居候している幼馴染が神様になるというので人生計画を見直すことになりました 作:公序良俗。
「モデリングミスってないか」
「あれね、和洋中折衷三段重のいい所をふんだんに無視した感じがするわね」
「ただでさえ浮く装束がより浮くな…」
「歩くだけで人目を引きそうね」
伝統衣装と巫女装束を来た二人が洋服の中を歩くのだ。目立たない訳が無い。
「履いてるのは草履なのね…」
「違和感しかない」
「これが普通だと誰もおかしいとは思わないのよ。おかしいと思ってる私たちがおかしいの」
「なんで…受付のおねーさんは小袖じゃないか」
「あれはきっと仕事着よ」
「カルチャーショックがヤバイ」
「私は脳が処理し切れずに既に受け入れたわ。トヒも諦めなさい」
「これが最大の試練かもしれない」
ぐるりと見渡すと近くに恐らくこの国で一番偉い人が住んでいるであろう城がそびえていた。城というよりキャッスル感が強いが。広い通りを目指して街を歩いて回る。急に道がなくなったり、曲がり角が多いのは市街戦対策なのだろう。
外へ外へと向かっていって漸く外周に辿り着いた。門を跨ぐとそこは色々な店が建ち並ぶ広い道だった。そこから何本も細い道が伸びている。細い道の奥は街の人々が暮らす民家だろうか。
「この中から宿を探すの…?」
「多分街の構造的にこんな感じの通りが何本かあるだろうな」
「その中から宿を探すの…?」
「探すより聞いた方が早いかもしれないな」
「パンはパン屋ってやつね」
「いやその道の人よりもその辺の人に聞いた方が贔屓目がなくていいんじゃないか?」
「ボケをスルーしないで」
「肉は肉屋だろ」
「ボケをボケで返さないで!」
「雑貨屋はどこかな」
「私を無視しないで!!」
ただ話を聞くだけだと取り合って貰えないかもしれないので店に入り品物を買ってから情報を聞き出す。夕飯には早く、そこまで高価な物を買うつもりもないので何かいい道具があれば儲けものと近くの雑貨屋、つまるところ100均に入る。
「いらっしゃ……何かお探しで?」
「ちょっとね」
「はあ」
そりゃ見慣れない者が二人、見慣れない服装をして入ってきたら客商売とはいえ動揺するだろう。
「何か騒がしいわね」
「気の所為」
「人増えてない?」
「気の所為」
「すごく見られてない?」
「気の所為」
「あ、これ、化粧品っぽいわね!」
「何か実用的なのないか?」
「アクセサリーなんかもあるのね!」
「油や炭みたいな燃料もあるんだな」
「……」
「……」
非常に気まずい。まさかこれ程とは思わなかった。急にそこら辺の人に話しかけなくて本当に良かった。
「出るか」
「そうね」
入り口の方を振り向くと隙間という隙間からこちらを覗く眼があった。背筋がゾクゾクする嫌な気分を抑えながらさっさと外へ出る。そして一切振り向かずに店を離れた。
「こりゃ当分人の眼を見て話せないな」
「私もしばらく部屋の中じゃ寝られる気がしないわ」
「宿は諦めて野宿にしよう。そうすれば出費も抑えられるし、変に目立つこともない」
「そうね…そうしましょう」
速足ついでにそのまま街の外へと進む。出来ればもう少し街を見て回りたかったが、それは市民権を得てからにしよう。行く先々で毎回あんなことになるのはごめん蒙りたい。
街を出るとさっきまでの喧騒が嘘だったかのように静かになった。田畑が広がる長閑な田舎といったところか。田は既に稲刈りが終わり稲が三角にずらっと干してある。はぜ掛けというやつだ。この世界は今、秋真っ只中のようだ。だとするとこれからの季節色々と厳しくなるかもしれない。
暫く進むとそこまで大きくない川に差し掛かった。
「なあミワ」
「何」
「走れるか」
「ええ」
「橋の手前まで行ったら一気に上流の方へ走るぞ」
