このオヨビでない少年に祝福を!   作:タイラー二等兵

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いやっ、ドーモ。お久しぶりです。

この話を上げる前に、前回と前々回の話を一部修正しました。


デタトコ勝負

一夜が明けた翌日。カズマはいい香りによって目覚める。

 

(……何だ?)

 

均から支給された毛布から出ると、軽く身震いをしてから部屋を出る。そして居間までやって来ると。

 

「なっ、これは!?」

 

木箱の上に、トースト、目玉焼き、温かなスープ、野菜サラダが置かれていた。

 

「あァ、おはよう。よく眠れた?」

 

均が笑顔で訊ねてくる。

 

「あ、ああ、前の日よかマシだったけど。……ところでこれは?」

 

「うん。どうせだから朝ご飯もって思ってネ? イヤァ、まさかキャベツに襲われるとは思わなかったケド」

 

「至れり尽くせりだな、オイ!?」

 

暖炉の薪に夕食に、毛布の支給。そしてここに来て朝食までも、だ。しかもキャベツと格闘してまで。有難すぎて、逆に怖くなってくるカズマである。

 

「イヤ、まあ、少しは自分のためでもあるし。僕だって、寒い部屋で我慢してるのは()だかんネ!」

 

「だが、晩飯はまだしも朝飯まで。それに毛布だって……」

 

「まあ、ご飯はみんなで食べた方が楽しいし、自分達だけ毛布にくるまって眠ってても気が引けちゃうでショ?」

 

目頭が熱くなるのを感じるカズマ。

 

「お前、いい奴だなっ!」

 

こっちに来てから久々に感じた、人の優しさであった。

 

「おはよー、……ってこれは!?」

 

「ああ、均さん!? 言っていただければお手伝いしましたのに!」

 

「おお、久しぶりに立派な朝食ですね!」

 

ほぼ同じタイミングで、アクア、ノエル、めぐみんがやって来て、口々に思ったことを言ってくる。

 

「なぁに、気にしない気にしない! 黙って僕に、ついてこーい! っときたモンだ」

 

「……いや、マジでここに居て欲しいんだけど」

 

カズマはぼそりと呟くのだった。

 

 

 

 

 

朝食と後片付けを済ませ、均とノエルが屋敷を出ようとすると。

 

「あ、ちょっと待て。俺達も一緒に出るから」

 

そう言ってカズマ達も家を出る準備を始める。

 

「お待たせ」

 

「……あの、私達を待たせた理由があるのでしょうか?」

 

ふと感じた疑問を、カズマに投げかけるノエル。

 

「まあ、たいしたことじゃないけど。昨日めぐみんがゆんゆんとの勝負に勝って、この魔法の球を戦利品として貰ってきたから、魔道具店に売りに行くんだ。

それで均達にも紹介しとこうと思ってな」

 

「なるほど、そういう事ですか」

 

納得のいったノエルが頷く。その様子を見ていたカズマは、しばらく黙った後こう付け足した。

 

「……ノエルは、お店に入っても暴れるなよ?」

 

「どういう意味ですか? 人をならず者みたいに……」

 

そう返した彼女を、少し遠い目で見てから。

 

「……ヒトシ。もしもの時は止めてくれ」

 

「え? ああ、ウン。わかった」

 

均にしては珍しく、要領を得ないまま返事をするのだった。

 

 

 

 

 

カズマと共に魔道具店へ向かっていると。

 

「あ、カズマくん!」

 

そう声をかけてくる者がいた。

 

「よう、クリスじゃないか」

 

カズマが挨拶を返した相手を見れば、短い銀髪で右頬には刀傷、スレンダーな体型の、均よりも少し年下と思われる少女がいた。

 

「キミ達、これからお出かけ? っていうか、そちらの人達は……!?」

 

クリスと呼ばれた少女はそう言いながら、均達に視線を移し、一瞬だが驚きの表情を浮かべる。

 

「ん? クリスちゃんだっけ? どうかしたん?」

 

「あ、知り合いに似てたからビックリしただけ!」

 

クリスは誤魔化すように、あははと笑う。とはいえ、嘘を吐いている風には見えなかったため、均もそれ以上は突っ込まない。

 

「あ、えっと、あたしは盗賊のクリス。それでキミ達は……?」

 

「ああ、申し遅れました。僕ァ植草均。昨日冒険者となったばかりの若輩者です。職業も最弱職の冒険者ですが、そこはまァ、知恵と勇気と希望と元気で乗り越えていく所存です、ハイ」

 

