのか垣間見る事が出来る。
「――やっぱり、この世界の人達もショッカーの支配に好意的って訳じゃないみたいだ……」
そんな街の様子を、路地の影からコッソリと盗み見て姿を隠す一人の青年の姿があった。茶髪の髪に、見た目からしてお人好しな感じが一目で分かる物腰が柔らかそうな青年……阿南祐輔は監視隊員が振り返ったと共に咄嗟に路地裏に隠れ、思案するように顎に手を添える。
祐輔(開店準備で店の外に出た途端、急に現れたあの緑色の光……アレを浴びた瞬間、何故かショッカーが支配する世界に変わってて、ミナ達も消えたと思ったらライダーはお尋ね者みたく扱われて……。此処が何処か調べてみた感じ、滝さんの世界に似ているけど……どうしてこんな事に……)
今までの経緯を振り返りながら、祐輔は監視隊員がいなくなったのを確認して再び街中を見渡す。此処が滝の世界なのは間違いなさそうだが、何故彼の世界がこんな事態になってしまっているのか。他の皆はどうしているのか。気になる疑問は幾つもあるが、それを調べるにしても、此処まで監視の目が厳しいと自由に動く事も叶わない。
祐輔(まいったな……これじゃ見動きも取れないし、調べるにしても一体何処から「ショッカーの支配を許すなァーっ!!」……ッ?!)
とにかく先ずは此処を無事に離れる事を考えねばと、監視隊員がいなくなった隙を狙って街の様子を伺っていた祐輔の耳に突然そんな声が届き、声がした方へと振り返ると、其処には数人の男女や子供が『ショッカー政権 断固反対!』のフリップやチラシを手に、ショッカーに対しての反発の声を上げるデモの光景があった。
「みんな騙されるなっ!!本当の敵はショッカーだっ!!ショッカーこそが本当の――!!」
「貴様等ァッ!其処で何しているッ?!」
祐輔(っ?!マズイっ……!ッ!)
監視の目が光る往来の場であんな事をすればショッカーが黙ってるハズもなく、監視隊員達が彼等を見付けると共にデバイスを使ってあっという間に拘束してしまい、それを見た祐輔も慌てて彼等を助けるべく飛び出そうとするが、其処で足を止めて躊躇してしまう。
何故なら、彼等と監視隊員達の直ぐ背後に立てられた掲示版には祐輔とキャンセラーの顔写真が載せられた指名手配書が貼り付けられており、今此処で出ていけば、一発でショッカーに顔がバレて拘束されてしまうのがオチだからだ。
どうする?それでも構わず助けに入るべきかと悩む祐輔だが、その間にも監視隊員の一人がデモのリーダーと思われる子連れの父親に近くと、前髪を鷲掴んで無理矢理顔を上げさせ、デバイスの刃の部分でペチペチと頬を叩いていく。
「貴様ぁ……我々ショッカーへの中傷がどれほどの罪になるか、分かっててやってるのか?んん?」
「っ……な、何がショッカーの築く新世界だ……!お前達が強制労働を強いたせいでっ、妻はっ……コイツの母親はっ……!!」
「あー……要するにつまらん復讐心から、自分の子供をも煽ったと?おー、恐ろしいなぁ……この平穏な世の中に、こんなテロリスト的思想を持つ人間が残ってるとは……ねぇ?」
―ズシャアァアアアアアアッッ!!!―
「……がっ―――!!?」
祐輔「ッ?!!なッ……?!!」
やる気のない脱力し切った口調と共に、なんと、監視隊員がその手に握るデバイスの刃をリーダーの男の首筋に当てがい、躊躇なく振り下ろして男の首筋を引き裂いたのだ。
その結果どうなるかなど想像に難く筈も無く、男は首から大量の血を噴き出しながらその場に崩れ落ち、血溜まりの中に力無く沈んだのであった。
「…………ぁ…………おとう、さん?おとうさん……お父さァああああああああああああああああんッッ!!!!!!」
「よぉーく見ておけよ小僧……?父親みたくなりたくなければ、ショッカーには逆らわんコトだ。おい、そのゴミさっさと片せ」
「「はっ!」」
「や、やだぁ……!連れてかないで……!お父さんっ……!!お父さァあああああああああああああああんッッッッッッ!!!!!!」
他のデモの一員と共に、物言わぬ屍となった父親の体を血の痕と共に引きずって連れていく監視隊員達を引き止めようとする男の子だが、これ以上ショッカーを刺激すれば彼まで殺されると思い、事態の一部始終を見守っていた他の市民達が辛そうに男の子を抱き止め、父親を呼ぶ男の子の悲痛な泣き声だけが虚しく響き渡る。
祐輔「……ッ……こんな……こんな世界が……本当に、滝さんの世界っ……?」
そんな非情な光景を前に、祐輔もあの時飛び出さなかった事を今になって激しく後悔し、怒りや悔しさから血が滲むほど掌を握り締めて壁を殴り付けると、先程デモが配っていた、赤黒い血で汚れた一枚の紙……『仮面ライダーと共に本当の平和を!』という文字と共に、firstの写真が載せられたチラシが飛んで来て祐輔の足に引っ掛かり、それを手にしてチラシを強く握り締めた。
祐輔「滝さん……今、何処にいるの……?どうしてこんな……―ガシャァアンッ!!―……っ?!」
この地獄のような世界が、本当に滝が守っていた世界なのか。悪い夢なら今すぐにでも覚めて欲しいと願う中、背後から突然何かが倒れるような物音が聞こえて慌てて振り返り、反射的に腕時計を構える祐輔だが、今の物音の正体と思われる転がるゴミ箱の近くに倒れる物を見て、祐輔の表情が驚きに変わっていく。何故なら……
レイヤ『―――ぅッ…………ッ…………ぐっ…………』
祐輔「君は……レイヤ?ミユちゃんっ?!」
散乱するゴミの中に倒れるのは、全身の装甲が砕け、その隙間から血を流す一人の仮面ライダー……滝の仲間であるミユ・ナカジマが変身する仮面ライダーレイヤであり、そんな彼女の変わり果てた姿を見た祐輔は慌ててレイヤの下に駆け寄り、彼女の身体を抱き抱えていくのであった。