戦[機]絶唱シンフォギア   作:椎名 和白

5 / 8
 寝 て た (最低)

最後の方は脳死状態で書いてたので、多分後日改稿入ります

一応は完成したので、出しておきます


♯5 なお聞こえる深淵の音から

 

 

 

 

「ふむ...失敗したと」

 

 どこかにあるボロボロの家屋らしき建物跡

 そこに風鳴 尾雛はいた

 

「はい...」

 

「シンフォギア装者とイマージュ1人、難しいミッションだったが、お前ならできると思っていたんだがな」

 

「すみません...」

 

 一方的にガタイの良い男から非難され続ける尾雛

 

「まだ、天羽々斬には適合しないか」

 

「......はい」

 

「天羽々斬を継ぐ風鳴家として生を受けたならば、あんな覚悟もない者たちに引けを取ってはならん。お前は女とは言え、そのお陰でシンフォギア装者となり得る可能性がある......早く、適合しなさい」

 

「けど親父、私と天羽々斬の適合係数は......」

 

「関係ない」

 

 尾雛の反論も聞き入れず、彼女をその場に残し何かを取りに行く男

 

 尾雛は一瞬顔を恐怖に染めるが、すぐに諦めたような顔へと戻った

 

「こちらに来い、尾雛」

 

 男は手に持っているLiNKERを尾雛の首元に押し付けると、躊躇いなく中のモノを注入した

 

「......」

 

 一本分打ち終え、近くから更にもう二本取り出し、打ち込む

 

「ぎっ...うぁ...あぁっ」

 

 尾雛が苦しみ出しても打ち込む手を止めず、男から離れようと抵抗する尾雛の頭を掴みその場に固定する

 

「やめっ...て......」

 

 3本目を打ち終わり男が頭を離した瞬間、膝から床に崩れ落ちてしまう尾雛

 

 息が荒くなり、頭の中がぐるぐる回っている様な感覚に陥る

 男はそんな尾雛に興味が無いような視線を向けながらその場を去ろうとした

 

「何処に...」

 

「LiNKERの補充だ。お前がまだ適合しない所為で最近消費が激しくてな」

 

「......すみません...」

 

「ふん」

 

 やがて男が見えなくなり、尾雛はくらくらする頭を抑えながら

 大丈夫、我慢して。と自分に言い聞かせるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「完全聖遺物ミュルグレス.........2年前のあの日、ノイズの襲撃に遭い多数の人間が犠牲になったあの事件で紛失していたとされる剣......今は私の手の内にあるとはいえ、このままでは起動はできない。起動までの時間稼ぎに尾雛を使ってはいるが、あいつのフォニックゲインでは剣の起動は不可能...やはり尾雛のシンフォギア適合を急ぐ必要があるな...計画に必要な要素が致命的に欠けている......」

 

 男が言う計画とは何か、何故紛失したとされる完全聖遺物を持っているのか

 密かに蠢く陰謀には、まだ謎が多い

 

 

 

 

 

 

 

 

    ♯5 なお聞こえる深淵の音から

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと考えたことがある

 

 自分たちの言う幼馴染という関係は、いつまで続くのだろう。と

 

 別に嫌じゃない、寧ろ心地良い

 

 だからこそ、不安になるのだ

 

 

 

 

 

 

「おーい、伊織? ねぇー伊織ってばー」

 

「えっ、あ、あぁ、どうしたの?」

 

「どうしたのじゃなくて、伊織の方こそ最近どうしたの?」

 

 最近伊織の反応が鈍い

 いつもならすぐに返事を返してくれるのだが、ここ数日常に上の空で何かを考えているようだった

 

「あー......ちょっと考え事をね...」

 

「考え事......何か私にできることがあればやるよ!」

 

「あっ......うん」

 

 何かを聞いても曖昧な返事しか返ってこない

 琴音は少し悩んだ後、座っていたソファを立ち上がった

 

「どうしたの、琴音」

 

「いや、ちょっと雪音先輩のところに......」

 

