嫉妬とテストと召喚獣   作:陸鷲

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今回長めです。


事後処理

何とか殺人が起こる前に食い止めることができたわね。

危なかったから妖力弾を放って直撃させたけど大丈夫よね?

非殺傷設定にしといたし。

私は呆然としている小山の横を通りぬけて倒れている綾野の側に近寄った。

・・・・・・どうやら気を失っているようね。

近くに落ちていた包丁を妖力弾で処分し、今だに座り込んでいる小山のもとへ向かった。

 

「大丈夫かしら」

 

しゃがみこんでできるだけ彼女にやさしく声をかける。

正直こういうことは苦手だ。

私に主人公的言動は似合わない。

 

「・・・・・・私は助かったの?」

「もし死んだのだったら今頃目の前には赤髪でツインテールの鎌を持った牛女がいるはずよ」

 

私の頭に宴会で見かけた死神の女の姿が浮かんだ。

サボりで有名らしいがサボった分の余ったエネルギーがすべて胸に行っているのではないだろうか。

妬ましい。

 

「う、うわぁぁぁん!!」

「えっ、ちょっ、ちょっと!?」

 

突然泣き出したかと思えば小山は私に抱きついてきた。

身体から引き離そうとするも彼女の両腕はしっかりと固定されており引きはがすことが不可能だった。

こ、こういう時ってどうすればいいのかしら?

こんなこと今まで一度もなかったからわからないわよ!?

私はとりあえずされるがままになるしかなかった。

・・・・・・本当に主人公的言動ができる人が妬ましい。

 

 

 

 

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しばらくたつと落ち着いたのか小山は泣き止んでくれた。

・・・・・・まだしっかりと抱きついているけど。

 

「えーと・・・・・・離れてくれると嬉しいんだけど」

「・・・・・・やだ」

 

涙を目に貯めて上目づかいで見てくる小山。

写真で見た強気な女という印象との違いに私は動揺した。

な、何よこれ!?

これが噂のギャップ萌え!?

かわいすぎて妬ましいわ!!

 

「う、うーん・・・・・・あ、あれ?私は一体・・・・・・」

 

ギャップ萌えの恐ろしさを実感していると綾野が目を覚ました。

それと同時に小山が私に抱きつく力を強め、ガクガク震えだした。

・・・・・・ちょっと苦しいわね。

 

「大丈夫よ。今の彼女は何もしてこないわ」

「な、何を根拠にそう言えるのよ!?彼女はさっき私を殺そうとしたのよ!?」

 

ヒステリックな声で彼女は叫んだ。

根拠ならある。

彼女の嫉妬は私がいま押さえているのだから。

といってもこんなことを言っても信じてくれないだろう。

だからとりあえずは・・・・・・

 

「とりあえず落ち着きなさい」

 

彼女の頭をなでて落ち着かせることにした。

だいぶ前に読んだ漫画でこんな描写を見たことを思い出したのでしているのだけど本当に効果はあるのかしら?

私は半信半疑だったが効果はあったらしく彼女は幾分落ち着いてくれたようだった。

漫画の知識も馬鹿にはできないわね。

これを機に外の世界の漫画を読んでもいいかもしれないわねと思いながら私は綾野に話しかけた。

 

「綾野恵子、でよかったわよね」

「は、はい。あ、あのあなたは一体?あと私が友香を殺しそうとしたって・・・・・・」

「落ち着いて思い出してみなさい」

 

綾野はしばらくうんうん唸っていたかと思うとそれがピタリとやみ、顔を青ざめさせて身体を抱くようにして震えだした。

 

「わ、私、ゆ、友香になんてことを・・・・・・!!」

「えっ、えっ、ど、どういうことなの?」

 

小山は彼女の行動が予想外だったのかなり戸惑っているようだった。

さっきまで自分を殺そうとしていた人物の行動にしてはおかしいしね。

 

「とりあえず二人には色々話さないといけないからどこか話せる場所に行きましょう。このまま路上でっていうのも嫌でしょうし。できれば人の目がないところがいいわね。この近辺にそんな場所ってあるかしら?」

「・・・・・・残念だけどそんな場所はないわ」

「じゃあ二人の家のどちらかでってことになるわね。あなたの家はどうなの?」

「い、嫌よ!!恵子をいれるなんてとても怖くてできないわよ!!」

「それなら彼女の家?」

「・・・・・・彼女の家は電車に乗らないといけないし遠いわ」

「ならあなたの家で決定ね」

 

