居候している幼馴染が神様になるというので人生計画を見直すことになりました   作:公序良俗。

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そろそろ話が進みます。



野外演習

「今、何時くらいかしら」

「16時過ぎだな」

「1時間もやり合ってたのね…」

「取り敢えず食材探しだな」

「一狩り行く?」

「いや、採取系クエストだ」

 

 少し上流の方へ移動し、川の中にある岩場に仕掛けをセットする。ついでにもう少し上流からバシャバシャと水面を叩いて音を出し魚を追い立てる。仕掛けは川沿いに生えていた竹を拝借した。そこまで本格的なものは作れなかったが入っていれば儲けもんと言ったところだ。

 そして少し川から離れたところに入りスペースが取れそうな所を探し荷物を降ろす。

 

「ここをキャンプ地とする!」

「じゃあミワは河原でなるべく大きさの揃った石を何個か運んできてくれ」

「えーなんで私が」

「適材適所ってやつだ」

 

 ミワが石を運んでいる間、地面を掘って掘り出した土を盛って5センチ程の深さの窪みを作る。盛り土の内側には大きめの端材。中心には枯れた竹や葉っぱを集める。これで消えにくく燃え広がりにくい焚き火台の完成である。台は無いが。

 

「こんなもんかしら」

「うん、ちょうどいいな」

「暗くなる前に汗流してくるわ」

「そうだな。火、起こして待ってるよ。ついでに食べれそうな魚が居たら捕まえてきてくれ」

「無茶言わないでよ」

 

 火を付ける道具は一応色々と準備していたのだが、ライターがはじかれてしまったのでどれを使おうにも一手間以上かかってしまう。一番楽なのはマッチだがライターが無い今、緊急用に取っておきたい。どうしたものか。

 

「そうだ…『十枚の窓(Windows 10)』」

 

 太陽光を一点に集めるような凹面のミラーリングガラスを作り出す。以前、ビルの窓のせいでぼや騒ぎになったというのをニュースで見た気がする。そんな感じで出来たりしないだろうかと思ったのだが割と上手くいってしまった。ホント何でもありである。とは言えほぼ日が沈みかけているこの時間では大した光量は取り込めないだろう。10個の凹面鏡を焦点が着火剤に合わさるように配置する。するとすぐに煙が登り始めた。上手いこといきすぎである。しばらくは大事な種火を生まれたての赤子のように大事に育てて大きくする。葉っぱから竹に燃え移ると竹で息を吹き風を送り、更に大きな火にしていく。竹は一本あればだいたいのことに使えるので便利だ、と、本に書いてあった。

 

「あら、ひょっとこが居るわね」

 

 火が安定したころにミワが帰ってきた。

 

「湯加減はどうだった?」

「水に湯加減も何もないわよ、冷え冷えよ。それより誰かに見られないかヒヤヒヤしたわ」

「上手いこと言うなあ」

「うるさいわよ」

「じゃあもう一仕事だ」

「先に言ってよ…また汗かくじゃない」

「なに、ミワにとっちゃ大したことないさ」

 

 薪拾いのときに見つけておいた良い感じの倒木をミワに運ばせる。枯れているので多少は軽くなっているのだろうがそれでもそれなりに重かった。なのでミワに運ばせようと思ったのだが、軽々と持ち上げるので少し引いてしまった。それを見たミワも微妙な表情をする。ごめんて。

 拠点に戻って木を縦に半分。椅子の出来上がりである。横になれば寝ることもできるのでこれで地面に直に寝ることはなくなった。後は、まだ軽かった木を3本交差させて三脚を作る。もう1つ同じものを作って最後に横に木を渡す。物干しが出来上がる。まあ急ごしらえならこんなもんだろう。

 

「いやあ、いい仕事したな」

「トヒも水浴びして来なさいよ。真っ暗になるわよ」

「そうだな。じゃあ火の番頼んだ」

「頼まれたわ」

 