「......また...」

 

「...伊織、本当に大丈夫? やっぱり私ここに居ようか?」

 

 琴音は伊織の様子を見て心配になりもう一度声をかけるが、伊織は複雑な表情でそれを拒絶する

 

「そっか......何かあったら言ってね?」

 

 そう言い残して、琴音は外に出る

 

 

 しばらく沈黙が続くと、部屋の奥の扉から穂花が顔を出した

 

「兄さん?」

 

「あ、穂花ちゃん。どうしたの」

 

「......最近の兄さん、元気ない。私がお姉ちゃんのこと言った時からだから、私のせいかなって...」

 

「いや、そんなことないよ。ただ、自分の感情がちょっとわからなくなっただけ」

 

「...自分の気持ちがわからない時は声に出して言ってみたら良いと思う。案外簡単に出てくることもある」

 

 伊織はしばらく沈黙しつつ、穂花を自分の方に招いて頭を撫で始めた

 

「穂花ちゃんは僕よりよっぽど大人だね...」

 

「頭を撫でられて喜ぶくらいじゃ全然大人じゃないよ」 

 

「そんなことない。好きなことは人それぞれだよ」

 

 やがて穂花の頭から手を離すと、穂花の手を掴んで言った

 

「少し...散歩しない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...っていうことなんです......」

 

 場所は変わってカイリの部屋

 伊織の様子が心配になった琴音は、その相談相手によりにもよってカイリを選んでいた

 

「...難しいですね......小日向さんが何を抱えているのか、正確には分かりませんが、もしかしたら最近の立花さんの行動に不安があるのではないでしょうか?」

 

「私の行動に不安?」

 

「仲の良い幼馴染が突然誰かに呼び出されたと思ったら、門限を超えても帰ってこない、しかも毎回少し怪我をしているとなれば、不安になるのが普通ではないでしょうか」

 

 確かに、と琴音は思う

 自分をその状況に置いて見ても、伊織のことを心配になる自信がある

 

「でも、なんで教えてくれないのかなぁ...」

 

「そこは......もしかしたら、意地なのかもしれませんね」

 

「意地...ですか?」

 

「何か、心当たりがあるのでは?」

 

「心当たり......伊織が私に......?」

 

「もしかしたら、逆に貴女が小日向さんを意地にさせるような原因を与えたのかも」

 

 今までの自分の発言を思い出す

 

「......何かを隠す.........秘密......?......私が.........あぁっ!?」

 

 一つ、思い当たった

 

 

 

 

『今琴音が持ってるものは、僕には背負えないもの?』

 

 

『それは......言えない』

 

『そう......』

 

 

 

 

 

 琴音は机に頭を軽く打ち付ける

 

「私の所為...かぁ......」

 

「気づいたみたいですね」

 

「......雪音先輩...」

 

 琴音は顔を上げてカイリの方を向く

 

「私、伊織に今の私のこと言いたいです」

 

「...でもそれは、カーラさんや椿さんから禁止されてることですが」

 

「それでも、多分このままだったら仲直りなんて出来ないと思うんです。カーラさんたちもきっと、説得すれば許してくれる......筈!」

 

「...そうですか.........」

 

 カイリは一度席を立ち、琴音を連れて隣の部屋の扉までやってきた

 

 

「ニーナ? ちょっとこっちに来て欲しいのだけど」

 

「ん? どしたん」

 

 中から出てきたニーナが琴音を見て「久しぶりー」と声をかける

 

「ニーナ、私が何をしているかは、知っているでしょう?」

 

「あーうん、S.O.N.G.が編成してるSYNの部隊長でしょ」

 

 ニーナが当然の様に言い放った言葉に、琴音は驚愕する

 

「ニーナさんも関係者だったんですか!?」

 

「いいや違うよ、私はただの一般人。カイリが教えてくれたの」

 

「えっ!? でもカーラさんたちが秘密だって...!」

 

「ふふっ、意地悪してごめんなさいね、通すべき書類を通せば、一部の人間になら公開しても良いことになってるの。家族とかに秘密だったら流石に難しいでしょう?」

 

