なんだなんだなんだなんだなんなのだ!!!!!??
何が起こっている、どうすればいい、何処へ向かっている、私は、何と戦っている………!?
敬愛する神アポロン様の指示により私達はリトル・ルーキーを襲撃していた。急襲は成功し、着実に奴を追い詰め、あと一歩のところで目的を成せるところにあった筈だ。
存外標的がしぶとく時間がかかったが、後一歩で、そう、後一歩だったのだ。
その一歩に立ち塞がった“
「「ぎゃあああああ!!!!!」」
「狼狽えるなぁ!奴も我々と同じく宙に投げ出された虫同然だ!回避の可能性はない!絶えず攻撃を続けろ!!」
「し、しかし!標的が視認出来ません!!」
「…………………」
「くっ、わからないのか貴様ら……!!!!!」
勘の鈍い部下に苛立ち顎が痛む程歯軋りする。…私には、そこに目に見えずとも敵がいることはわかった。
突如として天空へと巻き上げられた我等アポロン眷属とソーマ眷属およそ50余名。今なお重量に逆らい落下することなく風と共に大地から遠ざかって登っていく。
この惨状を作り出したのはおそらくたった一人の男。
姿が無くともその巨大な気配はその者の存在と位置を隠すことなく我等に伝えてくれた。
「………奴は…上だあああああ!!!!!」
部下達も冒険者の端くれだ。濃度は違えど命を奪い合う日常を過ごしてきた彼等も、私の声でその気配を知覚したらしい。上を見上げ、目を細めて喉を震わせながら、その気配を睨む。
「嘘だろ…」
「あいつも、俺達も…」
「なんでまだ浮いてるんだよ!」
部下達が溢した声に「『見な、飛行石の力だ』」などと含み笑いで答えるふざけた声に怒りを覚え、手にした剣を振るうが手応えを感じることなく空を裂き、
「放つ火輪の一刀、きたれ西方の風ーーーアロ・ゼフュロス!!!!!」
魔法によって打ち出した光輪の爆撃は、
ーーー刃身の伍
真紅の三叉愴と衝突し、爆炎は大風に掻き混ぜられるように大きく膨張し、周りの部下達を巻き込んで四散した。
「ぎゃあああああヒュアキントス様ァァァァァ!!!!!」
「なぁぁ!?くっ、おのれ…!」
「…『ドーラ、エンジンが燃えちゃうよぉぉぉ』…なんてな。くひっ」
「ダフネちゃ~んっ!」
「うちから離れないで!カサンドラ!」
「………………まさかゆりか?百合なのか?」
我々をなめているのか、奴は自ら攻撃を仕掛けようともせず、こちらを眺めている…そんな気がした。怒りによって殺意が膨張し、脳裏に望みを思い浮かべる。目に見えないあの男を地面に叩き落とし、その醜い姿を晒して頭蓋を踏みつける光景を。
「今に貴様を私の剣が捕える…覚悟を…」
「…なぁ、ジェットコースターって知ってる?」
声が聴こえた。
さっきよりもずっと至近距離に。
それも、私の背後から。
ーーーーーー刃身の弐
シュルシュルシュルシュル…
「なっ!?」
ーーーーーー
ズバンッッッ!!!!!
「ぐっ、くそっ!貴様いつの間に!」
「まぁこっちの世界には存在しないから知らなくて良いんだが、簡単に教えてやるよ。向こうの世界では、スピード感とか急激な高低差とか加減速だのを生身で味わう機会が一般人にはそうそう無い…」
気がつけば、私の全身は禍々しく光を反射する赤い糸に封じられ、空中故に支えもなく、身動ぎひとつ出来ぬように完封された。
「それを味わう為に科学的に安全性を保障した、決められたルートを走る装置に身体を拘束してそのスリリングを味わうアトラクションだ。まぁ、簡単に言えば拘束を施したうえで高速移動させられる乗り物だ。拘束だけにな?…ふひっ」
「くそっ、外れない…貴様っ!」
「原理というか、原動力としては、チェーンか、空気の圧縮か、電磁石なんてのもある。今回は糸巻き、釣りで言うリールとかヨーヨーみたいなイメージだ」
「おのれ!ほどけ!いったい…はっ!?」
気づけば、私の周りのいたアポロン眷属の者は忽然と消え失せ、私と同じように赤い糸に身体を捕られたソーマ眷属の者達だけが視界にいた。
「貴様!私の部下達を何処へやった!!」
不愉快な男の語りはまだ耳元で続いており、天へ登っていた身体はいつの間にか方向を地面へ変換し、落下を始めている。
消えた仲間達、正体不明な敵、考える間を与えない急激な状況変化。そして意味のわからない囁きによって冷静さなど吹き飛んでいた。
「こっちじゃ、…いやあっちでもか。大抵の奴等からすれば科学なんて魔法みたいなもんで保障なんてあって無いようなもんだ。当然事故もある。悪いが俺がお前らに用意したのは安全もクソもない仕様だが、まぁ痛みはともかく傷みは残らないようにするつもりだ」
今回…だと…?何を言っている…?用意した?
