ギルドへ来てみたが、職員以外誰もいない。
荒れた土や汚れた外壁、いつも溢れかえっている冒険者がいないところを見るにどうやらまたここでも襲撃に遭い皆避難したらしい。
義眼を使ってみるとベルとベルの主神らしきオーラを囲むように、数人の冒険者とその主神達のオーラが南西に向かっていて、
ひょっとしたらあのパルゥムは俺と同じぼっちで集団行動が辛かったのかと軽いシンパシーを覚えそうになるが、さっき見た眼鏡の白装束のことを思い出し、彼女が本来どこの眷属なのかを理解すれば、やはりぼっちは俺だけなのだと誇らしくなる。
待機を指示したつもりだったが、まあ別に疑問も不満もない。
「…いくらベルが味方だと証言したとしても、姿も気配もみせない得体の知れない者の指図など受けるわけがない、か。…そもそもベルは俺のこと話せないしな…」
他の奴等の行き先は南西…っつーとこっちはアポロンの本拠地だな。さっき捕まえたアポロン眷属の視界から得た情報とすり合わせて考えれば、ベルはともかく、主神は
こうして街中で闇討ちされるより、公式なルールをもって戦う方を選ぶことに疑問はない。
しかしタイミングが少々悪い。
大丈夫だろうか。アレもそろそろ着く頃だろう。ベル達の邪魔にならないといいが…。
「ガキ共の血を娯楽として楽しむ
己の失態を奥歯で噛みどうしたものかと思案していると
サァァァァァ…と、
土煙を混ぜた風が頬を撫で、ハチマンのコートを揺らした。
「………………なんとかなったらしいな」
風に乗るいくつもの肉声をハチマンの鼓膜が捕えた時、憎たらしい神々が歓喜しているの察し、ハチマンは安堵の息を吐いた。
祭ね……不本意だが、その祭の狼煙に協力してやろうか……
ギィィンッ!!
一瞬、ハチマンの片目の義眼が強い光を放って力が行使されたことを告げ、それもすぐに鳴りを潜めた。
ベルのことはベルの主神と仲間達に任せればいいだろう。いずれ顔をつき合わせて言葉を交えることもあるだろうが…
「『女は度胸だ。』…らしいしな。援護してやるか」
まずは
再び義眼を発動させ、目的のオーラを追った。
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「なんだったんだ今のは………」
「皆、無事かい…?」
「ベル、さっきのは一体なんだったのだ?」
「す、すみませんミアハ様。それは約束で話せないんです…そもそも僕はお兄さんのことは何も知らなくて…」
「嘘ではないようだな…」
「とにかく全員無事でよかったよ…」
ハチマンの風編みによって無事にギルドの前に着地したベル達は、常識はずれな現象に見舞われた驚きを数分かけてようやく落ち着きを取り戻したのもつかの間…
「ベル様!リリはこれで…!」
「あ!!リリ!?」
「おい!リリ助!」
「ベル君!待つんだ!」
「ッッッ!!!!!神様!?」
ベル・クラネルのサポーター、リリルカ・アーデは自身の立場と決着をつけるべく走り出し、残された者達はリリを追おうとするベルを抑えて周囲を警戒しながら今後を立ち振舞いを話し合っていた。
ベル・クラネルの主神、処女神ヘスティアは決意を秘めた瞳で愛する眷属に問う。
「ベル君、聞いてくれ。このままじゃボクたちに未来はない。打開策は2つ。勝目のない闘いに挑むか、この
「……え?」
今まで想像したこともなかった選択を、他ならぬ
周りには信頼に足る仲間達がいる。なのに、それを忘れてしまう程の大きな衝撃だった。
「ボクは君がいてくれるなら何処へ行こうがへっちゃらさ!相手が諦めるまで一生逃避行を続けてやる!」
ヘスティアは笑顔を浮かべてベルを見つめる。まるでその選択もひとつの幸せだと言うように、優しく、暖かく、隣にいようと微笑みかける。
「…………神様と……一緒に…」
逃げる…
神様と、みんなと出会ったこの都市から、………逃げる?
