厨二エロゲーの中で俺は勘違いし、勘違いされる   作:アトミック

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一章終わり!
つかれた!
感想とお気に入りと評価すっごくうれしいです!!!!!!!!
あと誤字報告にはすっごくたすけられています。。。。。。。。


リジェクト・リバイバル <ごじつだん>
アフター・アクター


「ああああああああ熱いぃぃぃぃいーっ!! 滅茶苦茶痛いよおおおおおおおおーっ!!」

「よしよし。痛くない痛くない。……お前、もういい加減泣き止めよ。私が膝枕してやるってな、相当のことなんだぞ。見る奴が見たら驚愕して、目を疑って、もしかしたら自殺とかしちゃうかもしれないレベルなんだ。……おい。おーい。聞いてる?」

 

 聞く余裕もねえわ。俺は半泣きで―――というか全泣きでみっともなくロリの膝に縋りついて泣いていた。

 痛い。とんでもなく痛い! これやべーよ。まだ肌が熱いし。今自分の顔がどうなってるかわかんないのもこわい。

 

「もうちょい待てって。……お、もう少しだ。いいか、その体勢のまま動くなよー。ほいほいほいっと。どうだ。痛みはなくなったか?」

「現在進行形でバリバリあるわ!」

「ん。間違ったかな……? ちょっと待てよ。ここをこうしたら……」

「痛い痛い痛い! お前、適当やってねえだろーな!」

「む。失礼な。本気も本気だ。私は改造するのは専門だが、癒すのは範疇外だ。治癒魔法なんて興味もないから習ってこなかった。お前の半身だって、元に戻すことができなかったからわざわざ義手義足を造って改造してやったろ。あん時は肌も人工的に直したが、まあ、左と真ん中と右の頬色が違ったら、流石にあれだろ。パンダみたいでやばいだろ」

 

 パンダは白と黒の二色だよ、と突っ込むと、それと同時に痛みがすぅっと引いていった。あ、あれ。俺は反射的に頬をぺちぺち触ってみたが、違和感がない。俺はぼんやりした顔でロリの方を見つめてみると、向こうも絶頂したようなとろけた顔でこちらを見つめていた。

 

「どうだ。治ったか!」

「痛みは消えた」

「おおおおおおおお! まさか本当に成功するとは。いや、私は天才だな。それにしても成功はいい……。とっても気分が良くなった」

「……………………」

 

 痛みは消えても俺の気分は一向に良くならなかった。

 まあ、色々聞きたいことはある。すっ、と俺はロリの膝から頭をどかす。「まだいてもいいんだぞー?」と母親みたいな表情でロリはこっちを見つめてくるが、無視。何かこいつの膝ヘンに居心地よくてこわかった。魔法とかつかってそうでこわい。

「種明かしをしろよ」と俺は言うと、ロリはキョトンとした顔になった。

 

「種明かし?」

「今日の模擬戦、見てたんだろ」

「ああ。ちなみにな、危ないところだったんだ。お前らってとんでもないくらいつまらない授業受けてるんだな。てっきり私、学園についたらすぐ戦いが始まるものだと思ってたから、お前らの詰まらない授業の所為で、寝落ちしてしまった。で、起きてみたらお前らが教室にいないもんだから焦ってしまったよ。以後、模擬戦を行うときはちゃんと時間と場所を私に伝えるように」

「もう模擬戦なんてしねーよ、絶対」

 

 しないはずである。頼むぜマジで。もうこんな目に遭いたくねーよー。

 

「で、種明かしってなんだ」

「そのままの意味だよ。俺の身体に何をしたんだ?」

「あー……。お前だって、薄々は気づいてるだろ」

「まあ、大体は想像できるけど」

「じゃあ、そっちが言ってみろよ。当たってたら褒めてやる」

 

 ロリはにやにや笑いながら言った。何がそんなおもしれえんだ? 俺は少し不快になったが、まあ、いつものことである。気を取り直して、口を開く。

 