その後も小山は色々叫んでいたがそれなら私が二人を残して帰ると言うと渋々了承した。

 

 

 

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「それじゃあ早速話していくわね」

 

場所は変わって現在私たちは小山の家のリビングにいる。

幸い家族は今出かけているようでこの家には私たち三人だけだ。

 

「待って。その前に」

 

私が話し始めようとすると小山が制止した。

ちなみに彼女は私にしがみつき、いつでも逃げれるようにドアの近くにいる。

綾野は反対の壁側だ。

 

「あなたは何者なの?さっき包丁を光る玉のようなものを手から放って処分していたけど」

 

・・・・・・しまった。幻想郷じゃなく今は外の世界なんだから妖力弾なんて人間に見慣れたものじゃなかったわね。

私は自分のした軽率な行動を恨みたくなったがふと思った。

私の正体がバレるのはマズいかもしれないけど、これからのことを考えるとこの二人には言っておいても損はないかもしれないと。

情報収集に役立つし。

 

「私は人間じゃなく橋姫、つまり妖怪よ」

「はぁ?あなた何を言って・・・・・・」

「これでも信じれない?」

 

私は抑えていた妖気を解放した。

と同時にずっと無言だった綾野は部屋の隅に行き怯えたようにガクガクと震え涙目で私を見、小山に至っては外に逃げようとしたので腕をつかんで逃げられないようにした。

 

「わ、私はた、食べてもおいしくないですよ・・・・・・」

「いやぁー!!殺さないでぇーっ!!」

「・・・・・・ごめんなさい。少しやりすぎたわ」

 

もしまたこんなことがあったら少し解放するだけにしておこうと思った。

 

 

 

 

 

しばらくして二人が落ち着いたところで話を始めた。

小山はさっきのことで私も綾野側に追い払って一人でドアの近くにいる。

私は綾野に問いかけた。

 

「あなたは今深夜二時ごろに神社に行ってご神木に藁人形を打ち付けているでしょう」

「!?どうしてそれを・・・・・・?」

「さっき他の橋姫にあってねあなたのことを言っていたのよ」

 

そして奴の真の狙いを教え、丑の刻参りについて説明することにした。

 

「丑の刻参りというのは行った人物とその人の嫉妬の対象者の二人を苦しめる呪術であって百害あって一利なしよ。行った人間は嫉妬心が増し最終的に理性が効かなくなって嫉妬心に支配されるようになるわ。そしてその対象者は丑の刻参りが行われ始めて六日間不幸な目にあい続けて七日目に最後の丑の刻参りが終わると同時に確実に死ぬのよ」

「ちょっと待って。それじゃあ私が振り分け試験中に倒れたのは・・・・・・」

 

それまで聞いているだけだった小山が口を挟んできた。

確か試験が行われたのは4,5日前だったわよね?

 

「綾野。あなたは今日は丑の刻参りを初めて何日目?」

「・・・・・・む、むい、六日目、です」

 

顔を真っ青にして綾野は震える声で答えた。

見事に丑の刻参り期間中に入っているわね。

そして何より・・・・・・あと一日遅れていたら確実に小山は死んでいた。

 

「ごめんなさい友香!!知らなかったの!!そんなものだったなんて知らなかったの!!」

 

綾野は小山に向かって泣きながら土下座をした。

 

「私っ、中学からずっとあなたに憧れていてっ!!・・・・・・ヒック、ずっとあなたみたいになりたくてっ!!・・・・・・グスッ、それであなたみたいになれるって言われてっ!!それでっ、それでっ・・・・・・・うわぁぁぁっ!!」

 

彼女は大声で泣き始めた。

そりゃあ憧れの人を殺そうとしたしたのだからつらいに決まっているわよね。

たとえ嫉妬心に支配されていたとはいえ。

 

「恵子・・・・・・」

 

小山は綾野の側に近づいて行き、彼女を抱きしめた。

 

「うぅ・・・・・・友香、ごめんなさい・・・・・・!!ごめんなさい・・・・・・!!」

「・・・・・・いいのよ。あなたは何も悪くないわ。悪いのはあなたにそんなものを教えた橋姫よ」

「でもっ!!でもっ・・・・・・!!」

「私がいいって言ってるからもういいのよ。ほらもう泣き止みなさい。私は怒ってないから」

「うわぁぁぁっ!!」

 

