嫉妬とテストと召喚獣   作:陸鷲

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8月に投稿する予定が10月末にぃ⁉︎
申し訳ありませんでした!
詳しいことはあとがきにて。


Bクラス戦終了

 

「えっ⁉︎」

 

私は目の前に広がった光景に目を見開いた。

今、根本の召喚獣を取り囲むように現れたのは、やじりのような形をした光るもの。

それはまさしく弾幕そのものだった。

しかも、薄い紫と濃い紫の二種類の弾幕。

見覚えがある。これはあのスキマ妖怪のものだ。

なぜ友香があいつの弾幕を?

そんな疑問が脳裏に浮かぶが、そんなことをよそに弾幕は容赦なく襲いかかる。

 

「な、なんだ⁉︎ これは⁉︎」

 

根本は突然の出来事に思わず声を上げる。

見ると顔全体は焦燥感で覆われており、完全に冷静さを失っていた。

実は友香が展開した弾幕は紫のものと比べると、いや、私のものと比べても明らかに劣っている。

しかし、弾幕を避けることは弾幕ごっこを経験していないものにとってはキツイものであろう。

ましてそれを召喚獣を操作にして避けるとなれば、その難しさはさらに倍増するにちがいない。

その証拠に、弾幕は根本の召喚獣の得点をガリガリと削っていく。

再び根本に視線を向けると、焦りを通り過ぎて顔色が悪くなっている。

 

「いけーっ! 友香ぁーっ!」

 

隣で見ていた恵子が叫んだ。

 

「頑張れ! 小山!」

「そのまま押し切れー!」

「Fクラス、ファイトー!」

 

それに触発されたのか、Fクラス・Cクラスの両陣営から声援が飛び始める。

いつのまにか入り口付近で行われていた戦闘も終わり、皆二人の戦いを観戦していたようだ。

 

「……全く。妬ましいわね」

 

目を閉じて私は小さくそう呟く。

しかし発した言葉とは裏腹に、顔には微笑が浮かんでいることが自分でもわかる。

友香は嫌われていた。

クラスメイトからは最初、Fクラスに対して排他的な態度をとっていたために。

他クラスの友人からは、Fクラスという最低クラスに属したために。

そのため、私と恵子以外誰からも声をかけられるようなことはなかった。

それが今ではどうか。Fクラスから応援されるだけでなく、他クラスからも応援されている。

私は、嫉妬が何か胸の奥から熱く込み上げてくるものによって押し流されるような感覚を覚えた。

閉じていた目を開けて顔を上げるなり、私は口元に両手を当てて友香に向かって大声で叫んだ。

 

「友香! そのままそいつを倒しなさい!」

 

私の声に反応して、友香は顔の向きを固定したまま目だけで私を捉え、こくりと力強く頷く。

友香は視線を再び根本に向けるとおもむろに下げていた右腕を上げ、手のひらを根本に向けるようして突き出す。

そして、しばらく目を閉じたかと思うと突如、かっ、と目を見開いた。

 

「はぁっ!」

 

友香が叫んだ刹那。

桜の花びらのような形をした光るものが現れたと同時に、教室は真っ白に染まった。

 

 

なんなの⁉︎この光は⁉︎

あまりの眩しさに思わず私は腕で目を覆う。

周りからも動揺している声が聞こえてくる。

しかしそれは一瞬で終わり、教室はまた元の明るさを取り戻していた。

 

「け、結果はどうなったんだ⁉︎」

 

観客の中からあがった声に私は我に返り、勝負が行われていた場所に目を向け……私は固まった。

 

『Fクラス 小山友香 VS Bクラス 根本恭二

0点 VS 0点 』

 

引き分け。

予想外のその結果に、私は驚きを隠せなかった。

引き分けなんて滅多になるようなものではないからだ。

勝ったわけでもなく、負けたわけでもない。

この勝負だけで話をすれば、結果はなんとも言えない微妙なところだ。

しかし、これは勝利に等しい。

なぜなら、この勝負によりFクラスの勝利が確定したのだから——

 

「や、やったのか……?」

「Bクラスに勝ったのか……?」

 