「ふふ…」
包みこむように、ヘスティアは悩み戸惑うベルの手をとり、頬を赤らめて囁くように愛する少年へと問いかける。
「…ベル君、ボクのことは好きかい……?」
「……へ?」
「大切なことなんだ!君が好きって言ってくれれば、ボクは覚悟を決められる!君の言葉を信じられれば、何でも出来るようになる…」
ヘスティアは伝える。言葉を、気持ちを、愛情を、
「何度だって戦える!」
「ぇ……」
「ボクは君が好きだぜ?可愛くて可愛くて仕方がない。君の隣にずっといたい。誰にも渡したくない。」
今までも隠すことなく伝えてきたこの思いを、また、伝える。二人のこの先が分岐する今だからこそ、その想いを余すことなく、その愛は変わることはないものだと証明するように何度も、何度でも、伝える。
「神…様…」
「ベル君……君はボクのことを……どう思っている…?」
小さな処女神、一柱の女神に愛された少年は嘘をつくことを知らない。
向けられた愛情を前に、頬に陽だまりのような熱を感じながら澄みきった瞳で
「………………尊敬しています!」
ベル・クラネルは答えた。
「そういうことじゃなぁぁぁぁい!!!!!」
「「「はぁ…」」」
二人を見守っていた皆がため息をこぼした。
「いたぞ!ヘスティア
「捕えろー!」
「チッ、ここまできたか…」
「ここも危険だぞ!」
空気も読まず、しつこく攻撃を撃ち込んでくるアポロン眷属に彼らは苛立ちを覚え、ヴェルフは舌打ちし、カシマ・桜火は自身の武器を握る手に力を籠める。
だがそれ以上に…
「おのれ……大事なところで邪魔をしてぇ……!!!!!」
愛する眷属に告白をするも淀みない眼で水に流され、挙げ句の果てに水どころか火や雷を差された女神はすでに怒髪天である。
可愛らしいツインテールも触角のように天に向かって屹立している。なにこの女神髪に神経でも通ってるの?
「もう良い!ベル君!奴等のところに行く!皆!すまないけど道中ボクとベル君を守ってほしい!」
「「「…了解」」」
「…ん、おぉ…任せろ」
「う、うむ…」
怒りの巻き添えを恐れた冒険者と神は冷や汗をかいて首を縦に振るしかない。
怒れる主神に手を引かれ、たどり着いた場所でベルは息を飲み、困惑した。
「アポロンファミリア……?」
「アポロン!いるんだろ!すぐに門を開けろ!」
借金取りさながらの剣幕で門を叩くヘスティアの声に応じ、ヘスティア一行を歓迎するように門が開く。
目に入るのは「待ってました」と言わんばかりに整列してベル達を睨視するアポロン眷属。それとは対称的に喜び、期待に満ちた視線をベルに向ける太陽神、アポロンがいた。
「やぁヘスティア…。こんな所まで乗り込んできてどうしたというのかな?」
「……パルゥム君。その手袋を貸してくれ」
嫌味を垂れるアポロンを無視し、ヘスティアは手近な所にいた小人族(パルゥム)の少年にお願いを装った命令を下し、その怒りの籠った声に怯え小人は手袋をおずおずと差し出した。
「フンッ!」
「ムふッ」
パアッン!と小気味の良い音を発てて手袋は遊戯の
その意味は多くの者が知るところ。
「…………上等だ!受けてたってやろうじゃないか!
宣戦布告。
神同士であれば、戦争遊戯の合意である。
「………………ふっ、ここに神双方の同意はなった!諸君!戦争遊戯だ!」
娯楽に飢えた神達が多く住む都市、ここオラリオでファミリア同士の戦争が成立した。太陽神が下卑た顔で開幕を謳えば、
「「「よっしゃああああああ!!!!!」」」
神々が狂喜するのはもはや必然である。
「すぐにギルドに申請を!」「漲ってきたアアア!」
「久々の祭じゃあああああああ!!!!!」
「「「しゃああああああああああああ!!!!!」」」
踊り狂うばかりに沸き立つ神々の歓声を浴びながらアポロンは「用は済んだ」とばかりにヘスティア達に背を向けて今後の方針を口にする。
「ルールは神々の立ち会いのもと公平に決めよう。詳細は追って連絡する…」
「………………」
ベルを手に入れようと舌舐めずりするアポロンと、その背を睨み付けるヘスティア一行、はしゃぎまわる神々、そして、騒動の渦中でありながら若干話についていけないベル・クラネルもーーーーーー気づかなかった。
つい先程、ベルとヘスティアを追い回した50余名のアポロン、ソーマ眷属の者達が此処にいないこと。
そして、ベルを
彼は、空からやってきた。
ーーーーーーーーー バアッッッンッッッッ!!!!!
アポロンファミリアの城壁の一部が、爆音と共に崩壊した。
自分が書いてる物がどれだけ伝わるか、難しいですね
あと仕事中に仕事の話するなよ、浮かんだネタが消えるだろうが