居候している幼馴染が神様になるというので人生計画を見直すことになりました   作:公序良俗。

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2部の終わりが見えてきました。



水兵利米

 街の南側に近づきスラム街の一歩手前のような雰囲気になってきた。人の出もかなり少なくこちらに声を掛ける者もなくなってきた。今のところ西側エリアで主に活動しているため他の地域がどのような雰囲気なのかは分からないがここほど荒んでいるということはあるまい。

 

「ねえ、これ、道は合ってるの」

「うーん…あの塔の位置と高さを見る限りだいたいこの方向なんだけど目印になるようなもんがないからな」

「全部似たような建物の残骸だもんね」

「この辺一帯が火事にでもあったんだろうな。なかなか建て直しされてないのが不思議だが」

「人手が足りないんじゃない?」

「どうだろうな」

「あ、あそこじゃないかしら?」

「んーそんな気もする」

「行ってみましょ」

 

 昨日連れられて来られたときに割と周囲を観察していたつもりなのだが何せ似たような景色ばかりだ。分からないのも無理はない。

 

「ビンゴね」

「と言ってももぬけの殻だな。入り口の見張りがいない」

「取り敢えずお邪魔することにしましょう」

「待て待て。何か仕掛けられてるかもしれないだろ」

「ブーブークッション的なあれ?」

「そう、的なあれ」

「まあ要は何にも触らなきゃいいんでしょ」

「触らなくても地面に埋まってる何かを踏む可能性もあるぞ」

「じゃあどうしろって言うのよ」

「そうだな…うーん…」

 

 一番手っ取り早いのは仕掛け諸共建物を壊すことだがそれだと本末転倒だ。それにもし中に誰かいたらまあ無事では済まないだろう。では仕掛けだけを壊すというのは?火薬系が仕掛けられているならミワの『海神の詔』で水をぶちまければいい。ただ原始的なワイヤートラップで矢や槍が飛んでくるようなものだと余り効果がない。だとすれば仕掛けを壊すというよりかはいっそ仕掛けを全て作動させた上で避けるなりいなすなりすればいいのではないだろうか。

 

「整いました」

「聞こうじゃないの」

「まずは…『十枚の窓(Windows 10)』」

「何これ」

「入った入った」

「分かったから押さないでよ…狭いわね…」

「そして…『七枚の窓(Windows 7)』」

「塞がっちゃった」

「十二面体の出来上がり」

 

 同じ大きさの正五角形を12枚組み合わせて出来る正多面体。二十面体よりも枚数が少なくて済み、八面体よりも球体に近い。この中に入って転がすように進めば大抵の物理攻撃は無効化出来るはずだ。

 

「10+7でしょ…5枚多くない?」

「7は強度が低いので3枚重ねです。残り1枚は余り」

「ふーん」

「じゃ、歩いてみてくれ」

「そういうことね…よいしょ」

 

 コロッとひとつの面の分だけ進む。

 

「おー…」

「その調子で頑張れ。因みに形の都合上まっすぐに進むことは出来ない」

「設計ミスでしょ」

「設計通りだ」

「設計段階でミスってるわね…」

「クリアリングよろしく」

「人柱…」

 

 ジグザグしながらなんとか入口方面へ進んでいくミワ。

 

「失礼しまーす…」

 

 敷居を越えたミワが一応中に向かって挨拶をする。が、返事はない。

 

「ちょっと、これ、段差はどうするの?」

「気合いでなんとかしろ」

 

 玄関の敷居程度の段差なら特に問題はないが座敷に上がるような段差になってくると少し工夫が必要になる。段差よりも高い位置にある側面が次の足場になるように回転させればなんとかいけるはずだ。

 

「1階オールクリアよ」

「よーし2階だ」

「階段…手伝ってくれてもいいんだけど」

「致し方なしか」

 

 流石に幅の狭い階段は無理があったか。

 

「支えるだけだからな。あまりこっちに体重を任せるなんてことしないでくれよ」

「努力はするわ」

「せーの」

 

 なんとか階段を登りきる。ミワが入れるように一面一面を大きくしたので全体的に大きくなってしまい結果的に重くなってしまった。流石に疲れる。

 

「しんど…」

「ねえ、何もなさそうだしこれもういいんじゃないかしら?」

「折角だし全部これでいこうや」

「遊んでない?」

「遊んでない」

 

 まず鎖鎌に折檻された部屋には何も残っていなかった。そして最後に『八枚の窓』で仕切った部屋を確認する。

 

「元気かな」

「犯人は現場に戻る…」

「感動の再開だよ」

「向こうからすれば悪夢そのものよ」

「そうかもしれない」

 