 タオルと替えの服を持って川へ向かう。死水域、わんどというらしい流れが淀んだ場所があることは確認している。周辺が濡れているのでミワも恐らくここを使ったのだろう。流石に野外で服を脱ぐのは気が引けるが誰も見てないだろう。多分。着ていたものは綺麗に畳んで濡れないように少し離れたところにタオルと一緒に置いておく。入水。やはり冷たかった。肩まで浸かる気にもなれないのでさっと水を掬って身体を軽く撫でる。ついでに下着や襦袢を揉み洗いしておく。明日の朝には乾いているだろう。濡れた身体をタオルで素早く拭き取ると用意しておいた服を着て急いで戻って暖を取る。

 

「随分と早かったわね」

「流石に寒いな」

「まああったまりなさいよ…てかなんでジャージなのよ」

「野宿もあるかもしれないと思ったからな。長袖長ズボンは基本だ」

「秋も深いからまだいいけど真夏だったらどうするのよ」

「虫にさされないから夏もいいぞ。真冬だとやばかったけど」

「真冬だったら野宿なんてしないわよ」

「まあね」

「じゃあ仕掛け見に行くか」

「待ってたわよ!」

 

 さっき仕掛けておいたポイントへ向かう。ダメ押しにもう一度上流を荒らして仕掛けに追い立てる。

 

「どうかしら」

「当たりだな」

「やったわね」

「それなりの大きさだからお腹いっぱいになるぞ」

 

 他の仕掛けにも運良く同じくらいの大きさの魚が掛かっていた。上出来ではなかろうか。

 

「こりゃいいな。もう一度仕掛けておいて明日の朝また来よう」

「そうね。こんなに簡単にとれるなら食料には困らないものね。街で売れるかもしれないし」

「他の食料にも交換できるかもしれないな」

「早く戻りましょうよ。さっきからお腹が空いて仕方ないのよ」

「まあ焦るな。魚は逃げん」

 

 とった魚は他に材料もないので丸焼きにして食べる。こちらにきて初めての食事である。

 

「ん〜〜!凄く美味しいというわけでもないけど普通に美味しいわね」

「まあただの焼き魚だしな。塩か醤油があればなあ」

「ごはんが欲しいわね」

「明日は米を買うか」

「甘いものも欲しいわね」

「一瞬ですっからかんになるぞ」

「そういえば結局今日はお金使わなかったわね」

「使ってる暇がなかったからな…手元に銀5、こっちに銀11だ」

「2人で32,000円ね…神都だったら一泊が限界ってとこかしら。キャンプ最高ね」

「ずっとここに居るわけじゃないんだ。隣の国に行くまでに銀50は貯めたい」

「銀50…ひいふう…10万?」

「という訳で明日の計画を立てるぞ」

「すっかり忘れてたわ」

「遊びに来たんじゃないんだぞ」

 

 ミワのスキルを使った芸。まだ指鉄砲しか見たことないがそれをどう使うかを考えなければならない。あんな爆発をどう使えというんだ。

 

「なあミワ。あのばきゅんてやつ、どこまで火力を抑えられるんだ」

「さあ…やったことないしねぇ…」

「気軽にポンポンと撃てるもんでもないしな。下手すりゃ山が一個消えそうだ」

「じゃ、取り敢えずやってみましょうか。上向けて撃てば大丈夫でしょう」

「ふむ」

「最小出力!『墾田永年私財砲』!ばきゅん!」

「……」

「……」

「わからん」

「見た目ではわかんないわねぇ」

 

 ミワの放つエネルギー弾は不可視なので何かに当てない限り強弱がわからない。重力で落ちてこないだろうか。

 

「でも反動からすると相当弱くなってるはずよ」

「と言われても信用できん」

「と言われても反論できないのよね」

「地下数百メートルの場所で1人で試して来てくれないか」

「人口地震でも起こさせる気なの」

「じゃあ他のやつはどうなんだ」

「それこそやったことないからわかんないわ。最悪の場合死人が出るわよ」

「変な文言を付けるからだ」

「だって必殺技なんだもん」

「それは聞いたよ」

 

