バンドリ学園にもバレンタインデーがやってこようとしていたが…。
「…すみませんが、よろしくお願いします」
「りょーかーい」
「任せて頂戴」
飛鳥はモカ、千聖の2人と事前に打ち合わせをしていた。まあ、大体検討はつくのだが…。
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バレンタインデー。飛鳥はいつものように登校したわけだが、学園は異様な熱気に包まれていた。
そう、男子が女子からチョコを貰えるかどうか気にしてるならまだ良いのだが、ファンたちは香澄達からチョコが貰えるか気にして、誰がチョコを貰うか気にしていたのだった。
飛鳥(…まあ、ハロハピメンバーあたりがくれそうだけどな)
大金持ちで楽しい気持ちとかは皆と共有するこころ、ファンを何よりも大事にする薫、人懐っこいはぐみ、押しに弱い花音がいるハロハピメンバーならチョコをくれそうと考えているが、実際は美咲がストッパーになっている。
飛鳥(まあいいや…。早く作戦実行しよ)
ちなみに飛鳥は超能力で存在感を消して進んでいて、もしもこれが普通に進んでいようものなら、気づかれただろう。
飛鳥(最近超能力に頼りきりだけど…まあいいや。修業にもなるし)
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そんなこんなで飛鳥は学内に入り、カフェテリアにやってきたが、モカ、千聖が既にやってきた。この時に超能力を解いた。皆の前に姿を現している。
モカ「おはよー」
千聖「おはよう一丈字くん」
飛鳥「おはようございます」
すると飛鳥がカバンからあるものを取り出した。2つの大きな紙袋である。
飛鳥「これが例のものです」
モカ「お~」
飛鳥「皆さんに渡しておいてください」
千聖「ありがとう♪」
そう、飛鳥が持ってきたものはバレンタインチョコであり、25人分作ってきたのだ。1年生にはモカから、2年生には千聖から渡すという作戦だったのだ。教室に入ろうとすると追い出される為である。
飛鳥「それでは失礼します」
モカ「ありがとね~」
モカがそう言うと、飛鳥はその場から離れたが、注目はモカと千聖に向かい、飛鳥も何か警戒したように見渡すと、陰に隠れていた弦巻家の黒服とアイコンタクトを行った。
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「一丈字がモカちゃんと千聖ちゃんになにか渡したぞ!」
「もしかしてバレンタインチョコか!?」
「気になるぅ!!」
「何とかして聞き出せ! これがチョコだったら奪え!」
「どうやって奪うんだよ!! よりにもよってモカちゃんや千聖ちゃんに渡しやがって!」
男子生徒軍団にも飛鳥がチョコを渡したことが耳に入り、作戦を考えていた。
「一丈字めぇ…! チョコが貰えないからって、自分がチョコを渡してホワイトデーにお返しを貰おうって魂胆か!?」
「どこまで卑怯な奴なんだ!!」
「女からチョコを貰うというプライドを捨てたのか!!」
「そこまでして千聖ちゃん達からのチョコが欲しいか!!」
とまあ、醜い嫉妬の炎を燃やしていたわけだが、飛鳥としてはこうなる事も想定済みで…。
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1年3組・教室
「一丈字くん」
飛鳥「何です?」
飛鳥はクラスメイト達に話しかけられていた。
「青葉さんと白鷺先輩にチョコ渡したって本当?」
飛鳥「ええ」
飛鳥はあっさり認めると、クラスメイトは不思議そうにしていた。
「どうしてチョコを?」
飛鳥「いやあ、いつもお世話になっておりますので」
そうあっけらかんと話していたその時、男子生徒軍団が1年3組に乗り込んだ。
「おい! 一丈字!」
飛鳥「……」
来たな。と言わんばかりの目つきで男子生徒たちを見つめた。
飛鳥「何か御用でしょうか」
「お前、モカちゃんや千聖ちゃんにバレンタインチョコを渡したそうだな!」
飛鳥「ええ、日ごろからお世話になっているので、お渡ししただけですが?」
飛鳥がそう返事すると、それがさらに男子生徒たちを苛立たせた。
「そんな事はどうだっていいんだよ!」
「抜け駆けしやがって!!」
「喋れば喋るほどムカつく奴だな!!」