 

「なんだぁ......」

 

「書類は私が用意するので、一緒にやってみましょう。そうすれば、小日向さんとの問題も解決するのでは?」

 

 

「うーん......」

 

 解決の糸口が見つかりそうだというのに、琴音の表情は晴れない

 

「どうしました?」

 

「いや...伊織の様子が変なのは......きっとこれだけじゃない気がするんですよね......」

 

「どうしてそう思うんです?」

 

「......勘です」

 

 琴音は顔を俯かせ思案する

 そう思う確かな理由こそないが、伊織に関しての勘だけは鋭い琴音は不安を募らせる

 

 そして

 

『......gggggggggggg』

 

「うわっ!? ビックリした...!」

 

「これは...緊急通信ですね」

 

「とりあえず開きますか...」

 

 耳障りな音を出し続ける端末を手に取り、その文面を見る

 

 

『突然なのだけれど、とある聖遺物を研究所に輸送する際の護衛を是非シンフォギア装者に、と押し付けられてしまって......貴女が良いのなら、この場所に来てくれるかしら。もし来てくれるなら椿を同行させるけど、殆どが認識のない人だから無理にとは言わないわ。返信待ってます   カーラ』

 

 

「これ......」

 

「これは......暗に強制されていますね...」

 

 通達された文面を険しい顔をして睨むカイリ

 

「え、でも無理強いはしないって書いてありますけど」

 

「恐らく、断ったら鬱陶しく粘着してくると思います。上は、失敗した場合の責任をシンフォギア、というよりS.O.N.G.になすりつけるために貴女を呼ぶのだと思いますが......どうしますか」

 

「.........詳しい事はわかりませんけど、兎に角これを断ったらめんどくさくなるのは分かりました...行きます。失敗しなければいいんでしょ、もしそれが無理でも、自分ができることを頑張るだけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃

 

 

「はふぅ......」

 

 

 

「...あのー......」

 

 琴音が聖遺物輸送の護衛の件を頼まれていた時、伊織と穂花は何故か町中で行き倒れている少女を発見していた

 

「今の時代で行き倒れる人、初めて見たよ。大丈夫かな」

 

「これは流石に僕も初めてだよ......この状態で何分放置されてるんだろう......」

 

 周りの喧騒に阻まれて、行き倒れてる少女とそれに構う伊織たちを見ている者は少ない

 このままじゃ拉致が開かないと、救急車を呼ぼうとした時

 

「......ぁ......あ.........ごはん.........」

 

「ごはん...?」

 

「起きてたんだ。大丈夫? お腹すいたの?」

 

 

「助け...て.........」

 

 助けを求める少女が余りにも不憫だったため、伊織と穂花は近くにあるファミレスに行き、少女の救出ついでに昼食を取ることにした

 

 

「はむっ、むぐむぐ......ん〜!」

 

(美味しそうに食べるなぁ...)

 

(年上に言うのは変だけど...小動物に似てる)

 

 伊織が肩を貸して少女の移動を補助し、やっとのことでファミレスについた途端、少女ははっきりと目を覚まして今いる場所に困惑していた

 しかし二人が奢ってくれると分かると、少し躊躇いながらも軽食を注文し、美味しそうに頬張り始めた

 

「ねぇ君、どうしてあんな所で倒れてたの?」

 

「むぐむぐ......んっ.........それは...なんというか、深い事情がある...んです」

 

 少女は持っていた食べかけのカツサンドを皿に置いて、二人に頭を下げる

 

「まずは、助けてくれてありがとう...ございます。私の名前は蒼井 美幸。対価については、命を救って貰ったので身体を差し出せと言われても文句は言いません。好きにお願いします」

 

「はっ...?」

 

「......?」

 

 突然少女が言い出したのは自分を差し出すという趣旨の言葉

 ただの強目な被害妄想だったら良かったのだが少女の目がその本気を物語っている

 

