ある日の事、飛鳥が彩たちのバイト先のファーストフード店の近くを通った。だが、次の瞬間、目を疑う光景が起きていた。
店の前から若い男性がうんざりした顔で出てきて、店の方を見た。
「SNSに上げてこの店潰してやるからな!!!」
「覚悟しろ!!!」
そう言って男たちは怒りながら飛鳥とは違う方向の道を歩いて行った。
飛鳥(写真撮っとこう。なんかあっても怖いし)
飛鳥が超能力で男たちの後姿をスマホの写真に記録した。
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そして気になったので飛鳥は店内の様子をこっそり見てみるが、店員たちはうんざりした表情を見せていた。見渡す限りほかの客はいない。
『はぁ…まだだよ…』
『丸山さん達には罪はないけど、こんな事が続くと…』
店員たちの様子から、飛鳥はすべてを察した。このファーストフード店は彩、巴、ひまり、花音の4人がバイトしており、女性店員の顔面店員が高いと以前から有名になっていたのだ。その為、彼女たちがいる日は長蛇の列が並んだりするのだが…、
そうでない日はお客さんが少なく、仮に来たとしても彩たちがいないと分かると注文せずに帰ったり、文句を言ったりするなど大変失礼極まりない行為をしていたのだ。
ファーストフード店だけではなく、他のバンドガールズのバイト先でもそのような迷惑行為があったりするのだが、このファーストフード店は4人もいる為、一番ひどいのだった。
飛鳥は注文することにして、レジの前に立った。接客をするのは地味目の若い女性だった。
「は、はい! ご、ご注文をどうぞ…」
飛鳥(震えてるな…。そして…)
怖がっている少女と、顔には出さないが嫌そうにするほかの店員を見た飛鳥。
飛鳥「オレンジジュースのラージサイズと、ハンバーガー1つ。あとこのポテトのS1つ。店内で」
「は、はい! オレンジジュースのLサイズと…」
店員が確認しようとするが、途中でやめてしまった。飛鳥はレジの電光掲示板を見て、注文したメニューが通ってるか確認した。
「お、お会計1200円です」
飛鳥「はい」
飛鳥は何も言わずに千円札と100円の硬貨を2枚出した。
飛鳥「丁度で」
「は、はい。丁度お預かりします」
そう言って店員は慌ててレジを操作をしていたが、手が震えていた。
飛鳥(可哀想に…。前の客によっぽど怖い目にあわされたんだな…)
「こ、こちらレシートです」
飛鳥「ありがとうございます」
飛鳥は安心させようとすると笑顔でお礼を言うと、店員達は驚いた。
「せ、席までお持ちしますので、お席でお待ちください」
飛鳥「承知しました」
そう言って飛鳥が近くに座ると、店員たちは不思議そうに飛鳥を見ていた。
『なんだあの子…』
『今までのお客さんと違う…』
『確かバンドリ学園の子だよね…』
そんな店員に対して、飛鳥は苦笑いしながらメニューが来るのを待った。
数分後、妙齢の女性店員がメニューを持ってきた。
「お待たせしました。ハンバーガーとオレンジジュースとポテトです」
飛鳥「ありがとうございます」
飛鳥がメニューを受け取ったが、女性店員が飛鳥をじっと見つめた。
飛鳥「あ、決して怪しい者ではございませんよ」
「!!」
飛鳥が苦笑いして答えると、女性店員は謝罪してその場を後にした。
飛鳥(相当気が張ってるなぁ…)
この後も、飛鳥がずっと食事をしていたが、変わった様子は見られず、客が来ない状態だった。
飛鳥(本当に客が来ないなぁ…。まあ、近くにも似たような店があったからかな)
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帰宅後、飛鳥はファーストフード店の事を思い出していた。
飛鳥「ちょっと気になるから、調べてみるか。トラブルになっても遅いし…」
そう言って飛鳥は黒服たちに電話をかけて、巴たちのシフトを調べてもらうように指示を出した。
飛鳥「SNSは…あ、悪口が書き込まれてる」
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それから飛鳥は巴たちがバイトしていない日を狙って、そのハンバーガー店に来ることにした。SNSで悪口が書き込まれていたが、特に変わった様子もなく、店は普通に営業していた。書き込んだ人間の知名度が低すぎるのか、誰も相手にしてない状態だった。
「いらっしゃいませ…あっ」
またしても若い女性店員が接客をすることになり、飛鳥の顔を見て驚いた。
