スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダーthird 作:風人Ⅱ
―ショッカー警視庁前―
―ガギィイイッ!!バキィッ!!ジャキィィッ!!―
エンジン『ハァアアッ!!ウォラァアッ!!』
『グウゥッ?!おのれっ……!!』
炎に包まれる警視庁を前に、ホイール剣とブーストトリガーを用いた遠近攻撃による猛攻でチーターエスカルゴを確実に圧倒していくエンジン。その勢いや凄まじく、剣と銃のグリップの底を叩き付けながらミドルキックを叩き込んで僅かに距離を作り、其処へホイール剣で斬り掛かってチーターエスカルゴを吹っ飛ばすと共にブーストトリガーによる銃撃で追撃を仕掛ける。その僅かな隙すらも与えまいとするエンジンの怒涛のラッシュに、チーターエスカルゴも手も足も出せずにいた。
―ドシャアァッ!!―
『クッ!貴様ァ……!』
ED『今がチャンスだ進っ!一気にトドメをっ!』
エンジン『ああっ……!』
地面を転がり倒れ伏すチーターエスカルゴを見て好機と取り、エンジンはホイール剣を投げ捨てながら右腕のシフトブレスのボタンを押していく。
ED『HISAAAAAATU!FULL THROTTLE!SONIC!』
エンジン『ハァアアアアッ……ハァアアッ!!』
―ダアァンッ!―
『……!』
エンジンドライバーの音声が響き渡ると共に、エンジンは腰を屈めて態勢を低くしながら右足にエネルギーを集束していき、空高く飛び上がってチーターエスカルゴに目掛けて跳び蹴りを放った。
エンジン『コイツでっ……終わりだァああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあああァッッッ!!!!』
『クッ!』
完全な直撃コース。既に態勢を立て直してから回避して避けられる距離ではなく、赤い輝きを身に纏うエンジンの渾身のキックはそのままチーターエスカルゴへと真っすぐ迫り、数秒後にはチーターエスカルゴが爆発に飲み込まれる姿を誰もが想像した。が……
『――馬鹿め』
―ブシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!!―
エンジン『ッ?!なっ、ウワァアッ?!!』
先程まで追い込まれていたかと思われたチーターエスカルゴは不意に不敵な笑みを浮かべ、直後に空中のエンジンに目掛けて左腕のカタツムリの尻尾から大量の粘液を飛ばしエンジンを地上に叩き落としてしまったのだ。
飛鳥「シ、シンさん……!」
エンジン『グッ?!何だっ、これっ……動けねぇっ……?!』
必殺技を防がれてしまい、慌ててどうにか態勢を立て直そうとするエンジンだが、チーターエスカルゴが放った粘液が身体に纏わり付き、足も粘液によって地面に縫い付けられて見動きが一切取れない。足掻くエンジンを見て、チーターエスカルゴはクツクツと肩を揺らし嘲笑を漏らす。
『無駄だ。俺が放つカタツムリの粘液に一度触れれば、抜け出す事も動く事も叶わん。……カツラと同じ轍を踏んだな、貴様も』
エンジン『っ……!だったらっ!』
見動きが取れずとも手はあると、エンジンは纏わり付く粘液を引き剥がす事を諦めてブーストトリガーを再度取り出し、遠距離射撃でチーターエスカルゴを狙い撃とうと連射する。が、それを見たチーターエスカルゴは瞬時に目にも止まらぬ速さで突如駆け出し、ブーストトリガーの弾丸を全て避けながら粘液に囚われるエンジンへとすれ違いざまに打撃を叩き付けた。
エンジン『ガアァッ?!ッ……!い、今の動きはっ……?!』
『……俺はカタツムリとチーターの力を兼ね備えた改造人間だ。カタツムリの粘液で相手の動きを封じ、チーターの速力で圧倒する……つまり貴様は完全に、俺が最も力を発揮する術中に嵌ったという事だッ!』