 部屋の外から見る限り、『八枚の窓』は展開されている。壊された形跡も感じないのでまだサクはきちんと囚われているはずだ。

 

「こんにちは~…」

 

 先にミワが入る。

 

「誰か居るか?」

「えっと、女の子が一人」

「だけか?」

「見えるのはね」

「どんな感じだ?」

「人生に絶望したような顔してるわね」

「可哀想に」

「半日以上もあそこにいるの?」

「そうなるな」

「虐待…」

「まだ監禁程度だろ」

「十分アウトよ」

「状況的には今のミワも一緒だからな。狭い分呼吸もより細くなる」

「なんてことしてくれたのよ…って食事やトイレ以前にそれってヤバくない?」

「広いし女児一人だから騒がなきゃ大丈夫だ」

「そろそろ出してあげたら?可哀想よ」

「反省してるといいんだけどな」

 

 まずはミワを十二面体から解放する。結局トラップはなかったので取り越し苦労に終わったわけだが安全の確認は大事だ。

 

「よっ、サク。昨日振りだな」

 

 部屋に入ってサクに挨拶する。眼だけでこっちをチラリと見たが特にそれ以上の反応はない。

 

「チルや他の奴らはどうした?カバンを返してくれたらそれでいいんだが」

「……」

「反省したか?」

「……」

「うーん…」

 

 反応がない。聞こえていない訳ではないと思うのだが。元気がないのか無視しているだけなのか。

 

「ね、出してあげなさいよ。体壊しちゃうわよ」

「解除した途端暴れ出されても困るだろ」

「そんなことしないわよ」

「何でそんなことわかるんだ?」

「私がさせないわ」

「成程」

「私に免じて出してあげて、ね?」

「良かろう」

 

 『八枚の窓』を解除する。もたれていたサクがバタンと倒れるとそこにミワが駆け寄る。

 

「大丈夫?」

「……」

「え?なんて?」

「おしっこ…」

「ああ、そうよね。トヒったら鬼なんだからもう…自分で行ける?運んだげるわ。もう少し我慢なさい」

 

 サクを抱え上げるとミワは1階へ降りていった。

 

「一応ついて行くか…」

 

 ミワを追いかけ1階に降りると丁度サクがトイレに入ったところだった。ミワが扉から少し離れる。急いでトイレの外に回り込むとすぐにサクの頭が窓から出てきた。

 

「よお」

「……」

「うちの、優しいだろ。黙っといてやるから大人しく戻れ。人の好意を無下にするな」

「…なんでわかったの」

「トイレの窓から脱走なんてよくあることだろ」

「……」

 

 サクの頭が引っ込む。

 

「大丈夫だった?そうだ、喉乾いてるでしょ。ただのお水だけど飲みなさい。後おにぎりとお芋もあるから食べれるなら食べるといいわ」

 

 ミワの声が聞こえる。素直に戻ったらしい。ミワが朝ご飯を残したときは昨日のつまみ食いのせいでお腹がいっぱいなのかと思っていたがこういうことだったらしい。つくづくお人好しなやつだ。顔も見たことない相手に対してここまでするとは。そんなミワに怪しまれないように急いで建物の中に戻る。

 

「あ、トヒ。カバンはあった?」

「忘れてた」

「もう…何しに来たと思ってるのよ…」

「見てくる」

 

 見ている暇がなかったのたがら仕方がない。しかしチルが座っていた辺りやサクが出てきた奥の部屋にも見当たらない。まあ当然といえば当然である。窓で部屋を仕切っていた以上、窓を壊すか建物を壊すかしない限り人や物の移動は出来ないのだから。1階に戻って座敷に居るミワとサクの元へ行く。

 

「なかった」

「そう。じゃああの人達を捜さないとねえ…」

「おいサク、心当たりあるだろう?」

「トヒ」

「わかったわかった。こっちは任せるよ」

 

 子を守る母親のようなミワ。半日閉じ込められて何ともなかったサクも間近でこんなものを見せられたら心がすり潰されるのではないだろうか。

 2階に戻ってもう一度よく探す。カバンがないことは分かった。だがチルの通った場所が分からない。壁に損傷や仕掛けがないとなるとチルが移動出来るのは大部屋の1/3と奥の部屋のみ。奥の部屋は姉妹の寝室にでもなっていたらしいが窓がない。手前の大部屋には窓があるがそれはサクが居た真ん中の部分。窓からの脱出ではなさそうだ。なら天井か床か。天井を昨日使われたであろう槍の柄で突いてみる。が、特に浮いたり外れたりということはない。となると残るは床。部屋の真下は今ミワとサクの居るところだが人が通れるような穴はミワが開けたものしかない。

