それはある日の事だった。
「はぁーあ…。一丈字の奴、相変わらず香澄ちゃん達に囲まれてるよ…」
「ああ…」
男子生徒たちはうんざりしていた。というのも、一丈字飛鳥が人気ガールズバンドのメンバーに囲まれていたからだった。
「あいつ、見た目も地味で陰キャのくせに…」
「こころちゃんの知り合いじゃなかったら…」
「それだけだったらまだいいよ。何よりも…」
男子生徒たちの飛鳥に対する憎しみが強まった。
(何の努力もしてないで囲まれてるのが気に食わねぇ!!)
飛鳥「……」
飛鳥も男子生徒たちの視線に気づいて、何も言えずにいた。
香澄「どうしたの? 飛鳥くん?」
飛鳥「いえ、何でもありませんよ…」
たえ「あ、そういえば飛鳥くん」
飛鳥「何です?」
飛鳥がたえを見つめる。
たえ「此間河川敷で走ってる所を見たんだけど…」
飛鳥「ああ、最近運動不足気味なもんで、最近走ってるんですよ」
りみ「そ、そうなんだ…」
こういう会話も男子生徒たちにとっては耳障りでしかなかった。
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そんなある日の事。飛鳥がとある陸上競技の大会に出場していたことが判明していた。
巴「一丈字! お前陸上やってたのか!?」
飛鳥「いえ、走る専門です…」
知人たちにバレて飛鳥はばつが悪そうにしていた。飛鳥としては内密にしておきたく、学校にも報告していなかったのだが、準決勝で同じ学園の生徒が別の選手の応援に来ていて、そこで判明したのだ。
ひまり「しかも今度決勝戦なんでしょ!?」
飛鳥「え、ええ…。次勝てば優勝です…」
蘭「そもそもどうして大会に出たの?」
飛鳥「あ、賞金が出るので」
賞金稼ぎのつもりで参加していた飛鳥に皆が更に驚いていた。
たえ「運動不足だから走ってたって言うのは嘘なの?」
飛鳥「いや、それは合ってます。本当に運動してなかったもんで、ちょっとリハビリも兼ねて参加したわけですが…」
ちなみに超能力は一切に使っていない。というのも、超能力を使えばそれこそスピードは上がるが、コーナーなどが曲がり切れない上に、カメラ判定でも不審な点が発生するため、不正したのがすぐに分かってしまうか、誤解される可能性があるからだ。
「はああああああああああああああああああああああああ!!?」
突如の『実は努力してました』展開に男子生徒たちは発狂し、飛鳥達も流石に反応した。
「いや、ちょっと待てよ!!」
「そんなのおかしいだろ!!」
飛鳥「……」
男子生徒たちが言いがかりをつけると飛鳥が困惑した。
蘭「おかしいって何が?」
男子A「いや、急に努力してましたって言われても、こっちは何の感動もしねーよ!」
男子B「蘭ちゃん達とイチャイチャさせるための口実やん!!」
モカ「あなた達は何か努力でもしたの?」
男子生徒たちの言葉にモカはバッサリと言い放った。
男子A「そ、それは…」
モカ「努力してないのに人の事悪く言う資格なんてないんじゃないの?」
男子B「いや、なんか急にこいつが努力してるのを見せるから…」
沙綾「努力って人が見てないところでするものだと思うんだけど」
男子生徒たちの言葉をバッサリ切り捨てるモカと沙綾を見て、飛鳥は口喧嘩では女性にかなわないなあと改めて思った。
たえ「それだったら私は飛鳥くんが努力してる所を見たって事になるよね?」
「え?」
たえ「それだったら、私は感動する権利があるって事だよね?」
「そ、それは…」
たえの言葉に男子生徒たちがモゴモゴすると、
有咲「はいはい。結局女の子に囲まれてるのが気に入らないだけだろ? 本当にみっともないな」
「な、なんだと!?」
有咲「だってそうだろ!? 陸上の件もそうだけど、一丈字は普段から人の為に一生懸命頑張ってくれて、そういう所も見てるんだ! 林間学校でつぐみを助けた時とかも、沙綾の妹に自転車頑張らせるためにテストを頑張った事も、リサさんを痴漢から助けたときも! それに比べてあんた達は人の為に何かしたのか!? 言えば人の悪口ばかり! 本当にみっともないんだよ!」
