全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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 前回までのあらすじ

 飛鳥は廊下を歩いていると、男子生徒に殴られている日菜を目撃した。すぐに追い払ったが、顔は腫れあがっており、すぐさま保健室に運んだ。

 大事にはならずにすんだものの、日菜を救いだせなかった事、紗夜と日菜を泣かせてしまった事、そして最悪の事態になっていたかもしれないという恐怖から、飛鳥は一人、自分を責めた。

 今回はそんなお話である。


第20話「バッドエンド(後編)」

 

 

 

 

 

 翌日、飛鳥は重い腰を上げて学校に向かった。

 

飛鳥(日菜先輩がケガした事は、オレのせいにされるだろう。だが、それはいいんだ)

 

 問題なのはそこじゃなかった。昨日、保健室を出た後日菜が声を上げて泣いた事。そこが不安だった。痛かったに違いない。怖かったに違いない。だが、アイドルとして、Pastel*Palettesのメンバーとしてやっていくには、表面上明るく振る舞わないといけない。

 

 要は色々と心配なのだ。いつものように全く気にせず明るく登校してくれれば良いのだが、あれだけの事があってそういう事が出来るのは、気丈な人間ではない。かなり頭がおかしい人間だと飛鳥は考えていた。

 

 その時だった。

 

「飛鳥くん!」

 

 と、日菜の声がして、飛鳥が後ろを振り向くと、日菜と紗夜がいた。

 

飛鳥「…日菜先輩」

 

 飛鳥が困った顔をした。というのも、日菜の顔には絆創膏とガーゼが貼られていて、とても痛々しい姿だった。

 

日菜「おはよう!」

飛鳥「おはようございます」

 

 日菜は明るく振る舞っていたが、飛鳥には分かっていた。皆に気を遣わせまいと気丈に振る舞っているのだと。そして紗夜も困った顔をしていた。

 

飛鳥「紗夜先輩もおはようございます」

紗夜「…おはようございます」

日菜「二人ともどうして暗い顔してるの? あたしは大丈夫だよ」

飛鳥「そ、そうですか…」

 

 飛鳥は困った顔をしていた。

 

日菜「もしかして誰かに虐められてるの?」

飛鳥「いえ、まだです」

紗夜「まだって…」

日菜「まだってどういう事?」

 

 日菜の言葉に飛鳥は目を閉じた。

 

飛鳥「恐らく私のせいになるでしょうね。あなたがケガをした事」

日菜「な、何で!!?」

 

 日菜の問いに飛鳥が目を開けた。

 

飛鳥「嫌われてるからですよ。まあ、それはどうでもいいんですけどね」

日菜「どうでもよくないよ!! あたしがケガしたのがどうして飛鳥くんのせいになるの!?」

飛鳥「普段からこうやってお話をしてるからでしょうね。此間の誘拐の件もありましたし、そして犯人の男はもうこの学校にはいいませんし、やり場のない怒りから私に当たるでしょう」

 

 飛鳥が再び困った顔をした。

 

飛鳥「最悪の事態は免れましたけど、こうしてけがをされてしまった事にかわりはございません。仕方ありませんよ」

日菜「……!」

 

 飛鳥の言葉に日菜が困った顔をした。

 

飛鳥「それはそうと、もう学校に登校されて大丈夫なんですか?」

紗夜「…私も止めたんですけど、聞かなくて。一丈字くん。あなたが虐められる可能性があるというのは私も同感です。私のクラスでもあなたの事を快く思っていない方が数人います」

飛鳥「でしょうね…」

 

 紗夜の言葉に飛鳥が首を横に振った。

 

日菜「そ、そんなのやだよ!! どうしてあたしがケガをして、飛鳥くんが虐められないといけないの!!?」

飛鳥「あくまで想定の話なので、何もない事を祈りましょう」

紗夜・日菜「……」

 

 飛鳥がいつも通りの表情で紗夜と日菜を見た。

 

飛鳥「行きましょう。また途中からになりますが、学校まで送ります」

 

 そして飛鳥は紗夜と日菜と一緒に登校した。

 

 それからというもの。飛鳥は普通に自分の教室で過ごしていたが、

 

飛鳥「……」

 飛鳥は困り果てていた。というのも、休憩時間になる度にずっと日菜がいたからだ。

 