―シュンッ!ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアァッッッ!!!!!―
エンジン『グッ?!グァアアアアアアアアアアアアアアアアッ?!!』
飛鳥「シン先輩ッ!!」
地を蹴ると共に、電光石火の速さでエンジンへと立て続けに襲い掛かるチーターエスカルゴ。その凄まじいスピードにエンジンが苦し紛れに放つブーストトリガーの弾丸も意図も容易くかわされてしまい、粘液に足を取られて動けないエンジンに何度も突撃を仕掛けて徐々に追い詰めていき、その光景を前に飛鳥も遂に黙って見てられず拳銃を取り出し、エンジンの援護の為にチーターエスカルゴに射撃を放つが……
―ズドォンッ!ズドォンッ!ズドォンッ!カランッカランッ……―
『……ほう?俺の動きを捉えるか、女……』
飛鳥「!効いてないっ……!」
チーターエスカルゴの動きを予測し放った飛鳥の銃弾が見事にチーターエスカルゴの背中に直撃するも、やはり改造人間の身体にただの弾丸が通ずる筈もない。チーターエスカルゴは振り返りながら足元に転がる弾丸を見下ろし、飛鳥の銃の腕前に感心しつつも、自身の周囲にショッカーの戦闘員と怪人達を集めて飛鳥を顎で指した。
『捕らえろ。抵抗するのであれば、殺してしまっても構わん……』
ED『ッ!何だとッ?!』
『イーッ!!』
『グルァアアアアアアッ!!!!』
エンジン『クッソッ……!逃げろ飛鳥ッ!!早くッ!!』
飛鳥「で、でもっ……!―ガシッ!―っ?!」
見動きが取れないエンジンを置いて一人だけ逃げるなど……。自分を捕らえようと迫る怪人達を前にしても迷う飛鳥だが、その時背後から誰かに手を引っ張られて後ろに下がらされ、何が起きたのか分からないまま前に視線を戻すと、其処にはエクセリオンに残してきた筈の誠が荒い呼吸を繰り返して佇む姿があった。
飛鳥「誠君っ?!どうしてっ……?!」
誠「飛鳥さんは早く逃げて下さいっ!此処は俺が……!」
自身の怪我も顧みず、飛鳥を守る為に前に出て怪人達と対峙し、腰の手形型のバックルに右手の指輪を翳しウィザードライバーを出現させようとする誠。だが……
『Error!』
誠「……?!魔力切れっ?!」
右手の指輪を翳し、響いたのは魔力切れを告げる無機質な音声だけだったのだ。それを聞き思わず動揺する誠だが、怪人達は魔法を使えない誠を脅威対象として警戒する必要がないと分かるや否や、誠を容赦なく殴り倒して飛鳥を捕らえようとするも、それでも誠は怪人達の足を掴み無理矢理引き止めた。
飛鳥「誠君ッ!!」
誠「ッ……!お、俺の事は良いから逃げてッ!!早くぅッ!!!」
『イーッ!』
『イィーーッ!!』
飛鳥「ッ……!クッ!」
誠を助ける為に怪人達に挑み掛かろうとするも、それを止めるように怒号にも似た誠の叫び声に思わず足を止めてどうするべきか迷い逡巡してしまう飛鳥だが、既に間近にまで迫る戦闘員達を見て悔しげに唇を噛み締めながら、戦闘員達に背を向けて走り出した。
エンジン『飛鳥っ……誠っ……!』
ED『進っ!こうなればハイウェイだっ!一気に畳み掛けて二人を助けるぞっ!』
エンジン『ッ……あぁっ、来いっ!ハイウェイッ!』
―キュイィィィィーーーーーーーイィンッ……ガギィイイッ!!ガギィイイッ!!―
『ッ?!グォオオッ?!』
『ガハァアッ?!』
誠「ッ!な、何だ……?」
エンジンドライバーの助言を受けてエンジンが叫ぶと共に、何処からか一台のサイドカー型のシフトカー……シフトハイウェイが空中を駆け抜けて誠を痛め付ける怪人達を吹き飛ばし、そのままエンジンの手に渡ると、エンジンはバックルのギアを回しながらシフトハイウェイのバイク部分をサイド部分に収納し、右腕のシフトブレスへと装填した。
ED『ENGINE!TYAAAAPE!HIGHWAY!』
エンジン『ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ……ハァアアアアッッッ!!!!』
