居候している幼馴染が神様になるというので人生計画を見直すことになりました   作:公序良俗。

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地面が揺れているのか家が揺れているだけなのか…



漉餡粒餡

 トヒに頼まれた洗濯をチャチャチャと終わらせてお昼ご飯用の魚を川に取りに行って帰ってくると、普段トヒが座っているところに何かがちょこんと座っていた。始めはトヒかと思ったのだけどそんなすぐに帰ってくる訳ないし…近づいて見てみるとなんか黒いくて大きい。トヒとはちょっと違うかしら。

 

「トヒ?」

 

 私の声に反応してくるりとこちらを向いたのは可愛いトヒ…ではなく可愛い小熊だった。小熊と言っても抱きしめられる大きさじゃないけど。そういえば昨日、トヒが熊に会ったって言ってたかしらね。同じ山に住む者同士、まずは挨拶よね。挨拶は大事。

 

「ふ……ここにあったか100円め…いえ、ここで会ったが百年目よ。私とトヒの愛の巣に土足で踏み込んだこと、後悔するといいわ!」

「……」

「……」

「……」

「今はツッコミが不在だから私のボケをフォローしてくれる人は居ないの。つまり、今この場は私の独壇場…ホームグラウンドよ!」

「……」

「……」

「……」

 

 まあ分かっていたけれど熊がツッコミを返してくれるわけがないわよねえ。トヒが聞いていれば今のだけでも3つ4つはツッコミが入ってたところかしら。きちんと口上を聞いたか聞いてないかは知らないけど、小熊はじっとこっちを見つめている。ああ、成程。そういうことね。

 

「取り敢えず…何か食べる?」

 

 手に持っていた魚を前に掲げてみると目線が顔ごと動いた。はい、くるりと回って…右、左、右。

 

「お腹空いてるのね。ちょっと待ってなさい。今焼くから」

 

 小熊が座っている向かいに座る。串用に沢山切ってある枝を魚の口からグサリと一通して焚き火の外側に刺す。本当なら一食に一匹なのだけど怒るトヒも居ないので食べようと思って捕まえたもう一匹も同じように枝にグサリ。

 

「そういえば、あなた達って生の方がいいのかしら?サケなんか捕まえて丸かじりしてるものね」

 

 枝を抜いて火から少し離れたところにそっと置いてやると、クンクンと匂いを嗅いでしばらくツンツンした後ムシャムシャと食べ始めた。

 

「骨ごと食べるなんてトヒみたいねえ…あーでも、トヒも頭は残してたわね」

 

 人前でのトヒは物静かで礼儀作法もしっかりしているけれど、実態は身内以外が知ったらかなり驚くようなことばかりだ。まず、トヒは見た目とイメージに反してよく喋る。普段は寡黙キャラのくせに家へ帰ると外にいた分まで喋り出すのでたまったもんじゃない。本人曰く、自分の意見を出すことで波風を立てるよりその場の雰囲気に流されていた方が楽だから、だそうだ。順番に意見を聞かれると「同じです」って答えるタイプ。そんなトヒだから自己主張がないと思われがちだが、あの子は自己主張の塊である。家でトヒと意見が合わなかったときに私の意見が通ることはほとんどない。なにかにつけて家主家主と居候に対して痛いところを突いてくる。そりゃまあ確かに急に転がり込んでも文句も言わず…文句を言いながらも追い出さずに置いてくれていることには感謝をしているけれど、幼馴染で姉妹同然に育った私にもう少し優しくしてくれてもいいと思う。相手を攻撃するときは相手が嫌がるところを確実に、なんて最早悪役のセリフだ。後、ご飯の時なんかは魚をしっぽから丸かじりするし私が半分も食べないうちに食べ終わったりする。マナーなんてあったもんじゃない。

 

「あら、もう食べ終わったの?ほんっとにトヒみたいねえ…でもこっちの魚は焼いちゃってるしもう何も…そうねえ…これとかどう?」

 

 クリを拾いに行った時についでにたくさん拾っておいたドングリ。トヒは食えたもんじゃないとか言って全く興味を持たなかったけど、何が後で生きてくるかわからないんだから。小袋いっぱい入ったドングリを全部ひっくり返す。比較的綺麗なものばかり集めたので腐っていたり中身がなかったりはしないはず。

 

