このオヨビでない少年に祝福を!   作:タイラー二等兵

5 / 7
今回、一話目で書いた均の特殊能力の一端が明かされます(説明はされない)。

※一部内容を修正


無責任男、少女を愛でる

「それじゃあ私は、ギルドにカエル肉を運んでもらう手続きしてくるわね…」

 

制服の女性……監察官のセナが立ち去ったところで、粘液まみれのアクアが言った。

 

「アァ、それじゃあ僕達も一緒に行くョ」

 

「早く報酬を受け取って、リーンさんにお返ししないといけませんし」

 

「……ハハ、ダストにも見習ってほしいわ」

 

リーンは自虐染みた笑いを浮かべながら言った。

 

「リーンちゃん、そんな時化た顔してると、幸せが逃げちゃうョ?」

 

そう声をかけた均は、リーンの頭を手で軽くポンポン、と叩く。するとリーンは一瞬驚いた顔をし、やがて薄らと頬を染める。

 

「なっ、ヒトシ!? あなたちょっと馴れ馴れしいわよっ!」

 

リーンは手を払いのけながら言った。しかしリーンは怒ってはいるが、それは子供っぽく扱われた気恥ずかしさから来るもの。むしろ余りにも自然だったため、それがさも当たり前のことのように錯覚してしまったほどだ。

そしてそれを見たカズマは思う。

 

(やっぱりコイツの特典、ナデポとニコポじゃないのか!?)

 

彼がそう思ったとしても、仕方がないことだが。

 

 

 

 

 

ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ……

 

街の中を歩いて行く、アクアと均達。

 

ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ……

 

均達は先を歩くアクアから、少し距離を取ってついて行く。

 

ぬちゃっ、ぬちゃっ、ぬちゃっ……

 

そしてノエルは、遂に耐えきれなくなって、アクアに声をかける。

 

「あの、アクア様。先にお風呂に行かれた方がよろしいのでは?」

 

ぬちゃっ!

 

「お金が、無いの……」

 

「え?」

 

「お金が無いのよおおおお! みいんな借金のカタに差し押さえられて、暖炉の薪代すら無いのおおおお!!」

 

アクアは目に涙を浮かべて絶叫をした。

 

「えーっと、リーンちゃん?」

 

状況が今イチ掴めない均は、説明を乞うためリーンを見る。

 

「えっとね、冬に入る少し前くらいなんだけど、この街の近くの廃城に魔王軍幹部のデュラハンが来たのよ」

 

「アンデッド……!」

 

一瞬、ノエルが苦渋の表情を浮かべる。

 

「それで何だかんだあって、さっきカズマ達がジャイアントトードと戦ってた辺りで、戦闘になったらしいの」

 

「らしい?」

 

「あたし達のパーティー、クエスト受けてていなかったから」

 

なる程、と頷く二人。リーンは話を続ける。

 

「それでカズマが、デュラハンの弱点が水だって気づいて、アクアが水を呼び出したんだけど。……それが洪水クラスの水で、門と入り口付近の家がね……」

 

「賠償金、ですか」

 

ノエルは呆れた表情でアクアを見る。

 

「実はそれだけじゃないのよ」

 

「まだあるんですか!?」

 

アクアの性格を知っているノエルだが、更にその上があると聞いて驚いた。けれどさすがにそれは早計である。

 

「ああ、こっちはアクアのせいじゃないわよ。

カズマ達が家を手に入れた後なんだけど、この街に向かって[機動要塞デストロイヤー]がやって来たんだ」

 

「ゴメン、リーンちゃん。デストロイヤーって、ナニ?」

 

この世界に転生したばかりの均は、聞き慣れない名詞に質問をする。しかしそれに答えたのは、ノエルだった。

 

「[機動要塞デストロイヤー]は、古代文明が作り出した兵器です。移動型の要塞で、四対の足を動かして移動します。

ただ、デストロイヤーは破壊されたと、エ……、私の上司の一人が仰ってましたが」

 

「それって話の流れからすると、やっぱりカズマ達が……?」

 

「うん、そう。こっちも色々あって、最後はめぐみんの爆裂魔法で破壊されたんだけどね?

