居候している幼馴染が神様になるというので人生計画を見直すことになりました   作:公序良俗。

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今回の移動距離50mないですね。



作戦会議

「ねえ、トヒ。これからどうするの?」

「まずはミワが動けるようになるまではここで待機だなあ。それからは街を回るも良し、街を出るのも良しだ」

「街を出るって…行く宛てはあるの?」

「ない」

「どうするのよ」

「試練は都合良く降り掛かってくるものらしい。歩いてたら降ってくるんじゃないか」

「雨じゃないんだから…」

「まあまずはこの世界に知るために情報収集だな。今貰ったお金も数日で無くなるから以降は自分で稼がないといけないし」

「お金ねえ…街の外にスライムでも居ないかしら」

「キチンと働いてその対価としてお金を貰うのを覚えた方がいいぞ?ああいう世界はいずれハイパーインフレになるのがオチだ。スライムだけだと食ってけないぞ」

「普通に働くのが嫌だから今ここにいるんでしょ」

「そうだった」

 

 目的を見失いかけているが、本来の目的はミワの自立である。神になるのはその手段であって目的ではないし、今回の試練はその手段のための前準備といったところだ。

 

「暇だったらこの建物を探検してみたらどう?ついでにアナイさんイチオシのチャージもしてきてよ。そんな量のお金、持ち歩くだけで気疲れするわよ」

「そうだな。そうするよ」

「私も色々考えてみるわ」

「じゃあ、しばらく歩いてくる」

「行ってらっしゃ〜い」

 

 キャッシュレス決済の札とお金が入っているという小袋を持って部屋を出る。金額はそうでもないのだが何せ嵩張る。まずはここの受付とやらに行ってみよう。ついでに受付の人と話をして情報を得られるといいのだが。

 部屋の外に出ると恐らく入口であろう方向へ歩いていく。さっきは建物の奥からここまでやってきたのでその反対側へ行けばいいだろう。廊下を歩きながら壁や床、天井をキョロキョロと見渡す。正直、思っていたよりもずっと近代的だ。実家も大分と古かったがよりほんの少し前世代のような感じである。そもそもさっきの部屋が現代的過ぎたのだ。まあアナイさんも急に昔の暮らしをしろと言われてもやりにくいだろう。

 受付には直ぐに着いた。階段を降りるとそこがすでに出入口で受付はすぐ横だった。取り敢えずこの世界でのチャージを体験してみよう。

 

「これの2/3チャージお願いします」

「わかりました。数えるので少し待って下さいね」

「はい」

「銀15ですね。2/3ですと銀貨10になりますのでチャージ分は1割増の銀11になります」

「え、増えるんですか」

「はい、反面現金化の際は1割引となります」

「あ、減るんですか」

「交換手数料という形になります。ですのでチャージした分はキャッシュレスで使い切ることをおすすめ致します」

「なるほど…」

「それでは札をこちらに」

 

 先程貰ったばかりの札を差し出す。受付のおねーさんも同じように札を差し出してきた。よく見ると短辺の片方に札の厚み程の切れ込みが入っている。なるほど、相手の札と組むのか。

 

「それではこちらから銀11の送信を行います。送信中は放さないでくださいね」

「おおお…」

「はい、完了しました」

 

 赤外線通信ばりの感動である。手元の札に銀11と刻印される。

 

「因みにこの辺でこれが使えるとこってあります?」

「そうですね…国都に限りますけど比較的高額な取引を中心に普及してますので、一般以上の宿はだいたいが使えますね」

「だいたい一泊幾らぐらいなんでしょう」

「銀2が相場でしょうか。上宿になると銅50程高くなります。あまりおすすめはしませんが木賃宿だと安いところでは銅30なんてところもあります」

「普通の宿でも結構するんですね…」

「この街は少々物価が高いですから」

「今全財産がここにあるだけなんですけど、隣の国まではどれくらいあれば行けますか」

「西の国境までであれば徒歩で丸三日はかかるので、宿に銀2と食費交通費でこちらも銀2ですかね。北の国境ですと四日程ですのでもう少しかかりますね。国境の街の宿は銀1と銅50くらいだったと思います。また国境を越えるには通行許可証を発行しなければならないのでそちらで銅50必要になります」

「国境を越えるだけで銀6ですか…」

「なので全財産がこれだけとなると少し心許ないですかね…国境を越えてからはお答え致しかねますが、同じくらいは必要かと」

「この国都や国境までで出来る仕事の紹介とかってどこかでやっています?」

「紹介所がありますが単発となると難しいですね。特に女性ですといいものは聞きません」

「そうですか…色々とありがとうございます」

「とんでもない。良い旅を」

 