「あらあら、よく食べるわねー…どんだけお腹空いてるのよ」

 

 そういえば昨日、トヒが川向こうにもほとんど実りがなかったって言ってたっけ。実りの秋の名が泣くわね。

 

「じゃあ私もそろそろ食べるわね。いただきまーす」

 

 醤油を一振りしてそのままかぶりつく。ここ数日、ずっと同じ魚を食べているけれど味付けを変えたりしてなんとかやっていってるけど、トヒが街に買い出しに行ってくれてるから今日からは少し違ったものを食べれそうね。

 

「ごちそうさまでした。魚一匹だけだとやっぱり少し物足りないわね。あなたはそれで満足?」

「……」

「うーん…ご飯炊いても食べないでしょうし…また仕掛け見に行くのもめんどくさいし…」

「……」

「ええい!自然で生きているんだから多少の我慢は大事よ!私も我慢するからあなたも我慢なさい!」

「……」

「……」

「……」

「わかったわよ…一匹だけよ?」

 

 わがままするのは慣れてるけどされるのは慣れてないのよね。

 

 

 うーん…頭が痛い。割れるようにとかバットで殴られたみたいとか言うけれど、割れたこともバットで殴られたこともないから頭の痛さの表現は難しい。ただ、今の場合は普通に殴られて痛い。どれくらい気を失っていたのだろうか。あまり遅くなるとミワが心配するなあ…床が板間から畳に変わっているので場所はさっきの狭い小部屋ではなさそうだ。

 

「起きたか」

 

 眼はまだ開けていないのにバレてしまった。初めて聞く声。サクの言う待機組の残りか、見張り役か。前者の方が可能性は高そうだが。

 

「気分はどうだ」

「せめて布団の上が良かったなあ…」

 

 眼を開けると鎖鎌や他の男達が座っているのが見えた。声の主は背中側にいるらしい。起き上がろうとするが手首足首を縛られているようだ。頑張れば起きれないことも無いが疲れるのでやめた。

 

「手荒なことをして悪いがそのままで居てくれ」

「手荒なことをしている自覚はあるんだな」

「まあそう言うな。何せお前はただの非力な女じゃない。ここで不思議な力を使われても困るんだ。なあ、巫女見習いのトヒさん?」

 

 街の人々は神見習い巫女見習いと言ってもほとんどがスルーしていたが、どういう存在か知っている人間もいるらしい。

 

「やだなあ…ただの巫女見習いにそんな力はないさ。神じゃあるまいし」

「せんだって街の方で大いに盛り上がっていたじゃないか。巫女が叫ぶとどこからともなく空中にガラスが現れ、その数は50にもなると聞いている」

「あれは神の方が」

「こんな話も聞いたぞ?熊に襲われたところ巫女が現れ不思議な結界を張って守ってくれたと…お前だろう」

 

 おお、奴らも真面目にやってるらしい。次会った時褒めてやろう。じゃなくて。

 

「お耳がお早いようで…」

「助けに入ったのは巫女が一人と聞く。神の方はどうした?」

「何も常に一緒に居るわけじゃないさ」

「何故わざわざ街の外に出た」

「買い物してる間に見失ってな。探しに行ったんだ」

「一人で街の外に出たと?」

「そうそう。なんせ自由奔放な神だからな」

「居たか?」

「いいや。見当違いだったようでな。まだ街の中に居るんだろう」

「本当に居るのか?」

「そう信じたいね」

「いい事を教えてやろう。今日この街であの神を見たという者は一人もいない」

「ほう」

「もう一度聞く。本当に神はこの街に居るのか?」

「さあ」

「そうか」

 

 声の主が近づいてくる。くるっと反転させられ遂にご対面する。

 

「どこかで見たことがある顔だ」

「妹が世話になったな」

「あーそういうことか」

 

 おそらくこの女がチルなのだろう。なーにが鎖で繋がれて囚われている、だ。自由そのものじゃないか。

 

「元気そうで何より」

「お陰様でな」

「じゃあ無事みたいだしそろそろ帰らせて貰おうか」

「この状況でどうやって帰るんだ?」

 

 確かに。手足を縛られ、敵に囲まれ、仲間に連絡も取れない。絶体絶命の大ピンチである。最悪、現実世界に戻ればいいが査定に響きそうだし…あれ?腕輪どこいった?