「朝、俺の身体は無敵になっただの言ってたけど、あれは嘘だったんだな」

「………………ほお」

「無敵になったんじゃなくて、無表情になっただけだ。くそ、おかしいとは思ってたんだぜ。あの模擬戦の前から、妙なくらい無表情が維持できていたんだよ。いっつも外では意識的に無表情を保ってたから、その所為で気づくのが遅れた」

「うむ。その通りだ。だが、私は別に嘘を言ったわけじゃないぞ」

「はあ?」

「元々、私は『どんな攻撃を喰らおうが、顔色一つ変わらん』と言っただけだ。誰も不死身になったなんて言っていない。お前が勝手に勘違いをしただけだ」

「……無敵になった、とは言ってたじゃねえか」

「何をもって無敵とするかは個々人の定義によるだろ?」

 

 無表情になるだけって、誰に聞いても無敵だなんて思わねえんじゃねえの。

 俺はそう思ったが、ロリは知ったこっちゃないって顔をしていた。ホントに自分勝手な奴である。

 

「んじゃ、あの俺の左腕がくっついたのはなんだよ。あれも昨日の改造か」

「いや。あれは元々だ」

「……元々ぉ?」

 

 どういう意味だ?

 

「お前の左腕と左足は造り物だろ。勝手に壊れて直すのも面倒だし、最初から壊れても元に戻るようになってるんだ」

「……なに。んじゃ、俺の左足と左腕はどんだけ傷つけられても問題ないってこと?」

「うむ。そっちの方が無敵かもな。神経は身体と繋がってるから痛みはあるし、寧ろ強引にくっつけてる分普通に切断されるより痛いけど」

「……道理で死ぬほど痛かったわけだ。そんな目に今日二回も遭ったんだぜ。極めつけには肌も焼かれるし」

「まあ、そういう日もあるさ」

 

 ねーよ。普通。どんなバイオレンスな日常を送ってたらそう思えるんだ?

 

「他に何か聞きたいことはあるか?」

「他? ……そうだな、あの、よくわからない装置は何だったんだ」

「装置? ……ああ、D・A・R・Mのことか」

「そうそう。そんなやつ。吸収してくれるんじゃねえのかよ。あれ」

「吸収はしていたし、相手の魔法を阻害することもできていた。ただ、そこまで大した効力ではないから、魔法行使を無効化できるわけではない。私はちゃんと言っただろ。そこまで万能な装置ではない、と」

「……そんなぼかした感じで言うんじゃなくて、ちゃんと一から十まで説明してくれよな」

「それじゃつまんないだろ」

 

 むすっとした顔でロリが言った。大変ムカつく。俺はそんな感情のまま彼女のことを睨みつけていると「ああ、そうだ」と思いついたように、ロリは口を開いた。

 

「お前と戦ったヤツ、中々面白い魔法を使うじゃないか」

「なんのことだよ。普通の魔弾が飛んできただけじゃねえの」

「お前みたいに魔法が使えないヤツにはわかんないだろうがな、あの女、中々面白い魔法特性をしているようだ」

「…………魔法特性って、なんだ?」

「おいおい。学園の授業で習わないのか」

「習ったかもしれないし、忘れたのかもしれない」

 

 俺が堂々とそう言うと、ロリは呆れた様子を見せた。

 しゃーねーだろーがよー。俺だって真面目に聞いてるんだぜ。そう心の中で思っていると、「努力はいいから結果で示せよ」なんて手厳しいことを言ってきた。……ていうか、このガキ、今ナチュラルに俺の心読みやがったな。とんでもない化物である。

 

「魔法使い以外の人間にも、たまにいるだろ。視力が異常なくらい良かったり、筋肉量が異常に発達したり―――数字が色に見える、とか。そういう常人にはない能力を持つやつが、それを自身の魔法に利用することを、魔法特性と呼ぶんだ。あの女は、恐らく人の姿や風景が色に見えるのだろう」