―バチィイイイイイッ!!ドバアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッッッ!!!!―
『……ッ?!何ッ?!』
響き渡る電子音声と同時に、エンジンは周囲に現れた二つのバイクのホイールの残像が発生させたフィールドに包まれながら全く別の姿へと変化していき、全身から放たれた赤い衝撃波で粘液を吹き飛ばしながら新たな形態にその姿を変えていったのだった。
基本形態である赤いボディと黒のスーツと違い、仮面ライダーマッハに似た赤と白のレースドライバーのようなスーツ……黒月零の世界のアリサ・バニングスが変身する仮面ライダーレースと同じ意匠のスーツを身に纏い、その上にエンジンの赤いマスクが被さり、左肩には稼働状況を示すメーターが付いた小型タイヤ、右肩にはタイプソニックと同様にタイヤを肩当てのように装備した姿……仮面ライダーレースと兼用のシフトハイウェイを用いて変身した『仮面ライダーエンジン・タイプハイウェイ』に強化変身したのだった。
『なっ……貴様っ、その姿は何だ……?!』
エンジンHW『―――テメェに律儀に教える義理はねぇよ。この姿だと長くは戦えないんでな……速攻で決めるッ!』
―ギギギギギッ!ギュイィィィィィインッ!!―
新たな姿に変化したエンジンにチーターエスカルゴが戸惑うのを他所に、エンジンはバックルのギアを再度回してエンジン音を鳴らし、その身に真紅色のスパークを纏いながらチーターエスカルゴへと素早く殴り掛かっていく。
―バチィイイイイイッ!!バチィイイイッ!!ズガァアアアアアアアアアアアアアアアアアァンッ!!!―
エンジンHW『ハァアッ!!ラァアアッ!!ハァアアアアアアアアアアッ!!!』
『グゥッ?!な、何だこの力ッ?!ぐはぁあああああッ?!』
赤雷を身に纏ったエンジンの目にも止まらぬ怒涛の拳の嵐がチーターエスカルゴの全身に絶え間なく突き刺さり、最後に放たれた流麗な後ろ回し蹴りが雷の軌跡を描きながらチーターエスカルゴの頭部に直撃し吹っ飛ばしていった。
『ぜ、ゼノン様ッ!』
『貴様ァァァァアッ!!』
そしてそれを目にした他の怪人達も、エンジンに突っ込んでチーターエスカルゴを援護しようとするが、エンジンは落ち着き払った動作で再びバックルのギアを回し、自身の目の前に赤いエネルギーで構築された巨大なタイヤ状の光弾を生み出すと共に、光弾を蹴り飛ばして怪人達に直撃させていく。
―ズドォオオオオオオオオオオオンッ!!!―
『ヌゥウウッ?!』
『お、おのれっ……!』
エンジンHW『コイツで締めだ……!』
ED『HIGHWAAAAY!』
エンジンが蹴り放った光弾をまともに受けてチーターエスカルゴの下にまで吹き飛ぶ怪人達だが、エンジンの追撃は止まらない。右腕のシフトブレスのスイッチを押して音声を鳴らし、全身に先程の比ではないエネルギー量の赤いスパークを身に纏いながら空高く跳躍してキック態勢を取り、そして……
エンジンHW『ハァアアアアッ!!ぜぇええええりゃああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああァッッッッ!!!!!!』
『クッ?!』
『う……ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォッッッッ?!!!!!』
―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアァンッッッッ!!!!!!―
エンジンの必殺技……クラッシュハイウェイがチーターエスカルゴ達に向けて炸裂したのであった。しかし、チーターエスカルゴは咄嗟にその場から飛び退いてエンジンのキックを回避し、逃げ遅れた怪人達は断末魔と共に纏めて木っ端微塵に爆散していった。
