むしろ、ひどく人間味ある人だと思ってる。クズ、とはまた違うようなそうでもない…覚悟ガン決まってるのに路線を脱線した感が強い人だなぁと
嫌いにはなれんキャラなんだよね
ヒルゼンは、俺たちにすら追いつけない程の歩みで行く。
昔からそうだった、俺たちは誰ひとりすら欠ける事の出来ない隊ではあったが…実質ヒルゼンで成り立っていた筋がある。
猿飛佐助の再来、プロフェッサー、最強格の忍び、あいつの異名はキリがないほど多く在った。幼馴染であり傍で見て、追いつこうと必死にもがいてもがいても…あいつには決して追いつけやしなかった。
土俵が同じなのに、あいつには勝てない…そう言った苛立ちがあった。
酷い劣等感で蝕まれ、周りの光となるあいつが…どうしても、友である筈なのに、憎たらしく殺したかった。
「ならば、利用すればいいんじゃないかな」
ただ、一言…俺は変わったような気がした。
その言葉は、俺にとってはやるせないものでもありそれでいて一種の区切りをつける言葉であった。
「利用、ですか」
「勝てない相手なんでしょう?ならば、自身の駒として利用してみたらどうかな、劣等はそのままだけれど…障害を取り除けることは出来るんじゃない?立っている者なら、親でも使えって言うじゃない」
「…」
「納得は出来ないでしょうよ、一生ね。でもさ、現状を考えてみれば…使えばいい、と思っちゃうな。勝てないなら勝てないで割り切った方が良いけど、…君は一生無理でしょうね。
…志村くん、君の立っている場所は何?」
俺の立っている場所、…戦場だ。何時だって、どんな時も…俺は戦場に居る。
ヒルゼンたちの立っている陽だまりもあるが、俺たちは…忍び故に戦場を駆け、立ち続けている。死と隣り合わせ、死が眼前に迫る場所に俺は立っている…ヒルゼンたちも、俺と共に。
「私はね、泥水啜ってでも生きて欲しい。意識ある限り、私は君達を治療したいと思ってる。死を眼前にしても、己を見失わないで…ただ前へと進んでほしいかな。
君がどれだけ畜生に進んでも良い、私は決してそれを侮辱はしないよ。けどね…“人”の存在から外れないで」
それは獣と同じだから、と真っ赤な瞳を細め言葉を紡いだ。
語る彼女、ご息女様の表情は感情を一切捨てた仏頂面であった。目をこちらから一切逸らさず、ただ己を見定める訳でもない…ただ、そこのあるモノを見つめる異様な目であった。
「はは…自分でもあやふやな事を言っているね」
パッと顔の表情を瞬時に切り替え、困った笑みを浮かべる。
時折、彼女は俺たちとは別の場所に立っているかのような思いを感じる。それこそ、彼岸の水際と言うギリギリの場所に。
ふと、時計を見るとそろそろ黄昏時が終わる時間に迫っていた。
いい時間だね、と彼女は手元にあった書類…俺のカルテをしまい込み、立ち上がった。自身も帰り支度をしている時、背後越しでご息女様はポツリとこう零した。
「君は、己をどれだけ知っているだろうね。…それじゃあ、気を付けて帰ってね」
ぱたりと、ご息女様を隠す様にドアが閉まる。
その言葉は、自身を蝕む様にひたりひたりと静かに忍び寄る恐ろしいナニカを起こさせた。
「ダンゾウ、お前は俺をどう思う」
「クソ猿」
不意に振られたヒルゼンの言葉に、反射的に返すとヒルゼンは怒りに湧くエテ公のように怒った。実際、そうであるから否定の言葉もなく出てしまったのだろう…昔から、その本質は変わっていない。
見慣れている、安堵するような…そんな本質。
「ひ、酷くね!?もうちょっと、優しい言葉くらいあるだろ!!」
ぎゃんぎゃんと散らすヒルゼンを横目に、しばらく間を置いてからため息一つこぼしこういった。
「……ヒルゼン」
「なんだよ」
「ハッキリと言う、俺はお前が好かん。でもな、それでも友だと思っている…俺は俺である為に、お前を利用する。お前のすべてを、根こそぎ利用する…だが、それだとあまりにも不公平だろうよ。
だから、お前も俺を利用しろ。無用でもいい、だがな…割に合わん」
ヒルゼンは俺の言葉を聞き、目を細め険しい顔つきで口を開いた。
「…言ったな?」
嗤ったような笑み、だが不快に思えない自分が居た。
「“志村”たちの祖、加藤段蔵の名に誓いお前を支える。…まぁ、猿飛には劣るがな」
言い終えると、直ぐに肩を組まれ横には“いつもの”アホ面なヒルゼンの笑みがあった。
……少しだけ、ほんの少しだけコイツに近づけたような気がした。
そこまで深く考えていないけど、ダンゾウを丸くしてしまったな
襖間ちゃんを早く退場させんとなぁ