実は、デストロイヤーの動力源になってた[コロナタイト]をテレポートを使って飛ばしたらしいんだけど、テレポート先がたまたま領主のお屋敷の上で、爆発したコロナタイトに巻き込まれてお屋敷も……」

 

「ボンッ! ……ってか?」

 

均は握った右手を、目の前で勢いよく開きながら言った。

 

「ま、まあね。

それで、お屋敷の人達は無事だったらしいんだけど、テレポートを指示したカズマに国家転覆罪の容疑がかけられて。今は一時保留で仮釈放中なんだけど、お屋敷の修理費を請求されて、家中の物が差し押さえられちゃったってわけ」

 

「「なる程……」」

 

均とノエルは、哀れんだ目でアクアを見るのだった。

 

 

 

 

 

「ジャイアントトードの討伐報酬と買い取り料金、借金の返済分を差し引いて3万エリスです」

 

ギルドの窓口で、ルナがアクアにエリスを手渡す。が、アクアは。

 

「ちょっと、あれだけ苦労して3万エリスって、少なすぎると思うんですけどー?」

 

見事なクレーマーと化していた。けれどルナも慣れたもので。

 

「失礼ですが、回収予定のジャイアントトードの数に、他の方が倒したものが混ざっている疑惑があるのですが?」

 

「ぎくっ!」

 

「そもそもカズマさん達は、ギルドのクエストとしては受けていらっしゃらなかったはずです」

 

「うっ!?」

 

「それを踏まえた上で特別に、ギルドから手当として報酬をお渡ししました。それでも何か、不満がお有りですか?」

 

「いいえ……、ありません……」

 

見事にアクアを黙らせるのだった。

 

「それでは次に、ウエクサヒトシさんのパーティーですが……。

ジャイアントトード36匹分72万エリスに、()()()()()()()()()カエル肉の引き取り料金16万5千エリス、占めて88万5千エリスのお渡しになります」

 

「はちっ……!?」

 

余りにもの金額に、アクアは二の句が告げずにいる。

 

「それにしても、基本職の方が初めてのクエストでこんな成果を出すだなんて……」

 

「ブワーッハッハッハァ! いやァ、よくある事よくある事!」

 

「いえ、滅多にないと思いますが……」

 

ルナは若干引きながら、呟くように言った。

 

「……さてと。それじゃあ、……はい。僕のショートソード1万エリスと、ノエルちゃんのショートスピア5万エリス、合わせて6万エリス。

あと、リーンちゃんが倒したジャイアントトードの分、2万5千エリスだョ」

 

そう言ってお金を差し出す均。そういえば、と思いながら、リーンはお金を受け取った。

 

「えーと、次は……。あァ、そうだ。今晩の宿を探さないと」

 

「え、あんた達、まだ宿も取ってないの?」

 

「うん、取ってないケド。なんか問題あった?」

 

呆れたように言うアクアに、均が聞き返す。それに答えたのは、リーンだったが。

 

「ヒトシ、ちょっと言いづらいんだけど。今の時期って駆け出し冒険者御用達の馬小屋だと、最悪凍死しちゃうでしょ? だからみんな宿を取ってるのよ。

だから……、もし空いてるとしても高い宿になっちゃうと思う」

 

「そ、それは……。均さん、どうしましょう?」

 

アクアほど図太い性格をしていないノエルは、馬小屋を借りるのは避けたいし、凍死なんて以ての外。というか、天使が馬小屋で凍死だなんていい笑い種である。

かといって、幾らそこそこ稼いだとはいっても、高い宿に数日泊まればあっという間にお金が底をつくだろう。

 

「いやぁ、こいつァ全く参ったねェ」

 

どうやら均も、いい案を持ち合わせていないらしい。しかしそこは、日本改めアクセル一の幸運男、である。

 

「それじゃあ、ウチ来なさいよ。ベッドはないけど、馬小屋よりかは幾分マシでしょ。助けてもらったし、久しぶりに天界の話も聞きたいもの」

 

「……天界?」

 

「なあああああっ! 何でもありませんよ、リーンさん!!」

 

珍しく、めちゃくちゃ慌てるノエルだった。

 

 

