全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第25話「一丈字飛鳥という男」

 

 

 ある日の事だった。

 

「なあ、聞いたか?」

「最近この学校…幽霊が出るらしいぞ」

「何か3年生がそんな話してたな…」

「おー怖い怖い…」

 

 と、飛鳥が教室で聞いていたが、特に何もする事は無かった。

 

「そういや今日、メンテナンスのために早めに施錠されるんだろ?うちの学校オートセキュリティだから」

「取り残されたら一晩中幽霊に付きまとわれるかもな」

「おーこわ」

「あ、でもガードマンがいるって」

「そっか」

 

 その夜、

 

飛鳥「ふぅ…。今日も何もない一日だったな…」

 と、飛鳥が部屋でくつろいでいると、電話が鳴った。

 

飛鳥「誰からだろ」

 飛鳥が電話を取った。

飛鳥「もしもし」

「あ、もしもし飛鳥!?」

 電話の相手はこころだった。

 

飛鳥「こころ。どうしたんだ?」

こころ「蘭たち知らない!?」

飛鳥「え?」

こころ「蘭たちがまだ学校から帰ってきてないって…」

飛鳥「え!?」

 飛鳥が驚いた。

 

こころ「さっきあこから電話があったのよ! Afterglow全員帰ってきてないって…」

飛鳥「5人全員が行きそうな場所とか調べましたか? 学校とか…」

こころ「学校…そうだわ! 今日確か早く施錠するって黒服の人たちが教えてくれたわ!」

飛鳥「もしかしたら学校に閉じ込められてる可能性が…。けど、羽沢さん生徒会の仕事をしてるから…あ、すぐに帰ろうとしたけど、閉じ込められた奴か」

こころ「警察の通報とかそういう手続きはあたしや黒服達の人がしておくわ! 飛鳥は学校に向かって頂戴!」

飛鳥「分かった!」

 

 飛鳥が存在感を消し、瞬間移動で学校に向かった。ちなみに行った事がある場所はいつでも行けるようになる。

 

 正門を過ぎた所に瞬間移動した飛鳥。正門は既に閉まっている。

 

飛鳥(誰か来てる痕跡もなさそうだな…)

 飛鳥が目を閉じて感知すると、蘭達を捕らえた。停電になり5人で固まっている。

 

飛鳥(いた!)

 そして飛鳥は超能力でカギのロックを解除すると、中に入った。

 

飛鳥「美竹さーん!!! 青葉さーん!!!」

 

 と、大声で叫んだ。

 

 その頃…

 

「うぅぅぅぅ…!!」

 Afterglowの5人は固まっていた。モカ以外の4人はすっかり怯えていた。

 

ひまり「ごめんねぇ…!! 私が参考書忘れたばっかりに…!!」

巴「そ、それはもういいんだよぉ!!」

蘭「怖い…!!」

 

 実はAfterglowは夕方までつぐみの家で課題をしていたが、ひまりが参考書を忘れた事が判明し、5人で忘れ物を取りに行った。すぐに取りに帰る予定だったので、親には特に何も言わず、そのまま飛び出し学校へ。

 

 参考書は無事に見つかったものの、その瞬間に施錠されてしまい、蘭たちは外から出られなくなってしまったのだ。おまけに最近幽霊がいると噂になっている為、すっかり怯え切っていた。

 

つぐみ「お父さんもお母さんも絶対怒ってる…ひっく…」

モカ「つぐ泣かないで~。それは皆一緒だから~」

蘭「…バンド禁止される」

巴「私もあこに何て言われるか…」

ひまり「私のせいだ…うぇええええええええええん!!!」

 

 ひまりが泣き崩れた。

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃんのせいじゃないよ!!」

巴「ちょ、やめろよ! そういうの…」

蘭「そ、そうだよ…!!」

 と、つぐみ、巴、蘭も涙ぐんだ。

 

モカ「そんなことよりも、本当にまずいよ」

「!」

 

 モカが険しい顔をしていた。

 

モカ「…『あいつ』がここを突き止めてきたら」

「もう突き止めたよ」

「!!?」

 

 その時、モカの首筋にスタンガンが当てられそうになったが、間一髪でかわして5人は避難したが、完全におびえ切っていた。目の前には狂気に満ちた表情した…。

 

 

 ガードマンの姿があったのだから。

 

 

モカ「……!!」

 モカも今ので完全に青ざめてしまい、目に涙が浮かんだ。

 

ガードマン「もう逃がさないよ。見られたからには、君達には大人しくて貰う」

蘭「な、な、何で…」

ひまり「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

ガードマン「泣きわめこうが誰も来ないよ。そもそも下校時間過ぎた挙句、勝手に学校に入ってきた君たちが悪いんじゃないか。そういう事をするなら…やってもいいよね」

巴「な、何をだ…」

 

 ガードマンが笑みを浮かべた。

 