 受付を離れて元来た道を戻る。アナイの言う通り国都で過ごすなら三日は持つだろうが、各地を回るとなると少々どころか全くと言っていいほど足りない。今日の一日はいいとしても明日からは稼いでいかないと早々に飢えでゲームオーバーになってしまう。冒険初期はお金が足りなくて装備もまともに揃えられず宿屋にすらまともに泊まれない、レベル調整の出来てないRPGと同じ結末は嫌だ。ミワにこのことを伝えるべくアナイの部屋に急ぐ。

 

 ようやく肩と首が回るようになってきたわね…相変わらず下半身が動かないけど…寝転んだままでも見渡せる範囲内のものは観察しておきましょうか。とても高価なものはないけど全体的に統一されていて落ち着き感のある部屋ねえ。本棚には本が、壁には地図が。地図?え、ちょっと待ってよ何なのよこれ。

 

「ミワ、戻ったぞ」

「ちょっとトヒ、大変よ」

「どうした?こっちもちょっと困ったことになっていてな」

「困ったこと?何よ」

「金が足りない」

「3万ゴールドもあるのよ?初期レベルなら何回宿屋に泊まれると思ってるのよ」

「どうやら現実は厳しいようでな。今日の宿代で1/4が吹っ飛ぶ」

「え…」

「そして明日ここを発ったとしても三日後国境で金がなくなる」

「何よそれ…いきなりゲームオーバーじゃない」

「そうだ。『これで装備を整えるとよい』程度の金額しかないということだ」

「そう考えると王様もケチよね。国を救ってくれる勇者に端金よ?」

「王様からすれば何人にも声を掛けてるだろうし、その内の一人だけを優遇とかはしないだろう。そいつが本当に国を救ってくれるのかもわからない上に大金を持ってドロンなんてことも有り得るわけだしさ」

「世知辛いわね…」

「で、ミワの方は何があったんだ?」

「そうなよ、ちょっとこっちに来てちょうだい」

「来た」

「私が向いている方を見てちょうだい」

「見た」

「地図があるでしょ?」

「勝った、ホントだ…なんだこれ」

 

 そこにあった地図にはよく知っている国をカタツムリのように大きく丸めたような形をした地形が描かれていた。地球は円盤状で端まで行くと落ちそうな感じだ。

 

「アマノさん、考えるの面倒だったのかな」

「いやそこじゃないわよ」

「この時代にしてはよく出来た地図だな」

「そこでもないわよ」

「真ん中がでっかいどーだろ」

「そうじゃなくて!いやこれはカスってるのかしら」

「どうしたんだよ」

「異世界転生した感が薄れちゃうじゃない!」

「どうでもいい」

 

 アナイの部屋にかけられていた地図はまさにあちらの世界の国である。ただ、ひとつの大きな島を長い島が海老反りのように囲んでいるような円形状ではあったが。

 

「ん?じゃあ、さっき受付のおねーさんが言ってた国境ってどこになるんだ?まさか都道府県でわけたわけじゃないだろう」

「近付いてよく見てみてよ。地図なら普通境の線が引いてあるはずよ」

「ふむ」

 

 本の虫は地図も守備範囲なようだ。いや、地図の見方くらい知っているが、見ればわかるのと見ずともその知識を使えるとのでは大違いだ。この世界に通ずるかはまた別の問題だが。

 

「あーこれはあれだ、地方で国を分けてる」

「まあこんな狭い土地に47も国があっちゃやってられないでしょうからそこそこ妥当なところね。因みにここはどこかわかった?」

「国都って言ってたしどこかの中心都市だろうな」

「どうせ神都でしょうねえ…ということは恐らく西の国境は箱根かしらね」

「温泉の?」

「そう」

「そりゃ宿も高くなるか」

「北は那須の辺かしら…どのみち山だし何か乗り物ないかしらね…」

「馬とか」

「世話しなきゃダメじゃない」

「いつも世話されてるくせによく言うよ」

「これからは私がトヒを養うのよ」

「なんだ?求婚か?」

「この際いいかもしれないわね…」

「んー保留で」

「断りなさいよ」

 

 しかしこの世界の全体像がいきなり掴めたのはラッキーだった。地図なんて海岸線を歩いてみようと思った暇な人が副産物程度に作ったのだろうとしか思っていたが、そんな人がここにも居たのだろうか。それに一国一試練じゃないとわかった今、急いで隣国へ行く必要もない。暫くはこの国に滞在して資金稼ぎとあわよくば試練との邂逅を目標にしよう。

