翌朝。理太郎の件が無事に解決されたとして、Pastel*Palletesもホテルの一室から出て、他のスタッフと共にレストランでモーニングを取っていた。
『9人の尊い命を奪ったのは、俳優の脛梶理太郎容疑者で、警察は現在も行方を追っています…』
ニュースを見ていたが、理太郎の顔写真と昨日の京都の惨劇が映し出されていた。
彩「ま、まさかあの人が…」
日菜「ちょ、ちょっと怖いかも…」
麻弥「怖いなんてもんじゃないですよ! 下手したらジブン達が…」
麻弥がそう言うと、イヴは涙目で隣にいた麻弥に抱き着いた。そんな中、千聖は重い顔をして俯いていた。
日菜「…千聖ちゃん?」
千聖「え? あ、ど、どうしたの?」
日菜に聞かれて千聖が困惑した。
日菜「どうしたの。考え込んだりして」
彩「ダメだよ日菜ちゃん! 千聖ちゃんだって内心ショックを受けてるかもしれないんだから!」
日菜「あ、そっか…ごめん…」
彩に諭されて日菜が困ったように謝ると、千聖も苦笑いした。
千聖「いいのよ。気にしないで」
麻弥「千聖さん…」
イヴ「……」
結局、この日は撮影は中止になり、パスパレは他のスタッフ達と共にホテルで待機する事になった。勿論外出は禁止である。
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「申し訳ございません。私がもう少し早く出ていれば…」
「気にするな。寧ろ高校生が深夜に出歩ている方が問題だ」
飛鳥は京都のホテルで和哉と話をしており、飛鳥は事件の一部始終を和哉に報告した。
和哉「…またしても奴らの仕業か」
飛鳥「間違いありません」
和哉「……」
和哉が飛鳥を見つめた。
和哉「ご苦労だった。後はオレに任せろ」
飛鳥「!」
和哉「脛梶の父親の首を確実に跳ね飛ばす手筈は出来た。後は膿をしっかり排除するまでだ」
飛鳥「……」
そう言って和哉は黒い炎に包まれて消えると、飛鳥は沈んだようにベッドにあおむけになりながら、昨晩の事を思い出した。
多くの人間を守るためとはいえ、たった一人の人間をこの世から消してしまった事、自分の立場、そしてこれからの身の振り方について飛鳥は迷っていた。
実はこのような事が起きたのは今回が初めてではない。中学時代にも何度か、突然変異で暴走した人間と戦っては、息の根を止めた事は何度もある。人の命が消える瞬間を何度も見ては、飛鳥は苦しみ続けていた。
だが、生まれながらに持ったこの能力を持った以上、戦う運命からは逃れることは出来なかった。
飛鳥はせめて、殺害された人間の冥福、そして遺族の今後の幸せ、そして京都で撮影していた千聖たちの今後の健勝を祈るしかなかった。
そんな中、飛鳥のスマホに着信がなった。
飛鳥「誰からだろ…」
飛鳥がスマホを確認すると、そこには中学時代からの親友・奈良川京からのメールだった。
『あの仮面の奴ってお前だろ! 大丈夫か? 辛かったらオレが聞いてやるからな!』
というメッセージだった。それを見て飛鳥は苦笑いすると、日向や椿たちからも来ていた。
『飛鳥くんお疲れ様。大丈夫? 辛くなったらいつでも帰ってきてね』
『お疲れ様。アンタなら大丈夫だと思うけど、辛かったらちゃんと言いなさいよ』
という励ましのメッセージだった。すると、他の友人からもメールが来ていて、飛鳥は静かに目を閉じた。
そんな中、モカからもメールが来ていた。
『あの仮面の子って飛鳥くんでしょ。落ち着いたらでいいから、電話頂戴~』
そうメールが来ていると、飛鳥は苦笑いして心配してくれた友人たちに「ありがとう」の返信を送った。
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また一方で、千聖は独り考え事をしていた。仮面の男が飛鳥だと確信していたが、そうだとするなら、何度もAfterglowを助けた事、商店街のうなぎ屋の事件を解決させたこと、一度逮捕されたのに何とかなったことなど、今までの事について全てああなるべくしてなったのではと感じた。
千聖(本当に彼は何者なの…!? 知りたい…。彼の事をどうしても知りたい…)
千聖がそう決意して、何かをしようとすると、自分の背後に誰かがいる事に気づいて振り向いた。
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その夜、飛鳥は東京に戻り、自室で学校に行く支度をしていた。リュックを見つめる視線はとても沈んだものだったが、友人たちからの励ましのメールを思い出して、空を見上げて星空を見上げた。
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そして翌朝。登校日なので飛鳥は学校に向かっていた。後ろ髪をひかれる思いはなく、全てを覚悟した男の顔をしていた。
教室に着くや否や、学校では京都での火災が話題に取り上げられていた。
「おい、京都での火事見たかよ!」
「ああ…」
「彩ちゃん達大丈夫かな…」
パスパレの5人を心配する声ばかりで、仮面の男の事は全く取り上げられていなかった。それを知った飛鳥は静かに目を閉じた。
暫くして、1組の方が騒がしくなった。どうやらパスパレも普通に登校していたのだ。
飛鳥「……」
声の様子だと、香澄達クラスメイトがイヴの身を案じていたのだ。他のクラスも同じ事になっていると感じていた。
飛鳥は思った。もしもあの仮面の男の正体が自分だとバレたらどうなるだろうと、学校を追い出されたり、自分がぼろくそに言われて尊厳を失う事はどうだって良かった。だが、どう考えてもそれだけで済みそうになかったので、悩んでいた。
そして悩みが解決することもなく、昼休憩になっていた。中庭でボーっとしていた。
「飛鳥くーん」
モカがやってきた。
飛鳥「…やあ」
モカ「此間は凄かったね~」
飛鳥「確かに凄かったね」
モカの言葉に飛鳥が苦笑いした。その時だった。
「探したわよ。一丈字くん」
千聖が現れると、飛鳥とモカが千聖の方を見た。
飛鳥「白鷺先輩」
モカ「そういえば色々大変でしたね~」
千聖「ええ。でもそのお陰で一つ分かった事があるの」
飛鳥「……」
千聖の言葉に飛鳥が険しい表情をした。
千聖「一丈字くん。あなたの正体をね」
つづく