 必殺技以外のものも考えればいいのではないだろうか。『十枚の窓』だって別に相手を傷つける効果は付与されていないのだから。それでミワが納得するかは別だが。

 

「ねえ、ミワの窓ってどこまで耐えれるの?」

「さあ…やりようだろうな。窓にだって色々あるんだし」

「じゃあ一番頑丈なやつ出してよ。私が最小出力から少しずつ火力上げて撃ってくから」

「なるほど」

 

 ついでに『十枚の窓』の耐久性も確かめるのもありかもしれない。ミワの最弱弾で貫かれるようなら防御壁として使えたもんじゃない。

 

「受けて立とうじゃないか。限界を知っておくのも悪くないだろう」

「じゃあ早速やりましょうか。10枚全部出してよ」

「よし来た」

 

 んー…なんの耐性にしようか…エネルギー弾だし防弾でいいか。

 

「(取り敢えずミワの撃つエネルギー弾を止めきれるような防弾のガラスを一直線に)『十枚の窓(Windows 10)』」

「それじゃ行くわよ。『墾田永年私財砲』!最小出力!ばきゅん!」

「順番違うけどいいのか」

 

 ミワが遠慮なく最小出力のエネルギー弾を撃ち込む。

 

「あら」

「ふむ」

 

 ミワの指から放たれたエネルギー弾はちゃんとガラスに当たった、気がするのだがガラスには傷一つ付いていない。

 

「このガラス、どれくらい硬いの?」

「さあ…」

「そっちが強過ぎたら比較にならないじゃない」

「そんなこと言われてもなあ」

「私から破壊を奪ったら何が残ると思ってるのよ」

「サイコパスだったか」

「血が破壊を求めているの」

 

 なんかこう、ど真ん中に綺麗な穴が空いて全てを貫ていく、というのを想像していたのだが、貫くどころかヒビすら入っていない。

 

「こりゃ普通のガラスでも大丈夫なんじゃないか?」

「はっー!あったま来たわね!あんまり舐めてると痛い目会うわよ!」

「人に銃を向けてはいけません」

「意地でもこのガラスを粉々にしてやろうじゃない」

「ほどほどになー」

 

 少しずつ火力を上げて数発撃ってみる。がしかし、最大火力を撃ち込んでもミワの努力虚しくガラスの方はビクともしない。流石にミワもヘコむ。

 

「なんでよ…昼間はあんなにすごかったじゃない…」

「なあ、ミワ」

「何よ、笑いたかったら笑いなさいよ。あんだけ大口を叩いておいて傷一つ付けられなかった無様な私を笑いなさいよ」

「はは」

「笑うんじゃないわよ!」

「どうしろと」

「もっと気遣いなさいよ!」

「めんどくさ…」

 

 最早聞き分けのないガキである。

 

「多分なんだがな、ミワのばきゅんは直接物を破壊することは難しいんじゃないか?」

「トヒも見たじゃない。あの分厚い壁のガレキを」

「あれはミワのばきゅんでなったんじゃなくて密閉空間で圧力が上昇したからああなったんだろうな」

「どういうこと?」

「鉄砲からなんで弾が跳ぶかしってるか?」

「そりゃ引き金を引くからで…あれ?そんな引いただけで飛んでくわきゃないわね…」

「火縄銃とかなら分かりやすいんじゃないか?銃口から火薬を詰めて、弾を込める。引き金をカチッすると火が火薬について爆発する」

「その衝撃で?」

「実際には急激な熱膨張なんだがまあ大雑把だがそんなとこだ」

「つまり私は火薬に火を付けただけなのね」

「言いたかったのはそんなとこだ。物を飛ばす力はあっても壊す力はないってとこだな」

「そういえばトヒも爆発しなかったものね」

「そういえばそうだな」

 

