「一丈字の奴…香澄ちゃん達とよく一緒にいてずるい…」
「オレだって美竹達と話がしたいのに…」
「パスパレとどうしてあんなに仲がいいんだ!?!」
「Roseliaとどうやって仲良く…」
「ハロハピ…」
と、バンドリ学園ではバンドガールズと一緒にいる飛鳥に対して、男子生徒達が嫉妬していた。そしてそれを飛鳥は陰で聞いていて、その場を去った。
彼女たちとしては平等に接しているつもりである。ライブもお客さんに満足してもらうために最大限のパフォーマンスを発揮している。飛鳥もファンに気を遣って極力顔を出さないようにしている。
しかし、自身の活躍によってヤラカシは減ってきた。
飛鳥は思った。もしも突然バンドリ学園を去る事になったら、彼らはどうなるのだろうと。
一度転校してしまえばもう後戻りは出来ない。一度転校して戻ってきてしまえば、超能力者だという事がバレる可能性は非常に高い。というか普通に怪しまれる。
今日は殆どのバンドガールがバイトやら部活がある日で、飛鳥に構っている時間はない。
飛鳥(こういう日とかに声をかけられたりしないのかな…)
飛鳥は調査をしてみる事にした。
1人目:花園たえ(ライブハウス「SPACE」)
飛鳥「この辺は普通だな…」
たえが接客している様子を見たが、特にファンが押し掛ける事はなく、ごく普通に接客していた。
2人目:山吹沙綾(やまぶきベーカリー)
飛鳥「……」
飛鳥が外から店内を見てみたが特に何もないものの、パンが殆ど売り切れだった。
飛鳥(接客状況は分からないけど、売り上げは上々か…)
3人目:市ヶ谷有咲(流星堂)
飛鳥(ここも特に異常なし…。まあ、質屋さんだからあまり来ないよな)
有咲の実家の前に来てみたが、特にヤラカシがいる訳でもなかった。
4人目:青葉モカ(コンビニ)
5人目:今井リサ(コンビニ)
飛鳥「わー。やっぱりその手のお客さんが入り浸ってるわ…」
と、彼女たちのファンらしき男性たちが雑誌を読んだり、店内をウロウロしたりしていた。接客をしているリサとモカは困り顔だった。
飛鳥(…シフトとか変えて貰ったりできたらいいんだけど。出来ないのかな?)
飛鳥がその場を後にした。
6人目:宇田川巴(ハンバーガーショップ)
7人目:上原ひまり(ハンバーガーショップ)
飛鳥「うわっ!! めっちゃ行列!!」
と、飛鳥が困惑していた。
「ここが女子店員のレベルが高いハンバーガーショップか…」
「ちらっと見たけど、本当にレベルが高かったゼェ…」
並んでいた男性客たちがゲスな表情でそう言っていた。
飛鳥(大変だなぁ…有名になると…)
飛鳥が去っていった。
8人目:羽沢つぐみ(羽沢珈琲店)
9人目:若宮イヴ(羽沢珈琲店)
飛鳥(そういや若宮さんもここでバイトしてるって聞いたけど…もう言うまでもないな)
羽沢珈琲店は長蛇の列が並んでいた。
「くっそー…早くしろよ!!」
「早くイヴちゃんと、Afterglowのキーボードに接客して貰いたいのに!」
と、凄くイライラしていた。
飛鳥「……」
飛鳥が超能力で店内を透視をしてみると、つぐみやイヴがバタバタしていた。
10人目:北沢はぐみ(北沢精肉店)
飛鳥「あれ? 思った以上に客が来てないな…」
店の近くまで来たが、思った以上に客が並んでなかったが、何か揉めていた。
飛鳥「!?」
飛鳥が近くまで行くと。
「はぐみちゃん出せや!!!」
「ですから、娘は家にいなくて…」
「そんな事言って本当はいるんだろ!!!」
と、めっちゃ太った男が店主にいちゃもんをつけていた。
飛鳥(あ、これは…)
飛鳥が指を鳴らすと、男に腹痛を起こさせた。
「ぐ、ぐぉおぉぉおお…!! は、腹が…!! 畜生…また来るからな…!!!」
と、男は去っていくと、飛鳥が頭をかいた。
飛鳥の家
飛鳥「大体行動パターンは分かって来たぞ…」
飛鳥がパソコンのWordで今回の記録をまとめていた。
飛鳥「パスパレはもう言うまでも無いけど、ターゲットの年層的にやっぱりハンバーガーショップとかがねらい目なんだろうな」
その時、飛鳥の携帯が鳴り、電話に出た。
飛鳥「もしもし」
「あ、もしもし飛鳥くん? モカだよ~」
飛鳥「モカ」