「……どうしてそんなことがわかるんだ?」

「立ち振る舞いと詠唱と魔力の循環を見れば、大体はわかる。最後の魔法はあの程度の詠唱では出せない威力だった。本来ならばお前の顔面に直撃して、死んでいただろう」

「本来ならば?」

「流石に死んでもらっては困るのでな。詠唱が始まった段階で私が介入して、詠唱の一部を改竄した」

「……できんの、そんなこと」

Black bitter bullet blains(黒くて苦い弾丸が脳を打ち砕く)に、brake(抑制)の一節を加えた。魔法自体を止めるつもりだったのだがな、遠距離からの魔法行使だったのと、あの女の魔法に介入しづらくて、止めることはできなかったのだ。……いや、中々面白い。まだ精神的には未熟なようだが、人を数人程度殺せば慣れるはずだ。そうなれば、一端の魔法使いになれるだろう」

 

 当たり前みたいに殺す殺さないって言ってほしくないんだけども。フツーに考えて人なんて殺す経験をもつわけがないのである。

 そしてそもそも詠唱に介入するとかなんとか。どうやってやればそんなことができんの? 俺も適当な言葉を相手の詠唱中に叫べばできるのかもしれない。んなわけあるか。

 

「ふむ。もしかしたらあの女、本当に私と何か関係があるかもしれんな」

「心当たりがあるのかよ」

「魔法の才能があるというのと、顔が似てるというだけだ」

「お前が口から吐いた卵とやらはどうなんだよ」

「あれは結局魔物に八つ裂きにされたはずだ。もし生きていたのならば嬉しいが、まあ、無理だろう」

「…………あっそ」

 

 魔物に八つ裂きって。なんやねん。どういう状況?

 こいつの口ぶりが嘘っぽくないのが嫌だった。俺は色々考えて、すぐに思考を放棄した。無駄だわ。この女のことを考えるだけ無駄だ。

 

 

 はあ、と溜息を吐く。

 なんというか、長い一日だった。や、二日と言うべきか。発端は昨日の放課後。よくわからない理由でメイリに喧嘩を売られ、それを買わざるを得なくなった。で、このロリに改造されて、今日。ボロボロになりながら、何とか俺は、ハキム・ハーロックという外面を守り抜いたのである。ちょっとは褒められてもいいと思うが、残念ながら、俺のことを称賛してくれる人間など、この世界に一人もいないのである。

 精々、このロリが膝枕で傷を癒してくれるくらい。

 だが、まあ。そんなもんだろうとも思う。なんたって俺は主人公だ。主人公とは孤独なものだ。どうのつるぎで戦うあの物語だって、俺は初代しかやったことがなかった。だから仲間なんていなかったし、傾奇者を操作する戦国乱世だって、仲間は基本、役立たずだった。だから、と決めつけるには滅茶苦茶かもしれないが、多少孤独だったとしても、受け入れるしかないとは思えた。

 

 はあ、と再び溜息を吐く。

 まあ、よくやったよ。誰も褒めてくれないんだから、自分くらいはちゃんと自分を褒めてやろう。俺のことを一番わかっているのは俺なのだ。

 あとは、高橋とかがこの世界にきてたら面白かったかもな、と一瞬思う。でもな。あいつがいたら一瞬で終わっちゃいそうだな。やっぱダメだ。そんな風に考えたら、あー日本懐かしーなーと、妙に感傷的な、最近思わなかった感情が込み上げてきた。

 

 やっぱりよ。

 俺のことを労うヤツだって、一人くらいいても罰は当たらないんじゃねえか?

 

「なあ、ロリ」

「なんだ」

「俺、今日だいぶ頑張ったと思わないか?」

「うむ。よく私を楽しませてくれたな」

「なんともうれしくない褒められ方だな。……だからよ、一つくらい言うこと聞いてくれてもいいとは思わないか?」

「いやだぞ」

「即答かよ! くっそ詰まんねーことだからいいじゃねーかよー」

「じゃ、言ってみろよ」

「よくやった、って褒めてくれないか?」

「いやだぞ」

「こんな事も嫌なのかよ!」

「冗談だ。……お前も寂しがり屋だなあ。もっかい膝枕してやろうか?」

「いや、それはいい。なんかそこが家だと思いこんじまいそうでこわい」

 