誠「す、凄い……!」
『クッ……貴様ァ……!』
エンジンHW『……残るはお前だけだ。とっととケリを付けさせてもらうぜ……』
他の怪人達を撃退し、残る敵はチーターエスカルゴのみ。ハイウェイの力もある以上、此処まで来れば奴も大した脅威ではないとチーターエスカルゴに近付き、一気に仕掛けるべくバックルのギアに手を伸ばすエンジンだが……
『――其処までだ、早斑進』
エンジンHW『……?!』
突如、チーターエスカルゴに再び挑み掛かろうとしたエンジンの頭上から制止する声が響き渡った。そしてその声に釣られエンジンと誠が上を見上げた瞬間、瞳に映った目の前の光景を目の当たりにしその表情が驚愕の色に染まっていく。何故なら……
『―――それ以上の抵抗は良してもらおうか。……まぁ、この女がどうなっても良いと言うなら、こちらは別に構わないがなぁ?』
飛鳥「ぐっ……うぅっ……!」
エンジンHW『なっ……あ……飛鳥ァッ!!』
エンジン達が目にしたのは、警視庁の中腹部のバルコニーからこちらを見下ろすショッカーの怪人であるカメレオンと、カメレオンの腕の中に囚われ、バルコニーの柵の外側に無理矢理立たされるボロボロの飛鳥の姿だったからだ。そんな飛鳥の姿を見て、エンジンも身を乗り出して動揺を露わにし、対してチーターエスカルゴは身体を揺らしながら不気味な笑い声を漏らしてゆっくりと立ち上がっていく。
『形勢逆転、と言う事か……フフフッ、どうする?これでもう下手に抵抗は出来なくなった訳だが、それでもまだ続けるか?』
エンジンHW『ッ……何処までも汚え真似をっ―――!』
―ビーッビーッビーッビーッビーッビーッ!!!―
ED『ッ?!まずいぞ進ッ!これ以上は時間がっ……!』
エンジンHW『?!なっ、しまっ……グッ、グァアアアアアアアアアアッ?!!』
―バチィイイイッ!!バチバチバチィッ!!バリィイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!!!―
飛鳥を人質に取られて抵抗出来ず歯痒さと憤りで拳を握り締めるエンジンだが、突如稼働状況を示す小型タイヤのメーターがけたたましいサイレンと共に振り切れ、直後にエンジンの肩当てのタイヤが急激に回転し始めて暴走しバーストしてしまったのだ。
誠「し、進さん……?!」
ED『進っ!!』
エンジンHW『グッ……!!クッソッ……こんな時に……!!』
タイヤがバーストした事により、先程までの勢いが衰えてその場に力無く崩れ落ちてしまうエンジン。それもそのハズ、エンジンが用いたタイプハイウェイはエンジンとレースの二人のライダーの力を備えている為、非常に短い戦闘時間が設けられている。それが最悪なタイミングで限界を迎え身体がまともに動かせないエンジンを見て、チーターエスカルゴは愉快げに笑い出した。
『滑稽だなァ。女が人質に取られた矢先に、自分で自分の首を締めるとは……なあッ!!』
―シュンッ……ガキィイイイイイイインッ!!!―
エンジンHW『うぐぁああああああッ?!!』
誠「進さんッ!!」
飛鳥「ッ……シンっ、先輩……」
ハイウェイのデメリットによって満足に動けないエンジンの様を嘲笑い、再び超速度で動き出しエンジンに突撃で何度も体当たりを繰り返していくチーターエスカルゴ。そして、自分が捕まった事がきっかけで危機的状況に陥ったエンジンをカメレオンに囚われながら苦しげに見つめていた飛鳥は、自分の眼下に広がる遥か下の地上に目線を下げると、一瞬何処か恐怖に震えるように思い詰めた顔を浮かべるが、すぐに瞼をきつく閉じて深呼吸を繰り返し……
飛鳥「――戦って下さい!シンさんっ!!」
ED『!』
エンジンHW『っ……!あす、か……?』
目を見開き、エンジンに向けて力強く叫んだのは、彼の戦う意志を後押しする声だった。それを聞いたエンジンはボロボロの顔を上げて飛鳥を見つめると、飛鳥もそんなエンジンを真っすぐ見つめ返しながら叫び続ける。