「......別に良いよ。ただ僕の自己満足でやった事だし」

 

「いいえ。タダほど怖いものは無いので何かしらの要求をお願いします。貸し借りを放置し続けると、やがて破滅を呼ぶことにな...りますので」

 

 特殊な事情が感じられる物言いに、伊織と穂花は顔を見合わせて相談し始める

 

「どうする?...引き下がってくれそうに無いけど......」

 

「.........兄さん、ここは私に任せてくれる?」

 

「何か案があるの?」

 

「変に解決に持っていくより、素直に要求を上げた方がスッキリ終わると思うの。だから、少し私に任せてくれない?」

 

「うーん、別に僕に案はないから良いよ」

 

 穂花は伊織から顔を離すと、美幸に顔を向けて言う

 

「あのさ。次からで良いから、食べ物を奢った時、私の遊び相手になってくれないかな」

 

「遊び相手...?」

 

「うん。見る限り蒼井さんは私より年上でしょう? クラスで一緒に遊ぶ友達も居ないし、私も兄さんたちが帰ってくるまで暇だから、お願いして良いかな?」

 

「...そんなので良いなら、いくらでも」

 

 今ここに、二人の少女の関係が確立された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......来たわね、琴音ちゃん」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 場面は戻り、琴音は聖遺物輸送の護衛の為、政府が管理している研究所に来ていた

 

「態々この警備を襲撃する人は居ないと思うけど、一応上からの命令だから、無視するわけには行かなかったのよ。ごめんなさいね」

 

「いえ、謝られる事なんてないですよ!」

 

 周囲を見渡すと、確かにSYNとは違う装備をした兵士たちが見えた

 それぞれが琴音に視線を向けており、値踏みする様な目線を向けてくる人もいれば単なる好奇心を含む好意的な視線もある

 注目を受けることには慣れていても、このようなピリピリした雰囲気に慣れていない琴音は居心地悪そうにそわそわしていた

 

「大丈夫、多分30分程度の仕事だから、すぐに終わるわよ」

 

「はい。分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 強固な輸送用トラックに積まれた謎の聖遺物を守る為、琴音はトラックを取り囲む車の一台に乗らされていた

 乗らされたというのは正しくないが、琴音からしたらそんな気分なのだろう

 

「うぅ......肩身が狭い...」

 

「すいませんね、上がどうしてもシンフォギア装者をって言うものですから」

 

 そう言いながら助手席に座っている男は、無表情のまま椿に話しかけてくる

 

「椿さんも、付き合わせてしまってすいません」

 

「いいや、今回は琴音ちゃんの付き添いだから。あんまり関係ないわよ、だから雄二くんも気にしないで」

 

「すみません、椿さん」

 

 雄二と言われた男は、椿と大学時代友人だったらしく

 二人の間には、決して悪くない雰囲気が流れていた

 

「ほえー、椿さんも青春してるじゃないですか」

 

「んー? 少女の癖に言うじゃなーい」

 

「自分と椿さんはそう言う関係じゃないですよ......」

 

 車内の空気が和やかになりかけていた時

 それは起こった

 

 

 

 

『前方に人影を確認、各自警戒にあたれ』

 

 車内を緊張感が包む

 

「まさか尾雛ちゃんが...」

 

「その可能性は十分にあるわね......」

 

 全ての車両が一度停止し、雄二が自分の得物であるボルトアクション型の対ノイズライフルを持って外へ出る

 

「まず自分が見てきますので、もしもの時は立花さん、お願いします」

 

「わかりました...!」

 

 

 

 

「......何故、自分が前衛なのですか?」

 

「命令だ。私たちにも考えがある」

 

「...分かりました」

 

(まぁ、シンフォギアが相手でない限り、近接戦闘でもなんとかなるか......)

