このオヨビでない少年に祝福を!   作:タイラー二等兵

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植木等主演映画「無責任シリーズ」、高橋良明主演ドラマ「オヨビでない奴!」、吉岡平作「宇宙一の無責任男シリーズ」をごっちゃにして、能力アゲアゲにしたのが主人公です。
……って「無責任シリーズ」や「オヨビでない奴!」知ってる人はマニアックだと思う。


無責任学生、異世界転生する

「……ん? ここは?」

 

学生服を着た少年、植草均は気がつくと、昏くて明るい所で椅子に座っていた。正面の椅子には、背中から翼の生えた綺麗な女性が座ってこちらを見ている。

 

「あぁ、ナルホド。(ボカ)ァ死んじゃったのかぁ」

 

「植く…ええ!?」

 

女性が何かを言おうとしてから思わず驚いた。それを見て一瞬キョトンとするものの、均は直ぐにその理由を理解した。

 

「もしかして、『植草均さん、ようこそ死後の世界へ!』とか言おうとしてたん?」

 

「わ、私のセリフを取らないで下さい!」

 

図星を突かれた女性が恨みがましく言う。

 

「ブワーッハッハッハ! イヤー、気にしない気にしない!」

 

「気にしますっ!」

 

思わずきつく返す女性に、しかし均は相好を崩さない。

 

「そもそもアンタ、その翼と現状から見て天使ってヤツでしょ? そしたらここに来る直前のこと思い出して、ああ、死んじゃったのかぁって思ったワケ」

 

いい加減な言動とは裏腹に、結構まともな理由を述べる均。

 

「マッ、後はラノベのテンプレだからネ!」

 

と、要らんことまで付け足す。それが植草均という男である。

 

「……わかりました。貴方の言動を気にしてもしょうがないという事が。

それでは改めまして、植草均さん。ようこそ死後の世界へ。貴方は先程、不幸にもお亡くなりになりました」

 

……この天使も、このセリフを言わずにはいられなかったようだ。

 

「貴方には三つの選択肢があります。一つは……」

 

「あ、それはいいや。どうせ生まれ変わるか、天国に行くかってトコでしょ? 三つ目も特典もらって異世界転生とか、そんなんじゃない?」

 

「……そのとおりです。三つ目は魔王が猛威を奮う世界への転生です」

 

「いやぁヤッパリ? まさにお約束ってヤツだねぇ。

……あ、僕、異世界転生でお願いネ?」

 

均の軽いセリフに、天使は軽く唇を噛む。しかし直ぐに気を取り直し。

 

「それでは転生に当たり、今までの転生者の現状について……」

 

「ああ、それもいいや。今のセリフであんまり芳しくないのはわかったから」

 

「え……」

 

「イヤ、だって今のセリフじゃあ、今まで何人も異世界転生させてたんでしょ? それなのにまだ送りたがるってコタァ、魔王討伐も出来ず、お亡くなりになった方もさぞかし多かったのでは?」

 

「その、とおり…です……」

 

天使は顔を俯かせ、肩を振るわせる。

 

「そんだったら具体的な数字は聞かない方がいいでしょ? そんなの聞いたらさすがに僕でも、ヤル気が殺がれちゃうかも知んないしねぇ」

 

均は腕を組み、うんうんと頷いてみせる。すると。

 

「う……」

 

「うん?」

 

「うわあああああん…、そんなに私を虐めないで下さあああい……!!」

 

天使の心は、ポッキリと折れてしまった。さすがにこれには、均も困ってしまう。均も別に、悪気があって言っていたわけではない。ただ、均の先を読む性質が悪い方に働いてしまっただけなのだ。

 

「え、ええっと、そろそろ泣き止んでくんないかなぁ。ほら、いつまでも泣いてると、そのかわいい顔が台無しだョ?」

 

「……え。かわ、いい?」

 

「うん、そりゃあもう! 僕が今まで会った人達の中でも、トップクラスだョ!」

 

言っておこう。均のこのセリフに、嘘偽りは一切無い。生前均が惚れていた()も、勿論かわいかった。だが、見た目の年齢相応のかわいさである天使とは違い、その娘は小柄で幼顔の、いわゆるロリっぽいかわいさであり、世間一般の嗜好性としては天使の方が大多数と言えるだろう。まあ、均はロリ顔の方が好みなのだが。

 

「えっと、あの、ありがとうございます……」

 

天使は顔を真っ赤にして、再び俯いた。

さて、均は一つミスをした。そう。この天使、この手の言葉に免疫のない、至って純粋な子だった。

 

(……あれ? もしかして僕、やっちゃった?)

 

実は均、何の因果か女性に好かれやすく、いわゆる天然ジゴロ状態。均本人は奥手なのに、周りの女性がほっとかないのだ。テメエ、どこのエロゲの主人公だ!

 

「えーっとォ、そろそろ話の続き、いいかな?」

 

とりあえず均は、話の流れを修正すると同時に話を逸らそうと努力してみる。

 

「ああ、はい。そうでした。それでは転生特典を選んでください」

 

意外にも普通の対応をする天使は、分厚いカタログを手渡した。受け取った均は1ページずつ特典を吟味していく。武器、防具、魔道具、能力など様々な特典があるものの、しかしどうにも均にはしっくりとこない。

 

「うーん、どうも僕には、今イチ合いそうな特典が無いなぁ」

 

均が呟く。実は均、一見優男に見えて、結構強かったりする。ただ、彼の持つ信念の関係で、特典の武具・道具の様な一芸に秀でた能力は使い勝手が悪く、オマケに元々持っているある特殊能力のために、能力系の特典にはあまり興味がないのだ。

 

「……あの、それでしたら私が特典をお選びしましょうか?」

 