ざわざわと周囲がざわめき始め、いろいろなところから歓声が上がり始めた。

それはFクラスからだけでなく、Cクラスからもだった。

 

「うぅ……ゆうがぁっ!」

 

恵子は感動したのか、号泣しながら友香に駆け寄って行き、思いっきり抱きつく。

友香はそれを苦笑いしながら真正面から受け止めるが、嬉しそうであった。

 

「もう、なんで恵子が泣いているのよ」

「ぐすっ、だっでぇ」

 

そのまま恵子は胸に顔を埋めて泣きじゃくり始め、友香は目を細めながらそんな恵子の頭を優しく撫でる。

よく見ると彼女の目元にはうっすら涙が浮かんでいる。

私も言葉をかけるために友香に近づくと、彼女もこちらに気づき顔を向けた。

 

「パルスィ……」

「友香、おめでとう」

「パルスィのおかげよ。あなたが私の無茶なお願いを聞いてくれなかったら無理だったわ」

「別に無茶ではなかったわよ。本当に無茶だったらやってないわよ」

 

友香が心から感謝しているように言うが、これは本当だ。

最初から失敗する可能性のあるお願いだったら私は断っていた。

ただ成功すると思ったから動いた。

ただそれだけだ。

 

「それでもありがとう。あなたのおかげで私は今があるの」

「……そういうことなら、どういたしまして?」

「なんで疑問系なのよ……」

「う、うるさいわね」

 

私は友香から目を背けた。

こういう風に誰かから褒められることに慣れていないのだ。

頰が熱くなるのを感じながら、私はこういうことに慣れているやつを妬ましく思わずにはいられなかった。

しかも、なんか温かい目で見てきていたし。

うぅっ、本当に妬ましいわ!

 

 

「これは認められない!」

 

突如、根本の怒声が教室の響き渡り、あたりは一気に静まり返る。

そして皆の視線は根本に注がれた。

 

「認められない、ってどういうことよ!」

 

恵子が顔を上げ、泣いて真っ赤になった目で根本を睨んだ。

そうだそうだ、と周りからも恵子に賛同の声が飛び交うが、根本はひるむことなく友香を指差した。

 

「認められるわけないだろ! 試合中に突然腕輪が現れるなんて聞いたことがない! これは明らかにバグだ!」

 

根本の発言に賛同の声はピタリと止み、「確かに……」などといった代わりに先ほどのことを疑問視する声が聞こえ始める。

……まずいわね。

今まではFクラスがBクラスに勝利したという事実に、誰も酔いしれていて腕輪のことなんてすっかり忘れていた。

しかし今の言葉で周りの人間も腕輪のことを問題視し始め、友香の置かれている状況は少しずつ不利な方向に傾きつつあった。

 

「バグなわけないじゃない!」

「ならその証拠はあるのか?」

「そ、それは……」

 

恵子は根本に噛みつくように言うが、冷静に問われて返す言葉もできず、視線が泳いでいた。

……当たり前ね。

戦闘中に腕輪が突如現れるという話は前代未聞のことで、私たちからすればバグとみなす方が普通だった。

それにバグではないと証明することは試験召喚システムに詳しくない私たちには不可能。

この状況では根本の主張の方が正しいと思われても不思議ではなかった。

見ると今の自分が置かれている立場を感じ取ったのか、友香は不安そうな顔をしていた。

 

「だからこの勝負は無効だ! やり直してもう一回……」

 

 

「その必要はないね」

 

 

騒がしい場所でも聞こえるような、どこか威厳に満ちた声が教室の入口から聞こえてきた。

この位置からは生徒のせいで姿を見ることはできないが、確認するまでもなく私は誰の声かわかった。

こちらに来てからもう何度も聞いている声。

そう。この学園で最も偉い立場の人間。

 

 

『学園長⁉︎』

 

 

予期せぬ来訪者に周囲でどよめきが起こる。

表面上私は冷静を装っていたが、内心では実は私も驚いていた。

どうして学園長(あいつ)がここに?

