全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第273話「一丈字飛鳥の長い戦い(後編)」

 そして飛鳥はファストフード店の前に立っていた。

 

「くそが!! 離しやがれ!!」

 

 男二人が黒服の男二人に取り押さえられていた。手に持っていたのはガソリンのタンクだった。

 

飛鳥「!!」

 

 飛鳥の読み通り、男たちはこの店に対して嫌がらせをしようとしていたのだが、ガソリンを店にぶちまけて火をつけようとしたのだった。ガソリンをぶちまけて、火をつけようとしたときに黒服に取り押さえられたのだ。

 

「くそう!! あともう少しだったのに!!」

「どうして何もかもうまくいかないんだ!! くそがぁああああああ!!!!」

 

 男たちの怒りの叫びは町中に響き渡った。飛鳥は神妙な表情で犯人の男たちを見つめていた。

 

飛鳥「さて、モカにメールするか」

 

 飛鳥がモカに犯人が捕まったというメールを送った。

 

********************

 

 警察もやってきて、男たちは警察に逮捕された。野次馬がブーイングを上げていて、異常な熱気に包まれていた。飛鳥は陰から様子を見つめる。

 

「…飛鳥くん」

 

 モカが現れると、飛鳥がモカを見つめた。

 

飛鳥「宇田川さんと上原さんは無事だ。他の皆さんも…」

モカ「うん…トモちんやひーちゃんからメール来たよ…」

 

 モカは目に涙を浮かべた。

 

飛鳥「泣くのは後だよ。宇田川さんと上原さんに会えるかな…」

 

 巴とひまり、他の店員と会えたのはそんなに時間はかからなかった。

 

モカ「トモちん! ひーちゃん!」

巴・ひまり「!」

 

 モカが心配そうに駆け寄ると、巴とひまりがモカに気づいたが、飛鳥は存在感を消した。

 

巴「モカ!」

 

 巴が反応すると、モカが巴に抱き着いた。

 

モカ「よかった…。本当によかった…」

巴「モカ…」

 

 その様子を見て、ひまりも泣きじゃくってモカを抱きしめた。

 

巴「あたしもごめんな。心配かけたな…」

ひまり「ごめんねモカ…!!」

 

 3人の様子を見て、他の店員たちはバツが悪そうにしていた。中には飛鳥が初日に接客をしていた少女もいた。その様子を飛鳥が静かに見ていた。

 

巴「それはそうと取り押さえたあの男の人達は…」

モカ「弦巻財団の人達だよ。飛鳥くんが協力を求めたの」

ひまり「そうだったの!?」

巴「いつも黒服だから気づかなかった…」

 

 モカの言葉に巴とひまりが驚くと、他の店員達も反応した。

 

「飛鳥くんって…前に話してた子?」

「!!?」

 

 妙齢の女性店員が話しかけると、3人が店員を見つめた。

 

巴「は、はい…」

「そう…」

 

 妙齢の女性店員はうつむいた。

 

巴「あの、竹本さん。何か…」

竹本「最初あの男たちが怒鳴って帰った後、その飛鳥くんという子が来て、それからちょくちょくお店に来てくれたんだけど…。きっとあの男たちがああいう事をするって分かって、ずっと見張っててくれたのね…」

 

 竹本の言葉に飛鳥は困惑していた。

 

モカ「そうなんですよ~。凄いと思いませんか?」

「!!」

 

 モカの言葉に飛鳥が驚いた。

 

竹本「今度お礼しなきゃ…」

モカ「それは大丈夫だと思いますけど…」

巴「いや、今回ばかりは店も助けてもらったんだ。礼をするしかないだろ」

ひまり「そうだよ!」

 

 飛鳥にどうしても礼がしたいという話をしていたので、飛鳥は超能力で次第にお礼をするという事を忘れるように細工をして、飛鳥がモカ達の前に姿を現した。

 

「!!?」

巴「一丈字!!」

飛鳥「皆さん。ご無事で何よりです」

 

 飛鳥が突然現れた事により、並んでいた客も驚いていた。

 

巴「一丈字! モカから全部聞いたぞ! 何から何までほんとにありがとな!?」

ひまり「うん!!」

飛鳥「それは構いませんが…」

 

 巴とひまりが詰め寄られて飛鳥が苦笑いすると、気の弱い白い髪の女性店員を見つめた。

 

「!」

飛鳥「また会いましたね。店員さん」

 

 飛鳥の言葉に巴たちが驚いた。

 

飛鳥「あれから調子はどうですか?」

「えっ…」

 

 女性店員・白朧(ハクロウ)は驚いていた。

 

飛鳥「あの男たちに怒鳴られた後、凄く元気がなかったので」

白朧「や、やっぱり気づいてましたか…」

 

 飛鳥の言葉に白朧が苦笑いした。

 

白朧「あ、はい。もう大丈夫です」

竹本「丸山さんに励ましてもらったもの。あなたは必要な人間だって」

飛鳥「!」

 

 かつて自分が言った言葉をそのまま人に言っていた事に驚く飛鳥。そして微笑んでいる白朧の姿を見て、飛鳥は一安心した。

 

竹本「…それとね。宇田川さん」

巴「!」

 

 竹本が申し訳なさそうに巴とひまりを見ていた。

 

竹本「上原さんもそうだけど…ごめんなさいね」

「!?」

 

 竹本が謝ったので、3人が驚いた。

 

竹本「お客さんの態度があまりにも悪かったから、ついつい裏であなた達にあたってたわ。悪くないって分かってたのに…」

「アタシもごめん」

「オレも…」

「彩ちゃんと花音ちゃんにも謝らないと…」

 

 そう言って店員達が謝ると、ひまりは号泣し、巴は目に涙を浮かべた。そして飛鳥とモカが顔を合わせて苦笑いした。

 

 その時、店長らしき男が現れると、

 

飛鳥「それでは、私は失礼します」

ひまり「えっ?」

巴「ちょ、ちょっと待て!! 店長にお前を紹介したいんだよ!」

飛鳥「売名行為になりますし、事情聴取があるので」

 

 飛鳥が警察官2人に捕まっていた。

 

「どういうことか詳しく聞かせてもらおうか」

飛鳥「それでは皆さん。またどこかでお会いしましょう」

モカ・巴・ひまり「え」

飛鳥「さようならー」

 

 そう言って飛鳥は警察官に引きずられ、パトカーに乗せられていった。

 

モカ「むー…」

 

***********************

 

 飛鳥は警察に事情聴取を受け、解放されたのは2時間後だった。

 

飛鳥(助かった…。ずっとあの中にいたら英雄扱いされてたからな…)

 

 警察署から出てくると、飛鳥は空を見上げるとまだ茜色だった。

 

飛鳥「確かこの辺、河川敷あったよな…」

 

 そのまま飛鳥は河川敷の道を歩きながら一人帰っていた。そして、脳裏にある曲が思い浮かんだ。

 

『♪I LOVE YOU /河村隆一』

 

 長かった戦いが終わり、戦い抜いた自分自身を祝うかのように流れていた。正直歌詞というよりBGMで決めた。

 

飛鳥(本当に長い戦いだった…)

 

 飛鳥は心底疲れた顔をしながらも、白朧に笑顔が戻ったことを思い出して、静かに笑みを浮かべると、そのまま歌を口ずさんだ。その表情はとても穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

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