 

 

 

均達はアクアの、というかカズマ達の家へと向かい、歩いて行く。均は両手で、大量の食材を抱えながら。そしてノエルは、料理に必要な道具の入った袋と薪を手に提げながら。しかも二人とも、簡単な寝具を背負っていた。中々のパワフルっぷりである。

 

「……ねえ、ヒトシ。ホントに、あたしも一緒で構わないの?」

 

そう尋ねたのはリーン。実は彼女も、カズマ達の家について行くことになったのだ。その理由は。

 

「だからさっきも言ったじゃん。お礼の意味で料理を振る舞うって。

泊めてくれるアクアちゃん達はもちろん、あーだこーだで世話を焼いてくれたリーンちゃんにも感謝してんだからサ!」

 

という訳であった。

 

「そうですよ。均さんの口八丁に、訝しみながらもお金を貸してくれたお陰で、これだけの報酬を手にすることが出来たのですから」

 

「口八丁って……。いや、否定も出来んケド」

 

流石に均の笑顔も、やや苦笑いになっている。

 

「何だか、そんな素直に感謝されると小っ恥ずかしいんだけど」

 

リーンは照れて、頬を染めて呟いた。

そんな感じで歩いて行くと、やがて行く手に屋敷が姿を現した。

 

「初めて来たけど、中々立派なお屋敷じゃない。どうやって手に入れたの!?」

 

駆け出し冒険者が屋敷を手に入れるなんて、普通では有り得ないことだ。だからこそリーンは、素直に手に入れられた理由を尋ねたのだ。

 

「……それってもしかして、瑕疵(かし)物件だからじゃないかな?」

 

「かしぶっけん?」

 

均が放った耳慣れない言葉に、リーンは首を傾げる。

 

「何か問題を抱えた物件、所謂、訳あり物件って奴だョ」

 

そう言って均は一人、つかつかと歩を進めて門の前まで来ると、荷物を地面に置き、腰を屈めて。

 

「キミ、なんて名前なの? ……そう、アンナちゃんって言うんだ。え、僕? 僕の名前は植草均。均でいいよ」

 

そう言って虚空に手を延ばすと、撫でるような仕草をする。

 

「ちょ、嘘でしょ?」

 

「そんな、ありえません」

 

アクアとノエルが驚き、リーンが訝しむ。

 

「ねえ、何がどうしたのよ?」

 

「ヒトシって言ったっけ? 彼、幽霊に触れてるの」

 

「……は?」

 

「聖職者やそれに準ずる職業なら、霊を視たり会話が出来る方もいます。けれど、物質干渉状態にない霊に触れられるという人間は、私の知る限りでは初めてです」

 

ノエルの説明で、均の異常性がようやく理解できたリーン。

 

「……あの子も驚いた顔してたわね。でも今は、凄く気持ち良さそうに撫でられてるわ」

 

「はい。本当に嬉しいのでしょうね」

 

この場にカズマがいたら、きっとこう叫んだことだろう。

 

『お前の特典、やっぱニコポとナデポだろっ!!』

 

と。

 

 

 

 

 

「ただまー」

 

屋敷の扉を開けてアクアが声をかける。しかし、中からの返事はない。

 

「ちょっと、誰もいないのー? 『おかり』って言ってほしいのだけどー?」

 

そう言って奥へと進んでいくアクア。その様子を見ていたノエルは、苦笑いを浮かべる。

 

「アクア様は、やっぱりアクア様ですね」

 

「アクアちゃんって、昔からあーだったん?」

 

「はい。しょっちゅう周りに迷惑をかけて……。でも、どうしても憎めない方なんですよね」

 

などと会話をしていた所で。

 

「助けてくれーっ! ロリッ子に襲われるうううう!!」

 

屋敷の奥から、カズマが叫ぶ声が聞こえてきたのだった。




均の特殊能力・幽霊に触れられる。ただしこれは、本来の特殊能力の副産物です。また、幽霊が視える人は偶にいるという設定なので、特殊の付かない能力です。

所で今回均は、アクア以外、リーンにも特別な待遇をしています。もちろんノエルも了承済みで、リーンはまだ気づいてません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。