相変わらず、へりくだっているのか馬鹿にしているのかわからない調子で自己紹介をする均。そして。

 

「……私はノエル。均さんと同じく、昨日冒険者となったばかりの者です。職業はアークプリーストの槍使い。……クリスさん、今後ともよろしくお願いします」

 

「う、うん。よろしく」

 

最後にニッコリと笑うノエルから妙な圧を感じ、思わずどもってしまうクリス。

 

「ところで、ヒトシくんだっけ? キミ、冒険者だって言ってたけど、盗賊のスキルって興味ある?」

 

そう話を切り出したクリスが言うには、盗賊のスキルには攻撃向きのモノは少ないが便利なものが多く、冒険に役立つものばかりとのこと。

今ならシュワシュワ一杯で手を打つと言われ、「あ、こいつァありがたい」と均はその話に乗った。

 

 

 

 

 

一端路地裏に入るとカズマは、アクアとめぐみんを先に店に向かわせる。

 

「……えっと、ダクネスがいないから、カズマくん代わり頼めるかな?」

 

「え、俺かよ!? ったく、それならアクアを残しときゃよかった」

 

「え!? いや、さすがにそれは……」

 

アクアの名を聞き、少し言葉を濁すクリス。

 

「何だ、俺ならいいのかよ?」

 

「うーんと、やっぱり女性相手だと、ちょっとね」

 

「いや、ダクネスだって女性だろ?」

 

カズマが反論すると、急に真面目な顔をして。

 

「キミは、ダクネスにそれを求めるわけ?」

 

「…………確かに、あれは手遅れだったな」

 

カズマも思わず納得するのだった。

 

「……えーっと。そのダクネスって人は置いといて、そろそろそのスキルってやつ、教えてくんないかなァ」

 

所在なさげな均に言われ、ゴメンと謝るクリス。

その後クリスは、潜伏と敵感知を教えるためカズマに指示を出して、離れた場所に後ろを向かせて立たせると、近くにあった空いた大樽に身体を滑り込ませ、拾った石を投げつけてから自身はその中へと身を隠す。

石を当てられたカズマは頭を擦りながら、ぐるりと辺りを見渡して、大樽へと近づいていく。

 

「ビンビン感じるよ! カズマくんが怒りながら近づいてくるのが!

……ええと、カズマくんはわかってるよね? スキルを教えるために、仕方なくやってるって」

 

しかしカズマからの返答はない。

 

「……ふふん! カズマくんの力じゃダクネスみたいに、樽ごとあたしを転がすなんて出来ないよね?」

 

余裕を見せて、……あるいはそうであるように見せかけるために、クリスはやや挑発気味に言う。

それを聞き流し、悪い笑顔を浮かべながら、カズマは腰から鞘ごとショートソードを抜き放ち。

 

ゴンゴンゴン!

 

樽を思い切り叩き始めた。

 

「わひゃああっ!?」

 

「俺は真の男女平等主義者サトウカズマだ! 女だからって見逃してもらえると思うなよ!」

 

「わあぁ、ゴメン! あたしが悪かったからっ!」

 

ひゃははと嗤いながら樽を叩き続けるカズマに、たまらないとばかりに謝るクリス。

 

「……全く、何をしているのでしょうか」

 

「ホントにねぇ。とかくこの世は馬鹿ばかり、ってか?」

 

呆れ返ってその様子を見ている、ノエルと均だった。

 

 

 

 

 

「……あー酷い目にあった。ええと、それでだけど、これでヒトシくんの冒険者カードのスキル欄に、敵感知と潜伏が表示されたはずだよ」

 

「えーと、ウン。確かにあるねェ。後はこれを習得スキルとして選択すれば覚えることが出来る、ってぇワケだネ?」

 

「そういう事」

 

クリスが偉そうに、うんうんと頷いているが。

 

「うーん、……でも、この敵感知はイラネーや!」

 

「ええっ!?」

 

「要らないってどういうことだよ!?」

 

あまりにもと言えばあまりにもな発言にクリスとカズマは、クリビツテンギョウ(ビックリ仰天)イタオドロ(驚いた)

 

「いやぁ、だって僕、気配を読むのは得意だから」

 

「は?」

 

今度はカズマの目が点になる。

 

「ホラ、カズマと最初に会ったとき、カエルが舌伸ばすのに気付いて声かけたじゃん? あれだって、気配で攻撃を察知しただけだかんね?」

 

「……お前、どこの武人だよ」

 

作者としても色々くっつけすぎたとは思っているが、如何せん昔に創作し(つくっ)たキャラクターなのでご容赦願いたい。

 