 

「取り敢えず帰る前に妹さんに挨拶してもいいかな」

「サク」

「なーにー?おねーちゃん」

「巫女さんが挨拶したいそうだ」

 

 隣の部屋から声がする。サクの声だ。

 

「トヒが?私に?」

 

 サクが部屋に入ってきた。こちらも元気そうで何よりだ。

 

「よう、サク。また会ったな」

「ごめんね〜トヒ。でも、悪く思わないでね?騙される方が悪いんだから」

「いやあ一本取られたよ。中々の演技力だ。完全に信じてしまった」

「そう?私役者だからさ〜」

「ところで饅頭は食べたか?」

「あー…あのお饅頭?一口食べたんだけど、美味しくなかったから捨てちゃった」

「そうか」

「どうせくれるならもっと甘くて美味しいのが良かったなー」

「じゃあそろそろ帰るよ。今度また案内してくれ」

「……」

「さてと…おーい、鎖鎌。荷物はどこだ?」

 

 くるりと転がりサクに背を向ける。

 

「…面白くない」

「殴ったことは怒ってないからさ、荷物、取ってきてくれないか?今ちょっと動けなくてな」

「ぜんっぜん面白くない!」

「どうしたサク。そんなに大きな声で」

「もっと怒れよ!悔しがれよ!助けてやろうと思った子供に騙されてこんなことになってるのに!」

「いやー無事で何より!助けは必要なさそうだ!これからも元気に頑張ってくれ!」

「…ほんっと気に入らない。何されるか分からないのにそのよゆーですよって表情…もっと怯えて泣き叫びなさいよ!」

「落ち着け落ち着け。おい、チル。見てないで妹を宥めてやれよ。ご近所さんに迷惑だぞ」

「こいつ…!」

 

 サクが腕を振り上げる。その細過ぎる腕にはそぐわない、この世の装飾ではなされないようなデザインの腕輪がそこにはあった。

 

「あ、それ…ぷへ!」

 

 喋っている途中なのに殴られた。お決まりとかお約束とか、そういうのあるだろう。いくら非力な少女とはいえ無抵抗で殴られるとそれなりに痛い。キッとサクを睨みつける。

 

「…痛いなあ。何するんだ」

「ふふふ…それでいいのよ…その顔が見たかったの」

「おいサク。さっき、やった饅頭を捨てたって言ってたな」

「そうだけど?それがどうかした?」

「いやなに、いいことを教えてやろうと思ってな」

「いいこと?」

「チル、姉妹の妹ってのは姉の姿を見て育つんだ。少し甘やかし過ぎたな。うちのは少しアレだが姉としてはかなり立派だぞ」

「はぁ?何言ってんの」

「少しわからせてやろうと思ってな」

「キャッ!」

「『八枚の窓(Windows 8)』!」

 

 身体を捻って見下ろすサクの足を思いっきり払う。せいぜい30kgくらいだろう。簡単にすっ転ぶ。そして宙に浮いたサクの体が床に打ち付けられる前に六面を囲む。金槌程度ではヒビしか入れられない超強化ガラスで。

 

「いったいわね!何すんのよ!」

「お?デジャヴか?」

「何よコレ…出しなさいよ!こんなことしてどうなるかわかってるの?」

「どうなるんだろうなあ…おっと、お前ら動くなよ。と言ってもこっちには来られないか」

 

 残りの二枚はチルとこちら、こちらと棒刀鎖鎌の3人とを仕切る見えない壁として展開した。床や壁を破壊しない限りはこの壁は越えられない。一発殴られたが近づいてきてくれたお陰で戦力を分散させることが出来た。まあトントンということにしておこう。

 

「どうした!」

「何があった!」

 

 入口で番をしていた2人も駆け付けてきたがどうすることも出来ない。残るはあと1人…得体の知れない見張り役だ。

 

「どういうことだよこれ…」

「何がどうなってるんだ?」

「黙れ」

 

 刀男が状況を呑み込めていない2人を一喝する。一部始終を見ていなければ何故こうなったか理解出来ないだろう。部屋の奥にはチル、手前に3人、そして真ん中には見えない壁を叩くサクと手足を縛られた巫女が転がっているのだ。無理もない。

 