 そんなさっきもしたようなやり取りをしながら、「あ」と俺は思いついた。適当にねぎらってやるか、という態度をとるロリに、「ええと……」と、少しだけ迷いながらも、「名前、呼んでくれないか」と聞いてみる。

 

「名前? ハーロック、とでも呼べばいいのか」

「あー違う。……昔の名前だよ」

「お前、他の名前があったのか。偽名なんて、中々のワルだったのか?」

「ちげえよ。事情はまた今度喋ってやる」

「で、なんて名前だよ」

「―――五月雨っていうんだ、俺。いい名前だろ」

「サミダレ? 珍しい名前だな」

 

 そういって、ロリは、まるで社交辞令を言うように「よく頑張ったな、サミダレ」と言った。

 まあ、言うまでもない話だが、棒読みである。

 だけど、なんていうか。その当たり前みたいに言う彼女の声を聞いて、妙に力が抜けた。ヘンに色々なことを考えてしまった。

 これからたぶん、色々面倒ごとに巻き込まれるんだろう。

 俺は、このエロゲーを序盤も序盤で終えてしまったから、先の展開をまったく知らない。だけど、これから何にも巻き込まれず、平和に過ごしましたーなんて、簡単な結末を迎えられるとは思っていない。何しろ俺は主人公なのだ。今日だって酷い目を見たが、もしかしたら、これ以上のことが待っているかもしれないのだ。それをだましだましどうにか乗り越えて、そして最終的に、このロリとダラダラこんな日常が過ごせたらいいな、なんて、そんな馬鹿みたいなことを、妄想する。

 

「なんていうか、よ」

「? なんだ」

「いいや、なんでもねえや」

 

 このロリは最悪だが、許してやらんこともない。

 いずれは、わからせてやらねばならないけども。

 

「……なあロリ」

「ロリじゃない。私にも名前がある」

「あの長ったらしいヤツだろ? もう忘れたわ。そうじゃなくてよ、お前、明日暇だろ」

「私は毎日暇だぞ」

「夢みたいな台詞だな。……俺もよ、明日は学園サボることにするからよ、朝からどっか行こうぜ」

「どっかってどこだ」

「どっかはどっかだ」

「適当な奴め。……私は朝は駄目だ。日光が駄目だし、起きられん。そもそも私は夜の眷属なのだ」

「……まだ言ってるのか、それ。いいか、日光に当たるとな、健康にいいんだぞ。お前は頭がいいんだろうけどそーいうとこが抜けてるよな」

「…………私からすれば、どーしてお前は私の正体に気づかないのかが謎なんだが」

 

 はあ、とロリはよくわからないことを言って溜息を吐いた。

 

「どういうことだ?」

「お前に理解を求めるのは諦めたわ。ばーかぁ」

「まあ、お前が行かないならいーや。学園行くよ」

「…………おい、待て待て。誰が行かんと言った」

「あ? 朝ダメなんだろ、お前」

「夜行けばいいだろ。日が落ちるまで一緒に布団でぬくぬくして、その後行けばいい」

 

 誰も、行きたくないとは言ってないだろ。

 

 そっぽを向きながら、ロリはそんな風に言った。彼女は平然としているようで、平然を装っているようでもあった。おいおい、と思う。全然、どっちかわかんねえ。後者だとしたら可愛いのかもしんねえけど、勘違いな可能性だって大いにある。

 もし、と俺は考えてみた。この、そっぽを向いただけの仕草が、照れ隠しなのだとしたら。

 

 このゲームの主人公は、それを見抜いて攻略してくって言うのかよ?

 

 勘違いしてるのか、勘違いさせられているのか、それとも、本気か。

 それを見抜かねえと主人公の資格はないのかもしれない、なんて、馬鹿みたいなことを考える。

 

 まあ、今のとこ、俺はまあまあうまくやれてるよな?

 俺は、虚空に向けて、そう誰かに問いかけてみる。

 

 

 




<登場人物情報>

この話の主人公=ハーロックさん(偽主人公兼改造人間A。珍しく感傷に浸ってる)
この話のヒロイン=ロリビッチ(ラスボス系吸血鬼。現時点での好感度は不明)

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