久しぶりにミクたちに会いに行くと、ミクとリン、ルカが何やら話し合いをしていた。というより、悩んでいるような感じだ。俺は手伝うためにミクの斜め後ろに立った。
「どうしたんだ、ミク、リン、ルカ」
「あ、柊くん。あのね、柊くんが現実世界に帰る日が近づいてきたの」
「もう柊くんは1年くらいいるでしょう?だから、期限までもう少しなのよ」
現実世界、か。
また上司に無茶ぶりを言われてはその無茶ぶりをして、疲れ果てて、また無茶ぶりを聞いて実行に移す。という無限ループが始まるのか。
その生活は、「憂鬱」というより、「憂鬱」を超えた「鬱」だった。実際、うつ病で出社しない人も出てきていたし。
「そうか……まぁ、このセカイではいろんなことを学んだよ。一歌たちのおかげで」
一歌たちに「俺がいたら」ということを学んだ。そして、今度は俺が実行する番だ。
まぁそんなこと今考えたってしょうがない。近づいてきただけで、今日や明日じゃないんだから。
「その話でそれだけ考え込むのか」
「ああ、うん。やっぱり寂しいわ」
ルカが悲しそうに言った。そうだったか。やっぱり悲しさとかはあるんだろう。
「そっか。まぁ、まだ時間あるんだから。俺は一歌のとこいくぞ?」
「あ、待って」
リンが俺のことを止めた。俺はリンの方を向いて話す。
「どうしたんだ、リン」
「えっと、気をつけて」
いくつもの「?」が浮かんだが、リンが追い出したから俺はもう外にいた。
「全く、別にいいじゃないか」
俺は一歌のいる部屋へ歩いて行った。
俺が一歌の部屋につくと、一歌は楽譜を見てギターをゆっくり弾いていた。
「一歌、おつかれ」
「あ、柊くん。どうしたの」
「暇だったから。それ、新しい曲か?」
「うん。柊くんも手伝う?」
ギター経験はある。どうしようかな。
「じゃあ、するよ。楽譜見せて」
一歌は俺の前に楽譜を置く。結構複雑だけど、多分できたら迫力がすごくなるだろう。
「じゃあ、Aのところから行ってみよう」
「もうちょっと近づいていい?」
「あっと、弦は……って、そういうことか。いいよ」
一歌は俺にぴったりくっついた。すると、何事もなかったかのようにギターを弾き始めた。
「……一歌、俺に教えたこともあったけど、俺が最後にアドバイスするよ」
俺は最後という言葉だけをわざと小さくして言った。そして、それに続いて言う。
「誰に向けた音楽だい」
一歌はハッとして目の前を見た。
「この曲、誰に向けた曲なんだ。友達か、身近な人か、家族か、俺か、セカイか。ハッキリしてから弾いた方がいい」
一歌は考え始めた。深く考えているようで、俺のことはすっかり忘れていた。
「分かったら教えてくれ」
俺は外に出て待った。