飛鳥「貴方がエンジンになったのは、ショッカーの為なんかじゃないッ!!貴方が戦うと決めてっ、立ち止まっていた貴方がもう一度走り出したのは、目の前で苦しんでいる誰かを助けたいッ!!その想いが、貴方の中に残っていたからっ――!!」
『貴様っ、誰が勝手に喋っていいと言ったぁッ!!』
―バキィイッ!!―
飛鳥「ぐぅうっ!!」
エンジンHW『ッ?!や、止めろテメェエッ!!―ガキィイイイイイインッ!!―うぐぁああッ?!』
腕の中で叫び続ける飛鳥を黙らせる為、無理矢理振り向かせて顔を殴り付けるカメレオンに激怒して動かぬ身体を無理矢理動かし駆け出そうとするエンジンだが、チーターエスカルゴは左腕の尻尾を振るってそんなエンジンを再び吹き飛ばすが、飛鳥は殴られながらもカメレオンの両腕を押さえ付けたまま、エンジンに向かって叫ぶ。
飛鳥「わたし、はっ……私は信じてますッ!!シンさんなら、きっとっ……!!この間違った世界を元に戻してくれるってっ!!どんなに世界が変わっても、貴方は絶対に変わらないってっ!!そんな貴方だから、私……私は、貴方の事―――!!」
エンジンHW『……!飛鳥……?』
カメレオンと格闘しながら必死に呼び掛け続け、その中で、エンジンへの何かの想いを口にしようとする飛鳥。だが、カメレオンはそんな飛鳥を黙らせるように彼女の腕を振り払って再び飛鳥を殴り付けようとし、それを見た飛鳥も反射的に腕を伸ばしてカメレオンを突き飛ばすが……
―ガッ……!―
飛鳥「……あ……」
……カメレオンを突き飛ばしたその拍子に、飛鳥の片足がバルコニーの縁から踏み外した。
エンジンHW『ッ!!!!?あす―――!!!!!』
飛鳥「―――シン先輩……私……」
宙に投げ出される飛鳥の身体が、まるでスローモーションのような動きで徐々に落下していく。それを目にしたエンジンは慌てて駆け出そうとして転倒し、ロクに立ち上がれぬまま飛鳥に腕を伸ばし、飛鳥もそんなエンジンに腕を差し伸べて、今にも泣き出しそうな顔を浮かべながら何かを口にしようとするが、最後までそれを語る事も叶わず―――飛鳥は、エンジン達の目の前で遥か地上へと吸い込まれるように墜ちていったのだった……。
エンジンHW『……ァ……あ…………飛鳥ァああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーああああァァッッッッッッ!!!!!!!!』
ED『ああっ……』
誠「そ……そん、な……」
警視庁のバルコニーから落下し、その姿を最後まで見届ける事も叶わず視界から消え失せた飛鳥にエンジンの悲痛な叫びが虚しく木霊し、エンジンドライバーと誠も言葉を失い、ただただ呆然となるしかなかった。そして、他の誰よりも飛鳥との突然の別離に理解が追い付かず、しかし、胸の奥から迫るとてつもない絶望と喪失感にエンジンは力無く崩れ落ちてしまい、チーターエスカルゴはそんなエンジンの姿を横目に耳障りな笑い声を漏らした。
『馬鹿な女だ。自分から命を捨てるような真似をするとはなぁ……どうせだ、貴様も女の後を追うがいい……』
誠「っ……!し、進さんっ!逃げてぇっ!」
ED『進っ、進っ!しっかりするんだ進っ!このままでは、君まで……!』
エンジンHW『……飛鳥……俺……俺はっ……』
飛鳥に続けてエンジンも始末しようとカタツムリの尻尾を向けて迫るチーターエスカルゴを見て、誠とエンジンドライバーが切羽詰まった様子でエンジンに呼びかける。だが、エンジンは飛鳥を失ったショックからその場から動けず、そんなエンジンにチーターエスカルゴが腕を振りかざした。その時……
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガァアアッ!!!!―
『ッ?!グッ、ウォオオオオッ?!!』
ED『……?!』