「わかったわ」
つけられている。それに気が付いたのは街を出てからだった。街中では人が多かったしそもそも精神状態が終わっていたので全く気付かなかったが恐らく先程小間物屋を出た時からなのだろう。一定の距離を保っているので同じ方向でしたなんてことはない。
「今!」
土手を駆け下り河原を全力で走る。後ろで何やら叫び声が上がったが知ったことではない。振り向くことなく走り続ける。
「トヒ!荷物貸しなさい!」
「わかった」
歩くのにはそうでもなかったが走るとなると少し重たい。背負っていた荷物をミワに放り投げると幾分か走るのが楽になった。
段々と石が大きく角張ってくる。この頃には既に全力とは言えないスピードになっていたが取り敢えず走る。追手も最初の間は叫びながら走っていたが今ではだいぶ大人しくなった。疲れたなら帰ってくれればいいのに。
「トヒ。ハア…もういいんじゃない?」
「何が目的か分からないんだ。そう容易く捕まってられん。ハア…」
「いや…何も…捕まえに来たとは…限らないじゃない…ハアハア…」
「じゃあ何が目的で…ハア…こんなに追いかけてくるんだ…ハア…」
「そんなの…ハアハア…知らないわよ…ハア…」
「じゃあ…ハア…ちょっと話してみるか…ハアハア…(人が乗っても割れないような)ハア…(強化ガラスを向こう岸まで)ハアハア…(展開後初めの衝撃から十秒後に)ハア…(消滅)『
「わかったわ…ハア…」
窓を使って即興の橋を作る。余り他の人間がいるところで使いたくはないが、このまま逃げていても埒が明かない。体力も限界に近づいている。ガラスはトヒ一人分の体重だと十分耐えた。ミワも荷物を二つ持ってるとは言え大丈夫だろう。
「これ…ホントに…ハア…大丈夫なんでしょうね…」
「乗ってすぐ割れることはないだろう…ハア…」
「えーい…ままよ…ハア…」
問題なかった。足袋で良かったとつくづく思う。割と上流の方まで来ていたので川幅もそこまで広くなく、十枚もあると難無く向こう岸へ辿り着くことが出来た。その分流れもそこそこ強くなっているのでふらふらの追っ手が川を歩いて渡ってくることもあるまい。
「ハアハア…」
「ハアハア…」
「「ハアーーーー」」
「便利ね…」
「何でもアリな気がしてきた」
まだ息は整っていないが、先程までいた対岸に追っ手が追い付いてきた。やはり川に足を入れようとはしない。
「何か用かしらー?」
「おめーら…ぜえ…どうやって…はあ…渡ったんだ…」
「聞こえないから!息を整えて!話はそれからー!」
「別に逃げたりしないわよー!」
「十分逃げ回ったろうが…ぜえ…」
何やら悪態をついてるようだが聞こえないので聞かなかったことにした。それから暫く双方共に息を整える時間を取った。向こうの追っ手は男が三人。何れも街中でよく見かけた町人のような恰好をしている。やはりあの頭に洋服は似合わない。
「喉乾いたんだけど…」
「眼の前に水があるだろう」
「飲んでも大丈夫なのかしら、これ…」
「心配ならあれがあるぞ。荷物貸してくれ」
「はい」
トヒは荷物の中から水筒を出してミワに渡す。受け取ったミワが微妙な顔をする。
「飲む前に綺麗にしてくれる便利なウォーターボトルだぞ?何処でも美味しい水が飲めるってのに」
「いや、それ水道水の話でしょ。自然に川に流れてる水にも効果あるの?」
「ある程度は大丈夫だろ。そんなこと言ってたら何も口に出来ないぞ。あくまでも気休めだ」
「せめて煮沸して蒸留水にしたいところね」
「んな時間があるか」
「仕方ないわね…」
向こうに眼をやると普通に顔からいっている。流石にそんな真似は出来ないが掬って飲む程度なら大丈夫だろう。
「自然って感じが否めないわ」
「流石に真水とまでは無理なんだな」