 

 雄二はそんなことを考える。数度ノイズと戦った経験はあるが、琴音が纏うシンフォギアの様なスーツとは経験がない雄二は、今回の敵に限り、特殊な技術を持っていないことを祈った

 

 しかしそんな願いも届かず

 

 

「ぐぁあぁぁ!?」

 

「ッ!」

 

 爆音と共に悲鳴

 雄二がそちらの方を向いた時、1人の隊員がこちらに飛んでくるのが見えた

 

「チッ、おい無事か!?」

 

 近くに墜落した隊員の安否を確認

 意識はないが脈拍が正常なことを確認すると雄二はライフルを構え、爆風目掛けてサイトを覗く

 

「......おい、こりゃ何かの冗談か...?」

 

 爆風が晴れ、雄二がまず目にした物は

 

「...デカい壁......いつに間にこんな...」

 

「悪いな。剣なんだよ、これは」

 

 雄二がビル群並みの大きな壁、もとい変形したイマージュ『天羽々斬』の上を見上げると、そこには1人の少女、尾雛が拳銃を構えて自分を見下ろしていた

 

「誰だ...!」

 

 尾雛は雄二の問いには答えずそのまま撃ち下ろしてくる

 

「くッ...!」

 

 護衛対象である聖遺物を運んでいるトラックから気をそらそうと、雄二はライフルの引き金を引く

 

「......!」

 

 今度は尾雛が驚く番だった

 撃ち出された弾丸は少女の髪を巻き込んで頬を擦った

 雄二から尾雛までは少なくとも60メートルは離れており、肉眼でもギリギリ見える程度

 

 なのにも関わらず、この男は倍率スコープを装着せずに頭部スレスレを撃ち抜いて見せた

 この離れ業こそが、雄二がこのボルトアクションライフルを握っている理由の一つだ

 

 しかし、それでも地形的にも不利なのには変わらず、さらに尾雛は遠距離戦での不利を悟ったのか、壁のような剣を元の大きさに戻し、切り掛かってきた

 

「クソっ......呼ぶしかないってのか...っ」

 

 正直、いつもの雄二ならこの程度の剣技は対応できる

 しかし今は十分な装備も準備も整っていないため、近距離戦ではただの一般兵同様だった

 

 今の雄二は尾雛の間合い

 あと数瞬でその胴が天羽々斬に斬られようとした、その時

 

 

「後は頼みますよ、立花さん...!」

 

「りゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 雄二の呼び出しが届いた琴音がガングニールを纏い、尾雛に突っ込んだ

 

「クッ!......はぁっ!!」

 

 その突進攻撃そまたも天羽々斬の腹で受け止めた尾雛は一度一気に距離を取り、その剣に青いエネルギーを蓄積させた

 

「はッ!」

 

【蒼ノ一閃】

 

 琴音に向かって次々に襲いかかってくる青い斬撃

 背後に輸送台がある関係上、琴音はその斬撃を腕で弾くしか道は無く、対応だけで精一杯だった

 

 

 

 

 暫くこの押収が続き、琴音が集中力を切らしかけた時

 

 『ガコッ』

 

「しまっ、トラックが!!」

 

 斬撃の一つがトラックへとあたり、その部分が深く凹む

 

 『ガン!ガン!......ガン!!』

 

 そこからペースを崩され、斬撃が次々と当たるようになってしまい、遂には

 

 

『ガァン!!!』

 

「......!やめろっ!!」

 

 破壊された

 正確には、穴が空いたと言ったほうが正しい。集中的に攻撃され続けた部位が遂にその威力に耐えられなくなり、崩壊したのだ

 

「聖遺物が......って...これ、雪音先輩が持ってるペンダント...?」

 

 慌ててトラックに近づき、聖遺物の無事を確認しようとする琴音

 しかしそこで琴音が見たのは、剣でも、弓でも、装飾品でも無く

 カイリが持っていたあのペンダントに似た形をした結晶だった

 

「でも、色が違う...青い?」

 

「それを寄越せ!!」

 

 尾雛がペンダントを掴もうと手を伸ばす

 

 慌てた琴音がペンダントを掴み、そのまま伸ばされた尾雛の手を掴む

 

「尾雛ちゃん! なんでこんなことをするの!?」

 

「...知らない! 母さんとの約束の為に、言われたことをやってるだけだ!」

 

「うっ...!」

 

 掴んだ手を逆に引き寄せられ、首元に剣を添えられた琴音はなんとかその状況を脱出しようと、思考を巡らせる

 

 そして

 

「っ! 一か八か...!」

 

 尾雛の手を掴んでいる手とは逆、ペンダントを握っている手に力を込め、思考で命じる

 

(武器に...!)