 初めて仮想空間に飛ばされたときにミワに撃ち込まれた腹の感覚を思い出す。衝撃は凄かったが優しい温かみだった…気もしなくもない。

 

「つまりあれね。弾を用意すればいいのよね?」

「そういうことになるな。あくまでも一案だが」

「物は試しよ」

 

 ミワが足元に転がっていた小指くらいの小石を拾い上げる。

 

「じゃ、行くわよ」

 

 コイントスのように親指で上に弾く。

 

「ん?」

「ばきゅん!」

 

 そして落ちてきた小石に向かってエネルギー弾を撃ち込む。小石は軌道を変えてまっすぐ10枚ならんだガラスに向かい、一番手前のガラスに当たって下に落ちた。

 

「そのフォームは大丈夫なのか?」

「まあ大丈夫でしょ。で、どう?」

「前の車が跳ね上げた小石がフロントに当たった感じだ」

「どうなのよそれ」

「ちょっと傷が入った」

「大成功ね」

「まあ普通の石が防弾ガラスに傷を付けたんだから大したもんだよ」

「次は普通のガラスでやってみましょう!」

「ほい」

 

 新たに『十枚の窓』を展開する。普通の窓ガラスが10枚並んだ。

 

「それじゃ行くわよ!『墾田永年私有砲』!ばきゅん!」

 

 放たれた小石はガラスの中心を一直線に通り抜け、10枚全てを貫通した。

 

「なんか変わったか?」

「名前を変えてイチからイメージし直したのよ」

「ほー」

「これなら使えそうでしょ?」

「何に?」

「何って…お金稼ぐんでしょ?」

「……目的を見失ってた」

「あんたねぇ…」

「如何にしてミワの機嫌を取るかを第一に考えていたからな」

「今はすこぶるいいけどなんか癪ね」

 

 火力調整が出来ることがわかったのだがそれをどうするかという課題が残っている。今のままだとただの射的だもんなあ。

 

「じゃあ演目を決めましょうか」

「そうだな」

 

 こういったことはミワに任せた方がいい。神社のイベントでも何かするとなれば皆がミワにアイデアを求めるしミワもそれに喜んで答えている。そういった仕事につけばいいのにとは思うのだが少し厳しいか。神社のイベントは街のイベント。あの街のイベントプロデューサーは元々ミワだったのだ。そりゃ求人がある訳が無い。

 一通りのプログラムを決めるとミワはさっさと寝てしまった。こっちに来ていきなり力を使い果たし、回復仕切る前に河原を駆け、さっきも躍起になって撃ちまくったのだ。疲れていて当然だろう。人のこともあまり言えないので明日に備えてさっさと寝よう。

 

 

 ミワとトヒが眠りについた頃、アマノが部屋に戻っていた。そろそろ向こうでは日が変わるころだ。彼女らの睡眠時間はモニターを任せていた部下にも束の間の休息が与えられる。初日の様子を聞きたかった。

 

「やあ、どうだい」

「またおいでになったのですか?暇でして?」

「面倒見がいいと言ってくれないかな…」

「度が過ぎると過保護になりますわよ。先程、お二人共ご就寝されましたわ」

「そうかい。何か気になった点は?」

「いえ、特には」

「へえ」

「そう心配なさることもありませんわ」

「別に心配というわけじゃないんだけどなあ。ただ初めての一般人の転送だから気になってるだけで」

「それを心配していると言うのですわ」

「そうなのかな」

「はいはい、わかったならさっさと仕事してきて下さいまし。私の休憩時間を邪魔しないで頂きたいんですの」

「あれ?一応上司なんだけどな?」

 

 いい部下を持ったアマノであった。





今回は少し短めです。書き写しの際に削ったらここまで…まあ6000前後が目標なので少なめの回があってもいいでしょう。
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