有咲の熱弁に皆が驚いた。
香澄「あ、有咲…!」
そう言って男子生徒たちは罰が悪そうにその場を去っていった。
有咲「あ、待て! 一丈字に…」
飛鳥「いいんですよ市ケ谷さん」
有咲「でも!」
有咲がそう言って飛鳥の方を向くと、飛鳥は静かに首を横に振った。
飛鳥「無理やり謝らせても、それは心からの謝罪ではございません。今は彼らが変わるのを信じて待ちましょう」
有咲「一丈字…」
飛鳥「あなたの気持ちは十分に伝わりました。ありがとうございます」
そう言って飛鳥が一礼をすると、時計を見た。
飛鳥「もうそろそろ時間ですね。私は教室に戻ります」
飛鳥が教室に戻ろうとすると、香澄が声をかけた。
香澄「あ! 飛鳥くん! 決勝戦応援に行くからね!?」
飛鳥「ありがとうございます。ですがその日は合同ライブでは…?」
香澄「あっ…」
そう、実は陸上大会の決勝戦と、香澄達が前に計画していた5バンドの合同ライブの日程がかぶっていたのだった。
飛鳥「お気持ちだけ受け取っておきます。それでは」
りみ「あっ…」
モカ「飛鳥くん」
飛鳥「何です?」
唯一正体を知っているモカが笑みを浮かべた。
モカ「頑張ってね」
モカの言葉に飛鳥が笑みを浮かべたが、目に凛と輝いていた。
飛鳥「勿論」
凛とした目でモカ達に言い放つと、香澄達はちょっとドキッとした。完全に『デキる男』の顔をしていた。
モカ(あ~…。これはもうあの男子たちは絶対に勝てないな~)
モカは頬を染めている香澄達を見て、ひとりニマニマしていた。
****************
そして次の月曜日…。
「一丈字くん。優勝おめでとう」
飛鳥「ありがとうございます」
飛鳥は学校に来るなり、Pastel*Palettes、Roselia、ハロハピのメンバーに祝福されていた。
日菜「2400mってすごいの?」
麻弥「いや、凄いと思いますよ。中距離が1500mですから…」
友希那「意外と体力あるのね。あなた…」
飛鳥「いえいえ」
友希那の言葉に飛鳥が苦笑いした。飛鳥は2400mの部に出場して優勝を果たしたのだ。これが高校生だけとか、性別とか関係なしの『オールスター部門』である。
紗夜「けど、長距離は3000mと言われていて、2400mなんてのは…」
飛鳥「その大会オリジナルの距離みたいですね」
とまあ、そのままバンドガールと談笑していて、男子生徒2人が恨めしそうに睨んでいた。
「なんか納得いかねぇ~!!!!」
「やっぱり主人公だからって、良い思いしてるんじゃ…」
その時だった。
「あれ? あんな所に相撲部がいるぞ?」
「え?」
と、皆がグラウンドにいる相撲部を見つめていたが、何やら練習をしていた。
「相撲部も一丈字どんに負けずに頑張るぞー!!」
「うっす!!」
一生懸命努力していて、男子生徒2名が驚いていた。
男子生徒A「お、おいおい待てよ…」
男子生徒B「これってまさか…」
その時だった。
女子生徒A「へー。やるじゃん相撲部」
女子生徒B「ちょっと見直しちゃった」
女子生徒C「少なくとも、人の悪口ばっかり言ってる男よりかはマシだよねー」
女子生徒D「今度差し入れでもしようかな」
とまあ、女子たちからの評価は少しだけ上がっていて、男子生徒2人も努力することを決意した。
まあ、この後どうなったかというと…。
「努力してるのは認めるけど、ごめんやっぱり無理」
「」
「やっぱイケメンがいいわー」
「」
「あ、あのう…タイプじゃないんです…」
「」
「普通に無理」
「」
努力したからと言って必ずしも報われるとは限らないのである。
「今日一緒にお風呂入ってくれへん? もちろんマッパで」
「い、いいけど…/////」
もちろん例外もあって、逆もまた然り。これは仕方のない事である。
「オレ達もそっちが良かったよぉおおおおおおおおおおおおお」
「ていうか普通に最低過ぎない!?」
男「あ、僕たち幼馴染ですねん」
「聞いてねぇよそんな事!!!」
おしまい