「チル様!これは…!」

「黙れと言っているだろう」

「で、でもだな…」

「お前達は戻れ。巫女の連れが来るかもしれん」

 

 タメだが上下関係はきちんとしているらしい。素直に従う2人。まあミワが来ることはないだろうが。

 

「さてと」

 

 ゆっくりと身体を起こす。寝たまんまだと説教にも身が入らない。

 

「結構ガチガチに縛ってくれたなあ…」

 

 初めて足首を縛る縄を見た。かなり太めでちょっとやそっと力を入れた程度では到底千切れそうにない。

 

「『七枚の窓(Windows 7)』」

 

 10、8に続く3つ目のスキル。基本的なところは同じなのでイメージは容易い。ハサミの要領で二枚の薄いガラスを皮膚に触れないように縄に噛ませていく。

 

「足はこれで良しと」

 

 ひとまずこれで立てるようになった。

 

「待たせたな」

「……」

 

 ずっと喚いていたのだが流石に疲れたのかへたりこんでしまっているサクを見下ろすと、こちらを怒りの表情で睨みつけてくる。チルと3人は表情を変えずこちらの様子を見ているだけだ。えらく余裕だな…可愛いおてんば娘が囚われているというのに。

 

「その腕輪、サクには少し大きいな。重いし外したらどうだ?」

「ふんっ!言いたいことがあるならさっさと言えばいいでしょ」

「割と言いたいことなんだけどなぁ」

 

 それを取られたままだと結構危ないんだもん。何かの拍子にカチンと触れ合って現実世界に意識が送られてしまったらどうするんだ。

 

「まあいいや。私事だがつぶ餡とこし餡ならこし餡派でな」

「それが何」

「ひと口食べた方はどっちだったのかなってな」

「はぁ?そんなの知らないわよ」

「答えによっちゃわからせ方が変わってくるんだけどなあ」

「どっちだっていいでしょ?早くここから出しなさいよ」

「残念だがそれは出来ない」

「どうしてよ!」

「わからせないといけないからな」

「さっきからそのわからせるって何なの」

「何かサクみたいな年頃の生意気な女の子を屈服させることをそう言うらしい」

「屈服って…」

「神が言ってた」

「何それ意味わかんない」

 

 まあそうだろうな。

 

「それで何をしようって言うのよ」

「何もしないさ。そのまま放置だ」

「ふん、そんなことで私が屈服?するわけないじゃん」

「そうか。なら見物だな」

「イーだ!」

 

 何か言ってら。言うことは言ったので今度はチルとゆっくり話をしなければならない。が、先に手の方もそろそろ自由になりたい。後ろ手に縛られているので見えないのが不安だが先程と同じ要領で縄を切っていく。これ、ちゃんと切れてるか?

 なんとか無傷で縄を切ることが出来た。縛られていた部分が多少紫になりかけているがすぐ戻るだろう。まだ若いし。

 

「さてと。チル」

「なんだ」

 

 優雅にも壁際に置かれた脇息にもたれかかりってサクとの問答を黙って見ていたチルに声をかける。この姉、威厳だけはある。

 

「チルがこの集団の頭ってとこか」

「何、ちょっとココを貸してやってるだけだ」

「頭じゃねえか」

「で?何か言いたいことがあるんだろう?」

「出来ればもう帰りたいんだが」

「無理な話だ。ここに来た以上、はいどうぞと返すものか」

「まあそうか」

「それにお前はただの獲物じゃないからな。簡単に手放すわけないだろう」

「でも手出し出来ないんじゃどうしようもないじゃないか」

「お互い様だ」

 

 確かに、この状況だと攻め込まれることはないが攻め入ることも出来ない。こちらは攻める必要はないので荷物を回収して逃げ出せれば良いのだが。

 

「私たちはお前に手は出せない。しかしお前もこちらに手を出せない上にそこから動くことも出来ない。その状況でどちらが先に根を上げるか…考えるまでもないだろう?」

「こっちにはサクが居るぞ?」

「調子に乗り過ぎた結果だ。少し頭を冷やすといい」

「んー姉はまともだな」

「当然だ。人様から頂いたものを粗末にするなど以ての外だ」

「どうしてこんな悪い子になったんだ〜?お前は〜」

 

 狭い部屋での会話なので全て聞いているサクの前で庇うことなく至極真っ当なことを言うチル。当人は聞こえていないふりだが。

 