「いや、でも気配を殺すコタァ出来ないから、潜伏は正直ありがたいよ?」

 

「そんな取って付けた様に言われても、ちっとも嬉しくないんだけど」

 

クリスは泣いてもいいかもしんない。

 

 

 

 

 

しばらくして、ようやくクリスも立ち直る。

 

「ええっと、それじゃああたしの一押しのスキル、いってみようか。

窃盗って言って、相手の持ち物を何でも一つ、ランダムに奪い取ることが出来るスキルなんだ。成功率は運のステータスに依存するよ」

 

「なるほど、そいつァ興味深い」

 

「じゃあやってみるよ。『スティール』!」

 

クリスが右手を突き出しスキルを発動させると、その手には均の財布が握られていた。

 

「お、当たりだって、重っ!?」

 

「あァ、まだ40万近くあるからねぇ」

 

「「40万!?」」

 

想定外の金額に、カズマとクリスは声を揃えて驚いた。

 

「あ。えっと、それじゃ……」

 

そう言って均に財布を返そうとすると。

 

「おやぁ? ヒトシとはスティール勝負しないのか?」

 

カズマのセリフに、クリスがびくりと震える。

 

「勝負、ですか?」

 

訊ねたのはノエル。何故だか知らないが、僅かながら剣呑な雰囲気を醸している。一瞬腰が引けたカズマだったが、自分がクリスからスキルを教わった時のことを説明した。

 

「……そういう事でしたか」

 

そう言ってクリスを見つめる目は、やや冷ややかである。一方の均は。

 

「へぇ、なかなか面白そうだネ」

 

「お、乗り気じゃないか。だったら決まりだな!」

 

「え、ちょっと!?」

 

クリスが抗議の声を上げたものの、どこ吹く風であった。

均は勝負のために覚えたスキルの習得するため、カズマに見守られながら冒険者カードを操作している。その間にノエルはクリスの横に立ち。

 

「……どういうつもりなんですか、エリス様」

 

小さく声をかけた。

 

「……やはり気付かれてしまいましたか」

 

エリスと呼ばれたクリスは頬を掻き、今までと違う落ち着いた口調で答える。そう。今の彼女の姿は、幸運の女神エリスが地上で活動するためのものなのだ。

 

「貴女の権能、偽りの姿を見抜く力は、神の能力すら凌いでますからね」

 

「誉めても何も出ませんし、アクア様の様に簡単に煙に巻けるとも思わないでください」

 

ノエルはなかなかに手厳しい。本来の生真面目な性分が強く出ているようだ。

 

「……今は時間がないので要点だけですが。神器の回収と気分転換、後は一人の女性の願いを叶えるために、です。詳しくはいずれ」

 

「……判りました」

 

ノエルが了承した直後、カズマとの会話を切り上げてクリスに向き直る均。しかし、スキル習得しただけにしては少し時間がかかっていたと、クリスとノエルは訝しむ。

すると。

 

「カズマの発案だケド、予告スティールしてみるョ」

 

「「予告スティール?」」

 

また妙なことをと、二人は複雑な表情で均を見る。しかしそういったノリが嫌いではないクリスは、すぐに不敵な笑みを浮かべて言い返す。

 

「へえ、なかなかの自信だね? いいよ、その勝負乗った!」

 

人間の姿を取っていようとも変わらぬ自身の幸運値に、絶対の自信があるクリスは了承する。

 

「オッケー。一丁ブワァーっといくかァ!

そんじゃあまずは、クリスちゃんご自慢の短剣から!」

 

「え、まずはって……」

 

「『スティール』!」

 

疑問の声を遮り発動させた窃盗スキル。その手には見事、クリスが所持する魔法のかかった短剣が握られていた。

 

「続いて僕の財布! 『スティール』!」

 

こちらも見事に取り返す。

 

「更にクリスちゃんの財布! 『スティール』!」

 

クリスの財布もゲットだぜ。

 

「マフラー! 『スティール』!」

 

首元がスッキリするクリス。

 

「右手のグローブ! 『スティール』!」

 

小石を数個握り込んだまま、右手の肌が顕わになる。

 

「左手の……」

 

「わあああ! 待った待った! もう降参! 降参だからああ!!」

 

たまらず音を上げるクリスだった。

 

 

 

 

 

なお、取り返した財布以外は、耳を揃えてクリスにお返ししましたとさ。

 

「うう~、ヒトシくんがまるで神様に見えるよう」

 

(……エリス様)

 

やや哀れんだ目でクリスを見る者が一人いたが、それに気付いた者は、幸いにして一人もいなかった。

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