沙綾「…そうなんだ。父さんと母さんはスーパーで雨宿り? 分かった」
沙綾は自分の両親と電話をしていた。
亘史「…沙綾たちは大丈夫か?」
沙綾「うん。純と紗南も家にいるんだけど、お客さんが店に取り残されちゃったの。前に話した一丈字くんって子なんだけど」
亘史「あの子か!」
沙綾の言葉に父親は特に嫌がる様子もなく驚いていた。
沙綾「で、うちの店のボードが風に飛ばされてとってきてくれたんだけど、服がびしょぬれになっちゃって…。父さんの服貸してくれる?」
亘史「それは構わないが、一丈字くん怪我はしてないのか?」
沙綾「一丈字くん本人に聞いた所、大丈夫みたい。父さんと母さんも気を付けて!」
亘史「分かった。何かあったら連絡してくれ!」
そう言って電話を切った。
***
沙綾「一丈字くんの服、明日までに乾かすから。それから悪いんだけど、父さんの服着てて」
飛鳥「ありがとうございます。お洋服は弁償させて頂きますので…」
沙綾「大丈夫だよ。寧ろ父さんも気を遣うから」
と、飛鳥は山吹家にお泊りする事となったのだが…。
沙綾「そうだ。びしょぬれになったから先にお風呂入ってきたら?」
飛鳥「いえ、客人の私が先に入るなど…」
遠慮する飛鳥に沙綾はわざとからかってみた。
沙綾「…もしかして飛鳥くんって、女の子が入った後にお風呂入りたいの?」
飛鳥「そういう訳ではありませんが…あっ」
沙綾の言葉に飛鳥は普通に言い返したが、ある事を想いだして気まずそうに視線をそらした。
飛鳥「…そうですね。申し訳ございませんが入って来ます」
沙綾「宜しい」
飛鳥の言葉に沙綾が反応すると、純と紗南は首を傾げた。
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飛鳥「お風呂頂きました」
沙綾「はーい。それじゃ純入ってきて」
純「はーい」
そう言って純が風呂に入ると、飛鳥は沙綾を見た。
飛鳥「あ、山吹さん」
沙綾「なあに?」
飛鳥「何かお手伝いする事あります?」
沙綾「そうだね…。私今料理してるから、紗南の事見ててくれる? まあ、一人でしてたら別にいいんだけど」
飛鳥「あ、はい。分かりました…」
そう言って飛鳥は紗南の方を見たが、紗南は遊んでほしそうにしていて、料理が出来るまで紗南と遊んでいた。純が風呂から上がると今度は紗南が風呂に入り、純が飛鳥に遊んでもらっていた。勿論紗南よりやんちゃだったので、沙綾に時折釘を刺されていたが、
純「ところで兄ちゃんってねーちゃんと付き合ってんの?」
純の言葉に飛鳥が少し驚いていたが、沙綾は頬を赤らめた。
沙綾「コラ! これ以上変な事を言うと本当にご飯抜きにするからね!?」
純「顔赤くなってるぞねーちゃん」
沙綾「純―!!!」
と、また姉弟喧嘩が始まって飛鳥は苦笑いした。すると紗南がすぐにやってきて、
紗南「さーなをなかまはずれにしちゃダメ~!!!」
半泣きでやってきて、すぐに飛鳥に抱っこされに行った。
***
そして夕食、飛鳥が来ているのかどうかわからないが、この日はクリームシチューだった。
沙綾「一丈字くんってシチューにはご飯食べる人?」
飛鳥「いえ、お任せします…」
沙綾「あ、うちも特にそんなこだわりないから大丈夫だよ」
山吹家は家がパン屋という事もあり、シチューにはフランスパンを食べるのだ…。
純「まあ、カレーは流石にご飯だけどね」
沙綾「まあ、それはそうね…。あ、おかわり沢山あるから沢山食べてね」
純・紗南「はーい!」
沙綾「一丈字くんもよ」
飛鳥「あ、はい…」
そして食事を終えると…。
飛鳥「皿洗いましょうか?」
沙綾「そこまでしなくて大丈夫だよ。まあ、ちょっとお風呂入ってくるから弟たちの面倒見ててくれたら…あ、でも。覗かないでよ?」
飛鳥「ええ、それは勿論です」
沙綾がわざとからかうと飛鳥は食い気味に答えた。理由はただ一つ、学園生活が終わるからだ。
純「ねーちゃんの裸を見て何もならないよ。それよりもゲームしようぜ!」
沙綾「コラ! 夜にゲームはダメだっていつも言ってるでしょ!」
純「えー。いいじゃんか今日くらい!」
沙綾「ダーメ」
純「ちぇー。じゃあ兄ちゃんに学校のねーちゃんの事聞くから」
沙綾「ぐっ…9時になったらちゃんとやめるのよ! いいわね!」
そう言ってお姉ちゃんをしてる沙綾を見て飛鳥は少し新鮮味があると思っていた。
そんなこんなで飛鳥達はテレビゲームで遊んだ。
飛鳥「純くん。紗南ちゃん」
純「なに?」
紗南「?」
飛鳥「お姉ちゃんは好きかい?」
飛鳥の言葉に純が驚くと、紗南は満面の笑みを浮かべた。
紗南「さーな、おねーちゃんだいすき!」
飛鳥「そっか…。純くんは?」
純「ま、まあ…口うるさいけど嫌いじゃない…」
と、照れくさそうにそう言うと飛鳥は苦笑いした。
飛鳥「そっか。おじさんは一人っ子だから、兄弟のお喋りとか新鮮なんだ」
純「いや、おじさんって…」
紗南「おにーちゃんは、おじさんじゃないと思うよ?」
飛鳥「ありがとう。たまに年齢聞かれるからもうそんなに老けて見られるのかなって思っただけ」
純と紗南の言葉に飛鳥は苦笑いしていると、紗南は飛鳥に効いた。
紗南「飛鳥おにーちゃんは沙綾おねーちゃんのことすき?」
飛鳥「……」
紗南の言葉に飛鳥は苦笑いした。
飛鳥「先に行っとくね。お嫁さんにしたいっていう意味の『好き』じゃなくて、普通に人として『好き』だよ。今日だっておじさんに色々気を遣ってくれたしね」
紗南「おにーちゃんはおじさんじゃないもん!」
飛鳥「分かった分かった」
飛鳥が自分の事をおじさんと呼ぶのを気に入らない紗南はぷりぷり怒っていた。
飛鳥「お姉さんがバンドをやってるのを映像で見てるんだけど、とっても楽しそうにしているのが分かるよ」
純「そう?」
飛鳥「うん。まあ、お姉さんだけじゃなくて他のお姉さんたちもだけどね」
飛鳥がフッと笑った。
飛鳥「まあ、そういう事で純くん。王手!」
純「あっ!!」
つづく