 

「という訳で明日からは職探しだ」

「えー」

「生きるってのはそれなりに金が要るんだよ。知らなかったろ?」

「生まれてこの方働いたことがない私がまともに働けるわけないじゃないすかやだー」

「おお、ミワよ!死んでしまうとはなさけない!死因は…何?栄養失調による衰弱死?」

「最近分かったそうなんだけど働かずに死ぬより働いて死ぬ人の方が多いらしわよ」

「最近聞いたんだが変死の半分は自殺で処理されるそうだぞ」

「……」

「……」

「どこでそんなこと聞くのよ…」

「ネットニュース」

「ガセでしょ」

「わからんぞ。そもそもここは治外法権だから実世界に戻ってしまえば捕まることもない」

「下手人はお前か!」

「まあ冗談はさておき」

「そもそも仕事なんてあるのかしらね」

「そうなんだよな」

 

 さっきおねーさんから聞いたように一時滞在するだけのような者に仕事の紹介をしてくれるようなところはないだろう。ましてや小娘二人だ。どこに連れてかれるかわかったもんじゃない。

 

「ねえ、トヒ」

「ん、どうした」

「もしも私が神になったら人々からの信仰が必要になるのよね」

「そうだな」

「知らない神様を信仰しようとする人がいるかしら」

「まあ、せめて名前と何の神様でどんな恩恵があるのかハッキリとしないと崇めようがないな」

「そこでよ。まずは名前を売るの」

「ほう」

「神見習いと巫女見習いが各地を回るのはこの世界では常識なんでしょう?だったら堂々と名前を振り撒いて歩けばいいのよ」

「理屈はわかるが、この世界で神になるわけじゃないだろう。こっちで信仰を得ても仕方ないだろう」

「……戻って辛くなったらこっちで暮らすことも考えておかないとね。住民登録もしてあるし…アナイさんの部下として生きていくわ…」

「別にアナイさんは辛くてこっちに居るわけじゃないと思うぞ…」

「トヒも来てくれる?」

「やだよ」

「そんなあ」

「それよりどうやって名前を売るんだ?タスキに名前書いて手振るのか?」

「まあ似たようなものね。路上でライブみたいなことをするのよ。名前は売れるし、運が良ければ日銭も稼げるし」

「なるほど。で、何をするんだ」

「何をするかは全くノープランよ」

「話の根幹から崩れ去ったな」

 

 悪くない話ではある。神見習いとしてのミワの存在を認識してもらい、有名になれば一種の偶像崇拝にもなるだろう。ただ身分を公にすることへの抵抗感が拭いきれない。神ではなくただの神見習い。一般人である。そのくせに神の真似事をしていると受け取られれば各方面からお叱りを受けるかもしれない。しかしやらなければ変わらない。やるか、すぐやるか、だ。

 

「ミワは何か出来るのか?」

「ソーラン節」

「ライブでソーラン節って…なんかこう、もっと芸的なやつはないのか?」

「マジックなら道具があれば出来るわよ」

「あるのか?」

「もちろんないわ」

「だめじゃないか」

「コインマジックは地味だし…やるなら鳩とか出したいじゃない?」

「鳩くらいなら居そうだけどな」

「まあ鳩は出せないんだけどね」

「色々だめだな」

 

 案としては良かったのだが肝心の内容が詰まっていなかった。後出来ることといえば、技術の遅れているこの世界に技術革新をもたらすことだが、流石に怒られそうな気がする。そもそもそんな技術は残念ながら持ち合わせていない。精々日常で使えるライフハック程度だ。

 

「スキルを使った芸なんてどうかしら」

「爆発芸でもするのか?一回で周囲数メートルが吹っ飛ぶぞ」

「その辺は火力の調整次第ね」

「まあそれが出来るなら元手もゼロだし上手くいくかもしれんな」

「でしょでしょ」

「スキルの練習にもなるしいいんじゃないか?必要なものがあるなら揃えるぞ」

「そういえば聞きそびれてたけど、トヒさんのあれば何なのかしら?全然聞いてなかったんだけど?」

「あれこれ考えた結果だ。中々上手くいったと思ってる」

「私としては相談の一つでもして欲しかったんだけど」

「いやなんかミワに話すとめんどくさそうだったし」

「酷い!」

 

 あれを思いついたのは窓をバールのようなもので叩いて割る動画を見ていたときだ。やる予定があるとかそういうのではなく、単に長期間自宅を不在にすることが心配だったからである。見たところで余計に心配になっただけであるが。