 

「まあ別にどう脱出しようがいいんだけど気味悪いんだよな…」

 

 首を捻りながら1階の部屋に戻るとサクがおにぎりと芋を食べ終えて水を飲んでいるところだった。ミワの奴、普通に秘密道具使ってやがる。

 

「さて、もういいだろ」

「さっきからせわしないわね…」

「昼ご飯食べたいだろ」

「そりゃまあ…」

「サク、こいつ、お前の飯を確保するのに自分の朝ご飯食べてないんだぜ?」

「そんなこと言わなくていいのよ」

「かわりに昼ご飯催促してきたけどな」

「そんなこと言わなくていいのよ!」

「まあ現金を全部お前らに持ってかれたから食べれなかったんだけど」

 

 サクは座って俯いたままこちらに眼を合わせようとはしない。怒られている子供というのはまあだいたい同じ体勢になる。その間何を考えているかというと結構気楽に全然違うことを考えていたりするものだ。

 

「ところでただ米を炊いただけのおにぎりとただふかしただけの芋とただ川から汲んだだけの水は美味かったか?」

「……」

「普段どんだけいい物を食べてるかは知らないが食べ物にありつけてることに感謝は忘れるなよ」

「……」

「因みにミワはつぶ餡派だ」

 

 昨日サクに少しキレてしまったことに関して匂わせる。何が言いたいかは聞いていればちゃんと理解はするだろう。受け入れるかどうかはともかく。

 

「関係なくない?」

「諸般の事情があってな」

「何よそれ」

 

 ミワから突っ込みが入る。その場に居なかった者からすれば何を言っているかは分からないだろう。

 

「…どっちも食べたよ」

「え?」

「……」

「何でそんなしょうもない嘘を…」

「……」

 

 なんとどちらも食べていたらしい。こし餡つぶ餡戦争はここに終結した。そもそも始まっていないが。

 

「トヒを怒らせたかっただけだもん」

「怒りの矛先が思わぬ方向を向いたということか」

「トヒは怒りが乱反射なのよね…」

「元はといえばチルの方を閉じ込めるつもりだったんだよ。でもサクを閉じ込めればチルも下手に出るかなと思ったがそんなことは全くなかったしまあ妹も所詮は駒だったというわけだ」

「そんなことない!」

「なくはないだろう。お前達がやってたことだって一番最初に捕まるのは多分お前だぞ?逆にチルは証拠不十分だ。もしかしたらお前を時間稼ぎにトンズラこいてるかもしれない。今だってほら、誰も残さずにどっか行っちゃっただろ」

「……」

「……」

 

 ミワまで黙ってしまった。別にそこまでの迫力はないと思うんだが。

 

「ほ、ほら、妹同士仲良くしましょ…」

「言うこと無いなら無理に言わなくていいぞ」

「沈黙に耐えれない性なのよ」

「ミワ、ちょっと1階に何かあるか探してみてくれないか?2階はもう見たから」

「え、ええ…わかったわ」

 

 僅か2ターンの沈黙に耐えられないのは少し今後が心配になる。適当な理由を付けてミワをサクから離しサクの心が痛まないようにする。どちらかといえば傷つくのはミワかもしれないが。

 

「でだ」

「……」

「さっきはどこに行こうとしてたんだ?目的もなしにただ逃げ出したんじゃないだろう?合流地点か次の拠点の場所くらいは聞いてるハズだ」

「……」

「正直今のところサクだけがあいつらの背中を追いかける最後の手がかりなんだよな」

「……」

「仕方ない。お前だけ奉行に引き渡して地道に探すしかないか」

「……」

「……」

「……」

「……」

「…この街にはもういないと思う」

「そうか、どこに行ったんだ」

「……」

「この際だ。言っちまえ」

「…南にある港町」

「ここから南の港町…横浜辺りか…」

 

 街の外に出られてしまっては地道に探すどころの話ではなくなってくる。全国指名手配でもしないと足取りを掴むのは難しいだろう。サクが言ってるだけかもしれないが信じるしか道はない。

 

「因みにいつ帰ってくるとか言ってたか?」

 

 フルフルと首を振るサク。

 