不思議に思っていると、教室の入口付近に集まっていた生徒が二手に分かれて学園長が通るための道を作り、そこから学園長が姿を見せた。

そして、全員が見ることのできる位置に立つとざわめきが落ちつくのを見計らい、根本の方を向きながら口を開いた。

 

「これはバグじゃない。私があらかじめシステムに組み込んでいたんだ。ある一定の条件を満たした者に与えられるようにな」

「条件……?」

「そうだ」

 

根本が聞き返すと学園長は強く頷き、友香の方を振り返る。

 

「小山だったか?」

「は、はい」

 

学園長に突然声をかけられ、友香は体を大きく揺らして返事をした。

再び学園長は根本に向き直る。

 

「小山はその条件を戦闘中に満たした。だから腕輪が出現してその能力を使った。ただそれだけのことだ」

「そ、そんな……じゃ、じゃあその条件は⁉︎」

「お前には絶対わからないだろうな」

 

学園長が冷たく言い放つと根本は膝から崩れ落ち、がっくりとうなだれた。

とても教育者が言っていいセリフだとは思えないけど、このクズに慈悲をかける必要はないわね。

ふん。ざまぁみろよ。

私が心の中でいい気味だと思っていると、そのまま学園長は友香の正面に立ちフッと笑いかけた

 

「小山。お前はその腕輪を持つにふさわしい者として認められた。それに恥じないように頑張りな」

「は、はい!」

 

学園長の言葉に友香は元気良く返事をする。

その表情はもう心配することがなく安心した表情であり、どこか誇らしげだ。

 

「おめでとう! 友香!」

「えぇ、ありがとう」

 

私のすぐ横で恵子が友香の両手を掴んで嬉しそうに声をかけ、対する友香も笑顔で応えた。

まさに理想の友情関係だ。

……なんか妬ましいわね。

 

「それじゃあ用は終わったし、帰らせてもらうよ。後は好きにしな」

 

私が二人の仲を妬んでいると、学園長は教室から出て行き、入れ替わるようにして坂本が友香に座り込んだままの根本の前で仁王立ちした。

 

「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談と——」

「ちょっと待って!」

 

友香は掴んでいた恵子の手を離すと、坂本の声を遮り彼の方向へ向かって歩き始めた。

そしてそのまま彼のすぐ横、すなわち根本の前に移動して腕組みをしながら立ち止まった。

 

「どうしたんだ小山?」

「悪いわね、坂本君。その前に彼にはやってもらわないといけないことがあるの」

「……用件はなんだ」

 

根本は睨みつけるようして自分より高い位置にある友香の顔を見上げた。

その顔は離れた位置から見てもわかるほど、この状況が屈辱的だと言わんばかりに歪んでいる。

 

「恵子とパルスィにひどいことをしたことを謝りなさい。もちろん、『ごめんなさい』ってしっかり言った上で頭を下げてね。そして、もう私たちに近づかないこと。……あなたとは今日限りで絶交よ」

 

感情のこもっていない声で友香が根本に要求を突きつけると、途端に周りが騒がしくなる。

それはそうよね。かなりきついことを言っているもの。

しかしどこからもやりすぎなどと言った根本を擁護する声があがらないのは、皆根本のことを良くは思っていないのだろう。

それにしても、友香はかなり怒っているわね。

まぁ、当然といえば当然なんだけど。

 

「くっ、わかった……!」

 

根本は悔しそうに呟いて立ち上がると、私と恵子のもとへゆっくりと歩み寄ってくる。

周りはその様子を黙って見ているために教室は根本の足音がするだけ。

そして、根本は目の前に立ち頭を下げた。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

教室は大歓声に包まれた。




8月に投稿する予定がここまで遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
いろいろ理由はあるのですが、一番はとある同人イベントにサークル参加したからです。
もちろん作品を出したんですが、そのためにほとんどの時間をそちらに奪われてしまいました……。
そのためにこちらは全然進みませんでした。
しかし、やはり自分の実力を思い知らされましたね。
もともと上手くないことはわかっていましたが実際に出してみて痛感しました。
とはいえ、書くのをやめるつもりはありません。
これからより一層執筆の勉強に励んでいくつもりです。
そして書きたい世界がそこにある限りなんと言われようが書き続けます。
その世界が読者の方々と共有できればこれほど嬉しいものはありません。
これからも不肖私こと陸鷲をよろしくお願いします。

なお、サークルの方は別名で活動しております。
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