飛鳥「ダイマックスポテト1つとオレンジジュースのラージサイズ」
「は、はい!」
そう言って注文し、メニューを受け取っては店内で食べていた。
飛鳥(そういや宇田川さん達がいない日はあの若い女性店員さんがいるんだよな。毎回行くのはやめて、黒服さん達に監視を任せるか…)
ちなみに黒服は1日ごとに交代して店を見張ったりしていたが…。
「あのおねーさん綺麗だな…」
「ああ…」
「尻がでかいな…」
「ああ。あれは安産型だ…」
「いい尻…」
「……」
黒服だと怪しまれるので、私服で行くことにしたが、あまりにも男性客から性的な目で見られるため、巴たちがバイトしてる日は屈強の男性たちが行くことになった。
「キモい…」
「気持ちは分かるが…」
「仕事だ! 我慢するんだ!」
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そして時間が過ぎて、飛鳥は巴に呼び出され、屋上でAfterglowと話をしていた。
巴「聞いたんだけど、最近うちの店に来るそうじゃないか」
飛鳥「ええ」
ひまり「うちのお店の人、結構一丈字くんの話をしてたんだけど…どうしたの?」
モカ「もしかして気になる子がいるとか~?」
蘭「それ、ストーカーだよ…」
蘭の言葉に飛鳥が苦笑いした。
飛鳥「少しばかり気になることが出来ましてね…」
つぐみ「気になる事?」
飛鳥が真剣な顔でスマホを取り出して、男たちの写真を巴とひまりに見せた。
飛鳥「この男たちに見覚えがございませんか」
「!!」
飛鳥が見せた写真を見て巴とひまりが反応した。
巴「あっ! 昨日見たぞこの二人!! 確か客と喧嘩して…」
ひまり「追い返されてた…」
飛鳥「……」
巴とひまりの言葉を聞いて、飛鳥は嫌な予感がすると、モカが飛鳥の顔をじっと見ていた。
巴「それがどうしたんだよ」
飛鳥「この写真を撮る前、お店の人に対して、店を潰してやるって言ってたんですよ。まさかと思って、可能な限りずっと様子を見張ってたんですよ」
ひまり「ええっ!!?」
飛鳥の様子にひまりが驚いていた。
巴「けど、あたしたちは一度も目撃してないぞ!?」
飛鳥「そりゃあ宇田川さん達がいる時は行列が出来るほどですから、流石に馬鹿な真似はしないでしょう。もし変なことをするなら人がいない日でしょうね」
飛鳥の言葉にひまりと巴が不安そうにした。
ひまり「それはそうと、どうしてそこまでやってくれたの?」
飛鳥「……」
ひまりの言葉に飛鳥が苦笑いした。
飛鳥「この男たちがいなくなった後、店員さんがギスギスしてたので…ほっとけなくて」
モカ「……」
飛鳥の言葉にモカがへの字にした。
飛鳥「そういう訳ですので、お二人とも細心の注意を払ってアルバイトを頑張ってください」
巴「お、おう…」
ひまり「……」
モカは確信した。飛鳥は巨大な敵と戦おうとしていることに。
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巴の呼び出しを切り抜けた後、飛鳥は放課後モカに呼び出された。
モカ「どうして言ってくれなかったの?」
飛鳥「こころにも大人しくして貰ってるんだ。結構無茶するからね」
モカ「…またトモちんとひーちゃんのバイト先に行くの?」
飛鳥「ああ。だけど、今度は夜だ」
モカ「夜?」
モカの言葉に飛鳥は何も言わなかった。
飛鳥「…久々の『仕事』になるかもしれないからな」
モカ「……」
飛鳥の言葉にモカはうつむいた。
モカ「何かできることはないの?」
飛鳥「あるよ。事が済んでからな」
モカ「売り上げに貢献しろとか?」
飛鳥「それだけじゃないよ。宇田川さんと上原さんのメンタルケア。探せばいっぱいある」
飛鳥が真面目にしゃべると、モカも暗い顔をする。
飛鳥「そんな暗い顔をするな。何もなければそれでいいんだ」
モカ「……」
飛鳥「だが、宇田川さんや上原さんの話を聞く限り、近いうちに何か仕掛けるつもりだ。SNSでもほかの客にも返り討ちにされてるんだ。きっと不満がたまってるだろう。世間や自分自身に対して」
モカが俯いた。
飛鳥「今日からちょっと様子を見るつもりだ。じゃ…」
モカ「待って!」
モカがそう声をかけた時、飛鳥のスマホが鳴った。
飛鳥「ごめん。緊急用だ。もしもし…」
飛鳥が電話に出た。
飛鳥「分かりました。直ちに向かいます」
飛鳥が少し慌てて電話を切った。
飛鳥「悪い。一足先に店に行ってる」
モカ「えっ?」
飛鳥が存在感を消して瞬間移動を行うと、モカは悲しそうな顔で呆然と立ち尽くした。
つづく