飛鳥「あの、氷川先輩…」

日菜「飛鳥くんが虐められないようにするの」

飛鳥「あ、多分これ絶対に来ないパターンですね」

日菜「それだったらあたしがいなくなったら、絶対来るパターンだよね?」

飛鳥「来るけど、色々あって何もなかったっていうパターンですね」

日菜「今日はずっと一緒にいようよ」

飛鳥「……!」

 日菜が寂しそうにつぶやいた。

 

日菜「初めてなの。こんなに怖いと思ったの」

飛鳥「……」

日菜「そして、目を離したら飛鳥くんがいなくなっちゃうんじゃないかって」

 

 日菜が震えていた。

 

日菜「だからお願い」

飛鳥「……」

 

 日菜の言葉に飛鳥は何も言えずにいたが、

 

「一丈字くん。一緒にいてあげなよ」

 と、一人の女子生徒が話しかけた。

 

飛鳥「!」

「私達は大丈夫だから」

「そうだよ。一緒にいてあげて」

 

 次々と女子生徒達が声を出した。

 

飛鳥「皆さん…」

 飛鳥が俯いた。

 

飛鳥「分かりました」

日菜「…うん」

 

 女クラスメイト達の後押しで飛鳥は日菜と一緒にいる事にした。昼休憩は紗夜をはじめ、2年生全員と食事を取っていた。日菜の周りに不審者がいないか見張っていたが、

 

飛鳥「……」

 

 飛鳥は遠巻きに見ている男子生徒達の「悪意」を感じ取っていた。

 

(おい、あいつ…)

(日菜ちゃんにけがをさせて、何で一緒にいるんだ?)

(日菜ちゃんの顔に傷をつけやがって…!!)

(許せん!)

 

 飛鳥の想定通り、怒りの矛先が自分に気付いている事に気づいた。

 

日菜「…飛鳥くん?」

飛鳥「!」

 飛鳥が日菜を見つめた。

 

日菜「どうしたの? やっぱり虐められてるの?」

飛鳥「いや。虐められているのではなく、不思議がられてましたね」

リサ「不思議がられていた?」

飛鳥「ええ。そんな感じがしていますね」

 

 何故不思議がられているかはあえて言わなかった飛鳥だったが、千聖は気づいた。

 

千聖「それはそうと、いつまでウジウジしてるのかしら?」

飛鳥「ああ、すみません」

 

 飛鳥が千聖を見た。

 

千聖「もう過ぎた事は仕方がないし、いくらあなたでも対処しようがないでしょ」

飛鳥「そうじゃないんですよ」

「!」

 

 千聖の言葉に飛鳥はそう言い放つと、千聖たちが飛鳥を見た。

 

飛鳥「白鷺先輩の仰ってる事は最初から理解しております。昔の事をずっと気にするより、未来に目を向けた方が良いと」

千聖「それだったら…」

飛鳥「あの現場にいたから感じるんですよ。もしもあの時よりも更に悪い状況だったら。と」

「!」

 

飛鳥「白鷺先輩」

千聖「な、なに?」

飛鳥「もしもあの時、日菜先輩が殺されていたらどうしていましたか?」

千聖「!!」

 

 飛鳥の言葉に皆が戦慄した。

 

麻弥「い、一丈字さん! 今はそういう事は…」

日菜「麻弥ちゃん」

 日菜が止めた。

 

日菜「いいの。飛鳥くんは本当にあたしを助けようとしてくれてたから、分かるんだよね」

千聖「分かるって…」

飛鳥「すみません。質問を変えます。もしあなたが私の立場だったらどうしてましたか? 殴られただけで済んで良かったって思いますか? それとも…」

千聖「……」

 

 飛鳥の言葉の真意が分かり、千聖が俯いた。

 

千聖「…ごめんなさい。私が間違ってたわ。殴られただけで良かったなんて…そんな事思えない」

飛鳥「すみません。情けない話なのですが、恐怖を感じてるんですよ」

「!」

 

飛鳥「助けられたから良かったですが、もしもあの時遅れていたら、もしもあの時、あの場所を通らなかったら、日菜さんはどうなっていたんだろうと」

「……!!」

飛鳥「恐ろしくて仕方ないんですよ。人の命がかかっていたから」

 

 飛鳥が一息ついた。

 

飛鳥「白鷺先輩。さっきの質問の答えですが…」

千聖「……」

飛鳥「もう少しだけ待って頂けないでしょうか。心の整理がまだついてないんです」

 

 飛鳥の言葉に千聖は、

 