「えっ? 構わないの?」

 

「はい。特典を決めきれない方にこちらで選んだ特典をお薦めする事も、偶にですがありますので」

 

「うん、じゃあ任せた」

 

彼は、あるパラメーターが非常に高かった。それはとある先輩転生者どころか、ある女神をも凌いでいるくらいの。

 

「貴方の転生特典は、私です」

 

「……え?」

 

ただし、女性絡みではそれが発揮されることは滅多になかった。たとえ周りから見て羨ましい状況だとしても、だ。

 

「えーっと、それって問題ないの?」

 

「はい。私は、死者を導く仕事をしていた女神の代理としてここにいるのですが、その方はある転生者の特典として、転生先の世界に連れて行かれました。この事に関しては、以降の禁止事項に指定されていません。なので、転生特典を私にしても問題はありません」

 

そうハッキリと言い切られてしまうと、これに関して何も言えなくなる。とはいえ、これ以上巻き込まれたくはないし巻き込みたくもない均は、何とか断るための口実を考え口にしようとするも、それよりも早く天使が続きを語り始めた。

 

「それに、これは本当に、貴方に向いた特典だと思いますよ?

植草均さんのあちらでの行動から考えて、特典に不満を持つのは、貴方の信念からすれば()()()()()()()ではないのですか? なら、状況に応じて支援が行える私が役に立ちます。

さすがに地上に降りれば力も弱まりますし、先に地上に降りた女神ほどの力もありませんが、それでも貴方のお役には立てると思いますよ」

 

ナルホド、と思う。均は無益な殺生は嫌いだ。話し合い、……均の場合は口八丁の丸め込みだが、それで済むならそれに越したことはないし、闘うにしても相手を制することが出来るなら、命を奪う必要はないと思っている。

しかし生きていくため、生き残るため、そして彼にとっての身内を護るためなら、非情になることも出来た。幸いにしてその様な経験は一度もなかったが、均にはそういった資質を秘めている。

均自身もその事には気づいており、また、たとえ異世界だろうと、そのスタンスを変えるつもりはなかった。

だからこそ、強力すぎる力では駄目なのだ。もし戦闘の最中、その残忍性が目覚めたとき、その力に引っぱられ(酔っ)て歯止めが利かなくなるかも知れないからだ。

無責任でいい加減な均とて、こんな事を「気にしない」で済ませられなかった。基本、いい奴なのである。

 

ハァ……

 

覚悟を決めた均は、一つため息を吐き。

 

「わかった。僕の特典はアンタだ。言いたかァないけど、面倒見よう!」

 

そう言って、ドン! と胸を叩いた。

 

 

 

 

 

「それでは異世界への転生を始めます」

 

そう言ったのは、均を案内していたのとは別の天使。均が転生特典を決めた直後に現れて、仕事を引き継いだのだ。因みに彼女曰く、神々(うえ)は今回の事で、以降、神や天使を特典にするのを原則禁止とすることに決定したそうだ。

 

「その魔法陣から出ないよう気をつけてください」

 

そう注意されても、均は飄々としている。やがて世界との境界が曖昧になってゆき。

 

「植草均さん。ノエル先輩のこと、お願いします……」

 

その言葉を最後に、均達は世界を越えた。

 

 

 

 

 

気がつくとそこは、中世ヨーロッパ風の町並が見通せる大通りだった。

 

「おおう、こいつァ素晴らしい!」

 

均が興奮気味に声を上げる。その様子に天使、……ノエルは軽く微笑み言った。

 

「ここは駆け出し冒険者の街[アクセル]です。魔王の城からは最も遠いので、比較的穏やかな所らしいですよ」

 

ノエルはこの世界の担当ではないのだが、異世界転生の説明をする関係で多少の知識は有していた。少しは某女神様にも見習ってもらいたい物である。

 

「へぇ、そーなん、だ……?」

 

ノエルを見た均は違和感を感じ、そしてすぐに気がついた。

 

「ええと、ノエルちゃん、だっけ? その、翼はどうしたの?」

 

そう、彼女の背中の翼が、いつの間にか消えていたのだ。

 

「この世界には亜人や獣人も暮らしてますが、さすがに天使の見た目だと騒ぎが起きてしまいます。なのでここにいる間は、神の力によって翼は消されています」

 

「ナルホドねぇ、さすがは神様。凄い! 凄すぎます!!」

 

と、褒め称えているものの、翼を消さなくてはならない理由は大体予想が出来ていた均。

 

「さて、それでは冒険者の登録に行きましょう。登録さえ済ませればギルドのクエストも請けられるようになりますし、冒険者カードが身分証明書にもなりますから」

 

「……何よりも魔王を倒すためには、冒険者にならなきゃいけない、ってか?」

 

「そういう事になりますね。

……確か冒険者ギルドはあちらの方だったと思います。行きましょう、植草均さん」

 

そう促すノエルに、しかし均は動こうとしない。

 

「……どうかしましたか?」

 

「あのさ、他人行儀にフルネームで呼ぶのは()めてくんないかなぁ。僕達、一応パートナーなんだし、苗字でも名前でもいいから、どっちか片方で呼んでほしいんだよネ」

 

言われて、成る程と頷くノエル。

 

「それでは、均さんと呼ばせていただきます。

では改めて、行きましょうか均さん」

 

「りょーかい! さあ、行ってみようかぁ!!」

 

そう言ってノエルと共に歩き出す均。彼らの冒険は、まだ始まったばかりだ。

……いや、まだ続くからね? ジャ○プの打ち切り作品みたいにしたのは冗談だからね?




天使の名前はノエルに決めました。……今後、外伝小説で名前が出たらどうしよう。
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