「まあ当分は帰ってこないか。サクはどうするんだ?さっき一人で行こうとしてたけど流石に無理があるだろう」

「私は失敗したから、戻りたかったら自分の力で戻るしかないの」

「失敗ねえ…元はと言えば標的にしたのが失敗だったと思うけど…ああ、最初に話しかけてきたところからか」

「獲物の見極めから誘導までが私の仕事。見極めを失敗して誘導に失敗して、その後はイライラして対応を間違えた。見捨てられて当然」

「まあそれでも可愛い妹なんだろ。ちゃんと行先を教えてくれたんだから」

「私に教えたんじゃない。私がトヒに言うのを見越してただけ。それにチルは私の本当の姉じゃない」

「そうなのか」

「トヒに話した両親が火事で死んじゃったのは本当。チルとはそこで会ったの。チルもあの頃はただの女の子だったと思う」

「ふーん…ところでサク。大分と雰囲気が違うように感じるんだが」

「これが素の私。獲物の前ではあどけない少女のフリをするし、チル達の前では自由気ままな妹役を演じてるだけ。こう見えて12だし」

「え…7,8か多めに見積もっても10だと思ってた」

「声と背丈のせいかもね。チルは逆にああ見えて16」

「人は見かけによらないなあ」

 

 食事情が違うので一概に比較は出来ないが一般的に女子の第二次成長は早ければ12になる頃には終わっている。それに伴い心の方、つまり思考も大人びたものになっていくものなのだが、サクは身体の方はあまり成長しなかったらしい。何故か親しみを覚える。

 

「じゃあ一緒に行くか?」

「…どうして?」

「どうしてって…同じ方向に行くんだし」

「トヒは私に何とも思わないの?」

「うーん…昨日は何だこのガキって思ってたけど今は別に」

「同情でもした?」

「いいや、そんなことは」

「申し出はありがたいけど私は這いつくばってでも一人で行かないといけない。でないとあそこには戻れない。これは自分の中でのケジメ」

「あ、そう…まあいいけど。そもそも、戻らないといけないのか?サク程しっかりしてたらどこなと引く手はあると思うけどな」

「もしトヒが雇う側だったとして私を見て雇おうと思う?」

「思わん」

「そういうこと。こんな子供に何が出来るんだよって話。雇われたとしても玩具にされるのが目に見えてるもの」

「世知辛いなあ…」

「話し過ぎたかな。じゃ、そういうことだから私は行くね」

「あ、待て待て」

「何?」

「腕輪、返してくれ」

「そうだった…はい。私にはまだ大きかったかな」

「2年もすれば似合うようになるさ」

「そうだといいけど。そうだ、神見習いの方に伝言頼むよ」

「良かろう」

「ご飯美味しかったありがとうって」

「わかった」

「お願いね。それとトヒも」

「ん?」

「叩いてごめんね」

「気にするな。女児に叩かれたところで痛くも痒くもない」

「結構怒ってたくせに。じゃあ行くよ。さよなら」

 

 窓を開けてそのまま飛び出していくサク。すぐに足音は遠くなり聞こえなくなった。

 

「ふう…」

 

 半日ぶりに戻ってきた腕輪。特にヒビや欠けたところはなさそうだ。

 

「ミワ〜」

「…なに?」

「なんで泣いてんだよ」

「だって、だってぇ…」

「盗み聞きは良くないぞ」

「違うもん、聞こえてきただけだもん」

「一応預かった伝言だが…ご飯美味しかったありがとうだってよ」

「そんな大したものじゃないのに…」

「だから泣くなって」

 

 どこにそこまで感動するようなことがあったのか。しばらくミワが落ち着くのを待つ。

 

「さて、どこから聞いてたかは知らんが、次は南に向かうことになりました。質問のある方はどうぞ」

「はい」

「はいミワさん」

「お金はどうするの?」

「そうなんだよなあ…」

 

 現在、現金はゼロ。ミワのキャッシュレス札に精々3~4銀。路銀としては心許ないどころか準備費用だけで吹っ飛ぶ額だ。

 

「はい」

「はいミワさん」

「荷物はどうやって運ぶの?」

「そうなんだよなあ…」

 

 今、宿泊地には色々な荷物がある。まず現実世界から持ってきた道具。それに米などの食料、塩や醤油などの調味料。カバンがない中それらを全て持って移動するのは相当キツい。

 

「はい」

「はいミワさん」

「港でしょ?海でしょ?水着は?」

「そもそも横浜に海水浴をするようなところなんてないだろう」

「チッチッチ…横浜にはなくても少し離れたところにいいとこがあるのよ」

「どのみち今の時期に入ったら凍え死ぬぞ」

「一度海水浴ってのをしてみたかったんだけどね」

「海水浴は置いといて、結構大きな問題があるな」

「お金と荷運びね…どっちも解決する方法がなくはないんだけど」

「思い当たるのが1つあるんだがそれじゃないだろうな?」

「多分それよ」

「却下」

「私もやる気はないけどね」

 