千聖「分かったわ。そこまで日菜ちゃんの事を考えてくれてたのね。ありがとう」

飛鳥「いえ…」

 その時、日菜が飛鳥に近づいた。

 

飛鳥「あ、日菜先輩。どうされま…」

 日菜が飛鳥に抱き着いた。

 

飛鳥「あの、日菜先輩?」

日菜「ごめんねぇ…!! ごめんねぇ…!!」

 と、日菜が泣いて謝っていた。

 

飛鳥「いや、謝る必要もありませんし私は…」

日菜「…飛鳥くん、昨日の夕方、ずっと一人で悩んでたでしょ。河川敷で」

飛鳥「誰から聞きました?」

日菜「つぐちゃん」

飛鳥「…つぐちゃんって、羽沢さんですか?」

日菜「うん。一人で川をずっと見てたって、電話を見てたよ」

 日菜がポロポロ泣くと、紗夜が慄然とした。

 

飛鳥「…全然気づきませんでした。てっきり美竹さん達と一緒に帰ったのかと思ってたので」

日菜「ごめんね…! あたしのせいで…!!」

 と、泣いていたが、

 

飛鳥「いえ、それはこっちが勝手にやった事なので気にしないでください」

 飛鳥は普通に言い放った。

飛鳥「あ、そういやPastel*Palettesの仕事って…」

千聖「今週はなしよ。流石に顔を殴られて仕事させたら、うちの事務所潰れるわ」

飛鳥「ですよね…」

 飛鳥が困惑して相槌を打った。

 

飛鳥「日菜先輩」

日菜「?」

 

 飛鳥が日菜の身を離して、日菜と向き合った。

 

飛鳥「まあ、色々言いましたが、結果的に私もあなたもこうやって生きてる。一旦は良しとしましょう。そしてこれからの事について話しましょうか」

日菜「…うん」

 日菜が小さな声でつぶやくと、

 

飛鳥「ここにいる皆さんも羽沢さん達もついてます。一緒に頑張りましょう」

日菜「うん…!!!」

 

 と、日菜がまた涙を流したが、鼻水も流れ出た。

 

飛鳥「あ、色々喋ってすみませ…」

 飛鳥が紗夜たちを見ると、彩、麻弥、リサ、燐子、花音が号泣していた。

 

飛鳥「あの、何で泣いてるんですか…」

彩「だってぇ~!!」

麻弥「深く感動したっす…!!」

花音「ふぇええええええええええ」

燐子「……!!」

 

 涙を流している彩、麻弥、花音、燐子を見て飛鳥は気まずそうにした。

 

リサ「河川敷って…またあそこで落ち込んでたのね」

飛鳥「そうですね…。あそこあまり人来ないので…」

友希那「……」

 友希那がじーっと飛鳥を見つめた。

 

飛鳥「あ、すみません…」

友希那「謝る必要がどこにあるの?」

飛鳥「え」

友希那「自信を持ちなさい」

千聖「そうよ。自分のやった事は間違ってないって思ってるんでしょ?」

飛鳥「それはもう」

 飛鳥が即座に答えた。

 

千聖「なら、それでいいじゃない」

薫「なんて勇敢で…儚いんだ」

千聖「かおちゃん静かにして」

薫「ごめんなさい。あと、出来ればもうそれ呼ばないでください」

 千聖と薫の掛け合いに日菜もちょっと元気が出た。

 

日菜「…ふふっ」

飛鳥「日菜先輩…」

日菜「…はー。皆とお喋りしたら元気が戻ってきた。で、飛鳥くん」

飛鳥「何でしょう」

日菜「今日の放課後空いてる?」

飛鳥「空いてないですね」

 空気が止まった。

 

千聖「今の日菜ちゃんよりも優先しなきゃいけない事?」

飛鳥「同じくらいですね」

リサ「無理に好感度下げようとしても無駄だよ」

飛鳥「そういう場合一気に0になりますからしませんよ。弦巻さんと打ち合わせがあるんですよ」

「打ち合わせ?」

飛鳥「日菜先輩を笑顔にする為の打ち合わせです」

「それもっと泣いちゃう奴じゃんか!!!」

「うぇええええええええええええええええええええん」

 

 と、日菜達は泣いたが、皆で一緒に泣いたら日菜は元気になったという。

 

 

飛鳥「人間、素直になるのが一番ですね」

 

 

おしまい

 

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