全バンド一貫! バンドリ学園! エンドレス   作:ダシマ

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第361話「天才の苦悩(前編)」

 

『テスト事情』

 

 ある日のバンドリ学園。今日は定期テストの結果が帰ってくるのだが…。

 

「一丈字くん」

飛鳥「はい」

 

 飛鳥がテストの結果を受け取ろうとしたが、先生が飛鳥を見つめていた。

 

飛鳥「どうかされましたか?」

「その、今回もあなたが1位よ」

飛鳥「あ、そうですか…」

 

 担任の言葉に飛鳥は普通に返事したが、クラスメイト達が驚いていた。

 

「マジかよ…」

「一丈字すげぇな」

 

 と、クラスメイト達は飛鳥をほめていたが、飛鳥はあまり嬉しそうじゃなかった。

 

「どうしたの?」

「嬉しくなさそうだけど…」

飛鳥「問題なのはここからなんですね」

「え?」

 

 飛鳥が困惑しながら正面を向くと、皆が困惑した。

 

*********************

 

 バンドリ学園もテストの成績優秀者は張り出されることになるのだが…。

 

「一丈字! お前絶対カンニングしただろ!!」

飛鳥「ほらね、絶対こういうと思った」

 

 飛鳥は案の定男子たちからいちゃもんをつけられていた。

 

有咲「ていうか一丈字…アタシよりも頭良かったんだ…」

飛鳥「偶然ですよ」

「どうせ主人公補正使ったんだろう!?」

「きたねぇ真似しやがって!」

飛鳥「まあ、そう思われても仕方ないですけど、本当にカンニングしてませんよ。というかもうするまでもないですし」

「するまでもない!?」

「どこまでも舐めやがって!」

飛鳥「かといって、ここで手を抜いたら後で先生に生徒指導室に呼ばれて「なぜ手を抜いた?」って言われるんですよね…」

有咲「…実際に言われた事あるのか?」

飛鳥「ないですけど」

有咲「ねーのかよ!」

 

 飛鳥の言葉に有咲が突っ込んだ。

 

飛鳥「ですが、「今度手を抜いたらグーで殴る」って言って、アカハラで訴えられてクビになった先生がいますけどね。うちの中学」

有咲「こえぇよ!!」

飛鳥「そういう子はどうしてもそうしなきゃいけない理由があるから、そこも考慮しないとダメですよね」

「そんな話はどうだっていいんだよ!」

「とにかくオレ達は認めないからな!」

飛鳥「分かりましたよ。お好きにどうぞ」

 

 そう言って飛鳥は大人の対応を取った。

 

*********************

 

 河川敷

 

飛鳥「はーあ、テストでいい点とっても悪い点とっても、周りからいちゃもんつけられる。本当に敵が多いなぁ。オレ」

 

 飛鳥が体育座りしながら夕陽を見つめていた。

 

「一丈字くん?」

飛鳥「ん?」

 

 飛鳥が後ろを向くと、紗夜がやってきた。

 

飛鳥「氷川先輩」

紗夜「こんな所で何をしているのですか?」

飛鳥「いやあ、ちょっとこれからの身の振り方を考えてただけですよ」

紗夜「身の振り方?」

飛鳥「ですが、もう帰りますね」

紗夜「待ちなさい。何かあったの?」

飛鳥「……」

 

 飛鳥は事情を説明した。

 

飛鳥「…という訳なんですよ」

紗夜「そ、そんな事が…」

 

 ショックを受ける紗夜に対して、飛鳥はふっと笑うとまた夕陽を見つめた。

 

飛鳥「やっかみやいちゃもんをつけられるのは昔からなんでもう慣れてます。それに、今更クラスメイトの皆さんから褒められたり、近づかれたりしても、昔の事がどうしてもチラついて、そんな気分になれません」

紗夜「……!」

 

 飛鳥の言葉に紗夜は日菜の事を思い出した。日菜は自分とは違い、ちょっと勉強すれば何でもできる『才能マン』だった。そして飛鳥もまた芸達者で、今回の成績も実力でたたき出した実力者でそういう意味では彼も『才能マン』だった。

 

 だが、日菜との決定的な違いは、結果を出したことで人から嫌われているかいないかだった。飛鳥は同級生たちに嫌われ、担任からも冷遇を受けていたため、良い事ばかりではなかった。

 

 そして紗夜は日菜に対して勝手に劣等感を抱いて、彼女から目を背けていた時期があった。飛鳥の事も日菜と同様才能マンだと思っていたが、妹とは違い、それによって苦悩していたのだった。もしかしたら日菜もこんな感じになっていたかもしれないと、紗夜は飛鳥の事を放っておけなくなった。

 

紗夜(もしかしたら…日菜も…)

 

 紗夜の表情を見た飛鳥はふっと笑った。

 

飛鳥「さて、私はもうそろそろ行きますね」

紗夜「っ!」

飛鳥「失礼します」

 

 そう言って飛鳥はその場を後にすると、紗夜は飛鳥の背中を見つめる事しかできなかった。

 

***********************

 

 翌日、紗夜は飛鳥の元を訪ねた。

 

紗夜「少しお時間をいただいてもよろしいですか?」

飛鳥「あ、はい…」

 

 飛鳥は不思議そうにしながらも、断ってもまた来るだろうと判断したため、彼女の言うとおりにした。

 

 そしてカフェテリアで話をした。

 

紗夜「…昨日はごめんなさい。気の利いたことが言えなくて」

飛鳥「お気遣いなく」

 

 紗夜の言葉に飛鳥は苦笑いした。

 

飛鳥「まあ、本当は手を抜いて点数を調整しても良かったのですが」

紗夜「そ、それはいけません! テストを何だと思っているのですか!!」

飛鳥「それはそれでまた文句を言われてしまうのですよ」

紗夜「!」

 

 飛鳥が目を閉じた。

 

飛鳥「結局何をやっても批判は免れません。そして紗夜先輩も理解して頂けていると思いますが、私は敵が多いです。ならばもうこのまま進むしかありません」

 

 飛鳥が目を閉じて紗夜を見つめる。

 

飛鳥「そういう訳ですので」

 

 飛鳥がそう言ったその時だった。

 

「おいおい、こんな所で何してんだよォ」

飛鳥「?」

 

 飛鳥と紗夜が横を向くと、2年生のDQNが現れた。

 

 

つづく

 


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