「まだ…気づかねーの?」
「ぐふっ!!!!!」
激しい風の音に混ざる囁き声にようやく意識を傾けようとした時、落下していた身体がいきなりガクンッと宙に固定された。腹部に巻き付いた糸が内臓を締め上げ強引に空気を吐き出させられた時に、ようやく気づいた。
ギリギリギリギリ…
私の身体を締め上げる深紅の糸が、建物から樹木へ、樹木からまた建物へ、そして糸と糸が、オラリオの街中に張り巡らされていることを。
私と、ソーマの連中から伸びた糸がオラリオの都市中を走り、まるで街がひとつの巨大な蜘蛛の巣にかかっているような異常な光景だった。
「まさか…」
そして私は理解した。 奴の言っていた言葉の意味を。糸がレール。拘束された我が身がコースター…拘束…走る…急激な加減速と高低差…。それらが今の私に降り掛かるとすれば…。
ギリギリギリギリ…
弛みが消え、張りつめた糸の鳴き声が嫌でもリアルな想像をさせ、全身から滝のような汗が溢れ出す。
「まぁ、楽しんでくれ…」
ポンっ…と、肩を叩かれたその時…全身を蝕む糸は高速の引力に変わり…
ギュウウウウウウウウウウンッ!!!!!
「くそおおおおおおおおおおおおおオオオオオオ!!!!!!!!!!」
私の全身は引力に振り回され風と衝撃に蹂躙された。
ーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
背を向けていたアポロンが立ち止まった。
狂喜していた神々も言葉を失った。
ヘスティア一行も口を開かなかった。
誰もがそれまで抱いていた興奮、怒り、期待を抑えて一点を見つめた。
森の中で天敵に遭遇した野生動物のように、一切の主張をせず、警戒心だけをもって轟音と共に崩れたアポロン
ガラガラガラ…
瓦礫と土煙で情報を遮断された崩壊箇所をジッと目を凝らしていると、
ギィィィィィンッ!!!!!
二つの蒼光がこちらを
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
世界が
「な…」
「なんだこれは…」
オラリオにあるはずのないコンクリートとガラスによって造られた整合性のある時代錯誤な建物が並び、見渡す限り信号機とアスファルトによって整備された道が続いている。異形の怪物達が我が物顔で飛び周り、分厚い霧で空は覆われている。
それは神すらも知らない異常都市。
異常が日常の悪夢の
「か、神様!ここは一体!」
「わからない!だがオラリオにこんな場所は無いのは確かだ!ベル君!皆!何があるかわからない!決して離れず周囲を警戒してくれ!」
「「「「御意!」」」
「これは、転移魔法か!?」
「こんな大規模な転移出来るわけねぇだろ!!」
「ここは一体…」
見たこともない
…ゾクッ!!!!!