 

「とにかく、今日はライブのプログラムを考えよう。明日の午前に練習して午後は本番だ」

「えー、急に忙しいわね…」

「当たり前だ。我々は今、三日間生きるだけの資金しか持ち合わせていない」

「ここにいても国境を目指しても三日なのね」

「滞在して仕事を探すなら金の入りもまだ見込めるが移動してる間は減る一方だしな」

「じゃあ取り敢えずは滞在の方向かしらね…」

「そうだな。そうとなれば当面の拠点探しをしなきゃならんのだが…まだ動けないか?」

「欲を言えばまだ寝てたいけど、そろそろ動きたい欲が勝ってるわね」

「なら出発しようか」

「ここの寝心地も中々よ。宿が取れなかったら今夜はここにしてもいいくらいだわ」

「普通に迷惑だからやめろ」

 

 ミワがノロノロと起き上がっている間にある程度地図を持ってきたノートに写しておく。ノートと鉛筆は弾かれなかったが、消しゴムは弾かれた。割と不便である。因みにこのノート、ミワにどうしても持っていけと言われたスキルノートである。何も書いていないのだが、さっきミワには見せたので書いてもいいかもしれない。こうして黒歴史は生産されるのだろう。

 

「忘れ物はないか?」

「ここでもらったのステータスカードくらいだしお金とチャージする札はトヒが持ってるでしょう?」

「ああ」

「じゃあ大丈夫なんじゃない?そういえばステータスカードはどうなってるのかしら」

「数分で刻印されるって話だからな。見てみろよ」

「どこいれたっけ…」

「左胸の辺りだ」

「トヒが入れてくれたんだっけ…これね」

 

 ミワが胸の内ポケットからトランプくらいの大きさのカードを取り出した。先程アナイから貰った住民登録、もとい個人を証明するカード。

 

「結構しっかりしてるわね」

「再発行とかどこでするんだろうな」

「何も書いてないわね」

「じゃあまだなんだろうな」

「トヒのは?どうなってる?」

「こっちも何も書いてないな…ん?指紋みたいなマークがあるぞ」

「まさかの指紋認証…」

「ふむ」

 

 適当に人差し指を乗せてみる。すると文字が浮かび上がってきた。科学の勝利…ではなく神の御業だろう。

 

「当たりね。何が書いてあるの?」

「名前性別年齢出身…後は発行ナンバーくらいか」

「裏は?」

「裏は…身分?」

「はっきりしてるわね…士農工商ってやつかしら」

「その括りに神官や巫女は入らんぞ。その他枠だ」

「まさかその他って書いてるわけじゃないでしょ」

「その他って書いてある」

「ええ…」

「備考欄に巫女見習いとは書いてある」

「そのまんまね」

「ミワは神見習いか?」

「そうなるのかしらね…指紋認証はここかしら?」

「どうだ?」

「神見習いね」

「そのまんまだな」

「まあこれで身分は保証されたわ。大手を振って歩けるわね」

「逆に変なのに絡まれないといいけどな」

 

 神見習いと巫女見習いが各地を旅をする。アマノらがどういう世界を作ったかは知らないが、これが常識となっているならばそれを狙う輩もいないとは限らない。人攫いなどからすれば格好の餌食だ。

 荷物を背負うと部屋の外に出る。

 

「アナイさん、お世話になりました」

「じゃあまずは宿探しだな」

「そうねえ…出来れば綺麗なところがいいけれど」

「贅沢は言えんがな」

「相場はどれくらいなの?」

「銀2、だいたい4000円くらいだそうだ。上宿になれば銀2と銅50、5000円だ」

「全財産3万円よね?王様よりケチなんじゃない?」

「装備は揃えないんだからいいだろう」

「試練割とかないかしら…」

「交渉次第だな」

 

 受付のおねーさんと目が合ったので軽く会釈をして受付前を通る。これで漸くこちらの世界の土を踏むのだ。

 

「地球は青かった…地球に国境はなかった…」

「早よ行け。実際には青みがかってた程度だし、後から実はあったんだよねって言っちゃってるぞ」

「もう!人類の感動の一歩なのよ」

「はいはい」

「という訳で異世界初上陸よ!」

「なんと言うか…割と発展してるんだな」

 

 行き交う人々、街並みを見ての感想である。部屋から外は見えなかったので内装から推測するしかなかったのだが、ここまでとは思っていなかった。





先程サブタイトル見て驚きました。2週連続同じって…直しておきます
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