誠「な……何だっ?―キキィイイイイッ!!―……?!」
エンジンにトドメを刺そうとしたチーターエスカルゴに、突如何処からか無数の銃弾が飛来し吹っ飛ばしていったのだ。その予想外の援護攻撃を目にしてエンジンドライバーと誠も一瞬呆然となるが、誠の背後から一台の白い車型のマシンが飛び出してエンジンの隣に止まり、それに気付いたエンジンが力無く顔を上げると、其処には白いマシンに乗る戦士……先のウィザードとの戦いの際に現れ、エンジンと激しいカーレースを繰り広げた謎のライダーの姿があった。
エンジンHW『おま……え……』
『立て。今の内に逃げるぞ』
ED『何……?』
『グッ……き、貴様ァッ!』
放心状態のエンジンにそう呼び掛けて、何故か先程まで敵対していた相手を手助けするような素振りを見せる謎のライダーにエンジンドライバーが思わず戸惑いの声をこぼし、チーターエスカルゴはそんな謎のライダーに襲い掛かろうとするが、謎のライダーは再び白いマシン前部のガトリングガンを乱射してチーターエスカルゴを迎撃していく。
―ズガガガガガガガガガガガガガガァアアッ!!!!―
『ガッ、グハァアッ?!』
『早くしろッ!彼女の死を無駄にする気かッ?!』
エンジンHW『ッ!……俺は……』
誠「ッ……!進さんっ、俺に掴まって下さい……!」
ED『エクセリオンの操作は私がやる!急ぐぞ!』
謎のライダーが自分達を助ける意図は分からないが、それでも今はこのチャンスを逃す訳にはいかないと、誠は飛鳥を失った精神的負担に加え、ハイウェイのデメリットで満足に動けないエンジンへと駆け寄って肩を貸し、エンジンドライバーの遠隔操作で近くに呼び寄せたエクセリオンに乗り込んでいく。そして、二人がエクセリオンに搭乗したのを確認した謎のライダーは素早くギアを操作して発進しようとするが、その間際……地面に突き立てられた血塗れのスピリットとカツラの右腕に気付き、ほんの一瞬だけ、何か感じ入るかのようにスピリットをジッと見つめた後、
『―――俺が先行して誘導する……。付いてこい』
―ブゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオオォンッッッッ!!!!―
冷静な口調で後方のエクセリオンにそう指示しながら再び前を向き、チーターエスカルゴをガトリングで牽制したまま発進し、動けないエンジンに代わってエンジンドライバーが操るエクセリオンもその後に続くように走り出し、二台のマシンはそのまま猛スピードで警視庁から離れていくのだった。
『グゥッ……!おの、れぇっ……このまま逃がしてたまるかっ……!』
そして、謎のライダーの乱入によって深手を負ったチーターエスカルゴは片膝を付き、二台のマシンが走り去っていった方向を忌々しげに睨み付けながらバルコニーのカメレオンに追撃部隊を出すように指示しようとするが、その時……
―……バチィッ……バチッ……バチィイイイッ……!!―
『……?!な、なんだ……?』
チーターエスカルゴのすぐ背後から聞こえた不吉な音。それを耳にしてチーターエスカルゴが振り返ると、其処には、燃え盛る警視庁の建物から青白い火花が無数に撒き散り、徐々に建物の全体を覆うように規模が広がりつつある異常な光景があったのだった。
◆◆◆
―ショッカー警視庁・署長室―
――謎のライダーが現れる少し前。反ショッカー同盟によるクーデターによってショッカー警視庁内部は火の手が広がり、既に警視庁としての機能も完全に停止していた。
そして、廊下には怪人達の返り討ちに遭い、床や壁などに鮮血を撒き散らして倒れる反ショッカー同盟の構成員達が転がる姿が至る所にあるが、その中でも特に多く目立つのは、ある場所へと通ずる道すがらの階段や廊下だった。その場所とは……
―ガキィイイイイインッ!!―
『クソッ!まだ扉を破れんのかッ?!』
