全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第29話「飛鳥と千聖」

第29話

 

 Pastel*Palettes。それは丸山彩、氷川日菜、白鷺千聖、大和麻弥、若宮イヴの5人で結成されたガールズバンドもとい、アイドルである。

 

 当初は別々の事を仕事をしていた5人だったが、所属する事務所の無茶振りで急遽ガールズバンドをやる事に。だが、いきなり出来る筈もなく初ライブはエアバンドとしてやり過ごそうとしたが、運悪く機材にトラブルが発生し、エアバンドだったという事がバレてしまう。

 

 バッシングもそこそこあり、解散の危機もあったが、地道に努力して信頼と名誉を無事に回復する事に成功した。

 

 そしてこのバンドリ学園でも5人は大人気である。廊下を歩けば皆が振り向き、いつでも注目の的だった。

 

 中でもベースを担当している白鷺千聖は幼少期から役者として活躍しており、将来も有望とされている女優でもある。

 

 そんな彼女は学校でも超モテモテで、告白しようにも高嶺の花なので迂闊に近づけなかった。

 

 時折、漫画の主人公を見習って、女優としてではなく一人の女の子として馴れ馴れしくしようとしていたが、見破られた上に他のライバルたちからの妨害もあり、すっかり痛い奴認定にされていた。

 

 そんな彼女はそんな彼らに呆れながらも、日々の仕事をきっちりこなしていた。

 

 あの男に出会うまでは…。

 

 

「一丈字くん」

飛鳥「はい?」

 突然千聖が飛鳥に話しかけてきた。それを見て周りの生徒達は驚いている。

 

千聖「今日の昼休憩…時間ある?」

飛鳥「あ、ごめんなさい。ちょっと用事があるんですよ」

千聖「何かしら?」

飛鳥「マイナスイオンを探しに」

千聖「私よりもマイナスイオンを優先したの、あなたが初めてよ」

飛鳥「そうですか」

千聖「それ、昼じゃなきゃダメなの?」

飛鳥「いやー。周りの方々の様子を見て頂けたら分かりますよ。何しろあなた、アイドルじゃないですか」

 

 と、いかにもアイドル扱いをして、自分はその辺にいる奴と同じアピールをする飛鳥。

 

千聖(やっぱり何か引っかかるわね…。この子の真意が見えない…)

 

 一丈字飛鳥。突然この学校に転校してきた男であるが、千聖は飛鳥に一度救われていたのだ。だが、実際に助けている所を見た訳ではなく、後でマネージャーから教わった。他のメンバーとお礼を言ったのだが、特にリアクションも無かった。普通だったら平然を装って何か見返りを見返るものだが、飛鳥には全くなかった。

 

 それからというもの、飛鳥が来てからというもの、自分達を困らせていた者が次々と解決していき、彼女は飛鳥に疑問を抱いていた。

 

飛鳥「それに、同じクラスの方々に声をかけられているじゃないですか」

千聖「…あなたに用があるのよ」

飛鳥「そうですか? あ、もしかして絵ですか!?」

千聖「違う!!!//////」

 

 千聖は絵を描くことが大の苦手だった。此間テレビの収録で絵を描く企画があったが、千聖が露骨に嫌な表情をしたうえで、絵を披露するとすっかりTwitterでバズった。日菜にも物凄く笑われ、引退をすると拗ねて麻弥とイヴが慌て、彩がツッコミをしまくり、色々苦労していた。だがバカ受けした。

 

飛鳥「バンドと同じく、何事も練習あるのみですよ」

千聖「だから違うって言ってるでしょ!!/////」

 その時だった。

 

「おんどりゃああああああああああああああああああ!!! 一丈字ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

 と、親衛隊らしき男子生徒達が現れると、飛鳥が逃走した。

 

千聖「こら!! 待ちなさーい!!」

 千聖が叫ぶが、飛鳥はそのまま去っていった。

 

「大丈夫!? 千聖ちゃん!?」

「またあの1年か…!!」

 

 と、男子たちが一斉に千聖を囲んだ。

 

千聖「わ、私は大丈夫よ…」

「そ、そうか…」

「ハァ…フゥ…」

 と、千聖に近づこうとしたが、正直恐怖でしかない。

 

飛鳥「ハァ…」

 飛鳥が困惑していた。

 

飛鳥(…やっぱりもう正体に気付き始めてるな。流石天才子役と呼ばれてるだけあって、鋭いな)

 

 放課後

 

飛鳥(さて、帰るか…)

 飛鳥が帰ろうとすると、上級生たちが現れた。

 

「一丈字はいるか!!」

「出てこい! 話がある!!」

 

 飛鳥は普通に帰った。

 

「一丈字くんならもう帰りました…」

「何ィ!!?」

「空気読めよ!!!」

 

 とあるカフェテリア

 

飛鳥「……」

こころ「千聖にバレかけてるって本当?」

飛鳥「ああ。まあ、あの人の事だから下手に言いふらしたりはしないだろうけど…」

 飛鳥が困惑した。

 

「多分こころちゃんに聞くだろうね~」

 

 飛鳥とこころがモカを見た。先日飛鳥の正体に気づいた。

 

飛鳥「…Afterglowの練習大丈夫?」

モカ「大丈夫だよ~。今日トモちんとひーちゃんバイトだから~。それだったらハロハピもー」

こころ「大丈夫よ! 皆今日部活だって!」

飛鳥「思ったけど、部活とバンドの両立って大丈夫なの?」

モカ「そこを突っ込んだらおしまいだよー」

 

 モカがのほほんとした。

 

モカ「そういや、モカちゃんのバイト先にも気をかけてくれてたんだね。リサさんが本当に助かったって言ってたよ」

飛鳥「…そう」

 飛鳥が笑みを浮かべた。

 

モカ「そういや、いつまでやるの?」

飛鳥「ある程度減ってきてもう問題なさそうだと判断できるまで。それで判断出来ればもう仕事は終わりで、広島に帰る」

モカ「…そうなんだ」

 モカが寂しそうにした。

 

飛鳥「寂しい?」

モカ「そりゃ寂しいよ」

飛鳥「!」

 

 モカが本当に寂しそうにしていた。

 

モカ「ずっと男の人に声をかけられたけど、初めてなんだよ。男の子で仲良くなりたいって思ったの…」

飛鳥「……」

 飛鳥が驚いていた。

 

飛鳥「え、そんな風に思ってくれてたの?」

モカ「恥ずかしいから言わせないで////」

 モカがぷいっと横を向いた。

 

こころ「あたしだって飛鳥が広島に帰ったら寂しいわよ。まあ、日向と椿の事を考えたら、その方が良いのかもしれないけど…」

モカ「え?」

飛鳥「オレの中学時代の同級生で、こころの小さいころからの友達」

モカ「可愛い?」

飛鳥「可愛いっていうか、すっごいモテてたよ。君達と同じくらいね」

 飛鳥が苦笑いした。

 

モカ「そういや飛鳥くんの昔話、聞きたいなー」

飛鳥「あんまり人前に話せる内容じゃないんだよね。モカの昔話を聞かせてよ」

モカ「え~。それじゃあ中学の時に蘭たちといった肝試しの話を…」

 

 と、ずっと談笑をしていた。

 

 その頃の千聖…。

 

「千聖ちゃん!! あいつなんかよりもオレと!!」

「いや、オレと!!」

「僕とぉ!!」

千聖「……!!」

 

 千聖は男子たちに付きまとわれていたが、飛鳥が助けに来る事は無かった。

 

千聖(こういう時こそ助けなさいよ!!!!)

 

 

おしまい

 


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