視界に入れただけ。
ただそれだけで、心臓を掴まれたような衝撃が胸を打ち、喉が干上がり呼吸が困難になる。
後退る者、腰を抜かして無様に尻を地につける者もいる。それこそが、その恐怖を感じているのが自分だけではない証明となった。
一人。
オラリオ最強、唯一のlevel7の猛者に負けず劣らずの屈強さ。
一人。
片や、決して大柄とは言えない痩せ形の男。枯木のように細い体躯は詰め襟タイプの細いスーツに包まれ、白衣を模した白いコートを風にはためかせた男。ブロンドの髪の隙間から覗く、口より上を覆った鉄仮面がこちらを見ていた。
紳士のような所作の中に烈火の如き狂暴性を秘めた男。
世界の均衡を守る為暗躍する秘密結社『ライブラ』の長
ーーークラウス・
異常と異形と異質を押し固めたような
退屈する稀代の変人。堕落王ーーーフェムト。
たった二人の男の出現に、数百年を生きる幾多の神々が、神の旗のもとに凌ぎを削り戦う冒険者達が、自分を囲む景色の変容すら忘れてただ『こわい』と、まるで子供のような理由で逃げ出そうとする足を必死に抑え、震えて鳴り出す奥歯を噛み締めていた。
彼らの口が動く。
『命を賭として闘う者を
『全く無粋な奴らだね。場所を弁えるセンスも無いのか…』
それは、音として届くことはないが、その場にいた全員がその声を
『その浅ましさ、生涯を通じて我が敵である!』
『くだらんから、死ね』
ーーーーブレングリード流血闘術 02式
…無数の紅蓮の十字架が、
ーーーー
…無数の異形の怪物達が、
「「「うわああああああああ!!!!!」」」
視界を覆った。
誰もが恐怖の余り強く目を閉じた。
「…………消えた…」
目を開いたがそこには迫っていた禍々しい十字架も魑魅魍魎もおろか、広がっていた異質な風景も消え失せ、もとのアポロンの屋敷が広がっている。
「ハァハァ…なんだったんだ…」
「まぼろし…?」
「し、死ぬかと思ったぞ…」
誰もがそれを見た。それは、滝のような汗を流し尻を着く神と眷属達が証明している。しかし、誰一人傷ついている者はいない。それが、自分達が視たものが
だが、全てが幻だったわけではない…。
「ヒュアキントス!!!!!」
「アポロン…さま…」
壊れた壁の中、煙をあげる瓦礫に混じって転がるヒュアキントス・クリオにアポロンが駆け寄ると、
何故か、その身に刻まれていた傷も「シュウウウウウ…」煙とあげて消えていく…。
「いったい…なにが起こっているというのだ…」
アポロンは既に頭が割れそうだった…。
「いったい何が………ッ!!!ここは危険かも知れない!ボクたちもはやく…」
恐ろしい幻から正気にもどったヘスティアは、すぐに次なる危機を避ける為に、ベルや他の者を連れこの場を後にしようとするが…
「大丈夫ですよ、神様」
ただ一人、ベル・クラネルだけはこの状況で笑っていた。
何が起きたのかはわからない。だが、誰の意思によるものかなのは分かった。安心し、驚愕し、そして喜んだ。
ベル・クラネルは臆病で謙虚だが、決して感情がない訳ではない。たとえ相手が神で在ろうと、理不尽をぶつけられれば怒りを覚える。
どうして自分たちがこんな目に遭わなければならないのか、どうしてそれを喜んでいるのか、自分たちの不幸が娯楽として楽しまれていることが許せなくて、それでも自分には抵抗することしか出来なくて、安全圏からそれを眺める彼等を喜ばせることしか出来ない自分が哀しく、悔しかった。
冒険者に成り立ての頃、『豊穣の女主人』で自分の情けなさを侮蔑され、揶揄された時と似た感情が渦巻き、自分はあの頃から全く変わっていないのかと思い知らされた。
…だが、状況は一変した。
浮かれていた神様が、圧倒的優位を誇っていたアポロン眷属達が、慌てふためき、腰を抜かして怯えていた。安全圏など無いのだと言うように容易く、碁盤を返してみせた。
誰がそんなことをする?誰にそんなことが出来る?
ーーーーーー
(ーーーお兄さん…!)
あの人がいた。紳士服を纏った炎のような男の人と、白いコートを揺らす陽炎のような人の間。その遥か後方に、唇に人差し指を当てて、微笑っていた。まるで秘密を共有するような悪戯な笑顔でぼくに安心と、喜びをくれた。
どうやら彼の姿はまた自分以外には見えていないようだったが、そんな些細な優越感もまた、自分の中の鬱屈とした感情を晴らす理由となった。
彼の姿が、ベル・クラネルに大切なことを思い出させた。
ーーー僕はもう一人じゃない!みんながいる!頼りになる仲間がついてる!
冒険者に成り立ての頃とは違い、自分には肩を並べて戦ってくれた味方がいた。たとえファミリアは違えども、見守り支えてくれる存在がいる。それだけで、彼の迷いは、不安は消え去った。
「行きましょう神様!僕ももう迷いません…!」
ベルはヘスティアの手を取り走り出した。逃げるのではなく、戦う為に。
ーーーあとは、僕が強くなるだけだ!あの人“達”のように…!
この日、ベル・クラネルにまた一人目標が出来た。
華のように美しく、恐怖を斬り払い強者の道を突き進むベルの恩人。『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。
そして、何者にも捕らわれず、数と理不尽を容易く蹴散らし安心させてくれた『
「べ、ベル君!大丈夫って!なにか知ってるのかい!?」
「神様!まずはリリを取り戻しましょう!」
「ベルく~ん!!!!!」
少年の憧憬は、また勢いを増して燃え始めた。
また意味重複させてる…おんなじようなこと何度繰り返すんだよ…これも味わいだと考えてほしい。あといまだにハーメルンの書き方と使い方把握しきれてない。不備などあれば指摘お待ちしてます。