「も、申し訳ありません!扉に何かしらの補助魔法を施しているのか、解除にはもう少し時間が……!」
『クッ……何処までも小賢しい奴めぇっ……!!カツラァアアッ!!!』
ショッカー警視庁の署長室。その中には今現在、このクーデターの首謀犯であるカツラが立て籠もっていたのだ。
更に、どうやら署長室の扉には内側から、改造人間の並外れた力でも一筋縄でいかない強度を誇る補助魔法が施されており、カツラを捕らえようとするショッカーの戦闘員や怪人達もそれに手こずり、署長室の前で立ち往生を強いられていた。そして、署長室の中では……
―ドォオオンッ!!ドォオオンッ!!―
カツラ「―――やかましい連中だ……長く夢だった署長の椅子の座り心地を味わうぐらいには、休ませてくれてもいいだろうに……」
まだ火の手が移っていない署長室内では、立派な署長の事務机の椅子にカツラが一人、気だるげに腰を下ろして寄り掛かるように座り込む姿があった。
だが、その姿はやはり此処に辿り着くまでにボロボロになっており、全身に身に纏うバリアジャケットはズタズタに引き裂かれている上に黒焦げ、その中でも特に目立つのは、カツラの右腕……否、右腕を失った右肩にバリアジャケットの切り破った布がグルグルに巻かれており、カツラはそんな自身の右肩を一瞥した後、天井を見上げて深々と溜息を吐いた。
カツラ「どうやら早速罰が当たったようだな……それも当然か……此処までの事をしたんだ……寧ろ、これでもまだ足らないぐらいだろうな……」
そう呟き、カツラの脳裏を過るのは、此処まで自分を辿り着かせる為に犠牲となった構成員達の顔……。
この絶望しかない世界を少しでも元に戻す為に、自ら命を差し出してくれたとは言えど、彼等を死なせてしまったのは他の誰でもない、自分の責任だ。
そう考えながら、カツラは心の中で犠牲になった彼等の一人一人に対して謝罪し、残った左手の掌を見下ろしながら自嘲するように笑った。
カツラ「全く……こんな世界に本当にもう、希望も何もなかったのなら……俺も全てを諦められて、此処まで苦労する必要もなかったんだが……」
それが出来なかったのは、あの男が死んでも尚、この世界を認められないと言う子供染みた意地を始め、未だショッカーに反抗するライダー達の存在と、特事課に所属してから見付けた、早斑進という男に可能性を見出したから。
彼等ならきっと、あの男が心半ばに果たせなかった事を果たしてくれるという、そんな確かな確信があったからだ。
その可能性が、漸く芽を息吹かせ始めた今、ソレをこんな所で潰させる訳にはいかない。だから……
カツラ「……例え地獄に墜ちようとも……希望を……未来へと繋げる……その為なら――」
―ズドォオオオオンッ!!ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!―
いよいよ限界が近い。目の前の視界も暗転し、意識が遠退き始める中、何処か遠く聞こえる物音を聞き取って僅かに顔を上げると、其処には厳重に封印した扉を遂に打ち破り、署長室の中に続々と雪崩込んで来る怪人と戦闘員達の姿があった。
『此処までだなァ、カツラ・ヨウラン……』
『反乱分子は全て排除した。最早、貴様を守る者は誰もおらんぞ?』
カツラ「…………」
カツラの同士である構成員達は全滅し、既にこの署内にはカツラ一人しか残っていない。
まるでカツラの内の恐怖を煽るかのようにわざわざそう告げて不気味に笑う怪人達に対し、カツラは無言のまま僅かに目線を怪人達に向けるだけで、その表情は眉一つ動かさない。
『投降するのであれば、手荒な真似はしないぞ?最も、裏切り者の貴様が処刑される事実に変わりはないが……せめて、死に方ぐらい選ばせてやらんでもないぞ?』
この場で今すぐ惨たらしく死ぬか、それとも大衆の目に晒されて無様に死ぬか。
ただ死ぬのが今か先かの違いでしかない質問を投げ掛ける怪人に、カツラはただゆっくりと椅子ごと正面を向き、