と、一方的に飛鳥に怒りをぶつけたが、飛鳥は毅然とした態度をやめない。
飛鳥「それで、私にどうしてほしいのですか?」
「!」
飛鳥がそう言うと、一人の男子生徒がマジ切れして、飛鳥に掴みかかろうとしたが、飛鳥が返り討ちして、羽交い締めをした。
飛鳥「落ち着きましょうよ」
「……!」
そして飛鳥は男子生徒を離して距離を取った。
飛鳥「何がそんなに気に入らないんですか?」
「お、お前の全てが気に入らないんだよ!! 透かしたような面しやがって!」
「そうだそうだ!!」
男子生徒たちの言いがかりに飛鳥は首を傾げた。
飛鳥「それでしたら皆さんも今からバレンタインチョコを買って差し上げたら如何でしょうか」
「!?」
飛鳥「ただ待ってるだけじゃ、相手も何もしてくれませんよ」
飛鳥がそう言うと、男子生徒たちは地団駄を踏んだ。
「う、うるさいうるさい!! お前は主人公だから何もしなくてもチョコ貰えるじゃないか!」
飛鳥「貰ってないですよ。実際に青葉さんや白鷺先輩からあの時貰いませんでしたし」
「でもそのうち貰えるんだろ!!? 貰える時点で大罪だ!!」
「そうだそうだ!」
その時だった。
「飛鳥くん」
千聖が教室にやってきて、飛鳥に声をかけたが、千聖だけではなくて他のバンドガールもやってきていた。
「多っ!!!」
飛鳥「ど、どうされました…?」
飛鳥も流石に困惑していた。というのも、先日バレンタインの件でどうするべきかモカや千聖と打ち合わせをしたのだ。流れとしては飛鳥がモカ、千聖に全員分のチョコを渡して、モカ、千聖経由で男子生徒達からのやっかみ対策にチョコを渡しているので、お礼はしないでほしいと伝え、そのあと皆の前でモカと千聖に対してチョコを辞退するという意思表示をして、大人しくさせようというものだった。
ちなみに何もしてない場合だと、香澄達からチョコを貰っていると勘ぐられてずっとつきまとわれる可能性があったからというものある。
モカ「いやー。皆飛鳥くんにお礼が言いたいってついてきちゃったんだ~」
つぐみ「あ、一丈字くん。チョコありがとね?」
蘭「…ここまで気を遣わなくて良かったのにって思ってたけど、こいつらも絡んでたのか」
蘭が困惑したように男子生徒たちを見つめていた。
ひまり「これ結構有名な所のチョコだよね!?」
飛鳥「精を出してください」
飛鳥が普通に返事すると、つぐみや沙綾が困った顔をした。
沙綾「…モカから聞いたけど、お礼はいいって本当なの?」
つぐみ「やっぱりそういう訳には…」
飛鳥「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます」
飛鳥が手を突き出した。
有咲「まあ、今はやめた方が良さそうだな」
美咲「本当に懲りないわね…」
と、有咲と美咲が冷めた目で男子生徒たちを見ていた。
「こ、これじゃオレ達が一丈字に忖度してもらってるみたいじゃないか!!」
「どこまでも卑怯な手を使いやがって!」
男子生徒たちが飛鳥に対してやっかむと、飛鳥も困った様子で視線をそらした。
千聖「まあ、そういう訳だから私たちは一丈字くんにチョコを渡す予定はないので、安心して頂戴?」
と、千聖がそう言うと男子生徒たちは罰が悪そうにその場を去っていった。
「ちくしょー!!!」
「バレンタインなんて大嫌いだぁああああああ!!!」
そう叫びながら去っていくと、飛鳥は困惑した。
飛鳥「…本当にご迷惑をおかけしました」
飛鳥はクラスメイトや千聖たちに頭を下げて謝ったが、クラスメイト達も本当に大変だなと飛鳥に同情した。まあ、ここで文句を言おうものなら、さっきの男子生徒たちみたいになるのは間違いなかったので、そんな事は出来なかったが、
千聖「まあ、これで今日はあいつらも大人しくする事でしょう」
飛鳥「そうだといいですね…」
こころ「あら? そんなにチョコが欲しいなら…」
美咲「こころは黙ってなさい」
美咲がこころの口をふさいだ。
飛鳥「そういう訳ですので…。お返しは本当にいらないです…」
「お、おう…」
当面の間は人付き合いに苦労しそうな飛鳥を見て、バンドガールズは何とも言えない顔をしていた。
美咲「一丈字くん。本当にお疲れ様…」
有咲「お前がいてくれて本当に助かってるぜ…」
有咲と美咲がねぎらいの言葉をかけた。
飛鳥「今度はお二人メインでやってみます?」
有咲・美咲「勘弁して!!(泣)」
おしまい