 

 瞬間、辺りを蒼い電撃が包んだ

 

「な、なにこれ!?」

 

 琴音の身長ほどある一振りの蒼い槍となったペンダントは、自身を持つ者を侵食するように、琴音のアームドギアを蒼く染めていく

 

『琴音ちゃん!』

 

「が、ガングニールさん!?」

 

『天羽々斬さんと話をつけてきた。琴音ちゃん、やっちゃって!』

 

「でも、この槍と腕、どうすれば!?」

 

 槍を持つ腕は、今なお侵食されて続けており、琴音はその光景を見てなんとも言えない焦りを覚えていた

 

『大丈夫、私に任せて、投げて!!!』

 

「独り言か、余裕だな!」

 

『早く!!』

 

「う、やぁぁぁぁぁ!」

 

 琴音はガングニールに急かされつつも槍を投擲、槍は雷鳴を轟かせながら真っ直ぐに飛んでいく

 速度はさることながら、威力も申し分ない。普通に投擲しても尾雛の隙を作る程度には役に立つだろう

 しかし、この槍の軌道は、そのままでは終わらなかった

 

 

『はぁっ........』

 

 ガングニールが息を吸い込む音が聞こえる

 おそらく気分的な物だと思われるが、次に続く歌で、琴音の中の全ての無駄な思考が落とされた

 

 

 

 

 

 

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal』

 

 美しい歌

 その歌の一音一音に想いが込められ、琴音が纏うシンフォギアの力を増強させていく

 

『Emustolronzen fine el baral zizzl』

 

「なにっ!?」

 

 それと同時に槍は軌道を変え、再度尾雛へと疾る

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal』

 

 蒼い雷を纏い迫る槍を剣で受け流す尾雛を見つつ、琴音は青く染まったその拳を開き、前へと突き出す

 

『Emustolronzen fine el zizzl』

 

 最終的に槍は琴音の掌へと舞い戻り、周囲へ電撃を撒き散らす

 

 圧倒的な殲滅力

 このままいけば、尾雛にも勝てる

 

 そう、思った時だった

 

「......あれ...?」

 

 琴音の身体は意思に反して傾き、意識を手放してしまったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...琴音ちゃん、しっかり!」

 

「.........あ...」

 

 目を覚ました琴音は、周りの喧騒が聞こえる中、体制を起こして目を見開いた

 

「聖遺物と、尾雛ちゃんは!?」

 

「それが......」

 

 琴音が倒れた後、尾雛は琴音の手からペンダントに戻った槍を奪い取り、その場を去っていった様だ

 聖遺物の護衛には失敗したが、護衛隊員の被害が最小限だったのは不幸中の幸いだった

 

「......ごめんなさい。私のせいで、こんな......失敗しないって、言ったのに......」

 

 責任感を感じている琴音に向かって、椿は背中に手を添えて言う

 

「貴女が気に病む事はないわ。全部...貴女に任せっきりだった私たちが悪いのよ...」

 

 そう言う椿の顔は、悔しそうで、後悔と罪悪感が見えた

 

 ふと自分の目の前を見る琴音

 

 そこには、雷が横向きに疾ったような焦げ跡が大量に残っていた

 

 




すれ違いは、僅かな隙間から始まり、やがて大きな溝になっていく
あの時の歌が、歴史に埋もれた戦姫の歌だとして
今の彼女は、あの日の言葉が全て、歪んでいても全て

♯8 想いの行方は

求めるのも諦め、ただひたすらに閉じこもる
だけれど彼女は諦めない。本当の思いを届ける為に


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