カツラ「それはそれは……心遣い痛み入るよ。まさか、此処まで律儀な奴らだとは思わなかった……ああ……どうやら俺は、少しお前達を誤解していたようだな……では―――」
―ドォオンッ!!―
言葉を区切り、カツラは突然片足だけで署長の机を力強く蹴り上げる。
それだけで、余程の力でなければビクとも動かせないような重さの机が簡単に引っくり返り、机の上に乗っていたモノが破裂音と共に床に散らばり散乱していくが、怪人達はそんなモノよりも、机の下から露わになった"ソレ"を目にして驚愕した。何故なら……
カツラ「―――御言葉に甘えて……貴様等には此処で……俺と共に地獄へ来てもらうぞ……」
カツラの足元……其処には、大量の爆弾がこれでもかと言うぐらいに積み重ねられており、更に良く見れば、カツラの身体にも同じような爆弾が幾つも巻きつけられていたのだ。
『き、貴様っ……その爆弾はっ……?!!』
カツラ「同士に命じて密かに横流ししてもらっていた、対ライダー用特殊型爆弾……このクーデターを起こす大分以前から、コイツを署内のあちこちに大量に仕掛けさせてもらってな……幾ら改造人間と言えども、対ライダー兵器として作られた大量のコイツを一度に起爆させればどうなるか……後は分かるだろ……?」
ニヤッと、そう言って意地の悪い笑みと共にカツラが取り出し、指を掛けたのは、署内に仕掛けた爆弾を一度に起爆させる特殊コードを送る為の、起爆スイッチ……。
『ま、待てッ?!!カツ――――!!!!』
カツラ「――――すまんな、滝……俺は……お前と同じ所へは逝けそうにない……」
カツラの次の行動をいち早く察した怪人達が、一斉にカツラへと飛び掛かる。
しかし既に時は遅く、起爆スイッチに掛けられた指にゆっくりと力が込められたと共に爆弾が眩い閃光を放ち、光が総てを飲み込む寸前、カツラは哀しく、しかし何処か満足げな笑みを浮かべながら、怪人達と共に光の中に姿を消していったのだった――――。
◇◇◇
―……バチィッ……バチッ……バチィイイイッ……!!―
『……?!な、なんだ……?』
そして場所は戻り、警視庁前では謎のライダーとエンジン達を逃がしてしまったチーターエスカルゴがすぐ背後から聞こえた不吉な音に振り返り、燃え盛る警視庁の建物から青白い火花が無数に撒き散り、徐々に建物の全体を覆うように規模が広がりつつある異常な光景を目にして驚きを露わにしていた。
『な、何なんだこれはっ?一体何が起き―――ッ?!ま、まさかっ……?!!』
警視庁に突如起きた異常に困惑し動揺を隠せずにいたチーターエスカルゴだが、その時、警視庁の中で自分が取り逃した男の顔がふと脳裏を過ぎり、何かに気付いた様子で警視庁を見上げるが、その間にも火花は激しさを増していき、そして……
―バチバチバチィイイイイイイイイッ……バチ……ビガァアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!!―
『ッ?!!!ウ、オオオッ……グウゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ?!!!!!!!』
『お、のれ……おのれぇえええええええッッッッッ!!!!!!カツラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァッッッッッッ!!!!!!!!!!』
―チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!―
巨大な青い火花が一瞬だけ散った次の瞬間、警視庁の署内各所に仕掛けられてた爆弾から一斉に放たれた光がチーターエスカルゴやカメレオンをも飲み込み、直後、周辺一帯を巻き込む程の大規模な爆発が発生して警視庁を跡形も残さず消滅させたのであった……。