電話の相手はモカだった。
モカ「飛鳥くん今日モカちゃんとリサさんのバイト先のコンビニの前にいたでしょ~」
飛鳥「ええ」
モカ「どうしたの~?」
飛鳥「調査ですよ」
モカ「調査~?」
飛鳥「ええ。例のヤラカシ狩りだよ」
モカ「それなら言ってくれたらいいのに~」
飛鳥「最初はそうしようと思ったけど、今井先輩も侮れないからね…」
モカ「おっぱい?」
飛鳥「話の流れおかしくない?」
モカの冷やかしに飛鳥が冷静に突っ込んだ。
モカ「飛鳥くんそういう趣味が合ったんだ~。へんた~い」
飛鳥「まあ、ヤラカシも減って来たし、もうオレがいなくても大丈」
モカ「冗談だよ~」
飛鳥「頼むよ。その手の冗談は、色々あってもう笑えないよ」
飛鳥が一息ついた。
モカ「それだったらモカちゃんからいい情報があるよ」
飛鳥「何です?」
モカ「トモちんとひーちゃん部活入ってるでしょ?」
飛鳥「うん」
モカ「やっぱり狙ってる男子、多いよ」
飛鳥「まあ、そうだと思うんですけど、それで何か問題とかありますか?」
モカ「やっぱりひーちゃんはおっぱい見られるし、ダンス部は男子たちが練習サボって見に来る」
飛鳥「…まだ手を出したりはしてない?」
モカ「それはしてないよ~。他の女子達が睨みを聞かせてるから~。でも気を付けた方がいいかもしれな~い」
飛鳥「…だろうね」
飛鳥が困惑した。
飛鳥「そういや羽沢さんは生徒会の仕事やってるって聞いたけど、大丈夫?」
モカ「今のところは大丈夫だけど~。つぐもあんな調子だから男子に若干舐められてるんだよね~」
飛鳥「…あ、何か押せばいけそうみたいな感じ?」
モカ「そんな感じ~。花音先輩とかはもっと危なくて、此間男子に付き合わされそうになったんだよ~。薫先輩が止めてくれたけど~」
飛鳥「…確かに危なさそうだね」
花音はこころに半ば強制的に「ハロー、ハッピーワールド!」に加入させられたことを聞いた事があった為、何となく察した飛鳥だった。
モカ「あ、そういえば飛鳥くん」
飛鳥「何?」
モカ「最近、バンドガールズにちょっかいをかけるとお腹が痛くなるって噂が流れてるけど、大丈夫~?」
飛鳥「それは大丈夫だよ」
モカ「どうして~?」
飛鳥が笑みを浮かべる。
飛鳥「やり方はどうであれ、迷惑なファンはいなくなってくれた方が良いし、自分の仕事を全うしてるから」
モカ「……!」
飛鳥「本当はね。超能力を使わないで、直接助けに行くことだって出来るんだ。けど、いつまでもそうする事は出来ない。モカ、もう君には正体を知られたから言っておくね。いつかは君が…君たちの手でちゃんと自分達を守る術を身に着けて欲しい。そしていつか、それを誰かに伝えて欲しい」
飛鳥の言葉にモカが俯いた。
飛鳥「まあ、そういう事だ。ヤラカシの数は着々と減ってるから、それまで…」
モカ「飛鳥くん…」
飛鳥「…なに?」
モカの声が震えていた。
モカ「モカの…モカ達の為にそこまでやってくれてたんだね…」
飛鳥「そりゃあお金貰ってるからね。下手な仕事は出来ないよ」
モカ「それだけじゃないでしょ」
飛鳥「?」
モカ「お客さんや、自分以外で仕事に携わってる人たちの事を考えなきゃ、いい仕事は出来ないよ。そういう意味では飛鳥くん…モカ達の事を沢山考えてくれてる…」
モカの心情を読み取った飛鳥は目を閉じた。
飛鳥「ありがとう」
モカ「!」
飛鳥「まだやる事沢山あるけど、ヘマしないように頑張るよ」
モカ「飛鳥くん」
飛鳥「なに?」
モカ「何かあったらすぐにモカに連絡して」
飛鳥「そのつもりだよ」
モカ「!!」
飛鳥の言葉にモカが反応した。
飛鳥「宇田川さんと上原さんのバイト先も確認してみたけど、ちょっとマズそうだったから、何かあったら連絡する。彼女たちのケアはオレよりも君に任せた方が良さそうだからね」
モカ「…うん! 任せて」
飛鳥「じゃあ、また明日」
そう言って飛鳥は電話を切った。
飛鳥「ふぅ…」
そして飛鳥が再度電話をかけた。
飛鳥「あ、もしもしこころ? ゴメン。さっきモカから電話が来てて…」
明日も色々大変な事があるだろうが、味方がいるから絶対に大丈夫。飛鳥はそう思いながら、こころと話をしていた。
おしまい