「お腹壊さないかしら…」
「そんときはそんときだ」
「一応満タンまで入れとくわ」
そんなこんなしてる間に追っ手の男達も大分と息が整ってきたようなので本題に入る。
「どうして追ってきたんです?」
「どうしても何も逃げるからに決まってるだろう!」
「追うから逃げるんじゃない!」
「そもそもなんでついて来たんです?」
「お前らみたいな恰好をしてる奴らは大抵遊郭から逃げ出した娘って相場が決まってんだよ!」
「な!和服を馬鹿にするんじゃないわよ!」
「誰に言われて来たんです?」
「言うわけねーだろ!」
「つまり誰かに言われて来たんですね?」
「……」
「黙ったわね」
「わかりやすい…」
何やら暫くコソコソと相談している三人。コソコソしなくても聞こえないのだが。
「とにかく!悪いことは言わねえからさっさとこっちへ来い!」
「行くわけないでしょう!そもそも私達は遊女じゃないわよ!」
「うるせえ!逃げ出した遊女は皆そう言うんだよ!」
「逃げるのに目立つ服着る訳ないでしょう!」
「他に服がねーんだろ!」
「あーいえばこーいうわね!」
「こーいえばあーいうな!」
ミワが一人の男と舌戦を繰り広げている。大方彼らは遊郭の門近くに詰めているやつらだろう。もしかすれば逃げ出した遊女目当てのロクデナシかもしれないが。川を挟んで言い合っている仲間を見ている他の二人に合図して少し離れた場所で話をする。
「それで、捕まえてどうするんです?いやらしいことでもするんですかね?」
「しねーよ!そんなことしたら店の連中に何されるかわかったもんじゃねえ」
「じゃあ遊郭から逃げ出したんじゃないって分かったらどうです?」
「いや、そりゃあ、まあ。何もしねーよ?」
その気があったとしてもせめて言い切って欲しい。いや、あってもらっては困るのだが。
「いやするでしょ。そもそも誰か逃げたとかいう話があったんです?」
「そう言われると…どうなんだ?」
「あいつが遊女が逃げたから捕まえるぞって言ってたからてっきりそうなのかと」
「ん?どうしました?」
「ちょっと待ってくれ!」
トヒと話していた男の方が今もミワと怒鳴りあっている男へ駆け寄り、何やら話をしている。ミワは次の戦いに備えてかがぶがぶ水を飲んでいる。あれだけ文句言ってたくせに。
「待たせたな!」
「どうです?」
「こいつが聞いたのは!『遊女みたいな服を着た娘が街を歩いているからちょっと見てこい』だけで!遊女が逃げたという話はないそうだ!」
「早とちりし過ぎでしょう」
「悪かったな!とはいえただで帰るわけにもいかんのだ!個人証明を見せてくれ!」
「これかしら?」
「遠くて見えん!こっちに戻って来てくれないか?」
「はあ?あなた達、小娘二人にこの川を渡れって言うの?無理に決まってるじゃない!」
「お前らそっちに行けたじゃねえかよ!」
「無理なものは無理なのよ!そっちの誰かがこっちに来なさいよ!」
「こんなの男でも下手すりゃ流されちまうよ!」
「じゃあ諦めるのね!そうやすやすと見せてたまるもんですか!」
「いやしかしなあ…」
このままでは平行線である。その内三人で固まって渡ってくるかもしれない。渡っている間に逃げればそれで済むのだが、そうすれば次から街に入りづらくなる。だからと言って眼の前でスキルを使って見せるわけにもいかない。
「仕方ないわね…」
「どうするんだ?」
「秘密アイテムの二つ目よ」
ミワが荷物をゴソゴソと漁る。
「ろおぷう〜」
「やるんだな」
「トヒ、その辺の岩に取れないように括りつけてきてちょうだい」
「わかった」
出来るだけ大きくて引っかかりの良さそうな岩を選んでロープの端を括り付ける。試しに二週間で習得したサバイバルで役立つロープの結び方というのをやってみた。