 荷物を売ってお金を得る。そうすれば一挙両得なお話になるのだがもちろんそういうわけにはいかない。

 

「荷物だけで言うならリヤカーがあれば苦労はしないんだがな」

「どうせ引くのは私でしょ」

「軽いもんだろ」

「重さは変わんないわよ」

「ただリヤカーを引く神ってのもあんまり格好が付かないよなあ」

「K村?」

「木村さんも加藤さんも関係ない」

「そもそもそんなものどこから持ってくるのよ。買うにしてもお金がないのよ」

「作れないかな」

「流石に無理ね」

「そうか…結局世の中は金か…」

「まあそういうことね」

 

 資金集めをするのであればまたショウをすればいいのだが、初開催で上手くいったからと言って何度も上手いこといくとは限らない。かといって他に稼ぐ方法が思いつかない。

 

「また窓を割るしかないのかしらね」

「それなんだがあんまり気が進まないんだよ」

「どうしてよ。皆面白がって見てたじゃない」

「大したことしてないのに人からお金を貰うなんて心が痛むじゃないか」

「トヒ、それは違うわよ」

「何が違うんだよ」

「その人にとっては大したことないことでも別の人にとってそれは凄いことなの。だからそれを見てお金を払う価値があると感じた人からのお金はありがたく受け取ればいいのよ」

「努力すれば出来るようになることならまだしもあれは常人には無理だろ」

「私達は神見習いと巫女見習いっていう特別な存在なんだから真似したら出来るようなことしても意味無いじゃない。そんなんだったらみんな頑張って神になろうとするわよ」

「うーん…そうなのかなあ」

「やるなら前のとは違ったことしないとね。いくら凄くても毎回同じ演目だと飽きちゃうでしょ」

 

 以前考えたプログラムは精々5~10分で終わるようなものだ。ボリュームが多ければいいというものではないが短過ぎても面白くない。

 

「ま、それはおいおい考えるとしてだな」

「先にお昼にしましょうよ。もうお腹空いて仕方ないのよ」

「武士は食わねど痩せ我慢…」

「武士じゃないもん」

「現金じゃなくてもいける店、見つけたのか?」

「さっき台所でちょっとだけ食べれるものを見つけたの。当分帰ってこないんでしょ?もったいないから腐る前に食べちゃいましょう」

「他人の家の台所にあるもの勝手に食うのか…?」

「もうここは勝手知ったる我が家みたいなものよ」

「えー…」

「ほら、某ゲームでも勝手に村人の家に入ってタンスあけたりゴミ箱覗いたり勝手にベッド使ったりしてるでしょ。それと一緒よ」

「不法侵入と窃盗の罪で逮捕する。余罪は署で聞かせて貰う」

「余罪なんてないわよ!」

「不法侵入と窃盗は認めるんだな…」

「勇者だから多少のことは許されてるんじゃない?」

「金は少ないが足りない分は民から受け取れってか」

「酷い話に聞こえてきたわ」

「だろ、だから他人の家のものを勝手に食べるんじゃない」

「もったいない…」

「そろそろ行くか。もう用はあらかた済んだし」

「そうね…」

 

 ミワも長い後ろ髪が引っ張られながら渋々と外に出る。まさか既に居なくなっているとは思わなかったので想定よりさっさと済んでしまったためまだ昼前だ。昼ご飯にはちょうどいい時間なのだが。

 

「結局収穫なしね」

「次の行先がわかっただけでも良しとしよう。せめてカバンだけでも置いてって欲しかったけど」

「お金と買ったもの以外に何を入れてたの?」

「傘とかノートとか?なくて困るものじゃないけどあったら便利みたいな。大きいのは全部置いてったし」

「ふーん…ノートねぇ。そうだ…ノート、ノートよ!」

「ノートがなんだよ」

「私のノート!あのお寿司!」

「いや寿司って」

「何食わぬ顔で帰ってったけどどこに隠してたのかしら」

「違うと思うけどなあ…」

 

 そういえばやつら、結局来なかった。明確に場所を教えてなかったし特定出来なかったんだろう。それか上から横から止められたか。来ても何もなかったのでまあいいのだが。

 昼からは予定通りに次の街への情報収集ということでお馴染みの街の西側へと移動する。街の北側や東側も行ってみたいところだが今は別の機会に委ねることにしよう。





2部の終わりで一旦更新止めようと思います。少しずつアクセス増えてるのが惜しいですが無い袖は振れないということで……
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