綾野は小山に抱きしめられながら彼女の胸で泣き続けた。

小山もまた同時に泣いていた。

きっとここまで自分を慕ってくれている人間がいたことがうれしかったのだろう。

・・・・・・あっ、やばい私ももらい泣きしそう。

 

「・・・・・・ちょっと外に出てくるわね」

 

私は二人を置いて部屋を離れた。

泣く姿なんて恥ずかしくて見られたくない。

 

 

玄関のドアを開け外に出ると周囲は真っ暗になっておりまだ少し冷たい夜風が吹いていた。

それが私には気持ちよく感じられた。

しばらくその感じを味わった後私は空を見上げた。

空は幻想郷とは違い星は全く見えず暗闇だけが支配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・いるんでしょ。ババァ妖怪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がババァよ!!」

 

妖気を感じ呟くと、目の前にスキマが現れ彼女はそこから顔をだして叫んだ。

意外と彼女っていじりがいありそうね。

 

「それで一体何の用よ」

「・・・・・・いい加減ババァ扱いはやめてくれないかしら。結構傷ついてるのよこれでも」

「善処するわ」

「・・・・・・お願いしますわ。それで要件なのですけれども」

 

彼女は真剣な顔つきになった。

 

「あなたの邪魔をしたあの橋姫・・・・・・妖力が消滅しましたわ」

「は?それはつまり・・・・・・」

「えぇ、あなたの考えてるとおりですわ」

 

妖力の消滅。

これが意味することは・・・・・・奴の死。

でもいったいなんで?

 

「理由は私にもわかりません。あなたと別れた後ずっと妖力を追ってはいたんですが、ここからは少し離れたところで突然消えました。すぐにその場所に私の式神を向かわせて調査させた結果、結界が張られた跡がありました」

「結界?」

「えぇ。今はまだ調査中なので詳しくは話せませんが妖怪退治を行えるものが近くにいるようです。あなたも注意してください」

 

妖怪退治が行える者。

つまり博麗の巫女のような輩がいるってわけよね。

・・・・・・これは厄介ね。

気を付けないと。

 

「それでは私はこれで。あぁ、それと」

「何よ」

「あなたの存在が少しくらい誰かにバレても構いませんわ。ですが限度(・・)というものを忘れずに」

 

胡散臭い笑みを顔に浮かべながら彼女は私にそう言うとスキマの中に帰って行った。

・・・・・・私が二人に正体を教えたこと知っていたのね。

っていうかいつから私のこと見てたのよ。

明らかストーカーじゃないの。

私はため息をつくと家の中に戻っていった

 

 

 

 




〈パルスィが殺人を未然に防いでしばらくしてから〉


「あーあ。つまんないわねぇ」

少し離れたところにある公園にて黒髪の緑色の目をした女がベンチに座りながら不満そうに呟いた。
彼女もまた二人がいる場所にいたのだがパルスィが妨害し計画が失敗したことを知るなりその場を離れたのだった。

「あの女、橋姫のくせに人間の味方なんてしやがって。先にあいつを片付ける必要があるな」

女が忌々しげに自分がやってきた方向を見ながら言った時だった。

「!?」

突然、彼女を中心として五芒星の形に地面が光りだした。

「こ、これは結界!?」

結界を破ろうと身体を動かそうとするも身体は全く動かなかった。

「無駄ですよ。あなたの実力ではこの結界は破れません」

茂みの中から現れた男はそう言い放った。

「あ、あんたは文月学園の結界の・・・・・・!!」
「ほぉ、よく御存じで」
「当り前だ!!あんたのせいであそこに入ることができなかったんだからな!!」

女は怒りを露わにして男を睨んだ。

「教師として生徒を守るのは当然のことです。だから・・・・・・」

男は片手を頭上高く上げた。

「ま、待ってくれ!!二度と文月学園の生徒には手を出さないから!!」
「・・・・・・うちの学園の二人の生徒の心を傷つけた罪は重いものです。それにあなたは危険だ。ここで消さなければならない」

男は手を振り下ろした。

「ちくしょぉぉぉーーーーーっ!!」

女は恨みのこもった声で咆哮すると同時に結界ごと消え去った。





「・・・・・・水橋さん。二人を頼みましたよ」


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