「結べたぞー」
「じゃあいくわよ!」
ミワが反対側の端を輪っかにしてクルクル回している。カウボーイならぬカウガールか。ひょいと投げたように見えるがミワの力で投げられたロープは対岸にいる三人を大きく越えて着地した。
「二人で引っ張って一人こっちに寄越しなさい!」
向こうもミワの意図を理解したらしく二人がロープを引っ張り、一人が服を脱ぎ始めた。
「ちょっ!何脱いでんのよ!」
「脱がなきゃ濡れるだろうが!」
完全に理解はしていなかったようだ。よりにもよってこちらに派遣されるのはミワと言い合いをしていた男だった。
「んなもん乾かせばいいでしょうが!乙女の眼に変なもの見せるんじゃないわよ!」
「一張羅なんだよ!嫌なら眼ぇ瞑ってろ!」
「見てないと何しでかすかわかんないじゃないの!」
「もう一人が見てればいいだろ!」
「はあー?この子にそんなもの見せるわけないじゃないの!そんなの私が許さない!」
また言い合いが始まってしまった。川を挟んで怒鳴り合う。川中島みたいだ。流石に向こうも考えたのか人選を替えてきた。先程トヒと話していた男で、ズボンの裾を限界まで上げて水に足を入れた。
「しっかり引っ張りなさいよ〜」
こちらは岩に括りつけているので引っ張る必要はないが、あちらはサボるとロープが弛んで支えの意味がなくなってしまう。
「なあミワ、このロープどうしたんだ?結構しっかりとしてるじゃないか」
「そりゃ登山用だもの。時には命を預けるものなんだから簡単に切れちゃったら困るわ」
「高かったろ?幾らしたんだ?」
「いや〜色んなものも一緒に買ったから一つ一つの値段はわかんないわね〜」
「たくさん買ったのか。よくそんな金持ってたな」
「ま、まあ、一応お嬢様だからね…」
「ほーん」
「知らない方がいいこともあるわよ…」
「三通りほど予想したが聞くか?」
「遠慮しとくわ」
「実家から借りた」
「聞きなさいよ」
「ヘソクリを使った」
「……」
「うちの実家から借りた」
「うっ…」
「図星か」
「だってトヒも私のせいで生活がギリギリなんでしょう?今更実家に頭下げる訳にもいかないし…トヨ姉様にトヒのためだから!って言ったら貸してくださったのよ…」
「うわ、トヨ姉にそれ言うか…あのシスコン泣きながら大金用意しそうだ」
「実際トヒのためにもなるじゃない?」
「あのなあ、今更なんだから遠慮しなくていいんだ。変に遠慮されると逆に寂しい」
「悪かったわよ…」
「それに出世払いで返してくれるんだろう?だったら今のうちにじゃんじゃん貸し付けてやるよ」
「闇金よりタチが悪そうね」
川を渡っていた男がそろそろこちらに辿り着く。人畜無害そうな顔をしているが数えきれないほどの人間を殺しているかもしれない。取り敢えずミワが構えトヒはその後ろに下がる。
「よくここまで辿り着いたな勇者よ!」
「は?」
「気にしないで下さい」
「じゃあまずはあなたのステータスカードを見せてもらおうかしら?」
「ステータスカード?」
「個人証明です」
「まあ仕方ねえな」
「ものわかりがいいわね…」
「あんたに何言っても通んねえことくらいわかる」
「確かに」
「失礼な…」
「ほらよ」
個人証明を見るのは三枚目だが二人のものと何ら変わりはない。それに今日貰った二人のものと同じくらい輝きを保っていた。
「随分綺麗ね。最近作ったパチモンじゃないの?」
「んなわけあるか!ここじゃあ偽造は奉行所通り越してお上行きだぜ?そんなやつ聞いた事もねえが」
「ふーん」
「平次さんというんですね。身分は…町民ですか」
「あの二人は?」
「うるさいのが助六で、もう一人のが弥助だ」
「寿司か」
「寿司ね」
「寿司?」
「こっちの話よ」
「そんじゃあんたらのも見せてもらおうか」