ガードマン「生徒を一人ずつ…なぶり殺しさぁ!!!」

 

 ガードマンが鉄パイプで殴ろうとしたが、動きが止まった。

 

ガードマン「な、なんだ!? 体が…」

「!!」

 その時だった。

 

「はああああああああああああああああああ!!!!」

 

 飛鳥が廊下を走ってきた。真剣な権幕で叫び、そして飛んだ。

 

「!!」

ガードマン「!!」

 

飛鳥「どりゃぁああああああああああああああ!!!」

 

 飛鳥がガードマンの顔にめがけて飛び蹴りをすると、

 

ガードマン「ぐわぁああああああああああああああ!!!!」

 と、ガードマンも悲鳴を上げて壁に叩きつけられそのまま気絶した。飛鳥は綺麗に着地をすると、一気に電気がつくと、飛鳥は存在感を消した。

 

「!!」

飛鳥(学校の給電システムが…)

 飛鳥が灯を見ながらそう呟くと、Afterglowを見つめた。

 

飛鳥「もうじき助けが来ます。そこで大人しくしててください」

 そう言って飛鳥がガードマンの身柄を拘束すると、

 

「皆さま!!」

 弦巻家の黒服の人たちが現れて、蘭たちを保護した。

 

「ご無事ですか!!?」

ひまり「う…うぇええええええええええええええええん!! ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 ひまりは号泣した。

つぐみ「は、はい! 無事です!!」

モカ「こわかったぁああああああああああああああああああ」

 号泣したひまりに代わってつぐみがそういうが、つぐみも涙をポロポロ流した。モカも号泣し、蘭と巴は歯を食いしばって涙をこらえようとしていたが、涙があふれていた。

 

飛鳥「……」

 飛鳥は何も言わず、一足先にその場を後にすると、入れ替わるように黒服の男たちがガードマンを取り押さえた。

 

 その後、ガードマンは無事に逮捕されたが、完全施錠を行う前に、本来作業をする筈だった作業員たちをスタンガンで気絶させていたことが分かり、おまけに1組で香澄たちの私物を漁っていた事も発覚。器物損壊、傷害、窃盗の疑いで実刑判決を食らった。

 

 蘭たちはというと、校舎に勝手に入った事、連絡をしなかった事について、保護者達からこっぴどく怒られ、Afterglowは最低1週間は外出禁止令が出された。こころが止めようとしたが、保護者の意思をくみ取った黒服達が、こころを説得して取りやめるようにした。

ちなみに施錠されている間、電波が圏外になっていたのだが、連絡できなかった理由にはならなかった。

 

 飛鳥についてはお咎めが無かったが、称賛される事も無かった。

 

 

 こうして、幽霊騒動は、ガードマンが「幽霊」だったという事で幕を閉じた。

 

 

 後日、中庭に飛鳥とこころがいた。

 

こころ「それにしても飛鳥」

飛鳥「なに?」

こころ「本当に蘭たちには何も言わなくていいの?」

飛鳥「いいよ。押しつけがましいし」

こころ「あの時自分達を助けてくれたのは誰だって話してるわよ。あたしもあなただって話したいわ!」

飛鳥「ダメだよ。そんな事したら美竹さん達が気を遣う。誰も笑顔にならないよ」

こころ「どうして?」

飛鳥「そんなの簡単さ。美竹さん達のご両親はずっとその事を負い目に感じるし、美竹さん達も色々気にするでしょ。それに、人助けをして褒めて貰うってのは行儀悪いよ」

 飛鳥がこころを見つめた。

 

飛鳥「美竹さん達が無事だった。もうそれだけだよ」

こころ「……」

 こころが考えた。

飛鳥「皆が笑顔でいる為にはね、ちゃんと相手の立場を思いやって行動する事も大事な事だよ。自分がこうしたいばっかりじゃなくて」

こころ「…難しいわね」

飛鳥「皆笑顔でいられる事にはオレも賛成だけど、今回は見守ろう。美竹さん達の為にも」

こころ「そうね。分かったわ」

 

 飛鳥の言葉にこころが笑みを浮かべると、

 

こころ「あ、そうだ! 今日うちで一緒にご飯食べない!?」

飛鳥「遠慮しとくよ」

こころ「どうして?」

飛鳥「え? そんなの決まってるさ」

 飛鳥がこころを見た。

 

飛鳥「こころのその気遣いだけで、十分に笑顔になれるから」

 

 と、笑ってみせた。

こころ「え、そ、そう? ちょっと恥ずかしいわ…/////」

 こころはモジモジして照れてしまった。

飛鳥「珍しい」

こころ「あ、あたしだって恥ずかしい時は恥ずかしいわよ!! 日向と椿もこういう事言われてるのね…」

飛鳥「何であの二人の名前が出てくるの」

 

 飛鳥は苦笑いしつつも、皆が無事であることを喜ぶのだった。

 

 

おしまい

 


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