「我々は金目のものは勿論、金にならないものでも骨すら残らないように全てしゃぶり尽くす」

 

 うん、サクが悪い子になったのはこの姉のせいだ。

 

「そうだ、一つ聞いておきたいことがあるんだが」

「どうした」

「後もう1人は何処にいるんだ?」

「何のことだ」

「サクの言う見張り役、もとい連絡係だ」

「ああ、それなら…」

 

 チルがピッと指を立てる。

 

「上だ」

「上?」

 

 上を向く。しかし何もない。天井の板が外れて何者かが顔を出すということもない。

 

「何もないぞ?」

 

 突如、足元に強い衝撃が走る。

 

「わっ」

 

 階下から槍が床を貫いてこちらに刃を覗かせて…いなかった。

 

「ほう」

「危ないなあ。流石に刃物はシャレにならんぞ」

「わかっていたから床にも結界を敷いていたのだろう」

「そうともいうが」

 

 確かに槍は床を突き抜けてはいる。しかし『七枚の窓』で出現させ縄を切るのに使った二枚以外を重ねた五枚のガラス全てを貫くことは出来ていなかった。貫かれていたらまあ、薄かったし、仕方ない。

 

「下で良かったよ」

「上だとは思わなかったのか?」

「天啓だよ」

「成程、ひとつ賢くなった。礼を言う」

「礼ついでに帰してくれませんかね」

「無理だな」

「やっぱりかー」

 

 このままでは平行線である。

 

「トヒよ。お前、巫女見習いなぞせずにうちに来ないか?やりたいこと、好きなもの、全てが思い通りだぞ」

「何を言ってるんだ。うちのが神なればそれこそやりたい放題だ。人間では成し得ないことだって出来る」

「それはここから脱することが出来ればの話だ。私はお前のことが気に入った。逃がすつもりはない」

「怖いなあ…そっちの趣味はないんだが…どちらかと言えば鎖鎌みたいなのをからかう方が良い」

「気が合うな。私もだ」

「チルが言うと違って聞こえるな」

 

 後ろに座っている鎖鎌に眼をやると下を向いてプルプル震えていた。羞恥なのか恐怖なのかはたまた歓喜なのかはわからない。

 窓から差し込む陽を見る。既に影は実像よりも長くなっている。早急に済ませたいところだ。そろそろサクもギブアップしてくれないだろうか。

 

「持久戦か…」

「お前が折れれば話が早いんだが」

「そうはいかん。神の下に今日買ったものを供えねばならんのだ」

「そうそう、お前の持ち物だがな」

「返してくれるのか?ありがたい。どこに?」

「おい」

 

 チルが3人に声をかける。鎖鎌が黙って立ち上がり部屋を出ていくと、すぐにカバンを持って戻ってきた。

 

「やけに優しいじゃないか」

「優しい?何の話だ」

「返してくれるんだろう?」

「誰がそんなこと言ったんだ?」

「違うのか」

「違うな」

「そりゃ残念。どうするつもりだ?」

「どうもしない。する訳ないだろう。見たことがない素材を使って見たことがない作りをしているんだ。どこで手に入れたものか聞きたくてな」

「いつも行ってる店で」

「どこの店だ」

「家の近くの」

 

 季節の変わり目で商品入換の在庫セールで買ったものだ。半額だった。しかし詳しい場所を言える訳もなく。

 

「お前の出身は西方の国だったか…西方にこんなものを作る技術などあったか?」

 

 都合よく解釈してくれる。街の事情通でも国外のことには疎いらしい。国外というよりかは世界が違うのだが。

 

「これを独占出来れば…しかし…いや待てよ…」

 

 チルがブツブツと言い始めた。頭は回るんだから別のところで有意義に使って欲しいものだ。暫くは放っておこう。さて、いい具合に寝かせておいた少女の味見をしてみようか。

 

「サク〜気分はどうだ?」

「ふん…ぜんぜんよゆー」

「なら引き続き頑張れ」

「こんな無駄なこと辞めたら?」

「あーあー聞こえなーい」

 

 まだ寝かし足りないみたいなのでもう少し放置だ。日が暮れちゃうなあ。チルは自分の世界に入ってしまいこちらと会話が成り立たない。場は膠着状態だ。





わからせるってなんなんですか()
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