「どっちのが見たい?」
「は?」
「いや、こっちは一人分しか見てないのに二人分見せろっていうのは虫のいい話じゃない?」
「また何か言い出しやがったな…」
「おい」
「冗談よ」
「ったくなんだよ…」
「はい。私のはこれよ」
「確かに。そっちのも」
「ほい」
「ミワとトヒか。どこかは知らんが遠くから来たんだな」
「まあね」
「んじゃ裏を見せろ」
「やっぱ裏も見たいわよねえ」
「まあ裏を見ないと見た意味ないもんな」
「仕方ないわね…」
同時に2枚のカードをひっくり返す。裏に書かれているのは当然身分欄。そこに書かれている二人の身分はその他。そして備考欄には…
「神見習いと巫女見習い…?」
「どう?わかった?」
「いや、でも、うーん」
黙り込んでしまった。じっとカードを見つめて微動だにしない。この世界では常識じゃなかったのか?しびれを切らしたミワが口を開く。もっと大きなリアクションが欲しかったのだろう。
「どうしたのよ?」
「偽造なんてことないよな?」
「ないわよ」
「でもなあ…」
「何か腑に落ちないところでも?」
「いや、本物なのはわかったんだが、それをどう報告したものかと思ってなあ。信じるわけがねえし実際俺も完全に信じてるわけじゃねえ」
「実物を前によくそんなこと言えるわね」
「仕方ねえだろ。そういうのがあることすら噂でしかなかったんだぞ?そんなのを信じろって言う方が無茶な話だ」
「常識じゃなかったのかしら」
「そのハズだが」
「あんたらの国じゃそうかもしれないがよお」
この男も社会のヒエラルキーに属している一人の人間である。上司くらいいるだろう。帰って報告しても適当に報告したと思われるのが関の山。
「うちのアニキに見せてもらうってことはできねえよなあ」
「出来ないわね。今から連れてくるわけ?」
「自分達が戻るって選択肢はねえんだな…」
「当たり前でしょ」
「せめてちゃんと個人証明を見たってことがわかればいいんだが」
「そうねえ」
「紙に名前を書いたやつを見せるってのはどうですかね?」
「俺、自分の字と簡単な字くらいしか知らないんだ。適当に書かれても判断のしようがねえ」
「きちんと書けばいいんでしょう。トヒ、紙とペンを」
荷物の中からノートと鉛筆を取り出して大きな文字で名前を書いてミワに渡す。ミワも少し考えてから名前を書いた。
「何だこれ」
「似顔絵よ」
「誰の」
「トヒの」
「デフォルメされ過ぎて全く元がわからん」
「トヒも何か別に書いときなさいよ。名前だけじゃ味気ないでしょ」
「うーん…」
特に書くこともないので普段から書いている御朱印の墨書部分を書いておいた。鉛筆だが。そして綺麗にページを破り平次に渡す。
「これでどうです?」
「まあ無いよりはマシだな…」
「こっちがミワでこっちがトヒって書いてあるわ」
「何だこの顔みたいなのは」
「トヒの顔よ」
「ヘッタクソだな…」
「あんたらの見てる長い顔よりは可愛いわよ」
「こっちは?」
「うちの実家の神社の御朱印よ。ありがたく受け取りなさい」
「お、おう…」
「わかったらもう行きなさい。心配なら明日も街には出るから何かあったら来ればいいでしょ」
「あ、ああ、手間かけたな」
平次は紙をしまうと来た時と同じようにロープを支えに対岸まで戻っていった。平次が岸に上がると渡していたロープを回収していく。
「こりゃちゃんと乾かさないとね…」
「今日はこの辺にするか」
「そうね」
ロープを片付けている間に追っ手の三人も早々に引き上げていった。街を出てから相当な時間が経っているだろうし、街に着く頃にはもう日が暮れているだろう。
ua/pvともに前話が0だったんですよね。最早ここは独り言の欄と化したのだ。まあ自分で考えてるところまではやりますよ。